健康診断の結果を見て「クレアチニン値」に疑問を持ったことはありませんか?クレアチニン値は腎臓の健康状態を測る重要な指標です。多くの日本人に慢性腎臓病の疑いがあり、クレアチニン値の異常は誰にでも起こりうる重要な問題です。
この記事では、クレアチニン値の基礎知識や異常値が出た場合の精密検査、具体的な対策を解説します。腎臓病は早期発見・早期治療が必要になる病気です。健康を守るためにも、クレアチニン値について正しく理解しましょう。
健康診断で異常を指摘された場合は、早めに精密検査を受け、適切な治療を受けることが大切です。健康診断で異常があった場合の対処法を詳しく知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
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クレアチニン値は腎臓の健康状態を評価する重要な指標です。クレアチニン値の意味や基準値を理解することで、今後の健康管理に役立てることができます。以下の項目に沿って、クレアチニン値の基礎知識を解説します。
血中クレアチニン値は、腎臓がどれくらいきちんと老廃物をろ過できているかを示す指標です。クレアチニンとは、筋肉でエネルギーを作り出す過程で生成される老廃物です。老廃物は血液中に放出され、腎臓でろ過されて尿として排出されます。
腎臓が健康であれば、クレアチニンは効率よくろ過され、血液中にほとんど残らないため血中クレアチニン値は低く保たれます。腎臓の働きが弱まると、クレアチニンをスムーズにろ過することができません。結果、血液中にクレアチニンが蓄積し、血中クレアチニン値が上昇しやすくなります。
クレアチニン値は筋肉量と密接に関係しており、筋肉量が多い人ほど、クレアチニン値は高くなる傾向があります。男性は一般的に女性よりも筋肉量が多いため、クレアチニン値が高めに出ることがあります。
アスリートのように激しい運動を日常的に行っている人も、筋肉量が多いためクレアチニン値が高くなることがあります。加齢とともに筋肉量が減少していく高齢者では、クレアチニン値が低めに出る傾向があります。
しかし、腎機能が低下している場合には、クレアチニン値が高い状態が続くことがあります。腎機能の低下を防ぐためには、食事や生活習慣の見直しが重要です。具体的な対策や食事法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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クレアチニンの基準値は年齢や性別によって異なります。筋肉量の影響を受けるため、個人差も大きいです。クレアチニンの基準値の目安は以下のとおりです。
基準値は目安であり、絶対的なものではありません。より正確な評価には、クレアチニン値や年齢、性別などを用いて算出するeGFRが用いられます。eGFRは、腎臓が1分間にろ過できる血液量を示す指標です。eGFRが60mL/分/1.73㎡未満の場合は慢性腎臓病の可能性があり、値が低いほど腎機能が低下していると考えられます。
健康診断の結果でクレアチニン値が基準値から外れていた場合は必ず医師に相談し、適切な検査とアドバイスを受けるようにしましょう。
クレアチニン値が異常になる原因は以下のとおりです。
慢性腎臓病は、腎臓の機能が長期間にわたって徐々に低下していく病気です。腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出する働きをしています。ろ過機能が低下すると、クレアチニンなどの老廃物が血液中に蓄積し、クレアチニン値が上昇します。
初期の慢性腎臓病では自覚症状がほとんどないため、健康診断などで指摘されて初めて気づく方も少なくありません。放置すると腎不全へと進行する可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。
糖尿病や高血圧は、慢性腎臓病の主な原因として知られています。糖尿病や高血圧は腎臓の血管や糸球体(血液をろ過する部分)にダメージを与え、腎機能の低下を招きます。
急性腎障害は、腎臓の機能が数時間から数日の間に急激に悪化する病気です。クレアチニン値の急上昇が特徴です。急性腎障害の原因はさまざまですが、腎臓への血流低下や腎臓損傷(薬剤性腎障害や感染症など)、尿路の閉塞などが挙げられます。適切な治療を行わないと腎不全に至る危険性もあるため、迅速な対応が必要です。
尿路の通過障害とは、尿の通り道である尿管や膀胱などが何らかの原因で塞がれてしまう状態です。尿路が塞がれると、腎臓でろ過された尿が体外に排出されなくなり、腎臓への負担が増加し、クレアチニン値が上昇します。
尿路の通過障害は尿路結石や前立腺肥大症、腫瘍などが原因で起こることがあります。適切な処置を行うことで、クレアチニン値は正常に戻ることが多いですが、放置すると腎機能の低下につながる場合もあるため注意が必要です。
脱水状態になると、体内の水分が不足し、血液が濃縮されます。結果、腎臓への血流が減少して腎臓のろ過機能が低下し、クレアチニン値が上昇します。嘔吐や下痢、発熱、過度な発汗など、脱水の原因はさまざまです。
高齢者や乳幼児は特に脱水になりやすいので、水分をこまめに摂るなど、普段から気をつける必要があります。
高タンパク食や過剰な運動もクレアチニン値が高くなる原因です。高タンパク食を摂ると、タンパク質の代謝産物であるクレアチニンの生成量が増加し、クレアチニン値が上昇することがあります。過剰な運動によっても筋肉が分解され、クレアチニンが生成されるため、クレアチニン値が一時的に上昇することがあります。
健康な腎臓であれば、一時的にクレアチニン値が上昇してもすぐに正常値に戻ります。腎機能が低下している場合は、高タンパク食や過剰な運動によってクレアチニン値がさらに上昇する可能性があるため注意が必要です。腎機能の状態に合わせた適切な食事と運動のバランスを心がけましょう。
