現代社会において、糖尿病は他人事ではありません。女性は、月経や妊娠、更年期など、ホルモンバランスの変化により、糖尿病の症状に気づきにくい場合があります。月経不順や慢性的な疲労感は、糖尿病のサインかもしれません。この記事では、糖尿病について、以下の内容を解説します。
糖尿病は早期に発見し、適切な治療を受けることで、重篤な合併症の予防につながる可能性があります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
糖尿病は、大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。1型糖尿病は、膵臓からインスリンというホルモンがほとんど分泌されなくなる病気です。2型糖尿病は、遺伝的要因や生活習慣などが原因でインスリンの働きが悪くなったり、分泌量が不足したりする病気です。
思春期や妊娠期、更年期などのホルモン分泌の変化は、インスリンの働きを低下させたり、血糖値を上昇させたりする可能性があります。女性特有の糖尿病の症状は以下のとおりです。
糖尿病になると血糖値のコントロールが乱れ、ホルモンバランスに影響を及ぼすことがあります。高血糖の状態が続くと、ホルモンの調整を担う視床下部(ししょうかぶ)の働きが低下し、卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスが崩れる場合があります。
健康な状態では、月経周期は約25〜38日、月経期間は約3〜7日です。一方で、糖尿病になると、月経周期が25日未満や39日以上になったり、月経期間や経血量が異常になったりする月経不順が起こることがあります。
月経が3か月以上来ない場合は無月経と診断されます。初経前の思春期や授乳期以外に無月経の状態が続く場合は、他の病気が原因の可能性があるため注意が必要です。月経不順や無月経が続く場合は、早めに婦人科や糖尿病内科を受診してください。
妊娠中は、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンの働きが低下し、血糖値が上がりやすくなるため、妊娠糖尿病を発症することがあります。多くの場合、出産後に血糖値は正常に戻りますが、妊娠糖尿病になると、将来的に2型糖尿病になるリスクが約7倍に高まるという研究もあります。
妊娠糖尿病は胎児にも影響を及ぼし、胎児が大きくなりすぎることによる難産や早産、出生後の低血糖などのリスクがあります。妊娠中は、医師の指示に従って定期的に血糖値の検査を受け、適切な血糖コントロールを行うことが大切です。
低血糖と似たような注意が必要な状態として「血糖値スパイク」があります。血糖値スパイクは食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象で、放置すると動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めるとされています。以下の記事では、血糖値スパイクの詳しい症状や健康リスク、予防するための具体的な対策について解説していますので、あわせてご覧ください。
>>血糖値スパイクの症状と健康リスク!知っておくべき対策法
更年期とは、閉経を挟んだ前後約10年の期間を指します。更年期は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に減少するため、以下の不調が現れることがあります。
更年期の症状は、糖尿病の初期症状と似ています。更年期障害と糖尿病の症状が重なると、どちらの病気による症状なのかがわかりにくく、糖尿病の診断が遅れてしまう可能性があります。更年期にさしかかったら、定期的に健康診断を受けて、体の状態を把握することが大切です。
カンジダ膣炎は、カンジダというカビの一種が膣内で異常に増殖することで起こる感染症です。かゆみやおりものの増加、外陰部のヒリヒリ感などの症状が現れます。膀胱炎は、細菌が膀胱に入り込んで炎症を起こす病気です。残尿感や頻尿、排尿時の痛み、血尿などの症状が現れます。
糖尿病になると、血糖値が高い状態が続くため、体の免疫機能が低下します。細菌やカビが繁殖しやすくなることで、カンジダ膣炎や膀胱炎を繰り返してしまう可能性があります。
疲れやすさや倦怠感は、糖尿病の代表的な症状の一つです。血糖値が高い状態が続くと、ブドウ糖がエネルギーとしてうまく利用されず、体に必要なエネルギーが不足するため、疲れやすくなります。女性は、月経周期や妊娠、更年期など、ホルモンの変動が大きいため、疲れを感じやすい傾向があります。
