大石内科循環器科医院

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高血圧の運動療法のおすすめの方法や効果を高血圧治療ガイドラインをもとに解説!

2024.08.07 生活習慣病高血圧

高血圧と診断されたあなたは、食事療法に加えて運動療法も勧められたのではないでしょうか?「運動なんて、面倒だな」と感じている方もいるかもしれません。しかし、高血圧の運動療法は、激しい運動や特別なトレーニングは必要ありません。日常生活の中にほんの少し運動を取り入れるだけで、血圧を下げる効果が期待できます。

この記事では、高血圧の運動療法がもたらす効果や具体的な運動方法、注意点などを解説していきます。運動が苦手な方でも、無理なく始められる方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

大石内科循環器科医院では、高血圧の診療をしております。便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みの方は気軽に相談ください。


高血圧に適した運動方法と頻度

「どんな運動をすればいいのかわからない」「運動が苦手で続くか不安」という方もいるかもしれません。高血圧の方に適した運動方法と頻度について、具体的に解説していきます。

有酸素運動

有酸素運動は、高血圧の改善に効果的です。有酸素運動を続けることで、心臓や血管が強くなり、血液を送り出す力がアップするからです。

心臓は体中に血液を送るポンプの役割をしていますが、高血圧の状態が続くと、このポンプは常に大きな負担がかかっている状態です。有酸素運動によって心臓のポンプ機能が高まると、同じ量の血液を送り出すにも、より少ない力で済むようになります。結果、心臓への負担が軽減され、血圧の上昇を抑える効果が期待できます。

おすすめの有酸素運動は以下のとおりです。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 水泳
  • サイクリング

上記の運動は、比較的長時間続けられるため、脂肪燃焼効果も期待できます。高血圧だけでなく、肥満や糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながるため、積極的に取り入れていきましょう。

筋力トレーニングの役割

筋力トレーニングも、高血圧の改善に役立ちます。筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、血圧を下げる効果が期待できます。筋力トレーニングは骨や関節を強くする効果もあるため、高齢者の方にもおすすめです。

筋力トレーニングというと、重いバーベルを持ち上げるような激しい運動をイメージするかもしれません。しかし、高血圧の方が行う場合は、無理のない範囲で行うことが大切です。スクワットや腕立て伏せなど、自分の体重を使ったトレーニングや、軽いダンベルを使ったトレーニングでも十分な効果が期待できます。

高血圧の患者さんの中には、筋力トレーニングに対して「心臓に負担がかかりそうで怖い」という不安を抱く方もいらっしゃいます。しかし、正しい方法で行えば筋力トレーニングは心臓に良い影響を与えることが可能です。

推奨される運動強度と頻度

高血圧の方が運動を行う場合、運動強度と頻度は重要です。厚生労働省の「健康づくりのための運動指針2013」では「ややきつい」と感じる程度の運動を、1回30分程度、週に2日以上行うことを推奨しています。「ややきつい」と感じる程度の運動とは、少し息が弾む程度の運動のことです。

運動強度具体的な運動
ややきつい早歩き、軽いジョギング、水泳(ゆっくり)、サイクリング(平地)、軽い筋トレなど
きついランニング、水泳(クロール)、サイクリング(坂道)、ハードな筋トレなど

運動を始めたばかりの頃は「少しきつい」と感じる程度の運動を、10分程度から始め、徐々に時間や強度を上げていくようにしましょう。

運動強度の目安として「ややきつい」と感じる運動中に、笑顔で会話ができる程度の運動が良いです。運動中に「苦しい」「つらい」と感じたり、息切れが激しくなったりする場合は、運動強度が強すぎる可能性があります。その場合は、運動を中止するか、強度を下げるようにしてください。

自宅でできる簡単な運動

「運動をする時間がない」「ジムに通うのは気が引ける」という方もいるかもしれません。しかし、高血圧の運動療法は、特別な場所や道具は必要ありません。自宅でできる簡単な運動でも、十分な効果を得られます。

階段の上り下りや掃除機をかけながらのスクワット、テレビを見ながらのストレッチなど、日常生活の中で体を動かすことを意識してみましょう。

運動の種類具体的な方法
階段の上り下りエレベーターやエスカレーターを使わずに、階段を使うようにする。
スクワット掃除機をかけながら、腰をゆっくりと落とす動作を繰り返す。
ストレッチテレビを見ながら、首や肩、腕、足などをゆっくりと伸ばす。

1回10分程度でも良いので、毎日続けるように心がけましょう。運動習慣のない方にとって、毎日30分の運動を続けることは、容易ではありません。まずは、日常生活の中で、こまめに体を動かすことを意識してみましょう。通勤時に一駅分歩く、階段を使う、家事の合間にストレッチをするなど、ちょっとした工夫で運動量は増やせます。

