大石内科循環器科医院

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循環器専門医が心筋梗塞の前兆を解説

2024.09.06 循環器

心臓は、私たちの生命活動を支える重要な臓器ですが、心筋梗塞という怖い病気のリスクも潜んでいます。突然の心臓発作で命を落とすケースもあるため、日頃から心筋梗塞の前兆を理解しておくことが大切です。

この記事では循環器専門医が、心筋梗塞の前兆を他の病気と見分けるためのポイントを解説します。胸の痛み以外にも、息切れや冷や汗、不安感など様々な症状が現れる可能性があることを知っておきましょう。早期発見・早期治療が、心筋梗塞から命を守るために最も重要です。

心筋梗塞の前兆とは何か:主な5つの症状

皆さんは「心臓」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか? 「ドキドキするところ」「体中に血を送るポンプ」そう答える人もいるでしょう。 心臓は私たちの体にとって、まさにエンジンとも言える重要な臓器です。

しかし、この心臓も時には病気になってしまい、うまく動かなくなってしまうことがあります。 その病気の一つが「心筋梗塞」です。

心筋梗塞は心臓の筋肉に栄養や酸素を送っている冠動脈という血管が詰まってしまい、心臓の筋肉の一部が壊死してしまう病気です。 突然死んでしまうこともある怖い病気ですが実は発症前に、体からSOSのサインが出ていることがあります。

今回は循環器専門医の立場から、そのサインである代表的な5つの前兆について詳しく解説していきます。 早期発見・早期治療のために、ぜひご自身やご家族の健康を守るための知識として知っておいてください。

息切れや胸の圧迫感

「最近、階段を上ると息切れがするなぁ」「少し歩いただけで、ハアハアしてしまう」

このような息切れは、心臓からのSOSサインかもしれません。

心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。 しかし、心筋梗塞の前段階として心臓の血管が狭くなってしまうと、心臓自身に十分な血液が行き渡らなくなります。 すると心臓は酸素不足の状態に陥り「もっと酸素をくれー!」と悲鳴を上げ始めます。 その結果として現れるのが「息切れ」という症状です。

息切れと似た症状に「胸の圧迫感」があります。 「誰かに胸をぎゅーっと締め付けられるような感じ」「重たい石が乗っているような感覚」 このような症状も、心臓が酸素不足に陥っているサインかもしれません。

例えば私の患者さんの中にも、庭の草むしりをしている時に、このような胸の圧迫感を感じた方がいらっしゃいました。 「最初は疲れかな?と思ったけど、いつもと違う感じがして…」 そう言って病院を受診され、検査の結果、心筋梗塞の前段階であることが判明しました。

症状具体的な例
息切れ・いつもは息切れせずに階段を上れるのに、最近急に息切れがするようになった
・少し歩いただけで、以前よりも息苦しさを感じるようになった
胸の圧迫感・誰かに胸をぎゅーっと締め付けられるような感じがする
・重たい石が乗っているような感覚がある。
・服が窮屈に感じる

不安感や動悸の急激な増加

「なんだか急に不安な気持ちになる」「心臓がドキドキして、落ち着かない」

このような心の不調も、実は心臓と深い関係があることをご存知でしょうか?

心臓は、私たちの意識とは無関係に働く自律神経によってコントロールされています。 自律神経には体を活動モードにする交感神経と、リラックスモードにする副交感神経の2種類があります。

心筋梗塞の前段階では、この自律神経のバランスが乱れてしまい動悸や不安感が起こりやすくなると考えられています。

動悸は「心臓がドキドキする」という感覚です。 健康な人でも、激しい運動の後や緊張した時などに動悸を感じることがあります。 しかし、安静にしている時や、特に心当たりがないのに頻繁に動悸がする場合は注意が必要です。

症状具体的な例
背中の不快感・背中が重苦しい、だるい・肩甲骨の間が締め付けられるように痛い
・肩こりのような痛みがある
腹部の不快感・胃のあたりがムカムカする・吐き気がする・胃がキリキリと痛む

上肢や顎の痛み

「左腕がしびれるような感じがする」「顎のあたりが、なんとなく痛む」

このような症状が現れた時、心臓の病気を疑う人は少ないかもしれません。 しかし、これらの症状も、心筋梗塞の前兆として現れることがあります。

心臓と上肢や顎は、一見すると関係ないように思えますが、実は神経の経路が一部で重なっています。 そのため、心臓に異常が起こると、その影響が上肢や顎にも現れ、痛みやしびれとして感じることがあるのです。

特に、左腕の痛みは、心筋梗塞の典型的な症状の一つとして知られています。 「歯医者に行ったのに、顎の痛みが治らない」という場合も、実は心臓が原因だったというケースもあります。

背中や腹部の不快感

「背中が重苦しくて、気分が晴れない」「胃のあたりがムカムカする」

これらの症状も、心臓からのSOSサインかもしれません。

心臓は、体の奥深くにあるため、心臓自体に痛みを感じにくいことがあります。 そのため、心臓からのSOSサインが、背中や腹部など、心臓から離れた場所に現れることがあるのです。

例えば、背中や肩甲骨の間の痛みは、心筋梗塞の前兆として比較的多く見られる症状です。 また、胃の痛みや吐き気なども、心筋梗塞と関連がある場合があります。

症状具体的な例
背中の不快感・背中が重苦しい、だるい・肩甲骨の間が締め付けられるように痛い
・肩こりのような痛みがある
腹部の不快感・胃のあたりがムカムカする・吐き気がする・胃がキリキリと痛む

