心臓がドキッとし、脈が飛ぶような感覚… それはもしかしたら「期外収縮」かもしれません。健康な人にも起こる期外収縮は、心臓が本来のリズムとは違うタイミングで拍動する不整脈の一種です。
「最近、胸がドキドキする」「脈が飛ぶ感じがする」と感じたことはありませんか?
実は20代から高齢者まで、多くの人が経験する身近な症状なのです。健康診断で指摘された方もいるのではないでしょうか。
この記事では期外収縮の定義や種類、そしてその原因となる生活習慣や環境要因を詳しく解説します。ストレスやカフェイン、アルコール、睡眠不足などが期外収縮を引き起こす可能性があることをご存知でしたか? さらに心電図やホルター心電図といった検査方法、薬物療法やカテーテルアブレーションといった治療法についても循環器専門医が分かりやすく説明します。
期外収縮は必ずしも治療が必要なものではありませんが、症状の頻度や種類によっては精密検査が必要となる場合もあります。 あなたの心臓の鼓動に少しでも不安を感じているなら、この記事が安心への第一歩となるでしょう。 心拍の乱れに隠された原因と、その対策を一緒に学び健康な毎日を取り戻しましょう。
心臓は、規則正しくドクン、ドクンと脈打っています。まるで、精密なメトロノームが正確なリズムを刻んでいるかのようです。しかし、このリズムが乱れることがあります。まるで、メトロノームの針が一瞬、ジャンプしたり遅れたりするようなものです。この不規則な鼓動が「期外収縮」です。
期外収縮は健康な方にも起こりうるため、必ずしも病気を示すサインではありません。しかし、その頻度や症状によっては、背景に心臓の病気が隠れている可能性も否定できませんので、注意が必要です。まずは期外収縮について、一緒に理解を深めていきましょう。
期外収縮とは、心臓が本来のリズムとは異なるタイミングで脈打つ不整脈の一種です。多くの方は「脈が飛ぶ」「脈が乱れる」「胸がドキッとする」といった症状で自覚します。
心臓は、電気信号によって規則正しく収縮と拡張を繰り返しています。この電気信号が何らかの原因で本来とは異なる場所から発生したり、通常とは異なる経路で伝わったりすると期外収縮が起こります。
例えるならオーケストラの演奏中に、指揮者とは別に誰かが勝手に楽器を鳴らしてしまうようなものです。本来のリズムが一瞬乱れて、ハーモニーが崩れてしまいます。期外収縮も同様に心臓の中で本来のリズムとは異なるタイミングで収縮が起こり、脈が飛んだりドキドキしたりする感覚が生じるのです。
私の外来でも、健康診断で期外収縮を指摘されて来院される方が多くいらっしゃいます。20代の若い方からご高齢の方まで、年齢層も様々です。健康診断で指摘された期外収縮の回数が少なければ、経過観察となるケースが多いです。
期外収縮は健康な方でも、疲労やストレス、睡眠不足、カフェインやアルコールの過剰摂取などによって起こることがあります。また、加齢とともに増加する傾向があります。
期外収縮には、主に発生場所によって「心房性期外収縮」と「心室性期外収縮」の2種類に分けられます。期外収縮の種類によって、原因や治療法、危険度などが異なります。心臓をマンションに例えると心房は上の階、心室は下の階に相当します。
特徴 | 説明 | 具体例 |
発生場所 | 心房(心臓の上の部屋) | マンションの上階でトラブル発生 |
症状 | 軽度。自覚症状がない場合も多い。 | 脈が一瞬飛ぶ程度で気づかないことも |
原因 | ストレス、疲労、カフェイン、アルコールなど | 徹夜明けに動悸がする |
危険性 | 一般的に低い。ただし、頻度が多い場合は要注意。 | 年に一度の健康診断で数回指摘される程度なら心配ない |
特徴 | 説明 | 具体例 |
発生場所 | 心室(心臓の下の部屋) | マンションの下階でトラブル発生 |
症状 | 動悸、胸の痛み、息切れなど。症状が強い場合もある。 | ドキドキして立っていられない、胸が締め付けられる |
原因 | 心筋梗塞、弁膜症、心筋症、電解質異常、薬剤の副作用、心臓の構造異常など | 過去に心筋梗塞を患っている |
危険性 | 心臓の病気によっては高い。放置すると心室細動といった重篤な不整脈に繋がることも | 早期に治療が必要なケースが多い |
心房性と心室性、どちらの期外収縮なのかは、心電図検査によって調べることができます。ご自身の期外収縮の種類が気になる方は、医療機関を受診し、検査を受けることをお勧めします。
健康な方の心臓は、規則正しく1分間に60~100回程度のペースで脈打っています。この規則正しいリズムのことを「洞調律」といいます。洞調律は、心臓の上部にある洞結節という場所から発生する電気信号によって作り出されます。まるで、オーケストラの指揮者が正確なテンポを刻むように、洞結節が心臓全体の収縮リズムをコントロールしているのです。
期外収縮は、この洞調律の中に、本来とは異なるタイミングで、余分な脈が挟まる状態です。例えるなら、電車が一定の間隔で駅に停車しているところに、突然、臨時列車が割り込んでくるようなイメージです。臨時列車(期外収縮)によって、本来のダイヤ(洞調律)が乱れてしまうのです。
