健康診断なので「コレステロール値が高い」「中性脂肪値が高い」など、あなたは脂質異常症と診断されたことはありますか?
近年、食生活の欧米化や運動不足などにより脂質異常症の患者数は増加傾向にあります。この脂質異常症は放置すると、動脈硬化や心臓病などのリスクが高まるため適切な治療が必要です。
この記事では、脂質異常症で処方される治療薬について詳しく解説します。様々な種類の薬があり、それぞれ特徴や副作用が異なります。自分に合った治療薬を選ぶためには、医師と相談することが重要です。薬の効果を最大限に引き出すために、正しい服用方法や生活習慣の改善についても詳しく解説します。
この記事を読めば、脂質異常症の治療薬について、より深く理解できるでしょう。
脂質異常症の治療には、主に生活習慣の改善と薬物療法が行われます。今回は脂質異常症の治療によく使われるお薬の種類と、それぞれの特徴について解説していきます。薬にはそれぞれ得意分野があるので、自分に合った薬を医師と相談しながら選ぶことが大切です。
スタチン系 | 悪玉コレステロールを減らす効果が強い薬です。肝臓で作られるコレステロールの量を減らすことで、血液中のコレステロール値を下げます。 | コレステロールを作る工場の生産ラインを減速させるイメージです。 |
エゼチミブ系 | 小腸からのコレステロールの吸収を抑え、血液中のコレステロール値を下げます。 | コレステロールの吸収をブロックする門番のような役割です。 |
PCSK9阻害薬 | 悪玉コレステロールを減らす新しいタイプの薬です。肝臓でコレステロールを処理する働きを助けることで、より強力にコレステロール値を下げます。 | コレステロールを掃除する掃除機のパワーをアップさせるイメージです。 |
フィブラート系 | 中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やす効果があります。 | 脂質のバランスを整え、血液をサラサラにする効果も期待できます。 |
スタチン薬は、体内でコレステロールが作られるのを抑える働きがあります。工場で製品を作る際に、材料を減らして製品の数を減らす様子をイメージしてみてください。スタチン薬はコレステロールを作るのに必要な酵素の働きを抑えることで、コレステロールの合成量を減らします。コレステロールが高い人や、動脈硬化が心配な人によく処方されます。スタチン薬は、脂質異常症の治療において最も効果が高く広く使用されている薬です。
例えば、健康診断でコレステロール値が高いと指摘された人がいます。医師から生活習慣の改善を指導され、食事や運動に気を付けていましたが、それでもコレステロール値が十分に下がらない場合は、スタチン薬が処方されることがあります。スタチン薬を服用することで、コレステロール値が低下し動脈硬化のリスクを減らすことができます。
主な効果として
などが挙げられます。
スタチン薬を服用する際の注意点は、筋肉痛や肝機能障害などの副作用が現れる可能性があることです。筋肉痛は、スタチン薬によって筋肉細胞内のエネルギー代謝が影響を受けるために起こると考えられています。肝機能障害はスタチン薬が肝臓で代謝される際に、まれに肝臓に負担がかかるために起こると考えられています。
エゼチミブは腸管からのコレステロール吸収を抑え、LDLコレステロール値を下げる薬です。副作用として、消化不良や腹痛などが報告されています。
PCSK9阻害薬はLDL受容体の分解を阻害することで、LDLコレステロール値を大きく下げる薬です。注射薬として使用され、効果が高く、副作用も少ないとされています。
薬物療法を行う際には医師の指示に従い、自己判断で服用を中止したり量を変更したりしないようにしましょう。
フィブラート薬は、中性脂肪を減らす薬です。脂肪を燃焼させてエネルギーに変えるのを助ける働きがあります。フィブラート薬は体内の脂肪を分解してエネルギーとして利用しやすくすることで、血液中の脂肪を減らします。フィブラート薬は中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低い人に処方されます。
例えば、お腹周りが気になる人がいます。食事の内容を見直し運動も取り入れてみたものの、なかなか中性脂肪値が改善しない場合は、フィブラート薬が処方されることがあります。フィブラート薬を服用することで中性脂肪値が低下し、メタボリックシンドロームや動脈硬化のリスクを減らすことができます。
