あなたは、激しい痛みに襲われる痛風発作を経験したことがありますか?あるいは、将来、痛風発作に見舞われることを心配していませんか?実は、その原因となる高尿酸血症は、日本人の約10%が患っている、決して珍しい病気ではないのです。
高尿酸血症は、血液中の尿酸値が高い状態を指し、放置すると痛風発作を引き起こす可能性があります。この痛風発作は、足の親指の付け根などに激しい痛みをもたらし、日常生活に大きな支障をきたすことも。しかし、ご安心ください。適切な食事療法を行うことで尿酸値をコントロールし、痛風発作を予防することが可能です。
この記事では、医師が教える高尿酸血症の食事療法について詳しく解説します。具体的に何を食べて、何を避けるべきなのか、分かりやすく説明することで、あなたの不安を解消し、健康的な食生活を送るためのサポートをいたします。
痛風発作に悩まされている方、あるいは将来の予防を考えている方は、ぜひ読み進めてみてください。あなたの健康な生活を守るための第一歩となる情報が、きっと見つかるはずです。
高尿酸血症と診断された後、食事療法についてどんな風に感じていますか? 「何をどのくらい食べていいのかわからない」「具体的にどんなものに気をつければいいのかわからない」など、多くの疑問が浮かぶのは当然です。
この章では、高尿酸血症の食事療法の基本的な考え方と、痛風発作との関連性について、より具体的に、そしてわかりやすく解説します。食事療法は、尿酸値のコントロール、そして痛風発作の予防に欠かせない重要な柱です。一緒に学んでいきましょう。
高尿酸血症とは、血液検査で尿酸値が高い状態のことです。尿酸値が高い状態が続くと、ある日突然、足の親指の付け根が赤く腫れ上がり、歩くことも困難なほどの激痛に襲われることがあります。これが痛風発作です。
では、なぜ尿酸値が高くなると痛風発作が起こるのでしょうか?
私たちの身体の細胞には、「プリン体」と呼ばれる物質が含まれています。細胞が新陳代謝を繰り返す過程で、このプリン体が分解されると、最終的に「尿酸」という老廃物に変化します。尿酸は通常、腎臓でろ過され、尿として体外に排出されます。しかし、プリン体の摂り過ぎや、腎臓での尿酸の排泄がうまくいかない場合、血液中に尿酸が過剰に蓄積され、尿酸値が上昇します。これが高尿酸血症です。
高尿酸血症の状態が続くと、過剰な尿酸は最終的に「尿酸塩結晶」と呼ばれる針のような形に変化し、関節に蓄積されます。この尿酸塩結晶が関節内で炎症を引き起こすことで、あの激痛を伴う痛風発作が起こるのです。
高尿酸血症の原因は主に以下の3つです。
高尿酸血症の食事療法には、大きく分けて以下の2つの目的があります。
食事療法は、薬物療法と並んで高尿酸血症の治療・管理において非常に重要な役割を果たします。特に、生活習慣の改善は、高尿酸血症だけでなく、他の生活習慣病、例えば糖尿病や高血圧などの予防にもつながるため、積極的に取り組むことが大切です。
高尿酸血症の状態が続くと、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化し、関節に蓄積されます。この尿酸塩結晶が関節包や周囲の組織を刺激することで、激しい炎症反応が起こります。これが痛風発作です。痛風発作は、耐え難いほどの激しい痛みを伴い、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。
痛風発作は、足の親指の付け根に起こることが最も多いですが、足首、膝、肘、手首など、他の関節に発作が起こる場合もあります。発作は前触れなく突然起こり、数時間から数日間続くこともあります。痛みが強い時には、患部に触れるだけでも激痛が走り、歩くことさえ困難になることもあります。
食事療法は、尿酸値をコントロールすることで、痛風発作の発生や再発を予防する上で重要な役割を果たします。バランスの良い食事を心がけ、プリン体の多い食品を控え、1日2リットル程度の適切な水分摂取を心がけることで、痛風発作のリスクを軽減することができます。
