大石内科循環器科医院

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MMSEとは?認知症の疑いを調べる検査方法をご紹介

2025.04.17 認知症

「最近、物忘れがひどくなった…」「人の名前が出てこない…」そんな不安を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。2021年の研究では、MMSE検査単独では軽度認知障害(MCI)から認知症への進行を正確に予測できないことが示唆されていますが、早期発見は症状の進行を遅らせ、より長く自分らしい生活を送る上で非常に重要です。

MMSE検査(ミニメンタルステート検査)は、わずか5~10分で認知機能を評価できる簡便な検査です。30点満点で採点され、24点以下だと認知症の疑いがあるとされています。しかし、点数だけで診断が確定するわけではありません。

この検査では見当識、記憶力、注意と計算、言語機能、構成能力といった5つの認知機能を評価します。「今日は何月何日ですか?」といった質問や、簡単な計算、図形模写などを通して、あなたの現在の認知機能の状態を客観的に把握できます。

気になる症状がある方、ご自身の認知機能について知りたい方は、MMSE検査について詳しく理解し、安心して検査に臨めるよう、この記事で解説します。早期発見は、あなたの人生をより豊かにする第一歩となるでしょう。

大石内科循環器科医院では、認知症(もの忘れ)外来で専門的な検査ができます。ご本人様自身でも、ご家族でも配慮しながら検査や診察を行えます。お気軽にご相談ください。



MMSE検査の目的と概要:認知症早期発見の重要性

最近、もの忘れが増えたと感じたり、人の名前が出てこなくなったりしていませんか?「もしかして認知症?」と不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。

実は、認知症は早期発見と早期対応が非常に大切です。認知症が疑われる段階で適切な対応をすることで、症状の進行を遅らせ、より長く自分らしく生活できる可能性が高まります。MMSE検査は、そんな認知症の早期発見に役立つ簡便で重要な検査の一つです。

この検査を受けることで、ご自身の現在の認知機能の状態を客観的に把握し、適切な対応につなげることができます。

MMSE検査の定義と背景

MMSE検査とは、Mini-Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)の略で、認知機能を評価するための簡単なテストです。1975年にアメリカの精神科医であるマーシャル・F・フォーゲルらによって開発され、現在では世界中で広く使われています。

検査は30点満点で、点数が高いほど認知機能が高いことを示します。まるでものさしで長さを測るように、MMSE検査は現在の認知機能の状態を数値で示してくれるのです。手軽に短時間で認知機能の状態を調べることができるのが大きな特徴です。

認知症の早期発見が重要な理由

認知症は早期に発見し、適切な対応をすることで、症状の進行を遅らせたり、生活の質を維持したりすることが期待できます。

例えば初期段階では、薬物療法を開始することで進行を遅らせる、あるいは一時的に改善させる可能性があります。また、生活習慣の改善も効果的です。バランスの良い食事、適度な運動、質の高い睡眠を心がけることで、認知機能の低下を予防・改善できる可能性があります。

早期に診断を受けることで、介護保険などの公的なサービスや地域包括支援センターなどの支援制度の利用準備もスムーズに進めることができます。将来的に介護が必要になった場合に慌てることなく、必要な手続きを進めることができるため、ご本人やご家族の負担を軽減することにつながります。

また、認知症は進行性の疾患であるため、早期発見は、ご本人やご家族が将来設計を立て、適切な準備をするためにも重要です。将来の生活について話し合い、必要なサポートやケアについて検討することで、不安を軽減し、より穏やかに生活を送ることができます。

軽度認知障害(MCI)は、認知機能の低下が見られるものの、日常生活に大きな支障がない状態を指します。MCIと診断された方の中には、将来的に認知症へと進行する方もいるため、早期発見と適切なケアが重要になります。

2021年に発表された研究では、単回のMMSE検査だけでは、MCIから認知症へと進行する人を正確に識別するには不十分であることが示唆されています。つまり、MMSE検査で高得点であっても、油断は禁物です。定期的な検査や他の検査との組み合わせによって、より正確な状態把握に努めることが重要です。

