健康診断でコレステロール値の高さを指摘される方が多くいます。コレステロールは細胞やホルモンの材料となる成分です。主にHDLコレステロール(善玉)とLDLコレステロール(悪玉)と呼ばれる種類があり、それぞれ異なる働きをします。適度な運動や生活習慣の見直しは、コレステロール値に良い影響を与える取り組みです。
心臓の手術をした方でも、リハビリによって心肺機能の改善や善玉コレステロールの増加、中性脂肪の減少が報告されています。この記事では、コレステロール値の基準値や異常値が示すリスク、今日からできる改善策を解説します。コレステロールについて正しく理解し、健康づくりに役立てましょう。
コレステロール値の基本的な知識を、以下のとおり解説します。
コレステロールは体を作るために必要な脂質の一種で、主に以下の成分の材料になります。
食事からもコレステロールを摂取しますが、体内でも自然に作られます。コレステロールは水に溶けにくいため、リポタンパク(リポプロテイン)という、脂質とタンパク質が合体した物質として血液中に運ばれる仕組みです。
コレステロール値は主に3つの種類があり、特徴は以下のとおりです。
LDLコレステロール(悪玉)は、コレステロールを血管に運び、増えすぎると動脈硬化を進行させる原因になる脂質です。HDLコレステロール(善玉)は、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きがあり、動脈硬化を防ぐ役割を担っています。
トリグリセリド(中性脂肪)は、食事や肝臓で合成される脂質で、エネルギー源として利用され、脂肪組織に蓄えられます。トリグリセリド(中性脂肪)が多すぎると、肥満や動脈硬化の原因になるため注意が必要です。
適切な運動と生活習慣の見直しで、コレステロール値の改善を目指しましょう。
HDLコレステロール(善玉)を増やすには、生活習慣の改善が重要です。具体的な方法と特徴は以下のとおりです。
HDLコレステロールの増加や脂質バランスの改善を意識し、健康的な生活を目指しましょう。
以下の記事では、HDLコレステロールがなぜ「善玉」と呼ばれるのか、役割や健康への具体的な影響など、基礎知識を解説しています。
>>HDLコレステロールは高いほうが良い?基礎知識や役割、健康に与える影響を解説
LDLコレステロール(悪玉)を増やす可能性があるため、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食品は控えましょう。具体的な食品は以下のとおりです。
食物繊維にはコレステロールの吸収を抑える働きがあるため、積極的に取り入れましょう。主な食材は以下のとおりです。
適度な運動もLDLコレステロール(悪玉)を下げる効果が期待できます。ウォーキングなどの軽い運動を、日常生活の中で無理なく取り入れることが大切です。
以下の記事では、LDLコレステロールが高くなることで生じるリスクや、なぜ“悪玉”と呼ばれるのかといった基礎知識に加え、数値を改善のための具体的な方法を解説しています。
>>LDLコレステロールとは?危険性と改善方法について解説
血液検査でわかるコレステロールの基準値について、以下の3つを解説します。
年齢を重ねると、血管や代謝の変化、生活習慣の影響で、コレステロール値が上がりやすくなることがあります。コレステロールの主な検査項目や基準値は以下のとおりです。
総コレステロールは、目安とされる範囲を超えると脂質異常症の疑いが生じ、動脈硬化のリスクが高まる可能性があります。LDLコレステロールは一定の範囲を超えると血管に悪影響を及ぼし、動脈硬化を引き起こすことがあるため注意が必要です。
HDLコレステロールは、基準値を下回ることで動脈硬化のリスクが高まることがあります。中性脂肪は、基準より高くなると脂質異常症の可能性があり、動脈硬化や急性膵炎につながることもある状態です。体質や生活習慣、持病の有無によって適切な値が変わることがあります。
基準値内でも油断せず、日ごろからバランスの良い食事や運動を心がけることが大切です。
コレステロールの基準値には、性別によるわずかな違いがあります。女性に現れやすい傾向は以下のとおりです。
数値は一般的な目安であり、個々の体質や生活習慣、既往歴などによって異なります。健康診断の結果で気になる点があれば、自己判断せず医師に相談しましょう。健康診断で測定される血液検査の数値を通して、動脈硬化や肝臓などの臓器の異常を発見できる可能性があります。
最近の研究では、特定の血液項目から急性肝不全の発症リスクを予測できる新しい指標が開発されています。
コレステロール値を調べるには、血液検査が一般的です。血液検査には主に以下の2種類があります。
中性脂肪の値は食後に変動するため、正確な結果を得るには空腹時の採血が推奨されます。健康保険の適用状況により異なりますが、自己負担が3割の場合、1,000〜3,000円程度が目安です。検査を受ける前に、医療機関に費用を確認しましょう。
コレステロール値が基準から外れた場合に生じるリスクは、以下のとおりです。
LDLコレステロールの値が高いと血管の内壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化が進行する可能性があります。LDLコレステロールが120mg/dL以上の場合は、高LDLコレステロール血症の可能性があるため、適切な対処が必要です。総コレステロールが200mg/dLを超える場合は、脂質異常症が疑われます。
コレステロール値が高いことでリスクが増す疾患は多く、代表的なものは以下のとおりです。
動脈硬化の初期は症状が現れにくく、血流の悪化が進むことで各臓器に影響が出る可能性があります。心筋梗塞は胸の痛みや呼吸困難、吐き気、冷や汗などを伴い、迅速な治療が必要となることがあるため注意が必要です。脳梗塞は手足の麻痺やしびれ、言語障害、意識障害などが起こり、重い後遺症が残る場合があります。
狭心症は一時的な胸の痛みや圧迫感、息苦しさ、肩や背中の痛みなどの症状が見られることがあります。コレステロール値が高いことでリスクが増す病気は、命に関わるケースが多いため、早期発見が重要です。コレステロール値が高い場合は放置せず、医師の指導のもと食事や運動など生活習慣の見直しに取り組みましょう。
