大石内科循環器科医院

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CPAP治療で改善!睡眠時無呼吸症候群の症状と対策について解説

2025.07.08

「夜中に何度も呼吸が止まっているかもしれない」そんな不安を感じたことはありませんか?実は、日本だけでも200万人以上が睡眠時無呼吸症候群(SAS)に悩まされています。SASは自覚症状が少ないため放置されがちですが、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める危険性があります。

本記事では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な治療法であるCPAP治療について詳しく解説します。CPAP治療の仕組みやメリット・デメリット、効果的な継続方法まで、幅広く情報を提供します。記事を読むことで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)とCPAP治療への理解を深め、快適な睡眠と健康的な毎日を手に入れるヒントを得られます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは睡眠時に無呼吸になってしまう病気

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠時に無呼吸になってしまう病気です。寝ている間に何度も呼吸が止まることで、脳や体が酸素不足の状態になり、さまざまな不調が現れます。

10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が、7時間の睡眠中に30回以上、あるいは1時間あたり5回以上起こる場合に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、気道が狭くなることで起こります。睡眠中は、筋肉がリラックスして気道も狭くなるため、誰にでも起こり得る現象です。しかし、肥満やあごの骨格、扁桃腺の肥大などによって気道が極端に狭くなっていると、空気の通りが悪くなり、無呼吸状態に陥りやすくなります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因と症状について

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因はさまざまですが、大きく分けると以下の3つに分類できます。

  • 肥満:首や舌の周りの脂肪が気道を圧迫することで、無呼吸になりやすい状態を引き起こします。
  • あごの骨格:あごが小さく、首が短い骨格の人は、気道が狭くなりやすい傾向にあります。
  • その他:鼻の病気(アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎など)、扁桃腺の肥大、アデノイドの肥大、ホルモン異常、遺伝などが挙げられます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状は、睡眠中と起きている間の両方で現れます。睡眠中の症状は、以下のとおりです。

  • 大きないびきをかき、いびきが急に止まったり、再開したりする
  • 呼吸が止まっているときがある
  • 息苦しさを感じて何度も目が覚める
  • 寝汗をかく
  • 頻繁にトイレに起きる

大きないびきは、気道が狭くなっているために、空気が通りにくくなっている証拠です。起きている間に感じる症状は以下のとおりです。

  • 日中に強い眠気や倦怠感を感じる
  • 朝起きたときに頭痛がする
  • 集中力や記憶力が低下する
  • イライラしやすくなる
  • 口呼吸が多い

日中の強い眠気や倦怠感は、睡眠中に十分な酸素が得られなかったために、体が疲れやすくなっている状態です。集中力や記憶力の低下は、脳に十分な酸素が供給されず、脳の働きが鈍くなっている状態と言えます。症状が複数当てはまる場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と他の睡眠障害の違い

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、他の睡眠障害と症状が似ている場合があり、自己判断で見分けることは難しいです。日中の眠気を訴える病気には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)以外にも「ナルコレプシー」や「特発性過眠症」などがあります。不眠症の中には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れているケースもあります。

SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感などの症状を引き起こします。 一方、不眠症は睡眠時間や睡眠の深さが不足している状態を指し、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などがみられます。 寝る時間が短かったり、眠りが浅かったりして、夜中に何度も起きてしまう状態です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と他の睡眠障害を自己判断で区別することは困難なため、気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、専門医の診断を受けるようにしましょう。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療によって、心血管疾患の罹患率や死亡率が改善される可能性が示唆されています。

CPAP治療の仕組みと効果

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されると、治療が必要になります。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法はいくつかありますが、CPAP治療は、最も効果的な治療法の一つとして知られています。CPAP治療の効果は、患者さんの状態や治療計画を守ること、治療を続けることに影響を受けます。CPAP治療の仕組みと効果について詳しく解説します。