>> ただの物忘れ?それとも認知機能の低下?医師がMCIを詳しく解説

MMSEとその他の認知機能検査との比較

MMSE検査以外にも、認知機能を評価する検査はいくつかあります。それぞれの検査には特徴があり、医師は患者さんの状態に合わせて適切な検査を選択しています。

例えば、MoCA(モントリオール認知評価)は、MMSEでは評価できない注意機能や遂行機能なども評価できる検査です。長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、質問への回答によって認知機能を評価する検査で、主に高齢者施設などで使用されています。また、時計描画テスト(CDT)は、時計の絵を描いてもらうことで、視空間認知機能などを評価します。

これらの検査は、単独で使用されることもありますが、MMSE検査と組み合わせて使用されることもあります。それぞれの検査の結果を総合的に判断することで、より正確な認知機能の評価が可能になり、適切な治療やケアにつなげることができるのです。

>> 【医師が解説】認知症の検査で行われる長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは

MMSE検査の手順と評価方法

認知症のサインは早期発見が重要です。MMSE検査は、認知症の早期発見に役立つ簡便な検査です。検査を受けることに不安を感じる方もいるかもしれませんが、検査自体は簡単で時間もそれほどかかりません。検査の内容と結果について、具体的に見ていきましょう。

検査の流れと所要時間

MMSE検査は、問診形式で行われ、5~10分程度で終了します。「今日は何月何日ですか?」といった質問や、「これから言う3つの言葉を覚えてください」といった簡単な課題を通して、認知機能の状態を調べます。

検査の流れは以下のとおりです。まず、見当識の確認から始まります。日付や場所など、現在の状況を理解しているかを質問します。例えば、「今日は何年何月何日ですか?」「ここはどこですか?」などの質問を通して、時間、場所、人物に関する見当識が評価されます。

次に、記憶力の検査を行います。いくつかの単語を覚えられるか、少し時間を置いてから思い出せるかを調べます。これは短期記憶能力を測るために行われます。日常生活では、買い物リストを覚えたり、電話番号を一時的に記憶したりする際に、この短期記憶が用いられています。

続いて、計算能力の検査を行います。簡単な引き算をしてもらいます。例えば「100から7を順番に引いてください」というような質問を通して、注意機能と計算能力が評価されます。これは日常生活における金銭管理や、料理の際に必要な材料の分量計算などに必要な能力です。

さらに、言語能力の検査を行います。物の名前を言ったり、簡単な文章を復唱したりしてもらいます。例えば、「鉛筆と時計を見せて、何と言うか答えてください」や「今日は良い天気です。これを繰り返してください」といった課題を通して、言語理解や表出能力がチェックされます。円滑なコミュニケーションには、これらの能力が不可欠です。

最後に、図形を描写してもらいます。与えられた図形を模写することで、視空間認知機能や構成能力を評価します。これは、図形を認識し、それを再現する能力を測るもので、日常生活では、地図を読んだり、家具の配置を考えたりする際に役立ちます。

これらの検査項目を通して、認知機能の様々な側面が総合的に評価されます。検査は個室で行われることが多く、リラックスした雰囲気の中で行われますので、過度に心配する必要はありません。

MMSE検査で評価される具体的な認知機能

MMSE検査では、主に以下の5つの認知機能領域が評価されます。

  1. 見当識: 時間、場所、人物など、自分が置かれている状況を正しく認識できているか。例えば、自宅に居ながら「ここは病院です」と答える、あるいは、家族を認識できないといった場合は、見当識の障害が疑われます。
  2. 記憶力: 新しい情報を覚え、それを後で思い出せるか。例えば、数分前に聞いた3つの単語を全く思い出せない場合は、記憶力の低下が示唆されます。
  3. 注意と計算: 指示に従って計算したり、特定の課題に集中できるか。例えば、100から7を繰り返し引くことができない、あるいは、途中で他のことに気を取られてしまう場合は、注意と計算能力の低下が考えられます。
  4. 言語機能: 言葉の理解や発語、文字の読み書きなど、言葉を使ったコミュニケーションがスムーズにできるか。例えば、簡単な質問に答えられない、あるいは、自分の言いたいことがうまく伝えられないといった場合は、言語機能の障害が疑われます。
  5. 構成能力: 図形を模写したり、簡単な指示に従って行動できるか。例えば、簡単な図形を模写できない、あるいは、指示された通りに積み木を積むことができない場合は、構成能力の低下が考えられます。

