大石内科循環器科医院

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そのいびきは睡眠時無呼吸症候群のサインかも?メカニズムと種類を詳しく解説

2024.11.14 いびき・睡眠無呼吸外来

夜中に大きないびきをかいて、家族に注意されたことはありませんか?実は、いびきは単なる騒音問題ではなく、健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインの可能性があります。SASは適切な治療を受けないと、高血圧や心臓病、脳卒中などのリスクを高める恐れがあります。

本記事では、いびきの原因やメカニズム、SASとの関係、自宅でできる改善策まで詳しく解説します。正しい知識を身につけることで、質の高い睡眠を取り戻し、健康的な生活を送るためのヒントを得ることができます。あなたや大切な人の健康を守るため、いびきについて正しく理解し、適切な対策を講じましょう。

いびきが起こる原因とメカニズム

いびきは、多くの人が経験する睡眠中の現象です。いびきの音は、単なる不快な騒音ではなく、体内で起こる複雑なプロセスの結果です。いびきの主な原因は、睡眠中に上気道(鼻からのどにかけての空気の通り道)が狭窄または一時的に閉塞してしまうためです。いびきの現象がどのように発生するのか、以下で詳しく解説します。

いびきの原因は上気道の狭窄

いびきの原因は上気道の狭窄であることがほとんどです。上気道の狭窄には、以下の要因が絡んでいます。

  • 睡眠姿勢:仰向けで寝ると、重力の影響で舌根部(舌の付け根)が後方に沈み、咽頭腔(のどの奥の空間)を狭めます。
  • 肥満:過剰な体重は、首周りの脂肪組織を増加させ、気道を圧迫します。BMI(体格指数)が25以上の人は、いびきのリスクが高まるとされています。
  • 解剖学的要因:小顎症や口蓋扁桃肥大など、生まれつきの構造が気道を狭くすることがあります。
  • 鼻腔閉塞:アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症などによる鼻づまりは、口呼吸を促し、上気道の狭窄リスクを高めます。
  • アルコール摂取:アルコールは上気道の筋肉を弛緩させ、気道の狭窄を引き起こします。就寝前の飲酒は、いびきの頻度と強度を増加させる可能性があります。

上記の要因により、上気道が狭くなると空気の流れが乱れ、いびきにつながります。

いびき音の発生メカニズム

いびき音は、狭くなった気道を通過する空気の流れによって生じます。いびきのプロセスは以下のとおりです。

  1. 気流の加速:狭くなった気道を通過する際、空気の流速が上昇します。
  2. 軟部組織の振動:加速した気流が、軟口蓋、口蓋垂(のどちんこ)、咽頭壁などの軟部組織を振動させます。
  3. 音の発生:この振動が空気中に伝わり、いびき音となります。

いびきの音色や大きさは、個人の解剖学的構造や気道の狭窄の程度によって異なります。「ゴロゴロ」、「グーグー」、「ピーピー」など、さまざまな音が観察されます。

いびきの種類

睡眠中に発生する呼吸音、通称「いびき」は、特徴や原因によって複数の種類に分類されます。主に「単純性いびき」と「睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴う呼吸音」の2つに大別されますが、実際には2つの中間に位置する症状も存在します。いびきの呼吸音の種類について、特徴や健康への影響、適切な対処法を詳しく説明します。

単純性いびき

単純性いびきは、多くの人が経験する比較的軽度の呼吸音です。単純性いびきの音は、以下の状況で発生することが多いです。

  • 過度の疲労時
  • 風邪やアレルギー性鼻炎による鼻閉時
  • アルコール摂取後
  • 特定の睡眠姿勢(特に仰向け)時

単純性いびきの特徴は、睡眠の質にほとんど影響を与えないことです。つまり、単純性いびきの呼吸音を発する人は、通常、朝起きたときに十分な休息感を得られます。ただし、寝室をともにする家族や同居人にとっては不快な騒音となる可能性があります。

上気道抵抗症候群(UARS)

上気道抵抗症候群は、単純性いびきと睡眠時無呼吸症候群の中間に位置する症状です。この症候群では、以下の特徴が見られます。

  • 持続的で大きな呼吸音
  • 呼吸の努力増大
  • 微細な覚醒(睡眠の分断)

UARSの患者さんは、完全な気道閉塞(無呼吸)には至りませんが、呼吸に対する抵抗が増大するため、睡眠の質が低下します。その結果、以下の症状が現れることがあります。

