大石内科循環器科医院

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糖尿病の口渇はなぜ起こる?症状の原因と対処法を徹底解説

2025.05.23 糖尿病

糖尿病の初期症状として「口渇」を訴える方は多く、珍しいことではありません。口渇とは「強い喉の渇き」を感じる症状であり、糖尿病の初期に現れることがあります。本記事では、糖尿病で口渇が起こる4つの原因を解説します。口渇以外にも、頻尿や体重減少、倦怠感など、糖尿病の症状についても紹介します。

糖尿病は早期発見・早期治療が重要です。糖尿病と診断された方だけでなく、血糖値が高いと指摘された方、最近のどが渇くという方は、本記事を参考にしてください。口渇のメカニズムを理解することで適切な対処法や糖尿病への理解が深まります。

大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

糖尿病で口渇になる4つの原因

糖尿病で口渇になる原因として、以下の4つを解説します。

  • 血糖値の上昇による脱水症状
  • 腎臓でのグルコース再吸収の低下
  • 多尿による体液の喪失
  • 自律神経障害による唾液分泌量の減少

血糖値の上昇による脱水症状

健康な状態では、血液中の糖(グルコース)は一定の範囲内に保たれています。食事をすると、血糖値は一時的に上昇し、インスリンというホルモンが働きます。インスリンの作用により、糖は細胞に取り込まれエネルギー源として利用されたり、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられたりします。

糖尿病になると、インスリンの分泌量が不足したり、インスリンがうまく作用しなかったりするため、血糖値が下がりにくくなります。血液中の糖が過剰になると、糖の濃度を薄め、尿中に糖を排出しようとします。尿として体内の水分が失われ、脱水症状を引き起こし、口渇感につながります。

口渇を感じたら、水分補給を心がけましょう。高血糖の状態が続くと、脱水症状だけでなく、さまざまな合併症のリスクも高まります。医療機関を受診し、血糖値のチェックを行うことが大切です。

事前に「血糖値の正常範囲」を正しく知っておくことも重要です。以下の記事では、血糖値の基準値や、異常値が引き起こす健康リスク、そして日常生活でできる対策について詳しく解説していますので、参考にしてください。
>>血糖値の正常範囲とは?異常値が引き起こすリスクと対策を解説

腎臓でのグルコース再吸収の低下

腎臓は、血液を濾過して老廃物を尿として排出し、体に必要な栄養素などは血液中に再吸収するという重要な役割を担っています。グルコース(ブドウ糖)は腎臓で再吸収され、貴重なエネルギー源として体内で利用されます。血糖値が高い状態が続くと、腎臓の再吸収能力を超え、グルコースが尿中に排出されるようになります。

尿に糖が排出されると、浸透圧(物質が水を引き寄せる作用)により、糖と一緒に水分も排出されます。体内の水分量が減少し、口渇につながります。

多尿による体液の喪失

糖尿病の影響によって、頻尿や多尿といった症状が現れることがあります。過剰な糖が尿中に排出され、浸透圧が高まり、水分を多く引き込むためです。血糖値が高い状態が続くと、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が抑制されることがあります。抗利尿ホルモンは、腎臓での水分の再吸収を促進するホルモンです。

抗利尿ホルモンの分泌が抑制されると、尿量が増加し、体内の水分が失われ、口渇感が強まります。夜中に何度もトイレに起きる場合は多尿の可能性があります。多尿は体液喪失につながるため、放置せずに医療機関を受診しましょう。

自律神経障害による唾液分泌量の減少

糖尿病が進行すると、合併症として自律神経障害が起こることがあります。自律神経は、呼吸や消化、循環など、生命維持に不可欠な機能をコントロールしています。唾液腺の機能も、自律神経によってコントロールされています。

唾液は、口の中を潤すだけでなく、食べ物の消化を助けたり、口の中の細菌の繁殖を抑えたりするなど、重要な役割を担っています。唾液の分泌量が減ると、口の中が乾燥しやすくなり、口渇感が増強されます。

1970~2016年までの医学文献を網羅的に調査した研究において、糖尿病の患者さんの口腔乾燥症有病率は12.5~53.5%でした。糖尿病ではない方は0~30%という結果であり、糖尿病と口渇には密接な関係があると示唆されます。