これらの認知機能は、日常生活を送る上で非常に重要な役割を果たしています。これらの機能が低下すると、日常生活に様々な支障が出てくる可能性があります。

MMSEの採点基準と解釈方法

MMSE検査は、合計30点満点で採点され、点数が高いほど認知機能が良好です。一般的には、24点以下で認知症の疑いがあるとされています。27点以上であれば正常範囲と判断されますが、24~26点の場合は軽度認知障害の可能性、18~23点の場合は軽度~中等度の認知症の可能性、0~17点の場合は中等度~重度の認知症の可能性が示唆されます。

ただし、MMSE検査はスクリーニング検査であり、この結果だけで認知症の診断が確定するわけではありません。他の検査結果や日常生活の様子などを総合的に判断して、最終的な診断が下されます。

また、年齢や教育レベルによっても点数が変動することがあります。高齢者や教育レベルの低い人では、点数が低くなる傾向があります。特に、軽度認知障害(MCI)患者における認知症の早期発見を目的としたMMSE単独での使用は、精度が低いことが先行研究で示唆されています。そのため、MMSE検査で高得点であっても油断せず、定期的な検査や他の検査との組み合わせによって、より正確な状態把握に努めることが重要です。

他の検査としては、MoCAテスト、長谷川式簡易知能評価スケール、時計描画テストなどがあります。これらの検査を組み合わせて行うことで、認知機能のより詳細な評価が可能となります。

MMSE検査の結果とその意味

MMSE検査は、認知機能の状態を客観的に把握するための重要な手がかりとなります。検査を受ける前は不安に思うかもしれませんが、結果を知ることで、認知症への不安を軽減し、今後の生活設計を考えるきっかけになります。MMSE検査は、認知症の早期発見・早期対応の第一歩となる大切な検査です。

結果から分かること:認知症のサインとは

MMSE検査は30点満点で採点され、一般的には24点以下で認知機能の低下が疑われます。27点以上であれば正常範囲と判断されますが、24~26点の場合は軽度認知障害の可能性、18~23点の場合は軽度~中等度の認知症の可能性、0~17点の場合は中等度~重度の認知症の可能性が示唆されます。

しかし、2021年に発表された研究によると、MMSE検査単独では、軽度認知障害(MCI)から認知症へと進行する人を正確に識別するには不十分である可能性が示唆されています。つまり、27点以上の高得点であっても、認知症でないという保証にはならないということです。

この点数を参考に、医師は他の検査結果や日常生活の様子も総合的に判断します。例えば、普段の生活で買い物や料理、金銭管理などに支障が出ている場合、MMSEの点数が高い場合でも、より詳細な検査が必要となることもあります。

MMSE検査で分かる認知症のサインは、例えば以下のようなものがあります。

  • 物忘れ: 昨日の夕食の内容、約束したこと、新しい情報などを忘れてしまう。同じ質問を何度も繰り返す。
  • 時間や場所の認識力の低下: 今日が何曜日か、自分がどこにいるのか分からなくなる。季節感がなくなる。
  • 判断力の低下: 状況に適した服装を選べない、公共交通機関の利用が難しくなるなど、適切な判断ができなくなる。複雑な問題解決が困難になる。
  • 計算力の低下: 買い物のお釣りを計算できない、家計簿をつけるのが難しくなる。
  • 注意力の低下: テレビや会話の内容に集中できない。話しかけられても反応が遅くなる。複数のことを同時に行うのが難しくなる。
  • 見当識障害: 時間、場所、人物が分からなくなる。自宅にいても「ここはどこ?」と尋ねる。家族を認識できない。
  • 言語障害: 伝えたい言葉が出てこない。会話が途切れがちになる。話がまとまらなくなる。

これらのサインは、日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば、物忘れがひどくなると、日常生活の様々な場面で支障が出てきます。また、時間や場所の認識力の低下は、道に迷ったり、約束の時間に間に合わなかったりする原因となります。

認知機能検査の限界と注意点

MMSEは簡便で広く用いられている検査ですが、限界もあります。前述のように、軽度認知障害(MCI)の段階で認知症への移行を予測するには、単独のMMSEでは精度が不十分であるという研究結果が出ています。

また、教育レベルや文化的な背景、言語能力、視力や聴力、身体の麻痺などの影響も受ける可能性があり、必ずしも認知機能を正確に反映するとは限りません。例えば、高学歴の人はMMSEの点数が比較的高くなる傾向があります。