CPAP治療の基本的な仕組み

CPAP治療とは、Continuous Positive Airway Pressureの略で、日本語では「経鼻的持続陽圧呼吸療法」といいます。簡単に言うと「鼻から空気を送り込み、気道を広げて呼吸を楽にする治療法」です。寝ている間、喉の奥の筋肉がゆるんで気道が狭くなったり塞がったりしますが、CPAPの空気の力で気道を広げ続けることで、呼吸が止まるのを防ぎます。

CPAP装置は、コンセントに差し込んでスイッチを入れるだけの簡単な操作で使用できます。就寝時に装着し、朝まで継続して使用することで、睡眠の質を改善し、日中の眠気を軽減させる効果があります。

CPAP治療で全身の健康状態の改善効果がある

CPAP治療は睡眠時無呼吸症候群に対して、以下の効果をもたらします。

  • 睡眠の質が改善して深い睡眠時間が増加する
  • 日中の強い眠気や疲労感が軽減される
  • 集中力や注意力が改善する

CPAP治療の効果は高く、適切に使用することで、ほとんどの患者さんがいびきや無呼吸を改善しています。他にも、糖尿病などの生活習慣病のコントロールにも役立ち、動脈硬化の進行を予防する効果もあります。CPAP治療は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状改善だけでなく、全身の健康状態を向上させる効果があります

CPAP治療のメリットとデメリット、リスクや副作用について

CPAP治療は、今まで多くの患者さんに用いられてきた実績のある治療法ですが、他の治療法と同様に、メリットとデメリット、リスクや副作用も存在します。CPAP治療のメリットとデメリット、副作用について解説していきます。

治療を受けるメリット

CPAP治療を受けるメリットは以下のとおりです。

  • 体への負担が少ない
    手術などが不要で、体に負担が少ない治療法です。
  • 自宅で治療ができる
    専用の機械をレンタルして、自宅で手軽に治療が行えます。
  • 効果が高い
    多くの人にいびきや無呼吸の改善効果が見られます。
  • 合併症の予防効果も期待できる
    高血圧や心臓病、脳卒中などの合併症のリスクを減らす効果も期待できます。

治療を受けるデメリット

CPAP治療を受けるデメリットは以下のとおりです。

  • マスクの装着感
    鼻にマスクを装着するため、慣れるまでは違和感や圧迫感を感じる人もいます。患者さんの中には、マスクの圧迫感や息苦しさから、治療を継続できない方もいます。
  • 機械の稼働音
    機械の稼働音が気になる場合もあります。静音設計の機械もありますが、全く音がしないわけではありません。
  • 治療を継続する必要がある
    睡眠時無呼吸症候群(SAS)は生活習慣病の一種なので、CPAP治療は症状を改善し、健康を維持するために、継続して行う必要があります。

治療を受けるリスクや副作用

CPAP治療を受けるリスクや副作用は以下のとおりです。

  • 鼻の乾燥や鼻詰まり
    空気が鼻から入り続けるため、鼻の乾燥や鼻詰まりを感じる人もいます。
  • 皮膚トラブル
    マスクが肌に合わない場合、皮膚がかぶれたり、赤くなったりすることがあります。
  • 眼の乾燥や充血
    マスクから空気が漏れて、目に当たり、乾燥や充血が起こることがあります。
  • お腹に空気が溜まる
    空気を吸い込む際に、お腹に空気が溜まってしまうことがあります。

上記のリスクや副作用は、適切な対処法を行うことで軽減できます。鼻の乾燥には、加湿機能付きのCPAP装置を使用したり、鼻にワセリンを塗ったりすることで対処できます。

CPAP治療の適応条件や禁忌事項について

CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断された人の多くに有効な治療法ですが、すべての人に適応されるわけではありません。治療の適応となる人と適応とならない人、禁忌事項について解説します。

治療の適応になる人

CPAP治療の適応になる人は以下のとおりです。

  • 中等症以上の睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断された人。無呼吸低呼吸指数(AHI)が1時間あたり15回以上の場合が目安です。
  • 軽症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)でも、日中の眠気や倦怠感などの症状が強い人。
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴い、高血圧や心臓病などの合併症がある人。
  • 妊婦さんで、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のリスクが高い人。

