秋の始まりとともに悩まされるのがアレルギー症状です。特に9月は、スギやヒノキなどの春の花粉とは異なる、ブタクサやヨモギなどの花粉が飛散し、症状が悪化する人が多い季節です。さらに、ダニやカビも繁殖しやすいため、くしゃみ、鼻水、目のかゆみといった症状に悩まされる人も少なくありません。
この記事では、9月によく見られるアレルギー症状の原因やそのメカニズム、そして症状を和らげるための具体的な対策について解説します。秋の澄み切った空気も、アレルギー症状で台無しにしないよう、ぜひこの記事を参考に、快適な秋を過ごしましょう。
秋の始まりを感じるこの季節、爽やかな秋風も束の間、鼻がムズムズしたり目がかゆくなったりと何かと不快な症状に悩まされることはありませんか?
そう、実は9月も花粉症のシーズン真っ只中なのです。患者さんの中には「花粉症は春だけだと思っていたのに!」と驚かれる方も少なくありません。
9月はスギやヒノキといった春の花粉とは異なる種類の植物が、私たちの体に「目に見えない刺客」を送り込んできます。それがブタクサやヨモギ、そしてダニやカビといったアレルゲンです。これらは、くしゃみや鼻水、目のかゆみといったアレルギー症状を引き起こす厄介な存在なのです。
9月に特に注意したい花粉は、ブタクサとヨモギです。これらの花粉は遠くまで風に乗って運ばれるため、ブタクサやヨモギが生えていない場所でも、アレルギー症状を引き起こす可能性があります。
花粉の種類 | 特徴 | 飛散時期 |
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ブタクサ | 北アメリカ原産の帰化植物で、空き地や道路脇などに多く見られます。 | 8月中旬~10月頃 |
ヨモギ | 日本各地に自生するキク科の植物で、道端や河原などに多く見られます。 | 8月~10月頃 |
ブタクサやヨモギの花粉症は、くしゃみや鼻水、鼻詰まりといった鼻炎症状だけでなく、目のかゆみ、充血、涙が出るといったアレルギー性結膜炎の症状を引き起こすこともあります。
9月はブタクサやヨモギ以外にも、アレルギー症状を引き起こす可能性のある植物が存在します。
ブタクサと同じく、空き地や道端に多く見られるツル性の植物です。8月から10月にかけて花粉を飛散させます。
黄色い小さな花をたくさん咲かせるキク科の植物です。8月から11月頃まで花粉を飛散させます。
これらの植物はブタクサやヨモギほど飛散量は多くありませんが、該当する植物の近くに住んでいる場合は注意が必要です。例えば公園の近くに住んでいる場合やガーデニングでこれらの植物を育てている場合は、知らず知らずのうちに花粉を吸い込んでしまいアレルギー症状が出てしまうことがあります。
アレルギー症状の原因は、花粉だけではありません。9月は気温や湿度が高い日が多いため、ダニやカビも繁殖しやすい季節です。
家の中のホコリの中に生息し、繁殖します。特に布団やカーペット、ぬいぐるみなどに多く潜んでいます。
ダニやカビによるアレルギーは、くしゃみや鼻水、咳などの症状が出る場合やアトピー性皮膚炎が悪化する原因になることもあります。
私たちの体には、外部から侵入してくる異物(ウイルスや細菌など)から体を守る「免疫」というシステムが備わっています。この免疫システムは、体にとって有害な侵入者を撃退してくれる「勇敢な兵士」のようなものです。
しかし、この勇敢な兵士たちは、時に少しだけ「おっちょこちょい」な一面があります。本来無害な花粉やダニ、カビなどを「危険な侵入者」だと誤って認識し、過剰に攻撃してしまうことがあるのです。
アレルギー反応とは、まさにこの免疫システムの「おっちょこちょい」によって引き起こされる反応です。免疫システムが花粉やダニ、カビなどを「敵」だと誤って認識すると、体を守るためにヒスタミンなどの化学物質が放出されます。この化学物質が、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状を引き起こす原因となるのです。