MMSEはあくまでもスクリーニング検査であり、この検査だけで認知症の確定診断を行うものではないことを理解しておくことが重要です。

MMSE検査後の対処法と次のステップ

検査の結果が良くても悪くても、まずは医師に相談しましょう。

結果が良好な場合でも、認知機能低下のリスク要因(高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、運動不足など)について医師と話し合い、予防策を検討することが大切です。規則正しい生活習慣を心がけ、バランスの取れた食事、適度な運動、質の高い睡眠を確保することで、認知機能の低下を予防できる可能性があります。

結果が芳しくない場合は、精密検査(頭部CT検査やMRI検査、血液検査など)が必要かどうか、日常生活でどのような工夫をすれば良いかなど、医師から具体的なアドバイスをもらえます。必要に応じて、薬物療法や認知リハビリテーションなどの治療が開始されることもあります。

MMSE検査は、認知症の早期発見・早期対応のための第一歩です。検査結果を踏まえ、医師と相談しながら、認知症予防や治療、そしてより良い生活を送るための具体的な方法を考えていきましょう。

まとめ

MMSE検査は、認知機能の状態を簡単に評価する検査です。5~10分ほどで終了し、日付や場所の確認、記憶力、計算力、言語能力、図形描写などを通して、認知機能の様々な側面をチェックします。30点満点で、24点以下だと認知症の疑いがあります。しかし、MMSEはスクリーニング検査であり、最終診断ではありません。

27点以上でも安心せず、定期的な検査や他の検査(MoCA、長谷川式など)と組み合わせることで、より正確な状態把握が可能です。ご自身の認知機能に不安がある場合、または、物忘れや判断力の低下などの症状がある場合は、MMSE検査を受けてみることをおすすめします。検査結果を基に、医師と相談し、適切な対応を検討しましょう。早期発見・早期対応が、より長く自分らしい生活を送るために非常に大切です。まずはお気軽に当院までご相談ください。

大石内科循環器科医院では、認知症(もの忘れ)外来で専門的な検査ができます。ご本人様自身でも、ご家族でも配慮しながら検査や診察を行えます。お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Arevalo-Rodriguez I, Smailagic N, Roqué-Figuls M, Ciapponi A, Sanchez-Perez E, Giannakou A, Pedraza OL, Bonfill Cosp X, Cullum S. Mini-Mental State Examination (MMSE) for the early detection of dementia in people with mild cognitive impairment (MCI). The Cochrane database of systematic reviews 7, no. 7 (2021): CD010783.

追加情報

[title]: Mini-Mental State Examination (MMSE) for the early detection of dementia in people with mild cognitive impairment (MCI).,

軽度認知障害(MCI)における認知症早期発見のためのミニメンタルステート検査(MMSE)

【要約】

  • 本論文は、軽度認知障害(MCI)患者における認知症の早期発見のためのMMSEの精度を評価した系統的レビューである。
  • 2014年5月までのデータベース検索で、MCI患者を対象とした縦断的研究11件(計1569名)を分析対象とした。これらの研究では、ベースライン時のMMSEスコアと、時間経過による認知症への転換を比較している。
  • 全ての原因による認知症への転換を検討した4件の研究では、MMSEの感度は23%~76%、特異度は40%~94%であった。
  • アルツハイマー病への転換を検討した8件の研究では、MMSEの感度は27%~89%、特異度は32%~90%であった。
  • 血管性認知症への転換を検討した研究は1件のみで、感度は36%、特異度は80%であった。
  • 本レビューの結果、単回投与のMMSE単独では、MCI患者から認知症へと進行する患者の識別において、十分な役割を果たす証拠は得られなかった。
  • 今後の研究では、単一の測定値ではなく、経時的なMMSEスコアの変化や、複数の検査を組み合わせることで、MCIからの認知症への転換をより正確に予測できる可能性を検討する必要があると結論付けている。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34313331,

[quote_source]: Arevalo-Rodriguez I, Smailagic N, Roqué-Figuls M, Ciapponi A, Sanchez-Perez E, Giannakou A, Pedraza OL, Bonfill Cosp X and Cullum S. “Mini-Mental State Examination (MMSE) for the early detection of dementia in people with mild cognitive impairment (MCI).” The Cochrane database of systematic reviews 7, no. 7 (2021): CD010783.



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