治療の適応にならない人

CPAP治療の適応にならない人は以下のとおりです。

  • 鼻の病気などで、マスクの装着が難しい人
  • 意識障害があり、自分でマスクの着脱ができない人
  • CPAP治療に協力できない人
  • 顔面骨折など、CPAP治療に影響するような病気がある人

CPAP治療が適応となるかどうかは、医師の診察と検査結果にもとづいて判断されます。CPAP治療が気になる方は、まずは医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

治療の禁忌事項

CPAP治療には、いくつかの禁忌事項があります。禁忌となる状態は以下のとおりです。

  • 自発呼吸がない
  • 意識レベルが低下している
  • 重度の心肺機能不全状態
  • 顔面に外傷や火傷がある
  • 最近顔面、食道、胃の手術を受けた方
  • 肺嚢胞がある

他にも、中枢型睡眠時無呼吸症候群や呼吸不全のある患者さんには、使用できないか、慎重に行う必要があります。禁忌事項に当てはまる患者さんは、CPAP以外の適切な治療法を検討する必要があります。

CPAP治療における機器の選び方や設定方法

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、CPAP治療が必要と診断された場合、「CPAP治療ってどんなものだろう?」と不安に感じる方が多いです。

CPAP治療を始めるにあたって、知っておくべき使用方法をお伝えします。CPAP治療は、正しく使用すれば、睡眠中の無呼吸状態を改善し、日中の眠気や倦怠感などの症状を軽減できます。

正しいCPAP機器の選び方と設定方法

CPAP治療でまず行うことは、自分に合ったCPAP機器(装置とマスク)を選ぶことです。CPAP機器は、医療機関と相談しながら決めますが、自分に合った機器を選ぶことで、治療効果を高め、快適に治療を続けることができます。

マスクの種類

CPAPマスクには、鼻だけを覆う「鼻マスク」、鼻と口の両方を覆う「フルフェイスマスク」、鼻の穴に差し込むタイプの「ナザールマスク」など、いくつかの種類があります。それぞれのマスクには特徴があるので、自分の顔の形や鼻の高さ、口呼吸の有無などを考慮して、医師と相談しながら最適なものを選びましょう。

以下の表で、マスクの種類と特徴についてまとめます。

マスクの種類特徴
鼻マスク比較的圧迫感が少なく、視野が広い
フルフェイスマスク口呼吸が強い人に向いている。圧迫感を感じやすい場合もある。
ナザールマスク閉所恐怖症の人に向いている。空気漏れしやすい。

空気圧の設定

CPAP治療では、適切な空気圧を設定することが重要です。空気圧が低すぎると治療効果が得られず、高すぎると口を開けてしまったり、鼻が乾燥したりするなど、体に負担がかかってしまいます。自分に最適な空気圧は、検査結果や症状、使用感などを踏まえて、医師が設定します。

加湿機能

CPAP治療中は、鼻や喉が乾燥しやすくなることがあります。乾燥が気になる場合は、加湿機能付きのCPAP機器を使うと良いです。加湿機能を使うことで、乾燥による不快感を軽減し、快適に治療を続けることができます。特に、冬場など、空気が乾燥する季節には、加湿機能の使用をおすすめします。

CPAP治療中に感じる不快感や違和感への対処法

CPAP治療は、多くの患者さんにとって効果的な治療法ですが、治療開始直後や治療中に、いくつか不快感や違和感を覚えることがあります。よくある不快感と対処法については、以下のとおりです。

不快感対処法
マスクの締め付け感マスクのサイズや装着位置を調整する。異なるタイプのマスクを試してみる。
鼻や喉の乾燥加湿機能付きのCPAP機器を使用する。加湿レベルを調整する。
お腹の張り空気圧を調整する。仰向けではなく横向きで寝てみる。
空気漏れマスクが正しく装着されているか確認する。マスクのサイズやタイプを変更する。
閉所恐怖症鼻マスクやナザールマスクなど、圧迫感の少ないマスクを試してみる。徐々に使用時間に慣れていく。

