クレアチニン値は腎臓の健康状態を示す重要な指標です。しかし健診で低い値が指摘されたとしても、必ずしも健康上の問題があるとは限りません。その原因には筋肉量の減少や栄養不足、隠れた病気が関与している場合があります。
クレアチニン値の低下は成長期の子どもから高齢者まで、幅広い年齢層で見られることがあります。原因としては無理なダイエットや偏った食事、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患が挙げられます。
この記事では健診でクレアチニン値が低いと指摘された方に向けて、原因と必要な検査について詳しく解説します。健康診断の結果に不安を感じている方や、ご自身の健康状態をより深く理解したい方は、ぜひご覧ください。
クレアチニン値が基準値を超えている場合は、腎機能の低下が疑われることがあります。腎臓の健康を維持するためには、定期的な検査と早めの対策が重要です。クレアチニン値の異常を指摘された際の精密検査の必要性や、具体的な対策について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>健診でクレアチニン基準値異常の指摘!精密検査の必要性と対策
クレアチニン値が低い原因について、以下の内容を解説します。
クレアチニンは、筋肉活動後に生成される老廃物です。通常、腎臓で濾過され尿とともに排出されますが、腎機能が低下すると、血中クレアチニン値が上昇します。以下の場合は、クレアチニン値が低くなることがあります。
腎機能が低下していても、筋肉量不足でクレアチニン値が正常範囲内または低くなる場合があります。クレアチニン値が低いことが、必ずしも腎臓の健康を示すわけではありません。
糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)などの腎機能の低下を伴う疾患は、初期に自覚症状がほとんどありません。クレアチニン値が正常範囲内でも、病気が進行している可能性があります。早期発見には、クレアチニン値だけでなく、他の検査結果も総合的に判断することが重要です。
栄養状態の悪化も、クレアチニン値が低下する原因です。無理なダイエットや偏った食事、摂食障害などによってタンパク質が不足すると、筋肉を作る材料が不足し、クレアチニン値が低下する可能性があります。胃や腸などの消化器系の病気、手術後に栄養の吸収がうまくいかない場合も同様の影響を受けます。
成長期のお子さんは、筋肉や骨を作るために多くのタンパク質を必要とします。成長期にタンパク質が不足すると、成長の妨げになるだけでなく、クレアチニン値の低下にもつながる可能性があります。バランスの良い食事を心がけることが重要です。
内分泌疾患の一つである甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)は、クレアチニン値の低下と関連がある場合があります。甲状腺ホルモンは、体内のエネルギー代謝を活発にし、筋肉の分解を促進します。
甲状腺機能亢進症は、筋肉量が減少し、クレアチニン値が低くなることがあります。動悸や息切れ、体重減少など、他の病気でも見られる症状であるため、病気だと気づかずに過ごしている可能性があります。
クレアチニン値が低い場合に考えられる、以下の3つのリスクについて解説します。
クレアチニンは、筋肉から作られる老廃物です。クレアチニン値が低いことは、筋肉量の減少を示唆します。疲労や転倒のリスクを高めるだけでなく、将来的な健康リスクにもつながる可能性があります。筋肉量の減少による影響は、以下のとおりです。
高齢者は、肺炎などの感染症が重症化しやすいため、適切な運動や栄養摂取による筋肉量の維持が重要です。特に生活習慣病の中でも、糖尿病は筋肉量の低下と深い関わりがあるとされています。糖尿病についての詳しい情報を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>糖尿病について
妊娠中は胎児の成長に伴い、母体の血液量が増加し腎臓への負担が大きくなります。妊娠前からクレアチニン値が低い女性は、妊娠中にさらに値が低下し、合併症のリスクが高まる可能性があります。
妊娠高血圧症候群は、母体と胎児の双方に深刻な影響を及ぼす可能性のある合併症です。高血圧や蛋白尿、浮腫が特徴で、重症化すると痙攣(けいれん)や意識障害を引き起こす場合があります。
クレアチニン値が低い妊婦は、早産や低出生体重児のリスクが高まる可能性があります。早産とは、妊娠37週未満で出産することを指します。低出生体重児とは、出生時の体重が2500g未満の新生児のことです。早産や低出生体重児は、将来的にさまざまな健康問題のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
クレアチニン値と心血管疾患の関連性については、まだ研究段階であり、明確な結論は出ていません。しかし、クレアチニン値が低い背景にある栄養状態の悪化は、動脈硬化のリスクを高め、筋肉量の減少は心機能の低下につながる可能性があります。