高尿酸血症と診断された時、食事療法について「何をどのくらい食べていいのかわからない」「具体的にどんなものに気をつければいいのかわからない」と不安になる方が多くいらっしゃいます。それは当然のことです。なぜなら、高尿酸血症の食事療法は、単にプリン体の多い食品を避けるだけでなく、様々な要素を考慮する必要があるからです。この章では、尿酸値をコントロールするための食事について、より具体的に、そしてわかりやすく解説していきます。
尿酸値をコントロールするためには、尿酸の排出を促す食材や、尿酸の産生を抑える食材を積極的に摂り入れることが重要です。具体的な食材と、その働きについて見ていきましょう。
尿酸値が高い方は、プリン体を多く含む食品を控えることが重要です。プリン体は体内で分解されると尿酸に変わるため、摂り過ぎると血液中の尿酸値が上昇してしまいます。
食品に含まれるプリン体は、体内で分解されて尿酸になります。尿酸値が高くなると、尿酸が結晶化して関節に溜まり、激しい痛みを引き起こす「痛風発作」のリスクが高まります。痛風発作は、ある日突然足の親指の付け根などに激痛が生じ、歩行も困難になるほどの痛みとなることもあります。
プリン体の摂取量をコントロールすることは、高尿酸血症の管理、そして痛風発作の予防に非常に重要です。下記の表を参考に、食品を選ぶ際にプリン体含有量を意識しましょう。
食品群 | プリン体含有量 (mg/100g) | 具体例 |
非常に高い (200以上) | レバー(鶏:330、豚:290、牛:200)、モツ(300前後)、干物(煮干し:760、アジの開き:360)、白子(タラ:430)など | これらの食品は、高尿酸血症の方は極力避けるべきです。 |
高い (100~200) | カツオ(210)、イワシ(190)、サンマ(170)、エビ(170)、カニ(130)など | 摂取量を制限しましょう。 |
中程度 (50~100) | 牛肉(70)、豚肉(80)、鶏肉(80)、マグロ(70)、鮭(60)など | バランス良く食べましょう。 |
低い (50未満) | 野菜、果物、卵(7)、牛乳(2)など | 積極的に食べましょう。 |
食品を選ぶ際には、プリン体含有量だけでなく、栄養バランスも考慮することが大切です。様々な食品をバランス良く摂取することで、健康を維持しながら尿酸値をコントロールしましょう。
高尿酸血症と診断されると、「食事制限が大変そう…」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。実際、私も最初の頃は患者さんへ食事指導をする際、どこまで厳しく伝えれば良いのか悩んだものです。厳しすぎると長続きしないですし、逆に曖昧だと効果が出ません。
そこで大切なのは、ご自身の生活スタイルに合わせた無理のない範囲で、食事療法を継続していくことです。この章では、日々の食生活を少し工夫するだけで、尿酸値のコントロールがぐっと楽になるコツをお伝えします。
ポイントは「プリン体」を多く含む食品を控え、「尿酸」の排出を促す食生活を意識することです。難しく考える必要はありません。まずは、ご自身が普段どんなものを食べているのかを把握することから始めてみましょう。
外食が多いと、食事管理が難しいと感じるかもしれません。しかし、ちょっとしたポイントを押さえるだけで、外食時でも尿酸値のコントロールは可能です。
まず、プリン体を多く含む食品を把握しましょう。レバーやモツなどの内臓肉、白子、魚卵、カツオやイワシなどの青魚、エビやカニなどの甲殻類は、プリン体を多く含んでいます。これらを避けるだけでも、尿酸値のコントロールに繋がります。
具体的にどのようなメニューを選べば良いのか、見ていきましょう。和食であれば、そば、うどん(天ぷらは控えめに)、野菜中心の定食などがおすすめです。洋食では、野菜スープ、サラダ、鶏肉のグリル(皮なし)などが良いでしょう。中華料理を選ぶ際は、野菜炒め、豆腐料理、春雨スープなどがおすすめです。とろみのある料理は、油を多く使用している場合があるため、注意が必要です。