口渇以外の糖尿病の代表的な症状5選

口渇以外の糖尿病の代表的な症状を5つご紹介します。

  • 頻尿・多尿
  • 体重減少
  • 倦怠感
  • 手足のしびれ
  • 傷の治りが遅い

頻尿・多尿

腎臓は血液を濾過して老廃物を尿として排出し、体に必要な栄養素は再吸収します。通常、尿中には糖はほとんど含まれていません。糖尿病になると血糖値が上昇し、腎臓で再吸収できる糖の量を超えてしまいます。過剰な糖は尿中に排出されます。

浸透圧作用により、尿に糖が排出されると一緒に水分も排出されます。尿量が増加し、頻尿や多尿につながります。夜中に何度もトイレに起きる、日中のトイレの回数が増えた、一度にたくさんの尿が出るなどの症状は、糖尿病の可能性があるため、受診することをおすすめします。

体重減少

糖尿病の影響で、体重が減少することがあります。食事で摂取した糖はインスリンの働きによって細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。糖尿病ではインスリンがうまく作用しないため、糖が細胞に取り込まれにくくなります。エネルギー不足を補うために、脂肪や筋肉を分解し、体重が減ってしまいます。

倦怠感

体がだるい、疲れやすいなどの倦怠感も、糖尿病の代表的な症状です。倦怠感の症状も体内で糖がエネルギーに変換されにくいことが原因です。細胞がエネルギー不足に陥ると、全身の倦怠感につながります。休んでも倦怠感が残り、日常生活に影響を与えることもあります。他の病気の可能性もあるため、早めに受診しましょう。

手足のしびれ

糖尿病が進行すると、高血糖によって末梢神経が障害され、手足のしびれが現れることがあります。初期症状は、チクチクとした軽いしびれですが、次第にジンジンとした痛みや感覚の麻痺に進行していく場合もあります。手足の冷えや痛み、むくみなどの症状が現れることもあります。

手足のしびれは、糖尿病神経障害のサインである可能性があります。神経障害は放置すると、重篤な合併症につながる可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。

傷の治りが遅い

糖尿病になると、免疫力が低下する傾向があり、感染症にかかりやすくなる可能性があります。高血糖が血管を傷つけ、血流を悪くするため、傷の治りを遅くすることもあります。糖尿病は初期症状に乏しい病気であり、自覚症状がないまま進行してしまうことも少なくありません。

気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。早期発見・早期治療によって、重症化や合併症のリスクを減らすことが期待できます。

糖尿病の口渇対策

糖尿病の口渇対策を以下の2つ紹介します。

  • 水分補給
  • 食生活の改善

水分補給

1つ目の口渇対策は、水分補給です。少量ずつこまめに水分を摂ることが理想的です。一度に大量の水を飲むと、体に負担がかかってしまうこともあります。のどが渇いていなくても、定期的に水分を摂る習慣をつけましょう。

1時間にコップ1杯程度(約200ml)の水を飲む、外出時には必ず水筒を持ち歩くなど、工夫してみましょう。適切な水分補給は、体内の水分バランスを維持し、脱水症状を防ぐのに役立ちます。

食生活の改善

2つ目の口渇対策は食生活の改善です。血糖値コントロールや口渇の改善に大きく関わってきます。バランスの良い食事を心がけ、糖質の摂りすぎに注意しましょう。ご飯やパン、麺類などの主食には糖質が多く含まれています。糖質の多い食事を一度にたくさん食べると、血糖値が急上昇し、口渇感を悪化させる可能性があります。

野菜や海藻、きのこ類などの食物繊維を多く含む食品は、糖質の吸収を穏やかにする効果があります。糖質を多く含む清涼飲料水やお菓子などは控えめにし、果物も摂りすぎには注意が必要です。果物には果糖が含まれており、摂りすぎると血糖値を上昇させる可能性があります。

食生活の見直しをはじめ、日常的に取り入れられる工夫を知っておくことが血糖値管理の鍵となります。以下の記事では、血糖値を下げるために効果が期待できる7つの生活習慣改善法について、具体的に解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント

