健康診断で血糖値が高いと指摘され、喉が渇くなどの症状があると、糖尿病を疑って不安になる方も多いです。糖尿病患者数は増加し、多くの日本人が罹患する生活習慣病の一つとされています。糖尿病は自覚症状がないまま進行しているケースも多い恐ろしい病気です。
この記事では、糖尿病の診断基準や検査方法、境界型との違い、そして改善策まで、わかりやすく解説します。ご自身の健康状態を知るためにも、ぜひ読み進めてみてください。
大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
糖尿病の診断は、さまざまな検査結果を組み合わせて総合的に判断します。糖尿病の診断に使われる以下の4つの基準を解説します。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)とは、過去1~2か月の平均的な血糖値の状態を表す数値です。血液中には赤血球という細胞があり、赤血球にはヘモグロビンというタンパク質が含まれています。ヘモグロビンにブドウ糖(血糖)がくっついたものがHbA1cです。
HbA1c値が高いということは、多くのブドウ糖がヘモグロビンにくっついている状態で、血糖コントロールの状態が悪いことを示します。日本糖尿病学会のガイドラインにもとづき、HbA1cが6.5%以上の場合、糖尿病型と診断されます。
6.5%未満であっても、6.0~6.4%の場合など血糖値が高い状態が続くと、将来的に糖尿病を発症するリスクが高まります。HbA1cが正常範囲内であっても油断せず、食生活や運動習慣など、生活習慣の見直しを検討することが大切です。
空腹時血糖値とは、8時間以上何も食べていない状態で測定した血糖値のことです。空腹時血糖値はあくまで診断基準の一つであり、他の検査結果と合わせて総合的に判断します。空腹時血糖値が126mg/dL以上の場合は、糖尿病型と診断されます。
100mg/dL以上126mg/dL未満の場合は、将来的に糖尿病を発症するリスクが高い状態です。生活習慣の改善を積極的に行うことが推奨されます。
随時血糖値とは、食事の時間にかかわらずに測定した血糖値のことです。血糖値が200mg/dL以上の場合、糖尿病が強く疑われます。特に、喉が異常に渇く、トイレが近い、体重が減少するなどの症状がある場合は、糖尿病型と診断されることがあります。
高血糖の状態が続くと、体内の水分バランスが崩れ、脱水症状を引き起こすため、喉が渇いたり、トイレが近くなったりします。細胞がエネルギー源としてブドウ糖を利用できなくなるため、エネルギー不足になり、体重が減少することもあります。
特に「喉の渇き」は、糖尿病に特徴的な症状の一つです。単なる水分不足ではなく、体内の血糖の状態と深く関係しています。以下の記事では、糖尿病による口渇の仕組みや原因、適切な対処法について詳しく解説しています。
>>糖尿病の口渇はなぜ起こる?症状の原因と対処法を徹底解説
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、ブドウ糖液を飲んで、血糖値がどのように変化するかを調べる検査です。空腹時血糖値やHbA1c値だけでは判断が難しい場合に行います。経口ブドウ糖負荷試験を行うことで、体内でブドウ糖がどのように処理されているかを詳しく調べることができます。
インスリンの分泌能力や、細胞がブドウ糖を取り込む能力を評価することで、糖尿病の早期発見につながります。
境界型糖尿病(糖尿病予備軍)とは、糖尿病と診断されるほど血糖値が高くないものの、正常範囲よりも高い状態です。将来的に糖尿病を発症するリスクが高い状態でもあります。具体的な診断基準は以下のとおりです。
境界型糖尿病の場合、自覚症状はほとんどなく、健康診断などで指摘されるまで気づかないケースが多いです。適切な生活習慣の改善に取り組むことで、血糖値を正常範囲に近づけ、糖尿病の発症リスクを低減できる可能性があります。
健康診断では糖尿病の兆候を早期に発見できるチャンスでもあります。以下の記事では、糖尿病に関連する健康診断の重要な数値や、見落としやすいポイントについて詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
>>糖尿病の健康診断で見るべき数値!早期発見のポイント
糖尿病は生活習慣の改善によって、血糖コントロールを良好に保つことが期待できる病気です。下記の3つを意識し、日々の生活に取り入れましょう。