副作用として消化不良や腹痛、筋肉痛などが現れる可能性があります。消化不良や腹痛は、フィブラート薬が消化管の動きを変化させるために起こると考えられています。筋肉痛はスタチン薬と同様に、筋肉細胞内のエネルギー代謝が影響を受けるために起こると考えられています。
脂質異常症の治療には、主に生活習慣の改善と薬物療法が行われます。今回は脂質異常症の治療薬について患者さんがご自身の治療についてより深く理解し、主体的に治療に取り組めるようにその選び方と服用方法を詳しく解説していきます。
「脂質異常症」と診断された患者さんでも、体質や生活習慣・他の病気の有無・年齢などによって最適な治療薬は異なります。
軽度の脂質異常症の場合、まずは食生活や運動習慣などの生活習慣を見直し、バランスの取れた生活を送ることで改善を目指します。しかし生活習慣の改善だけでは、十分な効果が得られない場合もあります。このような場合は、コレステロールの合成を抑える働きをする「スタチン系」の薬を処方することが多くあります。スタチン系の薬は脂質異常症の治療薬として最も広く使われており、その効果は高いとされています。
一方、重度の脂質異常症やすでに動脈硬化が進んでいる場合は、より強力な治療が必要となります。このような場合は食生活や運動習慣などの生活習慣を見直しに加え、まずはスタチン系の薬を使用し、それだけでは十分な効果が得られない場合は「PCSK9阻害剤」という種類の薬が使われることがあります。PCSK9阻害剤は、注射で投与する薬で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を非常に強力に下げる効果があります。
このように、脂質異常症の治療薬は、患者さんの状態に合わせて、医師が適切なものを選択します。
脂質異常症の治療薬は、毎日、決められた時間に服用することが大切です。治療薬の効果を最大限に引き出すためには、毎日忘れずに服用することが重要です。毎日服用することで、血液中のコレステロール値を安定させ、動脈硬化の進行を抑える効果が期待できます。
例えば、高血圧の薬を毎日飲むことで血圧が安定するのと同じように、脂質異常症の薬も毎日飲むことで、血液中のコレステロール値を安定させることができます。
薬の効果的な服用時間は、薬の種類によって異なります。食前・食後・就寝前など、薬によって効果的な服用時間が異なるため、医師や薬剤師の指示に従って正しく服用しましょう。
脂質異常症の治療薬は、毎日継続して服用することが大切ですが、飲み忘れや飲み過ぎにも注意が必要です。
飲み忘れを防ぐためには毎日決まった時間に服用することや、お薬手帳を活用するなど工夫してみましょう。例えば毎朝の歯磨きの後や夕食後の決まった時間に服用するなど、習慣化しやすいタイミングで服用すると飲み忘れを防ぐことができます。
また、お薬手帳は、飲んだ薬の記録だけでなく飲み忘れた場合の対処法なども記載できるので、医師や薬剤師に相談して活用するのがおすすめです。
万が一、飲み忘れてしまった場合は、思い出した時にすぐに服用してください。ただし次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばして、次の服用時間に1回分を服用するようにしてください。
脂質異常症の治療薬を服用していても、食生活の改善は非常に大切です。脂質異常症は、食生活の乱れが大きく関係している病気です。脂質異常症の治療薬を服用することで、血液中のコレステロール値や中性脂肪値をコントロールすることができますが、だからといって、好きなものを好きなだけ食べていては、効果が半減してしまいます。
脂質異常症治療薬を服用している場合でも、バランスの取れた食事を心がけ、野菜、果物、海藻、きのこなどを積極的に摂取するようにしましょう。脂質異常症の予防・改善効果が期待できる食材を積極的に摂り入れるように意識してみましょう
脂質異常症の治療薬は、主にスタチン薬、エゼチミブ、PCSK9阻害剤、フィブラート薬、などがあります。それぞれコレステロールや中性脂肪を減らす効果がありますが、副作用やリスクも存在します。
これらの薬は、患者さんの状態や生活習慣に合わせて医師が適切なものを選択します。
健康診断での再検査や脂質異常症を指摘されたら、当院までご相談ください。
大石内科循環器科医院
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