糖尿病とホルモンの変動が重なると、より強い倦怠感が現れることがあります。普段より疲労が強かったり、長引いたりする場合は、糖尿病の可能性を考慮して早めに医療機関を受診しましょう。
糖尿病は、初期症状がわかりにくく、自覚症状がないまま病気が進行してしまうケースが少なくありません。糖尿病の初期症状について、以下の内容を解説します。
日常生活で体の変化に気を配ることは、糖尿病の早期発見に欠かせません。早期に適切な治療を開始することで、重篤な合併症の予防につながる可能性が高まります。
喉の渇きと頻尿は、糖尿病の代表的な初期症状の一つです。血糖値が高い状態が続くと、腎臓が血液中の過剰な糖を尿とともに排出しようとします。体内の水分が失われることで、喉が渇いたり、トイレに行く回数が増えたりします。特に夜間の頻尿に悩まされる場合は、糖尿病の可能性があるため受診を検討しましょう。
健康な状態では、夜間にトイレに起きる回数は0〜1回程度です。糖尿病の場合、2回以上トイレに起きることがあります。一度に大量の尿が出たり、尿に勢いがなかったりする場合もあります。喉の渇きや頻尿の症状が続く場合は、医療機関を受診してください。
バングラデシュの研究では、2型糖尿病の患者さんの7割以上がメタボリックシンドロームを併発しており、特に高齢者と女性で割合が高いことが報告されています。メタボリックシンドロームとは、以下の症状のうち、二つ以上に当てはまる状態を指します。
メタボリックシンドロームは糖尿病のリスクを高めるため、肥満や高血圧、脂質異常に注意することが重要です。
特に「喉の渇き」は、糖尿病に特徴的な症状の一つです。単なる水分不足ではなく、体内の血糖の状態と深く関係しています。以下の記事では、糖尿病による口渇の仕組みや原因、適切な対処法について詳しく解説しています。
>>糖尿病の口渇はなぜ起こる?症状の原因と対処法を徹底解説
体重の増減は、糖尿病の初期症状として現れることがあります。1型糖尿病の場合、インスリンがほとんど分泌されなくなるため、糖の代わりに脂肪や筋肉を分解してエネルギーを生成します。数週間〜数か月で、体重が数キロ単位で減少することも少なくありません。
2型糖尿病の場合、初期には体重が増加する傾向があります。インスリンの作用が低下し、血糖値が下がりにくくなることで、食欲が増進するためです。治療開始後に処方される薬の副作用として、体重が増加するケースもあります。
短期間での急激な増減には注意が必要です。食事量や運動量に大きな変化がないにもかかわらず、体重が急激に変動する場合は、医療機関への受診を検討しましょう。
手足のしびれは、糖尿病の合併症「糖尿病性神経障害」の初期症状である可能性があります。高血糖の状態が続くと末梢神経(手足などの体の末端部分の神経)が傷つき、手足のしびれや痛み、感覚の鈍化などの症状が現れます。
初期は軽度ですが、放置すると歩行困難や足の潰瘍に進行する可能性があるため注意が必要です。特に、手袋や靴下を履いているような感覚のしびれや、左右対称に症状が現れる場合は、糖尿病性神経障害の可能性があります。
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)や頸椎症、腰椎椎間板ヘルニアなどが原因で、手足のしびれが生じている可能性もあります。手足のしびれが続く場合は、医療機関を受診し、適切な検査を受けてください。
以下の記事では、糖尿病による心血管系の合併症とその予防策について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
>>糖尿病による合併症リスク|心臓と血管に与える影響と対策方法
糖尿病では、血糖値の異常で食欲に変化が生じることがあります。血糖値が高い状態では、細胞に十分なエネルギーが届かず、体が飢餓状態と錯覚して食欲が増す場合があります。血糖値が低い状態では、エネルギー不足により食欲が減退するケースも見られます。糖尿病治療薬の副作用も食欲に影響を及ぼす要因です。
ストレスや他の病気でも食欲の変化は起こりえますが、糖尿病の他の初期症状と同時に現れる場合は注意が必要です。
繰り返す皮膚のかゆみや感染症は、糖尿病の初期症状の一つです。高血糖の状態が続くと、皮膚のバリア機能が低下し、細菌や真菌などの感染症にかかりやすくなります。特に、湿気がこもりやすい陰部や足の指の間などに感染症が発生しやすいです。
