大好きな果物を食べた後に口の中が痒くなったり、喉がイガイガしたりした経験はありませんか?
もしかしたら、それはフルーツアレルギーかもしれません。フルーツアレルギーは、特定の果物に含まれるタンパク質に対して、体が過剰に反応することで起こる症状です。
近年は、果物アレルギーを含む食物アレルギーの患者数は増加傾向にあり、国民全体の約10%が何らかの食物アレルギーを持っていると推定されています。この記事では、フルーツアレルギーの原因や症状、そして適切な対処法について解説します。美味しい果物を安心して食べられるよう、ぜひ読み進めてみてください。
果物を食べて口がかゆくなったり、喉がイガイガしたり、皮膚がかゆくなったりした経験はありませんか?もしかしたら、それはフルーツアレルギーのサインかもしれません。
ここでは、フルーツアレルギーの原因や仕組み、そして他のアレルギーとの関連性について、わかりやすく解説していきます。
フルーツアレルギーは特定の果物に含まれるタンパク質を私たちの体が「異物」と認識してしまい、過剰に反応してしまうために起こります。この「異物」と認識されてしまうタンパク質のことを「アレルゲン」と呼びます。まるで私たちの体の中にいる小さな兵隊さんが、本来は安全なはずの果物に含まれるタンパク質を敵だと勘違いして攻撃してしまうようなものです。
キウイ・桃・バナナ・リンゴといった身近な果物にも、それぞれ主要なアレルゲンが存在します。
果物 | 主要アレルゲン | 特徴 |
---|---|---|
キウイフルーツ | アクチニジン | タンパク質分解酵素の一種で、ゼラチンを分解する力があるため、ゼラチンを使ったデザートと一緒に食べると、口の中がピリピリしたり、腫れたりすることがあります。これは、アクチニジンがゼラチンを分解することで、普段とは違う物質に変化し、それを体が異物だと認識してしまうためです。 |
桃 | プルナン | 桃の皮付近に多く含まれており、加熱しても分解されにくいという特徴があります。そのため、桃缶や桃の加工品でもアレルギー反応が出ることがあります。桃の缶詰を食べたお子さんが、口の周りや手が赤くなってしまった、というケースは少なくありません。 |
バナナ | バナナアレルゲン | バナナは加熱するとアレルゲンが変化しやすいため、生で食べると症状が出るけれど、加熱すると大丈夫という人もいます。バナナを焼いたり、揚げたりすることで、アレルゲンの構造が変化し、体が異物と認識しにくくなるためと考えられています。 |
リンゴ | マルd1 | リンゴの皮に多く含まれています。リンゴの皮を剥くと症状が軽くなることがあります。また、リンゴアレルギーの人はシラカバ花粉症やハンノキ花粉症を持っている場合があり、これは「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ばれています。これは、リンゴのアレルゲンと、シラカバやハンノキの花粉のアレルゲンが、構造的に似ているために起こります。 私たちの体の兵隊さんは、一度敵と認識したものをよく覚えています。そのためリンゴのアレルゲンと似た構造のものが入ってくると、「また敵だ!」と勘違いして攻撃してしまうのです。 |
これらのアレルゲンは、果物によって含まれている種類や量が異なるため、アレルギー反応の強さや症状も人それぞれです。
では、私たちの体の中では、どのようにしてアレルギー反応が起こるのでしょうか?