体調に合わせた運動計画の立て方

運動の効果を高めるためには、自分の体力レベルや健康状態に合わせた運動計画を立てることが重要です。高血圧の程度によっては、運動の種類や強度を制限する必要がある場合もあります。

運動を始める前に必ず医師に相談し、適切な運動メニューを作成してもらいましょう。運動中にめまいや吐き気、胸の痛みなどの症状が現れた場合は、直ちに運動を中止して医師の診察を受けてください。

運動療法は、高血圧の改善だけでなく、健康寿命を延ばすためにも非常に効果的です。しかし、自己流で行うことは大変危険です。必ず医師の指導の下、安全に運動を行うようにしてください。

高血圧の運動療法を行う際の注意点

運動は血圧を下げる効果だけでなく、体力向上やストレス軽減などさまざまなメリットがある一方で、注意点もいくつかあります。安全かつ効果的に運動療法を行うために、これから一緒に確認していきましょう。

運動前に確認すべき健康状態

運動を始める前に、まずは自分の健康状態をよく把握することが大切です。高血圧の人は、心臓や血管に負担がかかりやすい状態であることを意識しましょう。健康診断の結果を確認し、血圧やコレステロール値などの数値を把握しておくことが重要です。

特に、糖尿病や脂質異常症などの持病がある場合は、運動の種類や強度を調整する必要があります。血管にダメージを与えやすく、高血圧の状態を悪化させる可能性があります。合併症がある場合は、運動によって体に思わぬ負担がかかってしまう可能性もあるため、事前に医師に相談し、運動内容を検討しましょう。

健康診断を受けていない場合や、自分の健康状態に不安がある場合は、運動を始める前に医師に相談してください。

知っておくべきリスクと危険信号

運動は健康に良いものですが、高血圧の人が運動を行う際には、いくつか注意すべきリスクがあります。

急に激しい運動を行うと、血圧が急上昇し、心臓に大きな負担がかかってしまう可能性があります。高血圧の人は、心臓や血管がすでに負担を抱えている状態です。心臓に大きな負荷をかけないよう、運動をする際は徐々に負荷を上げるようにしましょう。

運動中にめまいや動悸、息切れや胸の痛みなどの症状が現れた場合は、直ちに運動を中止して医師の診察を受けてください。これらの症状は、体が危険信号を発しているサインです。無理をせずに休憩を取るか、医師の診察を受けましょう。

運動後に気分が悪くなったり、体調を崩したりする場合は、運動の強度や時間が合っていない可能性があります。運動の種類や強度、時間を見直すか、医師に相談しましょう。

必要なサポート体制の構築

高血圧の運動療法を安全かつ効果的に行うためには、周囲の理解と協力が不可欠です。家族や友人などに、自分が高血圧で運動療法を行っていることを伝え、運動内容や目標を共有しましょう。周囲のサポートがあれば、モチベーションの維持にもつながります。

スポーツクラブやジムに通う場合、トレーナーやインストラクターに高血圧であることを伝え、適切なアドバイスを受けましょう。運動中に体調が悪くなった場合に備え、緊急連絡先を伝えておくことも大切です。

医師への相談が求められる状況

高血圧の運動療法は、必ずしもすべての人が同じように行えるわけではありません。持病や体調によっては、運動の種類や強度を制限する必要がある場合もあります。安全に運動療法を行うためには、医師に相談し、自身の状態に合った運動方法や強度、頻度などを決めることが大切です。

狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳卒中などの病気を経験したことがある人や、糖尿病や腎臓病、肝臓病などの持病がある人は、必ず医師に相談してから運動療法を開始しましょう。高血圧と深く関係しており、運動によって症状が悪化する可能性があります。

継続するためのモチベーションの維持方法

高血圧の運動療法の効果を持続させるには、継続することが何よりも重要です。しかし、運動を習慣化することは容易ではありません。モチベーションを維持するための工夫をいくつかご紹介します。

目標を立てて運動の成果を記録する

達成感を味わいながら運動を継続できます。目標を達成した際には、自分にご褒美をあげたり周りの人に報告したりすることで、さらにモチベーションを高められます。

屋外での運動を取り入れる

散歩やジョギングなどを行うと、気分転換になり運動を楽しめるようになります。太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、質の高い睡眠にもつながります。