皮膚のかゆみや感染症は、アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎、虫刺されなどのアレルギー反応、水虫などの真菌感染症が原因の可能性もあります。皮膚のかゆみや感染症が気になる場合は、皮膚科や糖尿病内科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
糖尿病では、以下の検査や診断を行います。
早期発見・早期治療のために、まずは検査と診断を受けることが大切です。気になる症状があれば、早めに医療機関に相談してください。
血糖値検査は、糖尿病の基本的な検査です。血糖値検査には、空腹時血糖値検査とHbA1c検査の2種類があります。空腹時血糖値検査は、朝、何も食べていない状態で血糖値を測定します。空腹時血糖値の基準値は、以下のとおりです。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)検査では、過去1〜2か月の平均的な血糖値を調べます。HbA1cの基準値は、以下のとおりです。
HbA1cは、食後すぐの血糖値に左右されにくいという特徴があります。日々の血糖値の変動に関わらず、長期的な血糖コントロールの状態を把握できます。HbA1cは、食生活や運動習慣などの生活習慣が血糖値にどのように影響しているかを評価する重要な指標です。
尿検査では、尿に糖やケトン体が含まれているかを調べます。血糖値が異常に高くなると、腎臓で糖を再吸収しきれず、尿に糖が含まれることがあります。ケトン体は、体内の脂肪が分解されてエネルギーとして使われる際に生じる物質です。
インスリンが不足すると、体は糖をうまく利用できず、代わりに脂肪を分解するため、ケトン体が過剰に産生されて尿に現れる場合があります。尿検査でケトン体が陽性となった場合は、糖尿病が悪化している可能性があるため、早急な治療が必要です。
ブドウ糖負荷試験(75g経口ブドウ糖負荷試験)は、ブドウ糖液を飲んで、一定時間ごとに血糖値を測定する検査です。75gのブドウ糖液を飲み、30分後と1時間後、2時間後の血糖値を測定します。
空腹時血糖値やHbA1cだけでは糖尿病の診断が難しい場合や、妊娠糖尿病の診断に用いられます。2時間後の血糖値が200mg/dL以上の場合、糖尿病と診断されます。
糖尿病が疑われる場合や健康診断で血糖値が高いと指摘された場合は、内分泌内科や糖尿病専門医を受診しましょう。糖尿病は、適切な治療を行わないと、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。早期発見・早期治療のために、早めに医療機関に相談することが大切です。
糖尿病は、適切な治療と生活習慣の改善で、合併症を予防し、健康な生活を維持できる可能性がある病気です。糖尿病の合併症を防ぐ生活習慣について、以下のポイントに注意しましょう。
糖尿病の食事療法では、糖質の摂取量を適切にコントロールし、血糖値の急激な上昇を抑えることが重要です。血糖値の上昇を緩やかにするために、以下の点に注意しましょう。
糖質は、ご飯やパン、麺類などの主食だけでなく、お菓子や清涼飲料水、果物などにも多く含まれています。1日に必要な糖質量は、年齢や活動量、病状で異なるため、医師や栄養士に相談し、自分に合った摂取量を把握することが大切です。
食物繊維は、糖の吸収を遅らせる働きがあるとされており、食後の血糖値の上昇を抑える効果が期待できます。食物繊維は、ゴボウやニンジン、キャベツ、ブロッコリーなどの野菜に多く含まれています。厚生労働省の推奨では、野菜の目標摂取量は、1日あたり350g以上とされています。
鉄分は、赤血球を作るために必要な栄養素で、不足すると貧血を引き起こす可能性があります。鉄分は、レバーやひじき、赤身の肉などに多く含まれています。
葉酸は、細胞の分裂や成長に不可欠な栄養素で、妊娠を希望する女性にとって重要です。胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らす働きが期待できます。葉酸は、ほうれん草やブロッコリー、納豆などに多く含まれています。
アメリカの研究では、玄米を多く摂取したり、運動を増やしたりすることで、HbA1cが低下したと報告されました。糖尿病の予防や血糖コントロールにおいて、栄養バランスに配慮した食事をすることが大切です。