例えば、初めてキウイを食べたとします。この時、キウイのアレルゲンが体の中に入ってくると、私たちの免疫システムは「これは危険な異物だ!」と認識し攻撃を始める準備をします。
具体的には、免疫細胞が「IgE抗体」という、アレルゲンと戦うための特別な武器を作り出すのです。このIgE抗体は一度作られると再び同じアレルゲンが体の中に入ってきたときに、すぐに攻撃できるように体の中に記憶されます。これは、まるで敵の情報が書かれた「WANTED」ポスターを、体中に貼っておくようなものです。
次に、再びキウイを食べたとします。すると体の中に記憶されていたIgE抗体が、キウイのアレルゲンをキャッチし肥満細胞という細胞に「攻撃開始!」の合図を送ります。「WANTED」ポスターを見て、敵だと認識した兵隊さんが攻撃を開始するわけです。
この合図を受けた肥満細胞は、ヒスタミンやロイコトリエンといった化学物質を放出します。これらの化学物質が、目のかゆみ、鼻水、皮膚の発疹やかゆみといったアレルギー症状を引き起こす原因となるのです。
フルーツアレルギーを持つ人は、特定の果物だけでなく、野菜や花粉、latex ゴムなど他のものにもアレルギー反応を示すことがあります。これは果物と他の植物、あるいは latex ゴムとの間に構造の似たアレルゲンが存在することがあるためです。
例えば、リンゴのアレルゲンであるマルd1と構造が似ているアレルゲンは、バラ科の果物(モモ、サクランボ、ナシなど)、ナッツ類(アーモンド、ヘーゼルナッツなど)、野菜(セロリ、ニンジンなど)にも含まれています。そのためリンゴアレルギーの人は、これらの食品にもアレルギー反応を示す可能性があります。
また近年、食品加工技術の進化に伴い加工食品が食物アレルギーに与える影響も注目されています。食品加工技術は食品の保存性を高めたり味や香りを良くしたりするだけでなく、食品中のアレルゲンの構造を変化させる可能性があります。
例えば、加熱処理は、一部のアレルゲンタンパク質の構造を変化させアレルギー反応を引き起こしにくくすることが知られています。一方で、特定の加工方法によってアレルゲン性が新たに生じたり、増強されたりする可能性も懸念されています。そのため食品加工技術とアレルギーの関係については、さらなる研究が必要とされています。
特に、近年増加傾向にある食物アレルギーは、乳幼児や幼児において深刻な健康問題となっており、経済状況の変化や都市化、新しい食生活パターンや食品加工の進歩などが関連していると考えられています。加工食品がアレルゲン性に与える影響を理解することは、食物アレルギーのリスクを低減し、安全な食生活を送る上で非常に重要です。
フルーツアレルギーは、特定の果物に含まれるアレルゲンによって引き起こされるアレルギー反応です。美味しい果物を食べた後、なんだか体調が悪い…それはフルーツアレルギーのサインかもしれません。ここでは、フルーツアレルギーで起こる代表的な症状について詳しく見ていきましょう。
フルーツアレルギーで最も一般的な症状の一つが目のかゆみや鼻水です。これは花粉症とよく似た症状で、くしゃみや鼻詰まり、目の充血などを伴うこともあります。例えばキウイフルーツを食べた後に、目がかゆくて涙が止まらなかったり鼻水が止まらなくなったり、まるで風邪を引いた時のような状態になることがあります。
アレルギー反応で目がかゆくなるのはアレルゲンが目の粘膜に接触することで、免疫細胞がヒスタミンという物質を放出するためです。ヒスタミンは血管を広げたり、神経を刺激したりする作用があり、その結果、かゆみ、充血、涙などの症状が現れます。
また、鼻水が出るのも同様のメカニズムです。アレルゲンが鼻の粘膜に付着するとヒスタミンが放出され、鼻の粘膜の血管が拡張し permeability (透過性)が高まります。その結果、血液中の水分が鼻の粘膜に漏れ出し鼻水として出てくるのです。
フルーツアレルギーでは、皮膚に症状が現れることも少なくありません。代表的なものとして、じんましん・湿疹・かゆみなどがあります。
例えばリンゴの皮を剥いた後に手を洗わずに顔を触ってしまい、顔が赤くなってしまったり、かゆみを伴う湿疹が出てしまったりすることがあります。これらの症状も目のかゆみや鼻水と同様に、免疫システムの過剰反応によって引き起こされます。
皮膚の一部が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴います。まるで虫刺されのように、膨らんで赤くなるのが特徴です。数時間以内に消えることが多いですが、繰り返し出現することもあります。
皮膚が赤くなったり、小さな水ぶくれができたりします。かゆみが強く、掻きむしってしまうことで悪化することもあります。
特定の部位ではなく、全身にかゆみを感じることがあります。まるで皮膚の上を小さな虫が這っているような、我慢できないかゆみを感じることもあります。
