大石内科循環器科医院

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血圧の上と下の差の理想値を医師が解説|適切な差を保つポイントも紹介

2024.09.24

上の血圧と下の血圧、2つの数値が表示されますが、その差が大きいと血管の老化が進んでいるサインかもしれません。実は「脈圧」は、動脈硬化の危険性を示す指標の一つです。動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高める怖い病気ですが、自覚症状がないまま進行することが多いため、注意が必要です。

この記事では、血圧の理想的な差や脈圧を正常に保ち血管を若返らせるための生活習慣を詳しく解説します。ご自身の血圧と生活習慣を見直し、健康維持のヒントにしてみてください。

大石内科循環器科医院では、高血圧の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みの方は気軽に相談ください。

血圧の上下差が意味することとは?

健康診断などで血圧を測ると、必ず「上の血圧」と「下の血圧」の2つの数値が表示されます。2つの数値の差が「脈圧」と呼ばれます。脈圧は血管の老化現象である「動脈硬化」のサインを教えてくれる、いわば「血管の年齢を測るものさし」です。

血管は、心臓が押し出す血液によって常に伸縮を繰り返しています。心臓がギュッと縮んで血液を送り出すときの圧力が上の血圧、心臓がゆったりと広がって血液をため込むときの圧力が下の血圧です。若い方の血管はゴムのようにしなやかで、心臓が送り出す血液にも柔軟に対応できます。

年齢を重ねたり、生活習慣の乱れが続いたりすると、血管は徐々に硬くもろくなっていきます。動脈硬化が進むと、血管の弾力性が失われ、心臓が送り出す血液をスムーズに受け止められなくなります。徐々に上の血圧は高く、下の血圧は低くなるため、脈圧が大きくなってしまうのです。

脈圧が大きいということは、それだけ血管が硬くなっており、動脈硬化が進んでいるサインです。動脈硬化は自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気を引き起こすリスクを高めます。

以下の記事に高血圧の初期症状について詳しく書いているので合わせてご覧ください。
>>高血圧の初期症状を解説!すでに症状が出てると進行しているかも

血圧の理想的な差を保つ生活習慣

血圧の理想的な差を保ち、血管を若返らせるための生活習慣は以下のとおりです。

  • 塩分を控えた食生活をする
  • 適度な運動をする
  • 十分な睡眠をとる
  • ストレスを溜めない
  • 禁煙する
  • アルコールを控える
  • 植物ベースの食事を心がける

塩分を控えた食生活をする

塩分の摂りすぎは、血圧を上げる原因の一つです。塩分を摂りすぎると、血液中の塩分濃度が高くなり、それを薄めようと体が水分を溜め込みます。すると、血液量が増え、血管にかかる圧力が高くなるため、血圧が上がってしまうのです。

厚生労働省が推奨する食塩の摂取量は、成人男性で1日7.5g未満、成人女性で6.5g未満です。しかし、高血圧を予防・改善するためには、男女ともに1日の食塩摂取量を6g未満にすることが理想とされています。

外食が多い方は、ラーメンのスープを全部飲んでしまうと、たくさんの塩分を摂取してしまうことになるので注意が必要です。スープは少し残すようにするだけでも、塩分摂取量を抑えることができます。

自宅で食事をする際にも、醤油やソースなどの調味料は、かけすぎないように注意したり、減塩タイプのものを選んだりするのも効果的です。めんつゆやポン酢、ドレッシングなども、塩分の少ないものを選ぶように心がけましょう。

漬物や佃煮、練り物などの加工食品は、塩分が多いので食べすぎないように注意しましょう。ハムやソーセージなどの加工肉も塩分が多いので注意が必要です。

高血圧のときの食生活については以下の記事について詳しく書いていますので、合わせてご覧ください。
>>高血圧の人が食べてはいけないものを解説!食生活で気をつけるべきポイント

適度な運動をする

適度な運動は、血圧を下げる効果が期待できます。運動不足の人は、そうでない人と比べて高血圧のリスクが約1.2~1.4倍高くなると言われています。運動には、心臓の働きを良くしたり、血管を拡張したりする効果があります。毎日の運動は血管の弾力性を高め、血圧の上昇を抑えることが可能です。

ウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、水泳など、無理なく続けられる運動を、習慣に取り入れてみましょう。運動は、1回あたり30分以上を週に3回以上行うのが効果的です。運動を習慣化するために、毎日の生活の中に運動を取り入れましょう。

通勤で一駅分多く歩く、エレベーターを使わずに階段を使うなど、日常生活の中で体を動かす機会を増やすだけで効果があります。

運動療法については以下の記事で詳細に解説していますので、合わせて読んでみてください。
>>高血圧の運動療法のおすすめの方法や効果を高血圧治療ガイドラインをもとに解説!

十分な睡眠をとる

睡眠不足は、ストレスホルモンの分泌を促し、血圧を上昇させる要因です。質の高い睡眠をしっかりとることは、血圧の安定につながります。睡眠不足になると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。交感神経が優位になると、血管が収縮し、血圧が上昇しやすいです。

睡眠不足は、食欲を増進させるホルモンの分泌を促し、肥満のリスクを高めることも知られています。肥満は高血圧の危険因子の一つです。睡眠時間は、個人差がありますが、一般的には7~8時間が適切とされています。寝る前にスマホやパソコンを見るのは控え、リラックスできる環境を整えましょう。

ストレスを溜めない

ストレスを溜め込まないためには、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。人それぞれ解消法は違いますが、以下は一例です。

  • 趣味の時間を楽しむ
  • 友人とのおしゃべりを楽しむ
  • 好きな音楽を聴く
  • ペットと触れ合う

軽い運動やヨガなども、ストレス解消に効果的です。軽い運動を行うと、セロトニンという神経伝達物質が分泌され、リラックス効果や幸福感が得られます。ヨガは、呼吸法や瞑想を取り入れることで、心身のリラックスをもたらし、ストレスを軽減する効果が期待できます。自分なりのストレス解消法を行いましょう。

禁煙する

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。血管内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を促進する作用もあります。さらに、喫煙は血液中の善玉コレステロールを減らし、悪玉コレステロールを増やすため、動脈硬化を促進させやすいです。

禁煙は、血圧を下げるだけでなく、さまざまな病気のリスクを減らすことにもつながります。禁煙はなかなか難しいですが、禁煙外来を受診するなど医師や薬剤師のサポートを受けることも検討しましょう。

アルコールを控える

アルコールを大量に摂取すると、血圧が上昇することがあります。アルコールには、血管を拡張させる作用と、交感神経を刺激する作用があるのが特徴です。少量のアルコールでは、血管拡張作用が強く、血圧は一時的に下がりますが、大量摂取では血圧が上昇します。

アルコールは適量を心がけ、飲みすぎないように注意しましょう。厚生労働省では、純アルコール換算で20g程度までを「節度ある適度な飲酒」としています。ビールなら500ml、日本酒なら1合程度に相当します。飲酒時には、おつまみにも気を配り、塩分の摂りすぎに注意しましょう。

植物ベースの食事を心がける

健康的な血圧を維持するためには、バランスの取れた食事が重要です。最近の研究では、植物ベースの食事を摂ることで、血圧を下げ、動脈硬化のリスクを減らす効果が期待できるという報告があります。植物ベースの食事とは、野菜、果物、豆類、全粒穀物などを中心とした食事のことです。

動物性食品ベースの食事と比較して、植物ベースの食事は低い血圧値を示します。植物性食品に豊富に含まれるカリウムやマグネシウム、食物繊維などが、血圧を調整する効果があるためと考えられています。肉や魚などの動物性食品を減らし、植物性食品を積極的に摂るように心がけましょう。

朝食に果物や野菜のスムージーを取り入れたり、昼食や夕食に豆腐や納豆などの大豆製品を積極的に食べたりするのも良いでしょう。肉料理中心の食生活を送っている方は、週に数回は魚料理や野菜中心のメニューにするなど、少しずつ変化させてみてください。

家庭で血圧を測るポイント

血圧は心身の状態に敏感に反応するため、病院だと普段より高めに出てしまうことがあります。おすすめなのが、自宅での血圧測定です。リラックスできる環境で測ることで、より正確なあなたの血圧の状態がわかります。家庭で血圧を測るときのポイントについて、以下の内容を解説します。