期外収縮自体は、多くの方が経験するもので、一概に危険なものではありません。しかし、頻度が多かったり、症状が強かったりする場合は、心臓の病気が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。特に、胸の痛みや息切れなどの症状を伴う場合は、早急に医療機関を受診するようにしてください。
期外収縮は健康な人でも起こりうる不整脈ですが、生活習慣や環境要因が引き金となって発生するケースも少なくありません。まるで、疲れているときに風邪をひきやすいように、心臓にも負担がかかると期外収縮が起こりやすくなるのです。
私の外来にも、「最近、脈が飛ぶ感じがするんです…」と訴える患者さんが多く来院されます。詳しくお話を伺うと、生活習慣の乱れが期外収縮の引き金になっているケースがしばしば見られます。今回は、期外収縮に影響を与える生活習慣や環境要因について、具体例を交えながら詳しく解説していきます。
ストレスは、期外収縮を誘発する大きな要因の一つです。ストレスを感じると、体の中ではアドレナリンというホルモンが分泌されます。アドレナリンは心臓をドキドキさせる作用があり、期外収縮の引き金となることがあります。
例えばプレゼンテーション直前や試験開始直前など、緊張や不安がピークに達しているときに「ドキッ」としたり、脈が飛ぶ感覚を覚えることはありませんか?これは、ストレスによって期外収縮が引き起こされている可能性があります。
また期外収縮を訴えて来院される患者さんの中には、職場での人間関係の悪化や家族の介護による負担などを抱えている方が多くいらっしゃいます。このような慢性的なストレスは、自律神経のバランスを崩し心臓の働きに悪影響を及ぼす可能性があります。
自律神経は体の機能を自動的に調整する神経で、呼吸や消化、体温調節など生命維持に欠かせない働きを担っています。この自律神経のバランスが崩れると心臓の働きも乱れ期外収縮だけでなく、他の心疾患のリスクも高まることが懸念されます。
ストレスを軽減するためには、自分に合った方法を見つけることが重要です。ウォーキングやヨガなどの軽い運動、読書や音楽鑑賞などの趣味の時間、アロマテラピーや瞑想なども効果的です。また、悩みを一人で抱え込まず家族や友人、専門家などに相談することも大切です。
カフェインやアルコールも、期外収縮の誘発因子となる可能性があります。カフェインは、コーヒーや紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれる成分で、中枢神経を興奮させる作用があります。過剰に摂取すると、心臓が過剰に刺激され、期外収縮が起こりやすくなる可能性があります。
アルコールも大量に摂取すると心臓に負担がかかり、期外収縮のリスクを高める可能性があります。特に普段から期外収縮を感じやすい方は、カフェインやアルコールの摂取量を控えることをお勧めします。
例えば夕方以降にコーヒーを飲むと夜になっても興奮状態が続き、寝つきが悪くなることがあります。これはカフェインが中枢神経を刺激し、自律神経のバランスを崩していることが原因です。このような状態が続くと心臓にも負担がかかり、期外収縮のリスクが高まる可能性があります。
睡眠不足も、期外収縮のリスクを高める要因の一つです。睡眠不足になると、自律神経のバランスが崩れ、心拍リズムが乱れやすくなります。
私の経験では夜勤が多い方や、睡眠時無呼吸症候群の患者さんで期外収縮を訴える方が比較的多くいらっしゃいます。睡眠の質を改善するために寝る前にカフェインを摂らない、リラックスできる睡眠環境を作る、規則正しい睡眠時間を心がけるなど生活習慣の見直しも大切です。
また、電解質異常も期外収縮の原因となることがあります。電解質とは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルのことで体内の水分バランスや神経・筋肉の機能を維持するために不可欠な成分です。激しい運動や下痢、嘔吐などで大量の汗をかいたり、水分を失ったりすると、電解質バランスが崩れ、期外収縮が起こりやすくなる可能性があります。
水分と電解質を適切に補給するために、スポーツドリンクや経口補水液などを活用するのも有効です。特に夏場は熱中症予防のためにも、こまめな水分補給を心がけましょう。
健康診断で「期外収縮」を指摘され、不安を抱えている方もいるかもしれません。期外収縮は心臓のリズムが乱れる不整脈の一種で、健康な人にも起こりうる症状です。ドキドキとした感覚に不安を感じるのは当然のことですが、まずは落ち着いて期外収縮について正しく理解することが大切です。検査によって原因を特定し、適切な治療を受けることで、安心して日常生活を送ることができます。
私の外来にも、健康診断で期外収縮を指摘されて来院される方が多くいらっしゃいます。「期外収縮が見つかったけれど、放っておいても大丈夫でしょうか?」「何か他に検査は必要ですか?」など、様々な不安を抱えて来院されます。