家族や友人と一緒に運動する

仲間と励まし合いながら運動することで、モチベーションを高く維持できます。運動を通して、新しいコミュニティに参加するのも良いかもしれません。

運動療法が高血圧にもたらす5つ効果

高血圧と診断されると、食事療法や薬物療法と並んで、運動療法も大切だと言われます。ここでは、高血圧の運動療法がもたらす効果について、詳しく解説します。

血圧を下げる

運動すると、筋肉が酸素をたくさん必要とするため、心臓はより多くの血液を送り出そうとします。すると、血管が広がり、血流がスムーズになることで血圧の上昇が抑えられます。運動を継続することで血管の柔軟性が高まり、より血圧が上がりにくい状態を作ることも可能です。

高血圧の患者さんを診察していると、血管の老化が気になっている方が多くいらっしゃいます。若い方の血管は柔らかくしなやかですが、年齢を重ねたり高血圧の状態が続いたりすると、血管は硬くもろくなってしまいます。この状態を動脈硬化といい、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気につながる危険な状態です。

運動不足は、血管の老化を早める大きな要因の一つです。毎日運動を続けることで、血管をしなやかに保つ効果が期待できます。

心肺機能や体力の向上

運動は心臓や肺を鍛え、酸素を効率的に体に取り込む能力を高めます。心臓を鍛え、より多くの血液を一回の拍動で送り出せることで、心臓が楽に血液を送り出せるようになります。これにより、結果として血圧を下げる効果が期待できるのです。

また、肺機能を向上させることで呼吸が深くなり、一回の呼吸でより多くの酸素を取り込み、二酸化炭素を排出できるようになります。 これは、血液中の酸素濃度を高め、血管を拡張させる効果があり、高血圧の改善に繋がります。

結果的に疲れにくくなり、日常生活での活動量も増え、より健康的な毎日を送れます。体力を向上させたいだけでなく、日常生活の質を向上させたい方は、ぜひ運動を毎日の習慣に取り入れましょう。

ストレス軽減とメンタルの安定

運動には、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促進する効果があります。軽い運動でも気分転換になり、ストレス解消が可能です。運動によって達成感や自信を得ることで、自己肯定感が高まり、精神的な安定にもつながります。

現代社会において、ストレスは心身の健康を大きく左右する要因の一つです。ストレスを溜め込みすぎると自律神経のバランスが乱れてしまいます。自律神経が乱れると、高血圧の悪化や不眠、食欲不振やイライラするなどの症状を引き起こす場合があります。日々の運動で、ストレスから心身を守りましょう。

生活習慣病予防の側面

高血圧は、心臓病や脳卒中などの深刻な病気を引き起こす原因となります。運動不足は、高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高める要因です。

生活習慣病は「成人病」と呼ばれており、食生活の欧米化や運動不足などにより、現在では若年層でも増加傾向にあります。生活習慣病は、自覚症状が出にくいため、気付かないうちに進行して動脈硬化を促進させてしまう点が大きなリスクです。

運動は、生活習慣病の予防に効果的です。血糖値を下げるインスリンの働きを助ける効果や、血液中の脂質を減らす効果も期待できます。

健康寿命の延伸への寄与

健康寿命とは「健康上の問題がなく日常生活を送れる期間」のことです。運動は、健康寿命を延ばすための重要な要素です。運動によって心肺機能や筋力が向上し、生活習慣病のリスクが低減することで、健康な状態を長く維持できます。運動習慣を身につけることは、単に病気を予防するだけでなく、毎日をイキイキと過ごすための活力となります。

高齢になっても自分の足で歩いて趣味を楽しんだり、友人と旅行に行ったりするためには、健康寿命を延ばすことが大切です。運動は、健康寿命を延ばし、より長く自分らしく充実した人生を送るための第一歩と言えます。

まとめ

高血圧の運動療法は、血圧を下げるだけでなく、心肺機能向上やストレス軽減など、さまざまなメリットをもたらします。高血圧が気になる人は、以下の運動などから自分にあったものを日々の生活に取り入れてみましょう。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • スクワット
  • 腕立て伏せ

しかし、高血圧の人は心臓や血管に負担がかかりやすい状態なので、運動を始める前に医師に相談し、自分の健康状態に合わせた運動計画を立てることが重要です。運動中は、体調に異変を感じたらすぐに中止し、医師に相談するようにしましょう。周囲のサポートを得ながら、無理なく運動を継続することで、健康的な生活を送れます。

参考文献

Senderovich H, Farahneh O, Waicus S. The Role of Intermittent Fasting and Dieting on Cognition in Adult Population: A Systematic Review of the Randomized Controlled Trials. Medical principles and practice: international journal of the Kuwait University, Health Science Centre 32, no. 2 (2023): 99-109.

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