大石内科循環器科医院

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【循環器専門医が解説】心不全を予防する方法

2024.10.09

心臓は、まるで”疲れを知らない働き者。毎日休むことなく、私たちの体中に血液を送り続けてくれています。 しかし、そんな心臓も過労が続けば悲鳴を上げてしまうことも。 実は、心臓のポンプ機能が低下する「心不全」という病気は、決して他人事ではありません。

初期症状は疲れやすさや息切れなど、見過ごしてしまいそうなものが多いのも特徴です。

「最近、階段を上るのが少しキツくなったかな?」

「あれ?前よりちょっと動くと息切れするようになったかも…」

そんなサインを見逃さずに、心臓からのSOSを受け止めてあげることが大切です。

この記事では、心不全の予防法から治療法まで、具体的な方法をご紹介していきます。 「自分の心臓は大丈夫かな?」と不安に感じている方も、ぜひ参考にしてみてください。

心不全とは、どんな病気?

「心臓の病気って言われたけど、実際どんな病気なのかよくわからない…」そう思っていませんか?「心臓が悪い」と聞くと、心臓に何か悪いものが詰まっているイメージを持つ方もいるかもしれません。 確かに、心臓の血管が狭くなったり詰まったりする病気もありますが心不全は少し違います。

心不全は、心臓というポンプがうまく働かなくなる病気です。 私たちの心臓は、毎日休むことなく全身に血液を送り続けています。 しかし様々な原因で心臓に負担がかかり続けると、ゴムが伸びきってしまったように心臓は本来の力強さや柔軟性を失ってしまいます。 その結果、心臓は十分な量の血液を送り出せなくなり、全身に酸素や栄養が行き渡らなくなってしまうのです。

心不全は心臓のポンプ機能が低下する病気

心臓は、全身に血液を送り出すポンプとしての役割を担っています。 このポンプの働きには「収縮力」と「拡張力」の2つが重要です。

「収縮力」とは、心臓がギュッと縮んで血液を全身に送り出す力のことを言います。 例えば私たちが運動するとき、心臓はより多くの血液を必要とするため力強く収縮して血液を送り出します。

一方「拡張力」とは、心臓が膨らんで血液を体内に戻す力のことを言います。 十分な血液を取り込まなければ、全身に送り出すこともできません。 この心臓の拡張力が弱まると、心臓は血液で満たされにくくなり全身への血液供給が滞ってしまいます。

心不全は、この「収縮力」と「拡張力」のどちらか、あるいは両方が低下することで起こります。 心不全になると体中に十分な血液を送り出すことができなくなるため、様々な症状が現れるようになります。

息切れ、むくみ、体重増加など初期症状を見逃さないようにしましょう

心不全の初期症状は「最近、疲れやすいなぁ」「ちょっと動くと息切れがする」といった、日常生活で感じる程度の軽いものがほとんどです。 そのため「年のせいかな」「ちょっと疲れているだけかも」と安易に考えてしまいがちです。 しかし、これらのサインを見逃さずに早期に医療機関を受診することが大切です。

心不全の初期症状には、以下のようなものがあります。

症状具体例
息切れ・朝起きたときや、夜横になったときに息苦しさを感じる
・階段の上り下りや坂道を歩く際に、以前より息切れがするようになった
・少し歩いただけで息が切れてしまい、休憩が必要になった
むくみ・夕方になると靴や靴下がキツくなる・足首や足の甲を押すと、へこんだまま戻りにくい
・朝起きたときに顔がむくんで見える、指輪が抜けにくい
体重増加・食欲は変わらないのに、体重が増加している
・短期間で体重が2kg以上増えた

これらの症状は、心不全以外の病気でも起こることがあります。 しかし心不全が原因でこれらの症状が出ている場合は、放置すると症状が悪化し日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。 少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し医師に相談するようにしましょう。

放置すると命に関わることも…心不全の重症度

心不全は初期段階では自覚症状がほとんどない場合もありますが、放置すると徐々に悪化し命に関わる危険性も高まります。

進行すると安静にしているだけでも息苦しさを感じる、歩行が困難になるなど日常生活に支障をきたすほどの症状が現れるようになります。 さらに悪化すると、入院が必要となるケースも少なくありません。

心不全の重症度は心臓の機能低下や症状の程度に応じて、ステージAからステージDの4段階に分けられます。

ステージ病状症状
ステージA心不全になる危険因子を持っている状態自覚症状はほとんどない
ステージB心臓の機能が低下している状態運動時に息切れや動悸を感じる
ステージC心臓の機能が低下し、安静時にも症状が現れる状態少し動いただけで息切れや疲労感を感じる
夜間、呼吸困難で目が覚めることがある
ステージD心臓の機能が著しく低下し、治療を受けても症状が改善しない状態安静時でも強い息切れやむくみがみられる
入院が必要となることが多い