期外収縮は、必ずしも治療が必要なわけではありません。しかし症状の頻度や種類によっては、精密検査が必要な場合もあります。今回は期外収縮の検査方法と治療法について、具体的な症例を交えながら詳しく解説します。
期外収縮の検査で最も重要なのは、心臓の電気的な活動を記録する「心電図」検査です。心電図検査は、まるで心臓の言葉を翻訳する機械のようです。心臓がドクン、ドクンと拍動するたびに、微弱な電気信号が流れます。心電図はこの電気信号をキャッチし、波形として記録します。この波形を解析することで、期外収縮の有無や種類、頻度などを知ることができるのです。
心電図検査は、ベッドに横になり、胸や手足に電極を装着するだけで行えます。検査時間はわずか数分、痛みもありません。私の外来では、健康診断で期外収縮を指摘された患者さんには、まず心電図検査を受けていただいています。
しかし、期外収縮は、たまにしか起こらない場合もあります。このような場合は、24時間心電図を記録する「ホルター心電図」検査が有効です。小型の記録装置を腰に装着し、日常生活を送りながら心臓の動きを記録します。まるで、小さな探偵があなたの心臓を一日中観察しているようなイメージです。これにより、日常生活の中でいつ、どのくらい期外収縮が起こっているのかを正確に把握できます。
検査方法 | 検査時間 | 特徴 |
心電図検査 | 数分間 | 簡単で迅速に検査できる。痛みもなく、体に負担が少ない。 |
ホルター心電図検査 | 24時間 | 日常生活での期外収縮の頻度や種類を正確に把握できる。 |
期外収縮の治療は症状の程度や原因、他の病気の有無などを考慮して決定されます。多くの場合、期外収縮自体は危険なものではなく、特に治療を必要としません。日常生活で気を付けることで改善する場合もあります。例えば私の外来に通院している70代の女性は心房性期外収縮を指摘されましたが、自覚症状はなく他の疾患もなかったため経過観察としています。
しかし期外収縮が頻繁に起こったり、症状が強くて日常生活に支障が出る場合は治療が必要になります。治療法には、主に「薬物療法」と「カテーテルアブレーション」があります。
薬物療法は、抗不整脈薬を服用することで、期外収縮の発生を抑える方法です。抗不整脈薬は、心臓の電気信号の伝わり方を調整し、正常なリズムを保つように働きます。心臓のリズムを指揮する指揮者が、正しいテンポを刻むようにサポートするイメージです。
カテーテルアブレーションは足の付け根などの血管から細い管(カテーテル)を挿入し、期外収縮の原因となっている心臓の異常な部分を焼灼する治療法です。
例えば40代の男性で心室性期外収縮が非常に多く、動悸や息切れなどの症状に悩まされていた患者さんがいました。薬物療法を試みましたが効果が不十分だったため、カテーテルアブレーションを行いました。その結果、期外収縮の回数は劇的に減少し症状も改善しました。
治療方法 | 特徴 | 適用 |
薬物療法 | 服薬で期外収縮を抑制する。体に負担が少ない。 | 症状が軽い場合、他の病気がある場合、高齢者などカテーテルアブレーションが難しい場合 |
カテーテルアブレーション | 期外収縮の原因を根本的に治療できる。 | 症状が重い場合、薬物療法で効果がない場合、若年者など |
期外収縮の予防には、日常生活における適切な生活習慣を心がけることが重要です。期外収縮は、ストレスや睡眠不足、カフェインの過剰摂取など様々な要因によって引き起こされる可能性があります。
これらの生活習慣を改善することで、期外収縮の発生を抑え、健康な心臓を維持することができます。健康診断で期外収縮を指摘された方は、まずは生活習慣の見直しから始めてみましょう。
期外収縮とは、心臓が本来のリズムとは異なるタイミングで鼓動する現象で「脈が飛ぶ」「胸がドキッとする」などの症状を伴うことがあります。主な種類として心房性期外収縮と心室性期外収縮があり、心室性期外収縮は重症化する場合もあるため注意が必要です。
原因としてはストレス、疲労、睡眠不足、カフェインやアルコールの過剰摂取などが挙げられ、生活習慣の乱れが大きく影響します。診断には心電図やホルター心電図検査が用いられ、治療は症状の程度によって薬物療法やカテーテルアブレーションが行われます。多くの場合、特に治療は必要ありませんが、症状が強い場合は医療機関への受診が推奨されます。
予防策としては、ストレス軽減、カフェインやアルコールの制限、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、禁煙などが有効です。期外収縮を指摘された場合は、生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関を受診することで、安心して日常生活を送ることが可能になります。
胸の痛み、胸がつまる感じなど気になる症状やお困りのことがあれば、循環器専門医の当院までご相談ください。
大石内科循環器科医院
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