糖尿病の治療法

糖尿病の治療法として、以下の3つを解説します。

  • 薬物療法
  • インスリン療法
  • 運動療法

詳細な治療については、医師の診断により異なります。

薬物療法

糖尿病の治療において、薬物療法は重要な役割を担っています。薬物療法は、血糖値をコントロールすることで、口渇をはじめとする糖尿病のさまざまな症状を改善するのに役立ちます。医師の指示に従って、適切な薬を服用することが大切です。

糖尿病の薬にはさまざまな種類があり、患者さんの病状や生活習慣に合わせて最適な薬が選択されます。主な薬剤は以下のとおりです。

  • スルホニルウレア剤
  • ビグアナイド剤
  • DPP-4阻害薬
  • SGLT2阻害薬

それぞれ作用機序が異なり、症状や病状に合わせた薬が処方されるため、自己判断で薬の服用を中断したり、量を変更したりすることは危険です。医師の指示に従いましょう。

インスリン療法

インスリン療法は、体内でインスリンが不足している場合に行われる治療法です。インスリンは血糖値を下げるホルモンであり、インスリン注射によって体内にインスリンを補充することで、血糖値をコントロールします。インスリン療法は、血糖値のコントロールが難しい場合に、特に有効な治療法です。

1型糖尿病の患者さんや、経口血糖降下薬で十分な効果が得られない2型糖尿病の患者さんなどで用いられます。インスリン製剤には、超速効型や速効型、中間型、持効型、混合型などさまざまな種類があり、作用時間や持続時間が異なります。医師の指示に従って、適切な量とタイミングでインスリン注射を行うことが大切です。

自己判断で注射量や注射時間を変更することは、低血糖などの危険な状態を招く可能性があるため、避けてください。低血糖症状(冷や汗や動悸、手の震えなど)が現れた場合は、すぐに糖分を摂取し、医師に相談してください。

低血糖と似たような注意が必要な状態として「血糖値スパイク」があります。血糖値スパイクは食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象で、放置すると動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めるとされています。以下の記事では、血糖値スパイクの詳しい症状や健康リスク、予防するための具体的な対策について解説していますので、あわせてご覧ください。
>>血糖値スパイクの症状と健康リスク!知っておくべき対策法

運動療法

適度な運動は、血糖値を下げ、インスリンの効果を高めることが期待されます。ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなど、無理なく続けられる運動を見つけ、習慣的に行うようにしましょう。

1回30分程度の有酸素運動を、週に3回以上行うことが推奨されていますが、運動を始める前には必ず医師に相談してください。運動は、血糖値のコントロールだけでなく、ストレス軽減や生活習慣病の予防にも効果が期待されます。糖尿病の症状改善や健康維持のためにも、積極的に体を動かす習慣を身につけることが大切です。

激しい運動はかえって血糖値を上昇させる可能性もあるため、ご自身の体力に合わせた適切な強度の運動を選択することが重要です。

まとめ

口渇は、高血糖による脱水症状や腎臓でのグルコース再吸収の低下、多尿による体液喪失、自律神経障害による唾液分泌量の減少など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。口渇以外にも、頻尿や多尿、体重減少、倦怠感、手足のしびれ、傷の治りが遅いなど、糖尿病にはさまざまな症状が現れます。

糖尿病の口渇対策としては、こまめな水分補給、バランスの良い食事、医師の指示に従った薬物療法やインスリン療法などが有効です。適度な運動も血糖値コントロールや症状改善に役立ちます。

糖尿病の代表的な症状に気づいたら、放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。口渇などの症状を少しでも和らげ、快適に過ごすために、本記事で紹介した情報が役立てば幸いです。

以下の記事では、糖尿病による心血管系の合併症とその予防策について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
>>糖尿病による合併症リスク|心臓と血管に与える影響と対策方法

参考文献

López-Pintor RM, Casañas E, González-Serrano J, Serrano J, Ramírez L, de Arriba L, Hernández G. Xerostomia, Hyposalivation, and Salivary Flow in Diabetes Patients. J Diabetes Res, 2016, 2016, , p.4372852

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