心不全はステージが進むにつれて、日常生活に支障をきたすようになり生命予後も悪化していきます。 特にステージDになると頻繁な入院や在宅酸素療法が必要となるなど、生活の質が著しく低下する可能性があります。

心不全は、決して他人事ではありません。 「自分はまだ大丈夫」と安易に考えずに日頃から生活習慣に気を配り、心不全の予防に努めることが大切です。 そして、もしも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し医師に相談しましょう。早期発見・早期治療によって、心不全の進行を遅らせ、健康な状態を長く保つことができるのです。

心不全を予防するために今日からできること

心不全は、心臓という体中に血液を送るポンプ機能が弱まってしまう病気です。 心臓は毎日休むことなく働き者ですが、その分、無理が祟りやすい臓器でもあります。 心不全が進行すると安静時でも息切れがしたり、疲れやすくなったり日常生活に大きな支障が出てしまうことも。 「まだ若いから大丈夫」「ちょっと生活習慣が悪いだけ」と軽く考えずに、今日からできる予防を心がけましょう。

塩分・水分摂取を控える

塩分の摂りすぎは高血圧のリスクを高めるだけでなく、心臓にも負担をかけ心不全のリスクを高めます。 塩分を摂りすぎると体は水分を溜め込もうとして血液量が増え、心臓はより多くの血液を送り出さなければならなくなります。 これは、ポンプ機能が弱っている心臓にとって重労働です。 ラーメンやうどんの汁を全部飲んでしまうのは、心臓に鞭を打っているようなもの。 1日6g未満を目安に、減塩を意識した食生活を心がけましょう。

「薄味なんて、ご飯が美味しくない!」と感じる方もいるかもしれません。 しかし、素材本来の味を生かした調理法や、香辛料、ハーブなどを活用すれば、塩分が少なくても満足感のある食事を楽しめます。

また、水分摂取も、心臓への負担を考慮することが大切です。 特に心不全の症状が出ている方は、医師の指示に従って水分摂取量を調整する必要があります。

適度な運動を習慣化する

「運動不足は良くない」と分かっていても、仕事や家事に追われて運動する時間がない方も多いでしょう。 しかし、激しい運動は必要ありません。 日常生活の中で、こまめに体を動かすことを意識するだけでも、心不全の予防に繋がります。

例えばエスカレーターやエレベーターではなく階段を使う、一駅分歩いてみる、テレビを見ながらストレッチをするなど、できることから始めてみましょう。 運動は心臓を鍛え、血液循環を良くするだけでなくストレス解消効果も期待できます。

禁煙、節酒を心がける

喫煙は血管を収縮させ、血圧を上昇させ、心臓に大きな負担をかけます。 また、ニコチンは血管を傷つけ動脈硬化を促進させるため、心不全のリスクをさらに高めます。 禁煙は心不全だけでなく、様々な病気のリスクを減らす効果が期待できます。

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過度な飲酒も心臓に負担をかけ、心不全のリスクを高めます。 アルコールは心臓を興奮させ、動悸や不整脈を引き起こす原因になります。 またアルコールの分解過程で中性脂肪が増加し、動脈硬化のリスクも高まります。 飲酒は適量を守り、休肝日を設けるなど節度を守ることが大切です。

ストレスを溜め込まない

ストレスは万病の元と言われるように、心身に様々な悪影響を及ぼします。 ストレスを感じると交感神経が優位になり、血管が収縮し血圧や心拍数が上昇します。 このような状態が続くと、心臓に負担がかかり心不全のリスクを高めます。

現代社会でストレスを完全に避けることは難しいですが、自分なりのストレス解消法を見つけ心身のリフレッシュを心がけることが大切です。 趣味に没頭したり、ゆっくりとお風呂に入ったり自然と触れ合ったり、自分に合った方法でストレスと上手に向き合いましょう。

定期的な健康チェックを受ける

自覚症状がない段階で心不全を発見するために、定期的な健康チェックが重要です。 血圧、血糖値、コレステロール値などを定期的に測定し、異常があれば早めに医療機関を受診しましょう。

健康診断の結果は必ず医師に相談し、自分の体の状態を正しく理解することが大切です。 早期発見、早期治療は、心不全を予防し健康な毎日を送るために非常に重要です。

まとめ

心不全は心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液を送り出せなくなる病気です。初期症状は息切れやむくみなど、軽いため見過ごされがちですが放置すると命に関わる危険性もあります。

心不全を予防するには、塩分・水分摂取の制限、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス管理、定期的な健康チェックが大切です。

心不全や心臓の不安、動悸などでお困りのことがあれば、循環器専門医の当院にご相談下さい。



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