クレアチニン値が高い場合は、以下の精密検査を行うことがあります。
精密検査の目的は、クレアチニン値が高い原因を探し、腎臓の機能がどの程度なのかを詳しく調べることです。原因を特定し、腎臓の状態を把握することで、最適な治療方針を決定できます。
血液検査では、クレアチニンだけでなく、尿素窒素(BUN)や尿酸、eGFRなど、腎臓の働きを知るためのさまざまな項目を調べます。血液は腎臓でろ過されるため、血液中の成分を分析することで腎臓のろ過機能や老廃物の排出能力を総合的に判断できます。
軽度の腎機能低下の場合、クレアチニン値は1.10〜1.29mg/dL程度、腎不全では1.30mg/dL以上となるケースが多いです。特に、男性で1.2mg/dL、女性で1.0mg/dLを超えると注意が必要です。
尿検査では、タンパク質や赤血球、白血球などが尿に混ざっていないかを調べます。腎臓は、血液をろ過して尿を作るため、尿の状態を調べることで腎臓のフィルター機能に異常がないかを調べられます。
腎臓に炎症や損傷があると、通常はろ過されるべきタンパク質や血液細胞が尿中に漏れ出てしまうため注意が必要です。尿検査は腎臓の異常を早期に発見する手がかりになります。
尿酸値の上昇も腎臓の機能と深く関わっており、過剰な尿酸が蓄積すると痛風のリスクが高まります。健康診断で尿酸値が高いと指摘された場合は、生活習慣を見直し、適切な対策をとることが大切です。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
>>尿酸値が高いと健診で指摘されたら!痛風予防と生活改善のポイント
画像検査には、超音波検査やCT検査、MRI検査などがあります。画像検査では、腎臓の形や大きさ、腫瘍や結石の有無などを調べて腎臓の構造的な異常を視覚的に確認します。超音波検査は体への負担が少なく、痛みを伴わない検査です。
CT検査やMRI検査は、より詳細な腎臓の状態を調べることができます。腎臓の萎縮や嚢胞、腫瘍などを確認することで、慢性腎臓病の診断に役立ちます。複数の検査を組み合わせて行うことで、クレアチニン値が高い原因を特定し、ご自身に合った治療方針を立てることが可能です。
精密検査を受けることで、腎臓病の早期発見・早期治療につながるため、気になることがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
クレアチニン値が異常な場合の対策は以下のとおりです。
クレアチニン値を改善し、腎臓への負担を軽減するためには、生活習慣の見直しが欠かせません。食生活では、塩分やタンパク質の摂取量を調整することが大切です。過剰な塩分は腎臓に負担をかけ、高血圧を悪化させる可能性があります。高血圧は腎臓病の進行を早める大きな要因となるため、注意が必要です。
タンパク質は体を作るうえで不可欠な栄養素ですが、過剰に摂取すると腎臓の働きを低下させる可能性があります。腎機能がすでに低下している場合は、タンパク質の摂取量を適切にコントロールする必要があります。医師の指示に従い、腎臓に優しい食生活を送りましょう。
適度な運動も重要です。運動不足は肥満や生活習慣病のリスクを高め、腎臓にも悪影響を及ぼす可能性があります。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣を身につけましょう。激しい運動はかえって腎臓に負担をかける可能性があるので注意が必要です。
腎機能の低下が進行している場合や、他の病気が原因でクレアチニン値が上昇している場合は、薬物療法が必要になることがあります。医師は患者さんの状態に合わせて適切な薬剤を選択し、投与量や投与方法を決定します。医師の指示に従い、きちんと薬を服用しましょう。
高血圧がある場合は降圧剤、糖尿病がある場合は血糖降下剤、タンパク尿が多い場合はRAS系阻害薬などが処方されることがあります。薬の効果や副作用、注意点などを医師から十分に説明を受け、理解したうえで治療を受けましょう。
腎臓病は自覚症状が出にくい場合があり、気づかないうちに進行してしまうことがあります。健康診断でクレアチニン値の異常を指摘された場合は、医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。ご自身に合った治療法を見つけることが、健康な生活を送るための第一歩になります。
一方で、クレアチニン値が低い場合も、筋肉量の減少や特定の疾患が関係している可能性があります。クレアチニンが低いと指摘された方は、その原因や必要な検査について知っておくことが重要です。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
>>クレアチニンが低いと健診で指摘された方へ!原因と必要な検査
クレアチニン値は腎臓の健康状態を知る重要な指標であり、年齢や性別、筋肉量などによって変動します。健康診断で異常値を指摘された場合は、医療機関を受診し、精密検査で原因を特定することが大切です。
精密検査には血液検査や尿検査、画像検査があり、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。原因が特定されたら、医師の指導のもと、生活習慣の改善や薬物療法などの適切な対策を行いましょう。
当院では、健康診断で異常があった方や体の不調が合った方に対して、専門医がサポートしております。健康診断で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。健康診断で異常を指摘された場合の検査内容を、以下の記事で詳しく解説しています。
>>健康診断で異常があったらどうする?|静岡市にお住まいの方へ
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