健康診断の結果で「HDLコレステロール」という項目を見たことはありませんか?「コレステロール=悪者」というイメージを持つ人も多いと思いますが、実はコレステロールには体に良い「善玉コレステロール」と体に悪い「悪玉コレステロール」の2種類があります。
今回は、善玉コレステロールとも呼ばれ、血管の掃除屋さんとして活躍する「HDLコレステロール」について、その役割や重要性、そしてHDLコレステロール値を上げる方法を詳しく解説します。
HDLコレステロールは、高ければ高いほど血管が健康で心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを減らす効果が期待できます。この記事を読むことでHDLコレステロールを意識した生活を送り、健康的な毎日を過ごしましょう。
当院では、HDLコレステロールの値でお悩みの方の相談も承っています。
脂質異常症には体重管理が重要です。当院の肥満外来では、医師の診察をもとに栄養指導や運動プログラム、治療薬を組み合わせたアプローチを提供します。肥満治療薬のみの処方も可能です。あなたの健康改善をサポートします。
HDLコレステロールは体の中にある血管を掃除してくれる、とても頼りになる存在です。血管は、体中に栄養や酸素を届けるための大切な道路のようなものです。しかし、この道路に悪玉コレステロールというゴミが溜まってしまうと、血液の流れが悪くなり体にさまざまな問題が起こります。
そこで登場するのがHDLコレステロールです。HDLコレステロールは、血管の壁にくっついてしまった悪玉コレステロールを掃除機のように吸い取り、肝臓という臓器まで運んでくれます。
肝臓は体の中のゴミ処理場のような役割をしているので、HDLコレステロールのおかげで血管はいつもきれいに保たれています。
HDLコレステロールの値と、その値に対するイメージは以下の通りです。
数値 | 状態 |
60 mg/dL以上 | 血管清掃チームがフル稼働中。血管内はクリーンで健康的な状態です。 |
40~60 mg/dL未満 | 血管清掃チームは順調に働いています。血管の状態は良好です。 |
40 mg/dL未満 | 血管清掃チームの人手が足りません。生活習慣の改善で応援が必要です。 |
一般的に、血液検査でHDLコレステロール値が40 mg/dL以上であれば正常値とされています。HDLコレステロールの値が低いと血管がゴミだらけになってしまい、病気になってしまうリスクが高くなります。毎日の食事や運動に気を付けてHDLコレステロールを増やし、血管を健康に保つように心がけましょう。
HDLコレステロールは血管の掃除屋さんとして、動脈硬化を防ぐ役割を担っています。しかしこのHDLコレステロールが低い状態が続くと、血管の老化が進み心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まります。HDLコレステロールが低い3つの原因について解説します。
毎日の生活習慣の積み重ねが、HDLコレステロールの数値に大きく影響を与えます。偏った食事や運動不足、喫煙が影響を与えやすいです。
お掃除ロボットが部屋のゴミを集めてくれるところを想像してください。HDLコレステロールは、お掃除ロボットのように体の中の悪玉コレステロールを回収する役割を担います。脂っこい食事ばかりしていると部屋中にゴミが散乱している状態になり、お掃除ロボットだけでは処理しきれないのです。
野菜や魚、海藻、きのこなど、バランスの取れた食事を心がけることは、お掃除ロボットが働きやすい環境を整えます。結果として、HDLコレステロール値の改善に役立ちます。
運動不足は、お掃除ロボットのバッテリー切れのような状態です。運動をすることは、HDLコレステロールというお掃除ロボットの充電器の役割に相当します。毎日少しでも良いので、体を動かすことを心がけましょう。
デスクワークの合間に軽いストレッチをする、一駅分歩くなど日常生活の中で体を動かすことが大切です。
タバコの煙はまるで強力な磁石のように悪玉コレステロールを引き寄せ、HDLコレステロールの働きを弱体化させます。禁煙は有害な磁石を取り除き、HDLコレステロールが本来の力を発揮できる環境を作るために効果的です。
生まれ持った体質も、HDLコレステロール値に影響を与える要因の一つです。遺伝的に、HDLコレステロールを作り出す力が弱い体質の方もいます。工場の生産ラインで例えると、生まれつきHDLコレステロールを作るラインの数が少ないようなイメージです。
生活習慣の改善や、医師の指導のもとで薬物療法を取り入れることで、HDLコレステロール値を改善できる可能性は十分にあります。
特定の病気や薬の影響で、HDLコレステロールが減少してしまうことがあります。具体的には、糖尿病や肝臓疾患、特定の薬が影響を与えます。
HDLコレステロールは体にとって良い働きをするコレステロールですが、健康とどのように関わっているのでしょうか。ここではHDLコレステロールが私たちの体を守ってくれるメカニズムを詳しく見ていきましょう。
HDLコレステロールは血管の壁に溜まった悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を回収し、肝臓に運んで処理する役割を担います。動脈硬化は血管にLDLコレステロールが溜まり、血管が硬く狭くなってしまう病気です。
例えば、血管を家の水道管に例えてみましょう。水道管に汚れが溜まると、水の流れが悪くなってしまいます。同じように血管にLDLコレステロールが溜まると、血液の流れが悪くなり心臓に負担がかかってしまいます。HDLコレステロールは、血管に溜まったLDLコレステロールを取り除き血液の流れをスムーズにする働きがあるのです。
HDLコレステロール値が高い人ほど、動脈硬化や心臓病のリスクが低いという研究結果が出ています。逆にHDLコレステロール値が低い人は、動脈硬化や心臓病のリスクが高いです。