  • 日中の過度の眠気
  • 慢性的な疲労感
  • 集中力の低下

UARSは、従来のいびき検査では見逃されることが多く、専門的な睡眠検査が必要となる場合があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴う呼吸音

睡眠時無呼吸症候群に伴う呼吸音は、最も注意が必要なタイプです。SASでは、睡眠中に呼吸が繰り返し停止(無呼吸)または著しく減少(低呼吸)します。この症候群に特徴的な呼吸音のパターンは以下のとおりです。

  • 大きく不規則な呼吸音
  • 呼吸音の突然の停止(10秒以上続くことがある)
  • 呼吸再開時の大きな音(いびきや喘ぎ声)

睡眠時無呼吸症候群の診断にはポリグラフ検査(PSG)や無呼吸低呼吸指数(AHI)が用いられています。

いびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS)の関係

いびきは一般的な睡眠現象ですが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という重大な健康問題の兆候となる場合があります。いびきと睡眠時無呼吸症候群の関係を解説します。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発生メカニズム

睡眠時無呼吸症候群(SAS)では、上気道(鼻からのどにかけての空気の通り道)が完全に閉塞することがあります。SASはいびきの原因となる気道狭窄がさらに進行した状態と考えられます。その結果、気流が完全に遮断され、一時的な呼吸停止(無呼吸)が生じます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の典型的な症状パターン

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の特徴的な症状パターンは以下のとおりです。

  • 大きく不規則ないびき
  • いびきの突然の停止(10秒以上続くことがある)
  • 呼吸再開時の大きな音(いびきや喘ぎ声)

上記3つのサイクルを繰り返すことが多いです。症状パターンは、体内で起こる以下のプロセスを反映しています。

  1. 気道閉塞による呼吸停止
  2. 血中酸素濃度の低下
  3. 脳による緊急覚醒信号の発信
  4. 一時的な覚醒と呼吸の再開

重度SASの患者さんは、覚醒〜睡眠サイクルを一晩に100回以上繰り返すことがあります。繰り返されることで、深い睡眠(徐波睡眠)やREM睡眠が著しく減少し、睡眠の質が低下します。

いびきはSASの重要な警告サインの一つです。大きくて不規則ないびきや、呼吸の停止を伴ういびきが見られる場合は、SASの可能性を考慮し、専門医に相談することが重要です。

いびきの健康への影響と危険性

いびきは単なる音の問題ではなく、健康に深刻な影響を与える可能性があります。大きくて不規則ないびきは要注意です。いびきが健康にどのような影響を与えるのか、どんな危険性があるのか、短期的・長期的な影響を解説します。

短期的な影響:日中の眠気と集中力低下

いびきは睡眠の質を悪くします。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合、夜中に何度も呼吸が止まってしまうため、十分な休息が取れません。その結果、次のような問題が起こります。

  • 朝起きても疲れが取れない
  • 日中の強い眠気
  • 集中力の低下
  • イライラや気分の変動

上記の症状は、学校生活や日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。成績の低下や友人関係のトラブルにつながることもあるので、注意が必要です。

長期的な影響:生活習慣病のリスク増加

いびきが長期間続くと、さらに深刻な健康問題につながる可能性があります。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の場合、次のような病気のリスクが高まります。

  • 高血圧
    夜中に何度も呼吸が止まると、体が酸素不足になります。その結果、血圧が上がりやすくなります。高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行することがあります。
  • 心臓病
    酸素不足と高血圧のため、心臓に負担がかかります。長年続くと、心臓病のリスクが高まります。
  • 糖尿病
    睡眠不足は体の糖分を調整するホルモンのバランスを崩します。その結果、糖尿病になりやすくなります。
  • 肥満
    十分な睡眠が取れないと、食欲を抑えるホルモンの分泌が減り、逆に食欲を増すホルモンが増えます。そのため、太りやすくなります。
  • 認知症
    最近の研究では、長期的な睡眠障害が認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。

大人になってから問題になることが多いですが、若いうちから予防することが大切です。いびきや睡眠の問題を放置せず、早めに対策を取ることが重要です。

いびきは単なる音の問題ではなく、健康に深刻な影響を与える可能性があります。短期的には日中の眠気や集中力低下、長期的には生活習慣病のリスク増加につながる可能性があるのです。

以下の記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状や原因、治療方法について網羅的に説明しているので、ぜひチェックしてみてください。
>>もしかして睡眠時無呼吸症候群(SAS)?症状と原因、治療方法について解説

