下肢動脈エコー検査は、足の動脈を超音波で映し出し、血管の状態や血流をリアルタイムで確認する検査です。人の耳には聞こえない安全な音波(エコー)を使うため、体への負担が少なく、痛みもほとんどありません。血管の内側の様子や血液の流れを視覚的に捉えることで、足の血管の健康状態を詳しく評価できます。
当院でも実施していますので、どうぞ安心してご相談ください。
足の血管が狭くなったり、血流が悪くなっていると、さまざまな不調として現れることがあります。以下のような症状やご状況に心当たりのある方は、下肢動脈エコー検査を受けることで、原因の早期発見に役立つ可能性があります。
「歩き始めてしばらくすると、ふくらはぎや太ももが痛くなる」などの症状は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)の典型的なサインです。足の筋肉に血液が十分届かなくなったときに現れる、血流障害による症状です。
歩行によって筋肉の酸素消費量が増えるのに対し、血流が追いつかないため、筋肉が一時的に酸素不足に陥ります。結果として痛みや重だるさ、張り、つっぱり感などが出現します。
関節や筋肉の問題と似ているため、年齢や体力のせいと誤解されやすいのも特徴です。しかし、放置すると歩ける距離がどんどん短くなっていく場合もあるため、早めのチェックが大切です。
足先の冷えやしびれ、色の変化は、血流の悪化によるサインかもしれません。特に動脈硬化が原因の場合、以下のような特徴が見られます。
【冷えの特徴】
【しびれの特徴】
【色の変化】
これらは、心臓からの血液が末端まで届かず、酸素や栄養が不足している状態を示しています。さらに進行すると、安静にしていても足が痛む「安静時痛」が出ることもあり、夜間に眠れないほどの強い痛みになることもあります。些細な違和感も見逃さず、早めに血管の状態を確認することが大切です。
足の傷がなかなか治らない、皮膚が極端に乾燥しているなどの症状は、血流の低下による可能性があります。これは動脈硬化が原因で、酸素や栄養が十分に届いていない状態です。以下のような変化が見られたら注意が必要です。
【傷の治りが遅い】
【皮膚や爪の変化】
血液が届かないことで皮膚細胞が栄養不足になり、自己修復の力が弱まります。症状が進行すると壊疽(えそ)を引き起こし、足の切断に至るケースもあるため、見逃さず早めの対応が大切です。
生活習慣病のある方は、足の血管にも知らず知らずのうちにダメージが進んでいる可能性があります。糖尿病・高血圧・脂質異常症は、いずれも動脈硬化を進行させる大きなリスク因子です。
【糖尿病】
【高血圧】
【脂質異常症】
これらの病気は、足の血管にも静かに進行するため、症状が出る前の段階で血流の状態をチェックすることが大切です。たとえ足に不調がなくても、定期的な検査による予防的な管理が健康維持に役立ちます。
喫煙は動脈硬化を強力に進行させる最大のリスク要因の一つです。現在喫煙中の方はもちろん、過去に長く喫煙していた方も、血管にダメージが蓄積されている可能性があります。タバコによる血管への影響には以下のようなものがあります。
足の血管に関わる「閉塞性動脈硬化症」は、喫煙との関連が非常に強いとされています。健康管理の第一歩として、下肢動脈エコー検査で自分の血管の状態を知ることから始めてみましょう。
下肢動脈エコー検査では、超音波を使って足の血管の内部を詳しく観察することで、血液の流れや血管の状態がわかります。具体的に検査でわかる内容を解説します。
足の血管が狭くなったり詰まったりしているかどうかを確認できるのが、下肢動脈エコー検査の大きな役割です。動脈硬化の進行度や血流への影響を、リアルタイムで可視化します。
以下のような情報を確認できます。
これらを把握することで、足の冷えや痛みの原因が血管にあるかを見極め、治療や生活改善に役立てます。
血液の流れ方やスピードを調べることで、血管の狭窄や閉塞による血流異常を正確に評価できるのが、下肢動脈エコー検査の大きな特長です。特に「ドップラー法」により、目に見えない血流の異常も可視化できます。以下のような技術で詳しく観察します。
【カラードップラー法】
【パルスドップラー法】
ただ血管の形を見るだけでなく、実際の血液の流れまでチェックすることで、症状の原因や重症度を立体的に把握できます。
閉塞性動脈硬化症(ASO)は、足先への血流が不足することでさまざまな症状を引き起こします。代表的な症状は、歩くと足が痛み、休むと治る「間欠性跛行」です。
下肢動脈エコー検査では、このASOの診断に必要な情報を以下のように多角的に評価します。
これらの結果を総合的に判断することで、ASOの有無だけでなく重症度まで明らかにできます。症状が進行すると、安静時でも足が痛んだり、潰瘍・壊死へとつながることもあるため、早期発見・早期対応が重要です。
足の冷えや痛みの原因を正確に知ることは、適切な治療への第一歩です。下肢動脈エコー検査では、その症状が血管由来のものかどうかを客観的に評価できます。
以下のような症状について、血流の異常が原因かどうかを明らかにできます。
血流が原因であると判明すれば、薬・運動療法・カテーテル治療など、状態に合った治療方針を選ぶことが可能になります。長く続く足の症状がある場合は、早めのチェックがおすすめです。
下肢動脈エコー検査は、体への負担が少なく、短時間で終わる検査です。安心して受けていただけるよう、当日の流れをご紹介します。
下肢動脈エコー検査を安心して受けていただくために、検査の前後に気をつけていただきたいことをご説明します。
検査の正確性とスムーズな進行のために、ゆったりした服装での来院が理想的です。足の付け根から足先まで観察するため、着替えやすく血管を圧迫しない服装を選びましょう。以下のポイントを参考にしてください。
【おすすめの服装】
【避けたほうが良い服装】
検査中は足以外にタオルをかけるなど、プライバシーに十分配慮していますのでご安心ください。
下肢動脈エコー検査は、前日や当日の食事制限は必要ありません。体への負担も少なく、普段どおりの生活で受けられる検査です。当日スムーズに検査を受けるため、以下の点をご確認ください。
胃カメラなどのように絶食が必要な検査ではないため、気軽に受けていただけます。ご不明な点があれば事前にお気軽にご相談ください。
下肢動脈エコー検査は、基本的に痛みのない安全な検査です。ただし、まれに軽い圧迫感や不快感を覚えることがあります。検査をスムーズに進めるためにも、以下のようなときは遠慮なくお声がけください。
無理をすると体に力が入り、検査が正確に行えなくなる場合もあります。リラックスして受けていただくことが正確な診断につながります。
下肢動脈エコー検査は体への負担が少なく、検査後はすぐに通常の生活に戻れます。注射や麻酔も使用しないため、安静の必要もありません。
【検査後の過ごし方】
ゼリーは検査後に拭き取りますのでご安心ください。結果は当日または後日、医師が丁寧にご説明いたします。
足の冷え・しびれ・歩行時の痛みは、年齢のせいではなく血管からのSOSかもしれません。下肢動脈エコーは、超音波で足の血管の詰まりや血流の状態を安全に確認できる、体にやさしい検査です。
特に、糖尿病・高血圧・脂質異常症のある方や喫煙歴のある方は、動脈硬化が進行している可能性があります。自覚症状がなくても、一度血管の状態をチェックしておくことが重要です。
大石内科循環器科医院では、専門医による丁寧な診察と検査を行い、足の症状の原因を評価して適切な診断につなげています。気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。