ホルター心電図検査は、日常生活中の心臓の動きを24時間記録することで、見逃されがちな心臓の異常を発見するための検査です。一時的な不整脈や動悸など、通常の短時間の心電図では見つけにくい症状を詳しく調べることができます。
この検査には、主に以下のような目的があります。
仕事中や睡眠中も含めてデータを取得することで、より正確に心臓の状態を評価できます。装置は小型で、日常生活を妨げにくい設計です。不整脈や胸の違和感などが気になる方にとって、重要な情報が得られる検査です。当院でも実施していますので、どうぞ安心してご相談ください。
ここでは、ホルター心電図検査をおすすめしたい方を紹介します。
このような動悸の症状がある方は注意が必要です。多くは一時的なものですが、不整脈など病気のサインが隠れていることもあります。頻繁に起こる場合や不安がある場合は、一度ご相談ください。
このような症状が続く場合、心臓が原因の可能性があります。脈が極端に遅くなる「徐脈性不整脈」などにより、脳への血流が一時的に不足することで起こることがあります。耳や脳の異常が見つからない場合は、心臓の検査も検討が必要です。
座っているときや夜間に胸が苦しくなる、圧迫感で目が覚めるなどの症状は、安静時に起こるタイプの狭心症の可能性があります。なかでも注意が必要なのが、冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)というタイプで、心臓の血管が一時的にけいれんすることで発症します。
この狭心症は、夜間から明け方に起こりやすく、日中の診察では発見しにくいのが特徴です。胸の違和感が安静時に続く方は、早めの検査をおすすめします。
健康診断などで「不整脈の疑い」と言われたけれど、症状がなく経過観察になっている方にも、ホルター心電図は適した検査です。不整脈には治療の必要がないものもあれば、脳梗塞などにつながるものもあり、正確な評価が重要です。
不整脈の状態を把握することで、今後どう対応すべきかが明確になり、不安の軽減にもつながります。
すでに治療を受けている方にとっても、ホルター心電図は重要な検査です。「症状が落ち着いているから大丈夫」と思っていても、実際の心電図記録を確認することで、本当に治療が効果を発揮しているかを客観的に判断できます。
治療後の状態を見える化することで、安心して治療を続けられる材料になります。
ホルター心電図でわかることを4項目に分けて解説します。
ホルター心電図検査では、不整脈があるかどうかだけでなく、その種類や頻度まで詳しく把握できます。不整脈は常に出ているとは限らず、一瞬だけ現れてすぐに消えることもあるため、短時間の検査では見逃されがちです。24時間の記録により、見落としやすい不整脈も捉えることができます。
検査では、次のような不整脈の有無と発生状況を確認します。
1日に何回起きているか、どのタイミングで出現しているかなどの情報は、治療の必要性を判断するうえで重要な手がかりとなります。
ホルター心電図では、狭心症に代表される「心筋虚血」の兆候を、24時間にわたり捉えることができます。心筋虚血とは、心臓の筋肉に酸素が十分に届かなくなる状態で、胸の痛みや圧迫感を引き起こすことがあります。
このような変化は、運動中だけでなく、安静時や夜間にも起こるため、短時間の心電図では見逃されることもあります。特に以下のような兆候を見逃さないために役立ちます。
ホルター心電図では、不整脈の有無だけでなく、心拍数の変化のパターンを24時間にわたって記録・分析します。心拍数は、運動・食事・睡眠など日常の動きに応じて変化するのが正常ですが、変動が乱れていると心臓や自律神経の不調が隠れている可能性があります。
日々の生活に沿った心拍の動きを見ることで、より深く心臓の健康状態を知ることができます。
動悸や胸の痛みなどの症状の原因を調べるには、その瞬間の心電図の状態を確認することが重要です。ホルター心電図の検査中は「行動記録表」や「イベントボタン」で症状のタイミングを記録し、心電図のデータと照合して、以下のような判断が可能になります。
このような分析は、診断の精度を高め、不安の原因を明らかにするために役立ちます。
ホルター心電図検査は、取り付けから結果説明まで3つのステップで進みます。生活の中で心臓の状態を記録し、症状との関係を正確に評価するための検査です。検査の流れは以下のとおりです。
どの工程も、心臓の状態を正しく把握するために大切な役割を担っています。
ホルター心電図検査を正確かつ安全に行うためには、いくつかの注意点があります。どれも難しいものではありませんが、検査中の行動が記録の精度に影響することがあります。
以下の点に気をつけてお過ごしください。
最近は防水型の機器もありシャワーであれば可能なケースが多いですが、機械の種類に寄りますので必ず医師やスタッフの指示に従ってください。
検査中は基本的に普段通りの生活で問題ありませんが、激しい運動や大量に汗をかく活動は控えてください。これは検査の精度と安全性を保つために重要です。避けていただきたい理由は、主に以下の3つです。
ランニングや筋トレ、テニス、サウナ、岩盤浴などは避けてください。通勤や家事、軽い散歩などの日常的な動きは問題ありませんので、無理のない範囲で普段通りに過ごしましょう。
検査中は、行動や症状を「行動記録日誌」に記入していただきます。これは、心電図のデータとあなたの体調や行動を照らし合わせて解析するために重要な情報です。記録していただきたい主な項目は以下のとおりです。
症状が出た際には、装置の「イベントボタン」を押すことで、心電図上に目印が残ります。そのうえで、ボタンを押した理由や状況を日誌に記録することが、より正確な診断への大きな手がかりとなります。
ホルター心電図の記録装置は、強い磁気や電磁波の影響を受けると、記録が乱れたり、心電図にノイズが入ったりすることがあります。正確なデータを得るため、検査中は以下の機器の使用や接近を避けてください。
電気毛布やホットカーペットはノイズの原因になりやすいため、使用する場合は寝る前までに電源を切るようにしてください。スマートフォンやパソコンなどの一般的な家電は、通常通り使用可能です。ただし、記録装置に密着させるような使い方は避けましょう。
ホルター心電図は、日常生活に隠れた動悸やめまい、胸の違和感の原因を探るための大切な検査です。「心臓が原因かも」という不安は、それだけで強いストレスになります。
原因がわかれば、必要な治療へ進むことも、不要な心配から解放されることも可能です。気になる症状がある方は、どうか一人で悩まず、お気軽に当院へご相談ください。