いびき改善のための生活習慣

いびきは多くの人が経験する睡眠中の現象ですが、ときには健康に悪影響を及ぼすことがあります。生活習慣の見直しによって、いびきの軽減が期待できます。具体的ないびき改善策をご紹介します。

健康的な体重管理

特に重要なのは健康的な体重維持です。肥満は首周りに脂肪がつきやすく、結果気道が圧迫されてしまいます。以下の方法で体重管理に努めましょう。

  • バランス良い食事
    野菜や果物、タンパク質などさまざまな栄養素を含む食事がおすすめです。特に夕食は就寝3時間前までに済ませると良好な消化につながります。この習慣によって快適な睡眠環境が整います。
  • 定期的な運動
    ウォーキングやジョギングなど、有酸素運動を取り入れることで体重管理が容易になります。また、運動にはストレス解消効果もあり、一石二鳥です。

快適な睡眠環境

次に大切なのは快適な睡眠環境づくりです。以下のポイントに注意しましょう。

  • 温度と湿度調整
    寝室は18〜22度程度で湿度は40〜60%が理想です。この範囲内であれば乾燥した空気によって鼻や喉への刺激が軽減されるため、加湿器などで調整しましょう。
  • 適切な枕選び
    自分に合った高さと硬さの枕選びも重要です。高すぎる枕では首への圧迫感から気道が狭まり、一方低すぎると頭部と首との位置関係から呼吸困難になる可能性があります。

規則正しい睡眠習慣

最後に規則正しい睡眠習慣も重要です。以下の方法で生活リズムを整えましょう。

  • 毎日の同時刻就寝・起床
    毎日同じ時間帯に就寝・起床することで体内時計が整います。このリズムによって質の高い睡眠へとつながります。
  • アルコール摂取制限
    就寝前のお酒は筋肉弛緩作用によって気道閉塞リスクを高めるため注意しましょう。特に寝酒は避けたほうが良いです。

日常的な改善策によって、自宅でも簡単にいびきを軽減し、より良好な睡眠環境へと導くことが可能です。また、自分自身や家族について気になる点がある場合には早めに医師への相談も検討してください。

健康リスクを伴ういびきの評価方法

いびきは一般的な睡眠現象ですが、中には睡眠時無呼吸症候群(SAS)のように深刻な健康問題につながる場合もあります。大きく不規則ないびきや、いびきの途中で呼吸が停止する時間がある場合は注意が必要です。SASに関連する典型的な日中症状は以下のとおりです。

  • 起床時の頭痛
  • 日中の過度の眠気
  • 集中力低下

また、無呼吸低呼吸指数(AHI)では、1時間あたりの無呼吸と低呼吸が30回を超えると、重度睡眠時無呼吸症候群に分類されます。家族の協力を得て、睡眠中の呼吸パターンを観察することが重要です。無呼吸低呼吸指数(AHI)による判断の目安は以下のとおりです。

1時間あたりの無呼吸と低呼吸基準
5回未満正常範囲内
5〜15回未満軽度睡眠時無呼吸症候群
15〜30回未満中度睡眠時無呼吸症候群
30回以上重度睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断方法

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が停止または低下する疾患です。朝の目覚めが悪い、日中の過度の眠気など、生活の質に影響を与える症状がある場合は、SASの可能性を考慮し、専門医の診断を受けることが重要です。

SASの診断は、以下の手順で行われます。

  1. 問診
    患者さんの睡眠パターン、日中の眠気、いびきの有無などについて詳細に質問します。エプワース眠気尺度(ESS)などの標準化された質問票を使用することもあります。
  2. 身体検査
    患者さんの体重、首周り、口腔内構造などを確認します。BMIが30以上の場合、SASのリスクが高くなります。
  3. 睡眠検査
    睡眠検査には、簡易検査(在宅睡眠検査)と終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)の2種類があります。各検査では、パルスオキシメーターや気流センサー、胸部・腹部の動きを測定するベルトなどを用いて、一晩の睡眠中の呼吸状態を記録します。脳波や眼球運動、筋電図や心電図、などを同時に測定して無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出し、SASの重症度を判定します。

まとめ

いびきは単なる不快な音ではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重要なサインの可能性があります。SASは以下の特徴があります。

  • 大きく不規則ないびき
  • 呼吸の一時的な停止
  • 日中の強い眠気や集中力低下

放置すると高血圧や糖尿病、心疾患などのリスクが高まります。早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、専門医への相談をおすすめします。適切な対処で、質の高い睡眠と健康的な生活を取り戻すことができます。

気になる症状等があるときは、ぜひ当院にご相談ください。

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