HDLコレステロールは心臓病以外にも、さまざまな病気のリスクを減らす効果があることがわかっています。
HDLコレステロールには、抗酸化作用があります。抗酸化作用とは身体の細胞を傷つけ、老化やさまざまな病気の原因となる活性酸素から体を守る働きのことです。活性酸素はタバコの煙や排気ガス、紫外線、ストレスなどさまざまな原因で発生します。HDLコレステロールはこの活性酸素を除去することで、細胞を守り健康を維持する効果があると考えられます。
HDLコレステロールは、血管の炎症を抑える働きもあるとされています。炎症とは体を守るための免疫反応の一つですが、過剰な炎症は血管を傷つけ動脈硬化を進行させる原因になります。HDLコレステロールは炎症を抑え、動脈硬化の予防にも役立つと考えられています。
健康寿命とは「健康上の問題がなく、日常生活を制限なく送れる期間」のことです。平均寿命が延びた現代では、健康寿命をいかに延ばすかが重要視されています。HDLコレステロールは、この健康寿命を延ばす可能性も秘めていると言われています。
HDLコレステロールが高い人ほど、健康寿命が長いという研究結果があります。HDLコレステロールが心臓病やその他の病気のリスクを減らすことで、健康な状態を長く保つのを助けているためと考えられています。
健康寿命を延ばすためには、バランスの取れた食事や適度な運動、禁煙など、健康的なライフスタイルを心がけることが大切です。そのうえでHDLコレステロールを意識した生活習慣を取り入れることで、より健康で長生きを目指せます。
ここでは、HDLコレステロールを増やす方法を解説します。
食事は体を作るための材料となるだけでなく、HDLコレステロールを増やすためにもとても重要です。 毎日の食事の中で少し意識を変えるだけで、HDLコレステロールを増やせます。食事療法で大切なポイントは以下の3つです。
HDLコレステロールを増やすには「不飽和脂肪酸」と呼ばれる油を積極的に摂ることがおすすめです。オリーブオイルやアボカド、青魚などに多く含まれています。パンにオリーブオイルをつけて食べたり、サラダにナッツ類をトッピングしたり、夕食に焼き魚を食べるなど毎日の食事に簡単に取り入れることができます。
反対に「飽和脂肪酸」と呼ばれる油は、摂りすぎるとHDLコレステロールを減らしてしまう可能性があります。 飽和脂肪酸は肉類の脂身やバター、ラードなどに多く含まれています。 これらの食品を食べる際は、量を控えめにするなどの工夫を心がけましょう。
油の種類を意識することはHDLコレステロールを増やすだけでなく、健康的な食生活を送る上でも大切なポイントです。
食物繊維は腸内環境を整え、HDLコレステロールを増やす効果も期待できます。 食物繊維を多く含む食品としては、野菜や海藻、きのこなどがあります。腸の中をきれいに掃除してくれるため、栄養の吸収が良くなったり、HDLコレステロールが増えやすくなったりするのです。
目標としては、1日に野菜を350g以上食べるように心がけましょう。 野菜炒めやサラダ、味噌汁など、さまざまな料理で野菜をたっぷり摂るように工夫してみましょう。
お酒を飲みすぎると、HDLコレステロール値が低下してしまう可能性があります。 適量を守って楽しみましょう。おつまみに気を配ることも大切です。 枝豆や豆腐など、低カロリーで栄養価の高いものを選ぶように心がけましょう。
油の種類とHDLコレステロールへの影響を表にまとめたので参考にしてください。
油の種類 | 多く含まれる食品 | HDLコレステロールへの影響 |
不飽和脂肪酸 | オリーブオイル、サラダ油、魚の油、ナッツ類 | 増加 |
飽和脂肪酸 | トランス脂肪酸 | 減少または変化なし |
トランス脂肪酸 | マーガリン、ショートニング | 減少 |
運動不足は、HDLコレステロールを減らすだけでなく、さまざまな病気のリスクを高める可能性があります。 毎日、無理なく続けられる運動習慣を身に付けましょう。
軽い負荷で、長く続けられる運動を「有酸素運動」と言います。 具体的には、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどが挙げられます。これらの運動を1回30分程度、週に3〜5回を目安に行うと良いでしょう。 運動を始めるときは急に激しい運動をするのではなく、ご自身の体力レベルに合わせて徐々に強度や時間を増やしましょう。
腕立て伏せやスクワットなどの筋トレは、筋肉量を増やし、基礎代謝を上げる効果があります。 基礎代謝が上がると、エネルギー消費量が増えHDLコレステロール値の増加にもつながります。週に2〜3回を目安に、無理のない範囲で行いましょう。
エレベーターやエスカレーターではなく、階段を使うようにしたり一駅分歩いてみたりするのも効果的です。 日常生活の中で、こまめに体を動かすことを意識しましょう。
HDLコレステロールは血管を掃除する「善玉コレステロール」と呼ばれ、健康診断で測定される重要な指標です。HDLコレステロールには、動脈硬化や心臓病のリスクを減らす効果があります。HDLコレステロールを高く保つためには、食事療法、運動、禁煙など生活習慣の改善が重要です。
食事では青魚、オリーブオイル、ナッツ類など、不飽和脂肪酸を多く含む食品を積極的に摂取しましょう。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を取り入れることも有効です。HDLコレステロール値が低い場合、動脈硬化や心臓病のリスクが高まるため、医師の指示に従って生活習慣を見直す必要があります。
健康診断などで、コレステロール値を指摘されてお悩みの方は当院へご相談ください。
当院の肥満外来では、専門の医師が栄養指導や運動プログラム、必要に応じて治療薬の処方を通じて、個別のケアプランを提供します。肥満治療薬のみの処方も可能のため、お気軽にご相談ください。
大石内科循環器科医院
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