食生活の改善は、糖尿病治療の基本です。バランスの良い食事を摂ることで、血糖値の急激な上昇を抑え、良好な血糖コントロールを目指します。特に重要なのは、野菜やきのこ、海藻を積極的に摂ることです。野菜やきのこ、海藻類には、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維は、糖の吸収を穏やかにし、食後の血糖値の急上昇を抑える効果や腸内環境を整える効果も期待できます。炭水化物やたんぱく質、脂質のバランスも意識しましょう。炭水化物は、摂りすぎると血糖値が上昇しやすくなります。ご飯であれば、お茶碗軽く1杯程度を目安にしてみてください。
たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品などに多く含まれ、筋肉や臓器を作るために必要な栄養素です。脂質は、油やバター、ナッツ類などに含まれ、エネルギー源となるほか、ホルモンの材料にもなります。不足したり、過剰に摂取したりすることなく、バランス良く摂ることが重要です。
厚生労働省が推奨する「日本人の食事摂取基準2025年版」を参考に、1日3食、バランスの良い食事を心がけてください。
運動療法も、糖尿病治療において重要です。適度な運動は、血糖値を下げるだけでなく、血圧やコレステロール値の改善、ストレス軽減、精神的な健康維持にもつながります。有酸素運動は、持続することで筋肉が糖を取り込み、血糖値を下げるインスリン感受性を高める効果が期待できます。
ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどを週に3回以上、1回あたり30分程度を目安に行いましょう。自分の体力や体調に合わせて、運動の種類や強度、時間などを調整し、継続しましょう。ご自身の体の声を聞き、無理なく続けられる範囲で運動を継続することが重要です。
以下の記事では、血糖値を安定させるために役立つ7つの生活習慣の改善方法を具体的にご紹介しています。ぜひ参考にして、ご自身の健康管理にお役立てください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
ストレスと上手に向き合い、軽減する方法を見つけることは、糖尿病の治療にとって重要です。ストレスは、血糖値を上昇させるホルモンであるコルチゾールを分泌させるため、血糖コントロールを悪化させる原因の一つです。ストレスを軽減するためのおすすめの方法は下記のとおりです。
自分に合った方法を見つけることが大切です。どうしてもストレスが解消されない場合は、一人で抱え込まずに、家族や友人、医療従事者などに相談することも考えてみてください。
糖尿病の検査方法の種類や、それぞれの検査の流れを以下の項目に沿って解説します。
血液検査では、主に下記の3つを測定します。
上記の検査は、糖尿病の診断基準として用いられるだけでなく、糖尿病の治療効果の判定や、合併症の予防にも役立ちます。
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、ブドウ糖を飲んで血糖値がどのように変化するかを調べる検査です。糖尿病の早期発見に役立ち、空腹時血糖値やHbA1c値だけでは判断が難しい場合に行います。検査の流れは以下のとおりです。
ブドウ糖を飲んだ後の血糖値の上昇具合や下降具合を見ることで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きなどを調べることができます。
尿検査では、尿の中に糖が混ざっているかどうかを調べます。健康な人の尿には糖は含まれていません。尿に糖が含まれている場合は、血糖値が高い可能性があります。血液検査では、血糖値が160~180mg/dLを超えると尿糖が出現します。
腎臓での糖の再吸収能力を超えたため、尿中に糖が漏れ出てしまうことが原因です。血糖値が高くなってからでないと尿糖は出ないため、糖尿病の確定診断には血液検査が用いられます。尿検査は糖尿病の補助的な検査として位置づけられます。
血糖値が高い状態が続くと、身体にはさまざまなサインや不調が現れます。以下の記事では、高血糖の症状や見逃してはいけない危険信号、早期発見のためのチェックポイントを詳しく解説しています。
>>高血糖の症状と危険信号を解説!早期発見のためのポイント
糖尿病の検査は、ほとんどの医療機関で対応しており、皆さんの身近にある病院やクリニックで受けることができます。費用は健康保険が適用されます。受診の際には、健康保険証を忘れずにお持ちください。3割負担の方ですと、初診料や再診料を含めて、HbA1cや血糖値の検査で3,000円以内で収まることが多いです。
