大石内科循環器科医院

静岡市葵区鷹匠2-6-1 新静岡駅より 徒歩3分 駐車場あり

静岡市葵区鷹匠2-6-1
054-252-0585

blog
ブログ

健康診断で腎機能障害・腎機能低下を指摘されたときの正しい対応と改善策

2025.04.04 健康診断

健康診断で腎機能の低下を指摘され、不安を感じてはいませんか?腎臓の主な役割は、血液を濾過して、老廃物や余分な水分を尿として排泄することです。血圧の調整や赤血球の産生を助けるホルモンの分泌、骨を丈夫にするビタミンDの活性化などの機能も担っています。

厚生労働省の報告書によると、日本の成人のうち、約8人に1人が慢性腎臓病と推定されています。腎臓病は初期段階では自覚症状が現れにくいため、健康診断で初めて異常に気づくケースが多く見られます。腎臓病は、早期に発見して適切に対応することが重要です。この記事では、腎機能について以下の内容を解説します。

  • 腎機能低下の原因
  • 治療法
  • 検査方法
  • セカンドオピニオン

当院では、健康診断で異常があった方や体の不調があった方に対して、専門医がサポートしております。健康診断で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。

WEB予約はこちら >

腎機能低下の主な5つの要因

腎機能が低下する要因について、以下の5つを解説します。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 遺伝
  • 生活習慣
  • 加齢

高血圧

高血圧の状態が続くと、腎臓の血管(糸球体)は常に高い圧力にさらされ、血管が傷つき硬くなります。高血圧によって糸球体が傷つくと、腎臓の濾過機能がうまく働かなくなり、腎機能低下へつながります。高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状が少ないまま進行するため、気づかないうちに血管や臓器へ負担をかけてしまいます。

健康な生活を維持するためには、日頃から血圧を管理し、適切な治療や予防策を講じることが大切です。高血圧の原因や具体的な対策については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>高血圧はなぜ起こる?原因と対策をわかりやすく解説

糖尿病

血液中の糖分(血糖)が高い状態が続くと、腎臓の糸球体が高濃度の糖にさらされ、ダメージを受ける可能性があります。糖尿病によって糸球体が傷つくと、本来体内にとどめておくべきタンパク質が尿中に漏れ出る「蛋白尿」という症状が現れます

糖尿病は、腎臓の血管を硬くする動脈硬化を促進するため、腎臓に負担をかけます。糖尿病と診断された方は、食事療法・運動療法・薬物療法を適切に組み合わせ、血糖値を管理することが大切です。

糖尿病の詳しい情報や管理方法については、以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>糖尿病について解説

遺伝

腎臓病の中には、遺伝的な要因が関係しているものもあります。多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)やアルポート症候群など、特定の遺伝子異常が原因で、腎機能が低下する病気があります。ご家族に同じ病気の方がいる場合、発症リスクが高くなります。

遺伝的な要因が疑われる場合は、遺伝子検査を行うことで診断を確定できる場合があります。遺伝が原因となる腎臓病はまれですが、心当たりのある方は医療機関に相談しましょう。

生活習慣

生活習慣は、腎機能の低下に影響を与えます。以下のポイントに注意してください。

  • 塩分過多な食生活
  • 運動不足
  • 喫煙

塩分を摂りすぎると、高血圧のリスクを高め、腎臓への負担を増大させる可能性があります。カリウムやリンなども摂りすぎないように注意してください。腎臓病が進行した場合、ミネラルの摂取制限が必要となる場合もあります。

肥満は糖尿病のリスクを高めるため、間接的に腎臓に悪影響を及ぼす可能性があります。週3〜5回程度の有酸素運動を取り入れて運動不足にならないように心がけましょう。

喫煙は腎臓の血管を収縮させ、血流を悪化させることで、腎臓に負担をかける可能性があります。喫煙は、慢性腎臓病の進行を加速させるリスクがあるとされています。禁煙することで、腎機能低下の進行を抑制できる場合があります。

加齢

腎機能は、加齢とともに自然に低下していきます。糖尿病や高血圧などの生活習慣病やその他の疾患で、腎機能の低下が加速する可能性があります。高齢の方は、定期的な健康診断を受け、腎機能の状態を確認することが大切です。早期発見・早期治療によって、腎機能の悪化を予防し、健康寿命を延ばすことにつながります