麺類を選ぶ際は、つゆにプリン体が多く含まれているため、飲み干さないようにしましょう。また、アルコールは体内で尿酸の産生を促進し、排出を抑制するため、尿酸値を上げる原因となります。外食時にはなるべく控え、どうしても飲みたい場合は、プリン体含有量の少ない蒸留酒(焼酎、ウイスキーなど)を少量にし、チェイサーとして水を一緒に摂るように心がけましょう。ビールや日本酒は、プリン体が多く含まれるため、控えるようにしてください。
外食時のメニュー選び | おすすめ | 注意 |
和食 | そば、うどん、野菜中心の定食 | 天ぷら、つゆの飲み干し |
洋食 | 野菜スープ、サラダ、鶏肉のグリル(皮なし) | 揚げ物、脂身の多い肉 |
中華 | 野菜炒め、豆腐料理、春雨スープ | とろみ、揚げ物 |
上記はあくまで一例です。外食時には、メニューをよく見て、プリン体含有量を意識しながら料理を選びましょう。
毎日どのような献立にすれば良いのか悩んでいる方のために、具体的な献立例と簡単なレシピをご紹介します。ポイントは、主食、主菜、副菜をバランス良く組み合わせることです。
朝食: 全粒粉パン、スクランブルエッグ(牛乳やほうれん草入り)、野菜サラダ、ヨーグルト 全粒粉パンは食物繊維が豊富で、血糖値の上昇を抑える効果も期待できます。スクランブルエッグには、牛乳やほうれん草を加えて栄養価を高めましょう。
昼食: 鶏むね肉のソテー(きのこ添え)、海藻サラダ、ごはん、味噌汁 鶏むね肉は皮を取り除き、低脂肪高タンパクな食材として活用しましょう。きのこは食物繊維が豊富で、尿酸値を下げる効果も期待できます。ごはんは白米だけでなく、食物繊維が豊富な雑穀米などを混ぜるのもおすすめです。味噌汁には、わかめなどの海藻類を加えると良いでしょう。
夕食: 鮭の塩焼き、ほうれん草と人参のおひたし、ひじきの煮物、ごはん、味噌汁 鮭には良質なタンパク質やDHA、EPAが豊富に含まれています。ほうれん草はビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜です。ひじきは食物繊維やミネラルを多く含む海藻類です。人参にはβ-カロテンが豊富に含まれています。
これらの献立例はあくまでも一例です。ご自身の好みや生活スタイル、アレルギーの有無などを考慮し、自由にアレンジしてみてください。インターネット上には、高尿酸血症に配慮したレシピが数多く公開されていますので、ぜひ参考にして、ご自身に合った献立を見つけてみてください。
食事記録アプリを活用することで、自分が何をどのくらい食べているかを客観的に把握し、食生活の改善点を発見することができます。最近は、写真で記録できるもの、カロリー計算機能付きのもの、栄養バランスを分析してくれるものなど、様々な機能を備えたアプリが数多く提供されています。
食事記録アプリを使用するメリットは、以下の通りです。
食事記録は、続けることが大切です。最初は大変かもしれませんが、アプリを活用することで、手軽に楽しく続けられます。ご自身に合ったアプリを見つけて、食事管理に役立ててみてください。記録を続けることで、徐々に食生活への意識が高まり、自然とバランスの良い食事を摂るようになるはずです。
この記事では、高尿酸血症の食事療法について解説しました。食事療法は、尿酸値のコントロールと痛風発作の予防に不可欠です。プリン体の多い食品を控え、水分を十分に摂ることを心がけましょう。具体的には、レバーやモツなどの内臓肉、青魚、甲殻類、アルコールは控えめに、野菜や海藻類、低脂肪乳製品などを積極的に摂り入れることをおすすめします。
毎日の食事は、献立例やレシピを参考に、ご自身の生活スタイルに合った無理のない範囲で継続することが大切です。食事記録アプリも活用して、食生活を見える化し、改善に役立てましょう。外食時はメニューをよく確認し、プリン体が多い食品を避けて選んでください。
高尿酸血症の食事療法は、専門医の指導のもとに行うのが理想的です。不安な点や疑問点があれば、医師や管理栄養士に相談し、適切なアドバイスを受けてください。 日々の小さな積み重ねが、健康な生活につながります。無理なく続けられる方法を見つけて、健康的な食生活を送りましょう。
気になる症状があれば、当院にご相談ください。
大石内科循環器科医院
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