経口ブドウ糖負荷試験を行う場合は、検査に時間がかかるため、費用も5,000円程度になる場合があります。高齢者の場合は、年齢や所得に応じて自己負担割合が変わるため、負担額はさらに少なくなる可能性があります。1割負担の方であれば、上記費用の約3分の1の負担で済みます。自治体によっては、糖尿病検診などの費用を助成する制度を設けている場合もあります。お住まいの地域の情報を調べてみてください。
糖尿病と診断された後の一般的な治療の流れとして、以下の内容を解説します。
糖尿病の治療は、主に以下の3つがあります。
患者さんの状態に合わせて、単独または組み合わせて治療が行われます。食事療法は、糖尿病治療の基本です。1日に必要なカロリーを計算し、栄養バランスの良い食事を摂ることが重要です。運動療法は、糖尿病治療の柱となるものです。ご自身が無理なく続けられる範囲で運動を継続することが重要です。
薬物療法は、食事療法や運動療法で血糖コントロールが十分でない場合に、血糖値を下げるために用いられます。血糖値を下げるための飲み薬や、インスリン注射などがあります。
インスリン注射は、インスリンというホルモンを体内に補充する治療法です。インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませ、血糖値を下げる働きがあります。糖尿病の合併症リスクを低減するためにも、薬物療法による適切な治療が必要です。
糖尿病の重症度は、血糖値やHbA1cの値、そして合併症の有無などによって総合的に判断されます。合併症には、代表的な以下の3つがあります。
放置すると失明や人工透析が必要になるなど、深刻な事態を引き起こす可能性があります。合併症は、高血糖の状態が続くことで、全身の血管が傷つき、さまざまな臓器に障害が生じることで発症します。
糖尿病は動脈硬化のリスクを高めるため、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症にも注意が必要です。動脈硬化は、血管の壁が厚く硬くなることで、血液の流れが悪くなる状態です。糖尿病では、高血糖によって血管が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行しやすくなります。
糖尿病と診断された後は、定期的な検査を受けることが重要です。血糖値やHbA1cの値をモニタリングすることで、治療の効果や病状の進行を確認できます。一般的に下記の検査が行われます。
血液検査では、血糖値やHbA1cの他に、コレステロールや中性脂肪などの値もチェックします。尿検査では、尿中に糖やタンパクが出ていないかを確認します。
眼底検査は、糖尿病網膜症の有無を確認するための検査です。眼の奥にある網膜は、光を受け取って脳に映像として送る役割を担っています。高血糖が続くと、網膜の血管が傷つき、出血やむくみが生じ、視力低下や失明につながる可能性があります。
神経検査では、糖尿病神経障害の有無を確認します。高血糖が続くと、神経が傷つき、手足のしびれや痛み、自律神経の障害による便秘や下痢などを引き起こす可能性があります。
定期検査の頻度は、患者さんの病状によって異なりますが、通常は3〜6か月に1回程度です。医師の指示に従って、きちんと検査を受けましょう。検査結果に疑問があれば、医師へ相談することが大切です。
当院では、糖尿病の基礎知識から検査・治療に関する情報まで、包括的にご案内しています。以下の記事では、糖尿病の全体像をわかりやすく解説していますので、初めての方やご家族の方もぜひご覧ください。
>>糖尿病について
糖尿病は、初期段階では自覚症状が出にくいため、健康診断などで早期発見することが重要です。診断基準になる空腹時血糖値やHbA1c値、経口ブドウ糖負荷試験、そして検査費用についても理解しておきましょう。
糖尿病と診断されたら、食事療法や運動療法、ストレス管理が重要です。自分に合った方法で、血糖値コントロールを良好に保ち、合併症を予防し、健康な生活を目指しましょう。
とはいえ、診断される前に「もしかして…?」と気づくことができれば、より早く対処することができます。以下の記事では、糖尿病の初期症状として現れやすいサインや、セルフチェックのポイントを詳しく紹介しています。
>>もしかして糖尿病?セルフチェックできる初期症状と注意すべき兆候
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