多くの場合、フルーツアレルギーの症状は軽度で一時的なものがほとんどです。しかし、場合によっては、アナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性もあります。アナフィラキシーは、じんましん、呼吸困難、血圧低下、意識障害などを伴い、命に関わることもあります。
アナフィラキシーは、アレルゲンに対して体が過剰に反応し、全身にアレルギー症状が出る状態です。症状は、アレルゲンに接触してから数分~数時間の間に起こることが多いですが、まれに、24時間以上経ってから症状が出ることもあります。
アナフィラキシーの初期症状としては、じんましん、かゆみ、くしゃみ、鼻水、咳などがあります。その後、呼吸困難、血圧低下、意識障害などの全身症状が現れ、最悪の場合、死に至ることもあります。
果物を食べた後に、息苦しさ、めまい、嘔吐などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
「このフルーツ、もしかしてアレルギーかも?」と不安を感じたら、ぜひ当院にご相談下さい。当院ではドロップスクリーンというアレルギー検査を施行しています。
アレルギーの原因物質に対する抗体の量を測定します。腕からの採血を必要とせず、指先から血液が約1滴採取できれば検査が可能です。小さな針を使用し少しチクリとする程度のため、 注射や採血が苦手な方や小さなお子さまにもご利用いただけます。
血液採取後、30分程度お待ちいただければ当日中に検査結果がわかります。そのため、結果説明のための再度来院が要りません。 お仕事や学校、家事でお忙しい方にもご利用いただけます。
フルーツアレルギーの治療法は症状の重さや、原因となるフルーツの種類によって異なります。軽度であれば食事に気を付けることで症状を抑えられることもありますし、重症の場合には薬物療法や経口免疫療法などの治療が必要になることもあります。
基本的には、アレルギーの原因となるフルーツを食べないようにすることが大切です。「えー!大好きなフルーツが食べられないの?」と、思う人もいるかもしれませんね。でも安心してください。全てのフルーツがダメなのではなく、アレルギー症状を引き起こすフルーツだけを避ければ良いのです。
目のかゆみやくしゃみ、鼻水などのアレルギー症状を和らげるために、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの薬が処方されることがあります。
フルーツアレルギーと、うまく付き合っていくためには、日常生活で、以下のポイントに気を付けてみましょう。
加工食品などを購入する際は、原材料名表示を必ず確認しましょう。思わぬ食品に、アレルギーの原因となるフルーツが含まれていることがあります。食品加工技術は日々進歩しており一見果物が入っていないように見えても、加工過程でアレルゲンが混入してしまう可能性もあります。
レストランなどで食事をする場合は、店員さんにアレルギーについて伝え使われている食材を確認しましょう。飲食店側もアレルギー対応に力を入れているところが増えてきています。事前に相談することで、安心して食事を楽しむことができるでしょう。
信頼できる情報源から、フルーツアレルギーに関する正しい知識を身につけましょう。インターネット上には多くの情報が溢れていますが、中には信憑性の低い情報も含まれています。
フルーツアレルギーは適切な治療や自己管理によって、症状をコントロールすることができます。医師や専門家のアドバイスを受けながら、安心して生活できるよう一緒に取り組んでいきましょう。
フルーツアレルギーは、特定の果物に含まれるタンパク質(アレルゲン)に対する免疫システムの過剰反応によって起こります。
キウイ、桃、バナナ、リンゴなど、様々な果物にアレルゲンが存在し、症状は目のかゆみ、鼻水、皮膚の発疹やかゆみなど様々です。アレルギー反応は、アレルゲンが体内に侵入すると、免疫細胞がIgE抗体を作り出し、肥満細胞に攻撃開始の合図を送ることで、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、症状を引き起こします。フルーツアレルギーは、他のアレルギーと関連することがあり、特に花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)は、リンゴアレルギーとシラカバ花粉症などの関連性を示しています。
気になる症状がある場合は、ぜひ当院にご相談ください。原因物質を特定し、適切な治療を受けるようにしましょう。
大石内科循環器科医院
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