HDLコレステロールは血管内にたまったコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶ働きを持っています。コレステロール値が極端に低いと、体にさまざまな不調が現れることがあります。具体的な症状とリスクは以下のとおりです。
HDLコレステロールが基準値より低い場合、動脈硬化のリスクが高まることがあるため注意が必要です。栄養バランスの良い食事や適度な運動を心がけ、定期的に血液検査を受けて自身の状態を確認しましょう。
コレステロールの異常値に対する治療について、2つのポイントを解説します。
脂質異常症の治療には、コレステロール値をコントロールする薬が用いられることがあります。主な種類と特徴は、以下のとおりです。
スタチン系はLDLコレステロールを低下させる薬で、筋肉痛や肝機能障害などの副作用に注意が必要です。フィブラート系は中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上げる作用が期待できます。消化器症状や胆石のリスクがあるため、使用時には慎重な対応が必要です。
小腸コレステロールトランスポーター阻害剤は、腸でのコレステロール吸収を抑え、LDL値を低下させる効果が期待できます。重度の肝障害や筋障害を引き起こす可能性があるため、服用中は医師の指導のもと、慎重な管理が必要です。
医師は患者さんの体調や生活習慣、他の疾患の有無などを総合的に判断して薬を選択します。自己判断で薬を中止したり量を変えたりせず、医師の指示に従って服用することが重要です。
コレステロールのコントロールは、長期的に取り組むことが重要です。脂肪の多い食品は控えて食物繊維や青魚を摂り、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を取り入れることから始めましょう。コレステロール値の改善期間は個人差が大きく、数か月以上の期間を要することがあります。
医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけ、根気強く取り組むことでコレステロール値の改善を目指しましょう。
コレステロール値の改善するための対策を以下の5つ解説します。
コレステロール値を改善するには、毎日の食事内容を見直すことが重要です。食事を工夫するうえで、気をつけたいポイントは以下のとおりです。
脂身の多い肉やバター、乳製品などに含まれる飽和脂肪酸は、LDLコレステロールを増やす可能性があるため控えましょう。マーガリンや揚げ物に多く含まれるトランス脂肪酸も、LDLコレステロールを増やす可能性があるため注意が必要です。
揚げ物は避け、蒸す・焼く・茹でる調理法がおすすめです。オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を使うことで、良質な脂質の摂取を目指すことができます。青魚に豊富なオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)や野菜、海藻、果物は、食物繊維が豊富なため意識して摂りましょう。HDLコレステロールを増加させる効果が期待できます。
鮭と野菜のホイル焼きは、手軽に作れて栄養満点なレシピの一例です。アルミホイルに鮭と野菜をのせて包み、オーブントースターで10〜15分焼くだけで簡単に作れます。鮭は良質なタンパク質とオメガ3脂肪酸を豊富に含み、野菜も一緒に摂れるため、コレステロール対策におすすめのメニューです。
主菜や副菜、汁物を組み合わせ、さまざまな食材を取り入れるよう心がけましょう。
定期的な運動はコレステロール値の改善だけでなく、心臓や血管の健康維持、生活習慣病の予防効果も期待できます。おすすめの運動は以下のとおりです。
週1回から始めて徐々に時間や回数を増やし、週3回・1回30分程度の運動を目指しましょう。
ストレスや睡眠不足は、コレステロール値に悪影響を与える可能性があります。身心のバランスを保つためにおすすめの習慣は、以下のとおりです。
無理なく続けられる方法を見つけ、心身ともに健やかな状態を保ちましょう。
喫煙はLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らす可能性があります。過度の飲酒は中性脂肪の値を上昇させることがあるため、飲みすぎに注意し、できるだけ控えましょう。無理のない範囲から始め、不安な点があれば医師に相談することが大切です。
コレステロール値は加齢とともに変化しやすいため、年齢に応じた対策が重要です。年齢別の対策例は以下のとおりです。
ライフステージに応じた対策を心がけ、日々の生活習慣を見直しましょう。
コレステロールにはHDLコレステロールとLDLコレステロールがあり、それぞれのバランスが重要です。LDLコレステロールが増えすぎると動脈硬化などを引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高める可能性があります。
基準値は年齢や性別によって異なりますが、健康診断で異常値を指摘されたら、生活習慣の見直しから始めましょう。食事では飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控え、オメガ3脂肪酸や食物繊維を積極的に摂り入れることが大切です。適度な運動も、HDLコレステロールを増やし、LDLコレステロールを減らす効果が期待できます。
睡眠不足や喫煙、飲酒などの生活習慣を改善し、ご自身の年齢に応じた対策を意識することも重要です。日々の生活の中で適切なコレステロール値を意識し、健康的な毎日を目指しましょう。
健診で異常があった際の再検査について、詳しい情報は下記ページをご覧ください。
>>健康診断で異常があったらどうする?|静岡市にお住まいの方へ
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