以前「睡眠の質向上セミナー」でお話いたしました「あなたの睡眠は大丈夫ですか」の抜粋をブログでご紹介いたします。
皆さん「理想の睡眠」と聞きイメージされるものは何でしょうか?
高級ホテルの広々としたベッドでの眠る、それとも実家の暖かいお布団で眠る、部屋のベッドで時間を気にせず好きなだけ眠る、皆さんが思い浮かべる理想的な睡眠の姿は人それぞれでしょう。
今回は医学的な観点で理想の睡眠についてご説明いたします。理想の睡眠のために必要なもの、それは
「睡眠時間」 × 「睡眠の質」
この2つになります。
最近の生活の中で下のような状況で、うとうとしたり眠ってしまうことがありませんか?1~8の質問の合計が何点になるか調べてみてください。
11点以上の場合、日中の眠気が強く理想の睡眠とは言えない状態と考えられます。
但し、眠気の感じ方は個人差があるため眠気を過大評価または過小評価し実績に伴わない場合もあります。
合計点数が11点以上の方は日中の眠気が強いと考えられ、現状では「理想の睡眠」ではない可能性が高いと思われます。
理想の睡眠の要素は、睡眠時間と睡眠の質になります。そのため原因は下記のいずれかになります。
まずは「睡眠時間」についてご説明いたします。睡眠時間が6時間未満の方は、睡眠時間が7~8時間の方と比べ、何かが2.4倍といわれています。
それは何でしょうか?
睡眠時間が6時間以下の方は7~8時間の方に比べて、死亡率が2.4倍高くなるという報告があります。
出典J Epidemiol.2004 Jul;14(4):124-8)
睡眠時間が短くなるほど、食欲を抑制し満腹感をもたらすレプチンというホルモンの分泌が減少する一方、食欲を高めるグレリンというホルモンが増えます。その結果、必要以上に食事の量が増え肥満になりやすくなます。
生活習慣病のリスクが高まりその結果、心疾患や脳卒中・腎臓病になりやすくなると言われており悪循環となってしまいます。
最適な睡眠時間は18歳以上の成人の方はおおよそ7~8時間と言われています。
ちなみに「人間はノンレム睡眠とレム睡眠が1.5時間周期でやってくるので、6時間睡眠が理にかなっている」という説がありますが、残念ながらそうではないことが知られています。周期はその日の体調など個人差があるため、ちょうど1.5時間でないことがほとんどです。やはり、理想の睡眠時間は7~8時間です。
一方で睡眠時間は確保していても先ほどの結果が11点以上の方は、睡眠の質の方に問題があるのかもしれません。
ここからは睡眠の質を左右する病気、睡眠時無呼吸症候群をご紹介します。
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている時に無呼吸状態になる病気です。無呼吸状態とは呼吸が10秒以上止まっていることを指し、この状態が7時間に30回以上あるいは1時間あたり5回以上あると睡眠時無呼吸症候群(SAS)と定義されています。
眠時間をしっかり確保していても、睡眠時無呼吸症候群の場合、やはり生活習慣病(糖尿病や高血圧など)になるリスクが高まります。
そして、心疾患、脳卒中に罹患しやすくなり最終的には死亡率が高くなってしまいます。
健常人と比較して
●高血圧症2倍
●冠動脈疾患3倍
●脳血管障害4倍
2008年3月
愛知県 大型トレーラーが赤信号の交差点に進入。横断歩道を横断中の男性が死亡。運転手は起訴後に重度のSASと診断。
2009年10月
長崎県 遊漁船が岩場に衝突し、釣り客ら3人が死傷。船長がSASであり慢性的な睡眠不足であったことが判明。船長は業務上過失致死傷容疑で熊本地検に書類送検。
2012年4月
群馬県 関越自動車道で走行中のツアーバスが、運転手の居眠りにより防音壁に衝突。乗客45人が死傷。運転手にはSASの所見が確認。
2012年7月
東京都 首都高速湾岸線でトラックがワゴン車に衝突。東京税関職員6人が死傷。トラック運転手はSASと診断。
2015年1月
東京都 路線バスの居眠り運転事故によりバスが電柱に衝突し、19人が重軽傷。SASの検査を受けずに放置し、居眠り運転したことが判明。事故後に中等度のSASと診断。
2016年1月
宮城県 回送中の仙台市営バスが道路脇の水田に転落。乗客は乗っておらず、運転手が軽傷。SASと診断され、経過観察中の事故と判明。
出典:三好規子, ほか: 診断と治療のABC, 最新医学社, 2017; 125-136
交通事故を起こす可能性 7倍
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、そうでない方と比べ7倍交通事故を起こしやすいと言われています。
このような症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群が疑わしいと思われます。自分が睡眠時無呼吸症候群かもしれないと思ったり、ベッドパートナーから指摘されたぜひ当院にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群が疑わしい方には、自宅で簡単に行うことができる検査(簡易型睡眠ポリクラフィ―)を受けていただきます。
●鼻カニューラ(ブルーのチューブ)
鼻に付けて鼻の気流(呼吸の有無)と、いびきを検出します。
●SPO2センサ
手首と指先に付けてSPO2(酸素飽和度)と脈拍を検出します。
睡眠時無呼吸症候群は、早期発見・早期治療が重要な病気です。
理想の睡眠は健康寿命を延ばすためにも必要です。まずは簡単検査から始めましょう。
大石内科循環器科医院
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