適度な運動は、血糖値のコントロールだけでなく、糖尿病の合併症予防の効果が期待できます。運動をすると、インスリン感受性が高まり、血糖値が下がりやすくなる効果が期待できます。以下の運動がおすすめです。
有酸素運動は、ウォーキングやジョギング、水泳など、比較的長時間続けられる運動です。脂肪燃焼効果が高く、心肺機能の向上にもつながります。筋力トレーニングは、筋肉量を増やすことで基礎代謝を向上させ、血糖値を安定させる効果があります。
運動の種類や強度、頻度は、個々の体力や健康状態に合わせて調整することが必要です。週に3回以上、30分程度のウォーキングを行うなどの具体的な目標を設定することで、継続しやすくなります。
事前に「血糖値の正常範囲」を正しく知っておくことも重要です。以下の記事では、血糖値の基準値や、異常値が引き起こす健康リスク、そして日常生活でできる対策について詳しく解説していますので、参考にしてください。
>>血糖値の正常範囲とは?異常値が引き起こすリスクと対策を解説
喫煙は、血管を収縮させて血流を悪化させるため、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの糖尿病の合併症リスクを高めます。過度の飲酒は、肝臓への負担を増やすため、血糖値のコントロールが難しくなります。
ヨーロッパの研究では、心不全のリスクがある方や、心不全予備軍の方は、週に70g以上のアルコールを摂取すると、心不全の症状悪化につながる可能性が高くなるという結果が報告されています。禁煙と節酒は、糖尿病の合併症予防だけでなく、健康寿命を延ばすためにも重要です。
ストレスは、血糖値を上昇させるホルモンの分泌を促し、糖尿病の悪化につながる可能性があります。深呼吸や瞑想、軽い運動など、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
質の良い睡眠は、体の機能を回復させて免疫力を高めるだけでなく、血糖値のコントロールにも良い効果が期待できます。睡眠不足は、インスリン抵抗性を高め、血糖値を上昇させる原因となる可能性があります。以下のポイントに注意し、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
定期的な健康診断で血糖値やHbA1cなどの検査を受けることが、早期発見・早期治療につながります。早期に発見し、適切な治療を開始することで、重篤な合併症の予防につながる可能性が高まります。健康診断の結果で異常値が見つかった場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。
健康診断では糖尿病の兆候を早期に発見できるチャンスでもあります。以下の記事では、糖尿病に関連する健康診断の重要な数値や、見落としやすいポイントについて詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
>>糖尿病の健康診断で見るべき数値!早期発見のポイント
自宅で血糖値を測定するセルフチェックを行うことで、日々の血糖値の変動を把握し、食事や運動療法の効果を確認できます。血糖値の測定は、食前や食後、就寝前など、医師の指示に従って適切なタイミングで行いましょう。
測定結果は記録しておくことで、医師に相談する際に役立ちます。自身の血糖値の変動を把握することで、より効果的な血糖コントロールにつながります。
女性は、ホルモンの変動により体調にさまざまな影響が出るため、糖尿病の症状に気づきにくいことがあります。月経不順や無月経、繰り返すカンジダ膣炎や膀胱炎、疲労感、体重の急激な増減などは、糖尿病の初期症状の可能性があります。
糖尿病は、進行するまで自覚症状に乏しい病気です。放置すると合併症などのリスクが高まるため、気になる症状がある場合や、健康診断で血糖値の異常を指摘された場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
以下の記事では、血糖値を下げるために効果が期待できる生活習慣の改善ポイントを7つに分けて詳しく紹介していますので、実践の参考にしてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
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