健康診断で腎機能低下と言われたときの治療法

健康診断で異常値を指摘されたときの治療法として、一般的に以下の方法があります。

  • 食事療法
  • 薬物療法
  • 運動療法
  • 生活習慣改善
  • 腎代替療法

健康診断で腎機能低下を早期に発見できれば、治療を早く開始できる大きなメリットがあります。腎機能が低下したままの場合、慢性腎臓病へと進行し、人工透析が必要になる可能性もあります。適切な治療を行うことで、腎機能の悪化を抑え、健康な生活を維持できる可能性があります

食事療法

食事療法は、腎臓の負担を軽減し、機能の低下を遅らせる可能性があるため、重要な治療法の一つです。腎機能が低下すると、濾過機能が弱まり、体内に老廃物や水分が蓄積しやすくなります。食事療法では、以下の栄養素の摂取を制限します。

  • 塩分
  • タンパク質
  • カリウム

塩分の摂取量を適切に管理し、体内の水分量を調整して高血圧を防ぎます。醤油やソースなどの調味料を控えめにし、加工食品やインスタント食品、漬物などを避けることが推奨されます。

タンパク質の摂取量を適切に管理し、体内での老廃物の産生を抑えます。肉や魚などの動物性タンパク質の摂取量を調整し、大豆製品や豆類などの植物性タンパク質をバランスよく取り入れます。

カリウムの摂取量を適切に管理し、体内のカリウム濃度を適正に保って心臓の機能を守ります。カリウムを多く含む食品(ほうれん草やバナナ、ドライフルーツ、じゃがいも、トマト、アボカドなど)の摂取を制限する必要がある場合があります。

カリウムが体内に過剰に蓄積すると、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。高カリウム血症は、重篤な不整脈を引き起こし、命に関わる危険性があるため慎重な管理が必要です。

栄養素の制限量は、腎機能低下の程度によって異なります。腎臓内科の医師や管理栄養士の指導を受け、体の状態に合わせた適切な食事療法を実践することが大切です。

薬物療法

薬物療法は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をコントロールし、腎機能の低下を遅らせる効果が期待できます。高血圧には、降圧薬を用いて血圧を適切な範囲にコントロールすることで、腎臓への負担を軽減します。

糖尿病には、血糖降下薬を用いて血糖値を管理することで、腎症の発症や進行を抑制します。腎機能の低下に伴って、むくみや貧血が生じることがあり、利尿薬や鉄剤などが処方されることがあります。

運動療法

適度な運動は、生活習慣病の予防や改善に効果が期待できます。以下の軽い運動は、血圧や血糖値の改善につながり、腎臓への負担を軽減します。

  • ウォーキング
  • ストレッチ

運動にはストレス解消効果もあり、心身の健康維持に役立ちます。腎機能が低下している場合は、激しい運動は避けてください。医師や理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で運動しましょう

生活習慣改善

禁煙と節酒は、腎臓病の予防と改善に不可欠です。ストレスは自律神経のバランスを崩し、血圧を上昇させるなど、腎臓に悪影響を与える可能性があります。ストレスを溜め込まないよう、リラックスできる時間を作ったり、趣味を楽しんだりするなど、自分に合ったストレス管理法を見つけましょう。

腎代替療法

腎機能が著しく低下し、末期腎不全の状態になると、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)の選択が必要となります。腎代替療法は腎臓の機能を完全に回復させることはできませんが、生命を維持し、生活の質(QOL)を向上させるために重要な役割を果たします。腎代替療法には、以下の3種類があります。

  • 血液透析:腎臓の代わりに血液を浄化し、老廃物や余分な水分を除去する治療法
  • 腹膜透析:腹膜を利用し、透析液を腹腔内に入れて老廃物や水分を吸収・排出する治療法
  • 腎移植:提供者から健康な腎臓を移植する治療法

腎機能低下への対応は多岐にわたり、患者さんの状態に合わせて最適な治療法を選択することが重要です。健康診断で腎機能低下を指摘されたら、医療機関を受診し、専門医の指導を受けるようにしてください。

健康診断で異常を指摘されたときの対応について、詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
>>健康診断で異常があったらどうする?|静岡市にお住まいの方へ

健康診断で腎機能低下と言われたときの検査方法

健康診断で腎機能の低下を指摘されたとき、一般的に以下の3つの検査を行います。

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 画像検査

血液検査

血液検査では、血液中に含まれるさまざまな成分を分析し、以下の指標を用いて腎機能を評価します。

  • クレアチニン値
  • eGFR(推算糸球体濾過量)
  • 尿素窒素(BUN)