  • 血圧測定に適した時間帯
  • 正しい測定姿勢
  • 測定値の記録方法

血圧測定に適した時間帯

血圧は一日中、常に変動しています。ジェットコースターのように上がったり下がったりするわけではありませんが、活動時間帯やリラックスしている時間帯などによって、ゆるやかに変化しています。朝起きて活動を始めると血圧は上昇し、夜眠っている間は低下するので、毎日同じ時間帯に測定することが重要です。

血圧測定におすすめの時間帯は朝か夜です。それぞれ血圧測定のタイミングをチェックしましょう。

朝:起床後1時間以内(トイレを済ませた後、朝食前)

  • 朝の血圧は、身体が活発になる時間帯なので、高い傾向がある
  • 起床後すぐは血圧が不安定なので、落ち着いてから測定する

夜:就寝前

  • 夜の血圧は、身体が休息に向かう時間帯なので、低い傾向がある
  • リラックスした状態で測定できるため、より正確な値が得られる

正しい測定姿勢

血圧測定は、姿勢を正しくしないと、正確な値が得られません。ソファに深く腰掛けたリラックスした姿勢で測ると、実際よりも低い値が出てしまうことがあります。正しい測定姿勢のポイントは以下のとおりです。

  1. 楽な姿勢で椅子に座り、背筋を伸ばす
    • 背筋を伸ばすことで、胸が張って呼吸がしやすくなり、リラックスした状態で測定できる
  2. 測定する腕をテーブルの上に乗せる
    • 心臓と同じくらいの高さに腕を乗せることで、心臓の高さを基準に血圧を測定でき、より正確な値を測れる
  3. 脚は組まない
    • 脚を組むと、血流が悪くなってしまい、正確な血圧値を測れない
  4. カフ(腕に巻く部分)を心臓の位置と同じ高さに巻く
    • カフの位置が心臓よりも高い位置にあると、実際よりも低く測定され、逆に低い位置にあると、実際よりも高く測定される
  5. 測定中は話さない、動かない
    • 話したり動いたりすると、血圧が変動してしまうため、測定値に影響を与える

測定値の記録方法

血圧は、毎日測定して記録することが大切です。記録することで、自分の血圧の傾向を把握できます。「今週は残業続きで疲れているから、いつもより血圧が高いな」といったように、自分の生活習慣と血圧の関係性に気付けるかもしれません。血圧記録のポイントは以下のとおりです。

  • 測定日時を記録する
  • 上の血圧(収縮期血圧)、下の血圧(拡張期血圧)を記録する
  • 脈拍を記録する
  • 体調に合わせて記録する
  • 血圧の服薬状況を記録する

「昨日の夜はあまり眠れなかった」「風邪気味」といった体調の変化を記録することも大切です。「血圧の薬を飲み忘れた」といった服薬状況も記録すると、血圧の変化の原因を特定しやすいです。最近では、スマートフォンアプリを使って簡単に血圧を記録できるものもあります。

記録したデータは、グラフで分かりやすく表示されるので、血圧の推移を把握しやすくなります。血圧測定は、あなた自身の健康状態を把握するための第一歩です。毎日継続して測定し、健康的な生活を送りましょう。

まとめ

脈圧とは、上の血圧と下の血圧の差で、血管の年齢を測るものさしと言えます。脈圧が大きいほど動脈硬化が進んでいるサインとなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まってきます。血管を若返らせるためのポイントは以下のとおりです。

  • 塩分を控えた食生活をする
  • 適度な運動をする
  • 十分な睡眠をとる
  • ストレスを溜めない
  • 禁煙する
  • アルコールを控える
  • 植物ベースの食事を心がける

日常生活を少しずつ変えることで、健康的な体づくりが可能になるので、できることから実践しましょう。

高血圧について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。

>>大石内科循環器科医院|高血圧の基礎知識・症状・治療について

参考文献

Plant-Based Diets Reduce Blood Pressure: A Systematic Review of Recent Evidence


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