甲状腺機能亢進症などの基礎疾患も、心血管疾患のリスクを高める可能性があります。心血管疾患は、心臓や血管に起こる病気の総称で、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などが含まれます。日本人の死因の上位を占める重要な病気です。
クレアチニン値が低い方は、生活習慣の改善や定期的な健康診断を通じて、心血管疾患の予防に努めることが大切です。詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
>>健康診断で異常があったらどうする?|静岡市にお住まいの方へ
クレアチニン値を正しく測定して、適切に管理する方法について、以下の内容を解説します。
クレアチニン値が低い原因を特定するには、いくつかの検査を組み合わせて行うことが重要です。血液検査では、クレアチニン値だけでなく、尿素窒素や尿酸、eGFR(推算糸球体濾過量:腎臓の濾過機能を数値化したもの)を測定します。腎臓がどれくらい老廃物を濾過できているか、総合的に判断するための大切な情報です
尿検査では、尿の中にタンパク質や糖が混ざっていないかを調べます。腎臓が正常に機能していれば、タンパク質や糖は血液中に留まり、尿中にはほとんど出てきません。尿中にタンパク質や糖が検出された場合は、腎臓に何らかの異常がある可能性が考えられます。
超音波検査では、腎臓の形や大きさ、腫瘍や結石の有無を調べます。体の外から超音波(人間の耳には聞こえない高周波の音波)を当てて、反射の様子を画像化することで、痛みや被ばくなく腎臓の状態を視覚的に確認できます。検査を組み合わせることで、クレアチニン値が低い原因をより正確に特定することが可能です。
クレアチニン値が低い場合、筋肉量の減少が原因の一つと考えられます。筋肉は、主にタンパク質から作られるため、食事から十分なタンパク質を摂取することが重要です。肉や魚、卵、大豆製品など、良質なタンパク質をバランスよく摂り入れるようにしましょう。
過度なダイエットや激しい運動は、筋肉の分解を促進する可能性があります。健康を維持するためには、適度な運動とバランスの取れた食事を心がけることが大切です。
十分な睡眠と休息も健康維持には欠かせません。睡眠不足や慢性的な疲労は、体のさまざまな機能に悪影響を及ぼし、筋肉の合成を阻害する可能性があります。質の高い睡眠を確保し、心身ともにリラックスできる時間を作るようにしましょう。漢方薬の使用については、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
クレアチニン値が低いと指摘されると、将来の健康への不安を感じるのは当然なことです。検査結果について医師と話し合い、疑問や不安を解消することが大切です。
家族や友人など、周囲の理解とサポートも心の支えになります。信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になる可能性があります。
必要に応じて、カウンセリングなどの専門的な支援を受けることも検討してみましょう。心の健康を保つことは、体の健康にもつながります。一人で抱え込まずに、周りの人に相談することをおすすめします。
クレアチニン値が低い場合、定期的な検査で経過観察を行うことが重要です。生活習慣の改善や治療の効果を確認するためにも、フォローアップ検査は欠かせません。検査の頻度は、個々の状態や原因によって異なります。
クレアチニン値が低いときは放置せずに、適切な検査を受けて原因を特定することが重要です。検査結果をもとに、医師と相談しながら、生活習慣の改善や治療に取り組むことで、健康な状態を維持できる可能性があります。
健康診断で異常を指摘された場合の対応や、再検査の重要性について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
>>健康診断で異常があったらどうする?|静岡市にお住まいの方へ
クレアチニン値が低いと診断された場合、すぐに深刻な病気を心配する必要はありません。定期健診で原因を特定し、適切に対処することが大切です。筋肉量の減少や栄養不足が原因の場合、バランスの良い食事と適度な運動で改善できる可能性があります。
腎臓疾患などの隠れた病気が原因の場合は、血液検査や尿検査、超音波検査などの精密検査を行い、医師の指示に従って治療や経過観察を行うことが重要です。早期発見・早期治療が、健康維持の第一歩となります。不安がある場合は、医師や専門家に相談しましょう。
一方で、クレアチニン値が高い場合は、腎機能低下のサインである可能性があります。適切な対策をとることで、腎臓の健康を守ることができます。クレアチニン値が高いと指摘された場合の具体的な対策や、食事の工夫について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>クレアチニンが高いと健診で指摘されたら!今すぐできる対策と食事法
参考文献
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