発汗や吐き気の発生

「急に冷や汗が出てきた」「気持ちが悪い…」

これらの症状も、心筋梗塞の前兆として現れることがあります。

心筋梗塞が起こると、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液が送り出せなくなります。 すると、体は危機的状況を感じ、血圧を維持しようと、自律神経を介して、血管を収縮させようとします。 その結果、冷や汗や吐き気などの症状が現れるのです。

症状具体的な例
発汗・急に冷や汗が出る・顔色が悪くなり、顔面蒼白になる・びっしょりと汗で服が濡れてしまう
吐き気・吐き気がする・実際に吐いてしまう・胃の内容物が逆流してくるような感じがする

これらの症状は、必ずしも心筋梗塞の前兆として現れるとは限りません。 他の病気の可能性もありますので、自己判断せずに、気になる症状があれば医療機関を受診するようにしましょう。

前兆を確認した際の適切な行動と検査法

動悸、息切れ、胸の違和感…。 「もしかして、心筋梗塞の前兆…?」 そう感じたら決して放置せず、すぐに適切な行動をとることが重要です。 今回は、前兆を感じた時の対処法と、医療機関における検査方法について詳しく解説します。

早期受診の重要性とその理由

心筋梗塞の疑いがある場合、なぜ一刻も早い受診が重要なのでしょうか? それは、心臓の筋肉が時間との闘いだからです。

心臓の筋肉は一度ダメージを受けると、自然に修復することは非常に難しいとされています。 早期に適切な処置を行わなければ壊れた部分はどんどん広がり、心臓全体の機能が低下してしまう可能性があります。

時間との勝負となる心筋梗塞において、早期受診はまさに命綱と言えるでしょう。

心筋梗塞は早期に発見し適切な治療を行えば、救命できる可能性が高い病気です。 「もしかしたら…」と感じたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。

心筋梗塞の検査方法:ECGと血液検査

医療機関では、心筋梗塞の診断のために、いくつかの検査が行われます。 その中でも、特に重要な検査として「心電図検査(ECG)」と「血液検査」があります。

心電図検査(ECG)

心電図検査は、心臓の電気的な活動を波形として記録する検査です。 心臓は、規則的な電気信号によって動いています。 心筋梗塞が起こると、この電気信号が乱れ心電図に特徴的な変化が現れます。
心電図検査は痛みを伴わず短時間で終了するため、患者さんの負担が少ない検査です。

血液検査

心筋梗塞が起こると心臓の筋肉が壊れ、特定の物質が血液中に流れ出てきます。 血液検査では、これらの物質を測定することで、心筋梗塞の有無や損傷の程度を評価します。
これらの検査結果を総合的に判断し、心筋梗塞の診断を下します。

生活習慣の改善が予防につながる点

心筋梗塞は、決して他人事ではありません。 生活習慣病と深く関連しており、食生活の乱れや運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどの積み重ねが心筋梗塞のリスクを高めます。
「自分は大丈夫」と安易に考えずに日頃から生活習慣を見直し、心筋梗塞の予防に努めることが重要です。

具体的には、以下のような生活習慣の改善が有効です。

  • バランスの取れた食生活: 塩分を控え、野菜や果物を積極的に摂取し、脂肪分の多い食事は控える
  • 適度な運動: 週に3回以上、30分程度の運動を習慣化する
  • 十分な睡眠: 質の高い睡眠を十分にとる
  • 禁煙: 喫煙は心筋梗塞のリスクを高めるため、禁煙することが望ましい
  • ストレスの解消: ストレスを溜め込まないよう、趣味やリラックスできる時間を持つ

これらの生活習慣の改善は動脈硬化の予防にもつながり、心筋梗塞だけでなく他の病気のリスクを減らすことにも繋がります。

専門医による診察を受ける際のポイント

循環器内科などの専門医を受診する際は、以下のポイントを参考にすると良いでしょう。

  • 症状を具体的に伝える: いつから、どのような症状が出ているのかを具体的に伝えましょう。
    • 例:「階段を上ると息が切れる」「胸が締め付けられるような感じがする」「胃のあたりがムカムカする」
  • 既往歴や服用中の薬を伝える: 過去にかかった病気や、現在服用している薬がある場合は、医師に伝えましょう。
    • 例:「高血圧で治療中」「糖尿病の薬を飲んでいる」
  • 生活習慣について相談する: 食生活や運動習慣、喫煙習慣など、生活習慣について相談してみましょう。
    • 例:「最近、運動不足が続いている」「塩辛いものが好きで、つい食べ過ぎてしまう」
  • 疑問点を質問する: 検査や治療法について、疑問に思うことがあれば、遠慮なく医師に質問しましょう。
  • 積極的に医師とコミュニケーションを取り、自身の健康状態を把握することが大切です。

まとめ

心筋梗塞は、心臓の血管が詰まり、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。 突然死のリスクもあるため、早期発見・治療が重要です。

胸痛以外にも、息切れ、冷や汗、吐き気、不安感、めまい、肩や腕の痛み、背中の痛み、顎の痛みなど、様々な症状が出ることがあります。 また、前兆が時間と共に変化することも特徴です。 心筋梗塞は、生活習慣病と深く関わっており、食生活の乱れや運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどが、リスクを高めます。

心筋梗塞の疑いがある場合は、早めに医療機関を受診し、心電図検査や血液検査を行いましょう。 日頃からバランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒などを心がけ、健康的な生活習慣を維持することが大切です。

私は循環器専門医として、たくさんの心筋梗塞の患者様の治療にあたってきました。
何か、不安な症状がある方はぜひ当院にご相談下さい。



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