アレルギー症状は、人によって異なり、原因となるアレルゲンによっても症状の出方が異なります。例えば、ある人はブタクサ花粉に対してくしゃみだけが出るのに対し、別の人は目のかゆみと鼻水がひどく出る、といったように個人差があります。
9月は花粉以外にもダニやカビなど、さまざまなアレルゲンが私たちの周りに潜んでいます。そのため、鼻水やくしゃみ、目のかゆみ、肌荒れなど、多岐にわたるアレルギー症状が現れることがあります。
ここでは、それぞれの症状がなぜ、どのようにして起こるのか具体的な例を交えながら詳しく見ていきましょう。
「ハクション!」と勢いよく飛び出すくしゃみ、ズルズルと止まらない鼻水。一見迷惑な症状に思えるかもしれませんが、これらは、実は私たちの体を守るために備わった防衛反応なのです。体内に侵入してきた花粉やダニなどのアレルゲンを、私たちの体は「敵」だと認識します。そして、この「敵」を排除するために、くしゃみや鼻水という武器を使って戦っているのです。
もう少し詳しく説明すると、鼻の粘膜には、マスト細胞と呼ばれるセンサーの役割を果たす細胞が存在します。このマスト細胞はアレルゲンが侵入してくると、すかさず「敵襲!敵襲!」と信号を発信します。
この信号を受け取った体は、ヒスタミンなどの化学物質を放出します。ヒスタミンは血管を広げたり、鼻腔の粘膜を刺激したりする作用があり、その結果、鼻水やくしゃみといった症状を引き起こすのです。
目のかゆみは、まるで目に砂埃が入った時のような不快感がありますよね。これは目にも鼻と同じように、アレルゲンから身を守るための巧妙な仕組みが備わっているからです。
目の表面を覆う結膜には非常に多くの神経が張り巡らされており、外部からの刺激に敏感に反応します。そのため花粉やダニなどのアレルゲンが目に入ると、結膜にあるマスト細胞が反応しヒスタミンなどの化学物質を放出します。
ヒスタミンは目の血管を広げ、かゆみや充血を引き起こします。また涙の分泌を促進することで、アレルゲンを洗い流そうとします。涙は、いわば「天然の目薬」として、目を守る役割を担っているのです。
アレルギー性結膜炎の患者さんの中には、「目がゴロゴロする」「目が乾く」といった症状を訴える方もいます。これは、結膜が炎症を起こすことで、目の表面が傷つきやすくなっているためです。
9月になると、肌のかゆみを感じたり、赤みが出たりする人もいるかもしれません。これは、花粉やダニ、カビなどが原因で起こるアレルギー性皮膚炎の可能性があります。
アレルギー性皮膚炎は、大きく分けて2つのタイプに分けられます。
1つは、花粉などが直接肌に触れることで起こる接触性皮膚炎です。例えば、ブタクサ花粉が肌に付着すると、肌のバリア機能が低下し、乾燥やかゆみが生じることがあります。
もう1つは、体内に侵入したアレルゲンに対する反応として起こるアトピー性皮膚炎です。アトピー性皮膚炎は、乳幼児期に発症することが多く、かゆみのある湿疹が繰り返し現れるのが特徴です。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、ダニやハウスダスト、ペットの毛など、特定のアレルゲンに対して過剰に反応しやすくなっています。そのため、9月はダニの繁殖が盛んになる時期でもあるため、アトピー性皮膚炎が悪化しやすい傾向があります。
喉は、空気の通り道であると同時に、食べ物も通る場所です。そのため、常に外部からの刺激にさらされており、アレルゲンに反応しやすい部位と言えます。
花粉やダニ、カビなどが喉の粘膜に付着すると、異物と認識した体が排除しようとします。その結果、喉の粘膜に炎症が起こり、かゆみや痛み、イガイガといった症状が現れるのです。
さらに、アレルギー反応によって鼻水が喉に流れ込む後鼻漏(こうびろう)も、喉の不快感を引き起こす要因の一つです。
後鼻漏とは鼻水が鼻の奥に流れ込み、喉の奥に張り付く症状のことです。後鼻漏があると、喉の奥に何かが詰まっているような違和感や、咳、痰が絡むなどの症状が現れます。
アレルギー症状を和らげるためには、医療機関での治療はもちろん重要ですが、日常生活の中で、アレルゲンをできるだけ避ける工夫をすることも非常に大切です。