CPAP治療がもたらす生活改善と効果的な継続方法

CPAP治療を継続することで、多くの患者さんが効果を実感しています。CPAP治療は、正しく使用すれば、睡眠中の無呼吸状態を改善し、日中の眠気や倦怠感などの症状を軽減することができます。CPAP治療の行ったことによる生活の変化や効果的な継続方法を紹介します。

CPAP治療による生活の変化

CPAP治療を行うことによる生活の変化は以下のとおりです。

  • 日中の眠気が改善する
    CPAP治療により睡眠中の無呼吸が減ることで、睡眠の質が向上し、日中の眠気や倦怠感が改善されます。
  • 集中力や注意力が向上する
    睡眠不足が解消されることで、集中力や注意力、判断力などが向上し、仕事や家事の効率がアップします。
  • 気分が安定する
    睡眠不足は、うつ病や不安障害などの精神的な問題を引き起こす可能性があります。CPAP治療によって睡眠の質が改善されると、気分が安定し、精神的なストレスを軽減することができます。
  • 生活習慣病を予防できる
    CPAP治療によって無呼吸を治療することで、生活習慣病(高血圧や糖尿病、心臓病など)のリスクを減らすことができます。CPAP治療によって心血管疾患のリスクが減少するという研究結果も報告されており、健康寿命の延伸にもつながると期待されています。

CPAP治療を効果的に継続する方法

CPAP治療を効果的に継続する方法は以下のとおりです。

  • 医師と連携を取る

定期的に医師の診察を受け、治療効果や副作用の有無などを確認しましょう。また、治療中に何か困ったことや不安なことがあれば、遠慮なく医師に相談しましょう。

  • セルフメンテナンスをする

CPAP機器は、清潔に保つことが大切です。マスクやチューブなどは、定期的に洗浄し、乾燥させましょう。CPAP本体は週1回、湿った布で拭きます。加湿器のウォーターチャンバーは毎日水を交換し、週1回洗浄します。

  • 治療のメリットを意識する

CPAP治療を継続することで、さまざまなメリットが得られます。治療のメリットを意識することで、モチベーションを維持することができます。例えば、日中の眠気が改善し、仕事や趣味に集中できるようになった、家族との時間が増えたなど、治療によって得られた変化を具体的にイメージすることで、治療の継続意欲を高めることができます。

  • 家族や周囲の人の理解を得る

CPAP治療について、家族や周囲の人に説明し、理解と協力を得ることは、治療を継続するうえで重要です。家族に治療の内容を理解してもらうことで、治療に対する精神的なサポートを得られ、生活習慣の改善にも協力してもらいやすくなります。

CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群の症状を改善し、QOL(生活の質)を向上させる効果が期待できます。医師と連携し、治療を継続していくことが大切です。

まとめ

CPAP治療は睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対する効果的な治療法です。主なポイントは以下のとおりです。

  • 鼻から空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防ぐ
  • 体への負担が少なく、自宅で手軽に治療できる
  • 高い治療効果と合併症予防が期待できる
  • マスクの装着感や継続の必要性などのデメリットもある
  • 医師の診断にもとづいて判断される

CPAP治療を正しく継続することで、睡眠の質が向上し、日中の眠気改善や生活習慣病リスクの低減が期待できます。治療に興味のある方や睡眠にお悩みの方は、当院にお気軽にご相談ください。

参考文献

Grewal N, Gordon D, Bajaj S, Gyimah C, Hassan M, Fatima U and Mehrotra PP. “Impact of Obstructive Sleep Apnea Treatment on Cardiovascular Disease Associated Mortality and Morbidity: A Systematic Review.” Current problems in cardiology 49, no. 1 Pt C (2024): 102139.

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