指標の値から患者さんの腎臓の状態を詳しく把握し、適切な治療方針を決定します。クレアチニン値は、腎機能低下の指標です。クレアチニンは筋肉で生成される老廃物で、通常は腎臓で濾過されて尿として排出されます。腎機能が低下すると、クレアチニンが血液中に蓄積するため、血中クレアチニン値が上昇します。

eGFR(推算糸球体濾過量)は、年齢や性別を考慮して計算される重要な指標です。eGFRは、腎臓が1分間にどれくらいの血液を濾過できるかを示す値で、腎機能を正確に反映します。eGFRの値が低いほど腎機能の低下が進んでおり、慢性腎臓病の診断にも用いられます

尿素窒素(BUN)は、血液中に含まれる尿素の中の窒素成分量を表します。尿素は、体内でタンパク質が代謝される過程で生じたアンモニアが、肝臓で解毒されて作られる物質です。尿素は腎臓を通じて尿として排泄されます。腎機能が低下すると、血液中に尿素窒素が蓄積するため尿素窒素の値が高くなります

血液検査でクレアチニン値の異常が指摘された場合、腎機能の低下が疑われるため、精密検査を受けることが重要です。腎臓の健康を維持するためには、早期の対策が欠かせません。検査結果の詳しい解説や、次にとるべき対応については、以下の記事をご覧ください。
>>健診でクレアチニン基準値異常の指摘!精密検査の必要性と対策

尿検査

尿検査では、尿中に含まれる成分を調べることで、腎臓の異常を検出します。腎臓に障害があると、蛋白尿になることがあります。蛋白尿の量が多いほど腎臓の損傷が大きい可能性があります。

尿検査では、尿を遠心分離機にかけて沈殿した成分を顕微鏡で観察する尿沈渣検査も行います。腎臓や尿路に炎症や結石、腫瘍などがあると、尿に血液が混入する「血尿」という症状が現れることがあります。尿沈渣検査では、赤血球や白血球、細菌などの有無や量を調べ、腎臓や尿路の感染症や炎症の有無を判断します。

画像検査

画像検査では、腎臓の形や大きさ、内部の状態を直接的に観察できます。患者さんの状態に合わせて、以下の検査を組み合わせて診断を確定します。

  • 超音波検査
    超音波を使って腎臓の画像を映し出す検査です。腎臓の大きさや形、結石や腫瘍の有無などが調べられます。体に負担の少ない検査のため、妊娠中の方や小さなお子さんでも受けることができます。
  • CT検査
    X線を使って腎臓の断層画像を撮影する検査です。腎臓の内部構造を詳しく見ることができ、結石や腫瘍、炎症などをより正確に診断できます。造影剤を使用して、腎臓の血管の状態も調べられます。
  • MRI検査
    磁気と電波を使って腎臓の断層画像を撮影する検査です。CT検査よりも詳細な画像を得ることができ、腎臓の組織の状態をより詳しく評価できます。

腎機能の低下を放置すると、慢性腎臓病へ進行し、人工透析や腎移植が必要となる可能性があります。腎臓病の進行を防ぐために、早期発見と早期治療が重要です。健康診断で腎機能の低下を指摘された場合は、放置せずに医療機関を受診し、専門医の指示に従って適切な検査を受けるようにしましょう

まとめ

腎臓病は自覚症状が現れにくいため、健康診断で初めて異常に気付くケースが多いです。腎臓病の主な原因は、高血圧や糖尿病、遺伝、生活習慣、加齢です。食事療法や薬物療法、運動療法、生活習慣改善などの治療法があります。重症化すると腎代替療法が必要です。血液検査や尿検査、画像検査などの検査を行い、腎機能の状態を詳細に評価します。

健康診断で異常を指摘された場合は、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。

当院では、健康診断で異常があった方や体の不調があった方に対して、専門医がサポートしております。健康診断で異常を指摘された場合の再検査内容について、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
>>健康診断で異常があったらどうする?|静岡市にお住まいの方へ



参考文献

Lesley A Inker, Silvia Titan. Measurement and Estimation of GFR for Use in Clinical Practice: Core Curriculum 2021. Am J Kidney Dis, 2021, 78(5), p.736-749.



大石内科循環器科医院
420-0839
静岡市葵区鷹匠2-6-1
TEL:054-252-0585

Google Maps