まず花粉が飛散している日は、外出時に服装を工夫してみましょう。花粉が付着しにくい素材の服を選ぶ、帽子や眼鏡を着用するだけでも花粉の吸入量を減らすことができます。
帰宅時は玄関に入る前に、服や髪の毛に付着した花粉を払い落とす習慣をつけましょう。花粉を家の中に持ち込まない工夫が大切です。
空気清浄機を効果的に活用するのも良いでしょう。空気清浄機は、花粉やダニなどのアレルゲンを空気中から除去してくれる心強い味方です。
家の中に侵入した花粉やダニは、まるで忍者のように床や家具の隙間などに隠れています。こまめに掃除機をかけることで、これらのアレルゲンを退治することができます。掃除機をかける際は、排気口から花粉が舞い上がらないように注意しましょう。窓を開けて換気しながら行うと、より効果的です。
水拭きも効果的です。水拭きには、掃除機では取りきれないような細かいホコリやダニの死骸などを除去する効果があります。
花粉の飛散量の多い日は、洗濯物を外に干すのは控えましょう。花粉が付着した洗濯物を着ると、皮膚に刺激を与え、かゆみなどの症状を引き起こす可能性があります。室内干しや乾燥機を活用することで、花粉の付着を防ぎましょう。
布団や毛布、枕なども、花粉が付着しやすい素材のものを使用している場合は、こまめに洗濯したり、布団乾燥機をかけたりして、清潔に保つようにしましょう。
アレルギー症状を予防するためには、免疫力を高めておくことが重要です。そのためには十分な睡眠をとりバランスの取れた食事を心がけ、適度な運動をするなど規則正しい生活を送りましょう。
日常生活で気をつけていても、アレルギー症状が改善しない場合は当院にご相談ください。
受診の目安 | 説明 |
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日常生活に支障が出るほどの症状がある | 鼻水が止まらない、目のかゆみがひどい、肌荒れがひどく掻きむしってしまうなど、日常生活に支障が出るほどの症状がある場合は、我慢せずに医療機関を受診しましょう。 |
市販薬を試しても症状が改善しない | ドラッグストアなどで購入できる市販薬を試しても効果がない場合は、医師の診断のもと適切な薬を処方してもらう必要があります。 |
症状が長引く | アレルギー症状が2週間以上続く場合は、他の病気が隠れている可能性もあります。自己判断せず医療機関を受診し、検査を受けることをおすすめします。 |
当院では、あなたの症状や生活習慣などについて詳しく聞き取りを行いながら、アレルギーの原因物質を特定するための検査を行います。
いつから症状が現れたのか、どのような時に症状が悪化するのか、他に症状はないか、過去にアレルギーと診断されたことがあるか、家族にアレルギーの人がいるかなどをお聞きします。
アレルギーの原因物質に対する抗体の量を測定します。腕からの採血を必要とせず、指先から血液が約1滴採取できれば検査が可能です。
小さな針を使用し少しチクリとする程度のため、 注射や採血が苦手な方や小さなお子さまにもご利用いただけます。
血液採取後、30分程度お待ちいただければ当日中に検査結果がわかります。そのため、結果説明のための再度来院が要りません。 お仕事や学校、家事でお忙しい方にもご利用いただけます。
検査結果に基づいて、あなたに最適な治療法が提案されます。アレルギー症状を和らげ、快適な生活を送るために、積極的に医療機関を受診しましょう。
9月はブタクサやヨモギなどの花粉が飛散し、アレルギー症状を引き起こしやすい時期です。また、ダニやカビも繁殖しやすく、注意が必要です。花粉症の症状はくしゃみ、鼻水、目のかゆみなど、ダニやカビによるアレルギーは皮膚のかゆみ、咳などの症状が現れることがあります。
これらの症状を和らげるには、外出時は花粉を避ける服装や帰宅時の花粉対策、こまめな掃除、洗濯物の工夫などが有効です。
症状が改善しない場合は、ぜひ当院にご相談ください。原因物質を特定し、適切な治療を受けるようにしましょう。