あなたは、夜中に何度も呼吸が止まっている可能性があります。 実は日本人の250〜350万人が「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の可能性があると言われています。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に呼吸が止まり、さまざまな健康リスクを高める病気です。しかし自覚症状がない場合も多く静かに進行していくため、潜在的な患者数はさらに多いと推測されています。
今回は睡眠時無呼吸症候群(SAS)と、高血圧や糖尿病といった生活習慣病との意外な関係について解説していきます。 もしかしたら、あなたも知らないうちに睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクにさらされている可能性があります。睡眠時無呼吸症候群(SAS)について正しく理解し、健康的な睡眠と生活習慣を手に入れましょう。
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と「生活習慣病」。最近よく耳にする病気ですが、実は密接な関係があることをご存知ですか?例えば、肥満体型で高血圧を抱えている方が睡眠時無呼吸症候群を合併すると、心臓への負担がさらに増大し、心不全リスクの増加につながる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病の関係について解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる病気です。医学的には、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上ある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。無呼吸の状態が続くと、血中酸素濃度が低下し、脳が覚醒を繰り返すため、質の良い睡眠が得られません。
睡眠時無呼吸症候群の重症度は、1時間あたりの無呼吸と低呼吸(呼吸が浅くなる状態)の合計回数(AHI)で判断されます。AHIが5以上15未満で軽症、15以上30未満で中等症、30以上で重症とされています。
生活習慣病は、不適切な生活習慣が原因で発症・進行する病気の総称です。主な生活習慣病には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などがあります。偏った食生活、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣が長期間続くことで徐々に進行します。
生活習慣病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行していることが多いのが特徴です。しかし、適切な生活習慣の改善により、予防や進行の抑制が可能な病気でもあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中の呼吸トラブルだけでなく体全体の健康状態を悪化させ、さまざまな生活習慣病のリスクを高めることがわかっています。
SASはさまざまな生活習慣病のリスクを高める危険因子となります。
生活習慣病が睡眠時無呼吸症候群(SAS)に悪影響を与えるケースも少なくありません。
生活習慣病とSASは互いに悪影響を及ぼし合い、症状を悪化させる可能性があります。日頃から生活習慣に気を配り、SASの予防や改善に努めることが大切です。すでに生活習慣病がある方は、SASのリスクも考慮し当院へご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は気がつかないうちに進行している場合も多い病気です。SASの症状と原因、生活習慣病との関係について解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な症状として「大きないびき」が挙げられます。睡眠中に気道が狭くなることで、呼吸のたびに空気の通り道が狭くなり、のどちんこや軟口蓋が振動することで起こります。
またSASの人は睡眠中に何度も呼吸が止まるため、深い睡眠がとれず日中に強い眠気や倦怠感を訴えることが多くなります。会議中に頭がぼーっとしてしまったり、車の運転中に眠くなってしまったりすることがあります。脳が酸素不足に陥ることで、正常な働きを維持できなくなるためです。
さらに「集中力・記憶力の低下」も見られることがあります。睡眠不足は脳の働きを低下させ、集中力や記憶力の低下につながります。人の名前が思い出せなくなったりミスが増えたり、仕事や勉強の効率が著しく落ちてしまうこともあります。
主な症状と具体的な例を以下の表にまとめます。
症状 | 具体的な例 |
大きないびき | 隣で寝ている人を起こしてしまうほどの大きな音、呼吸と呼吸の間が詰まったような苦しそうな音 |
日中の眠気 | 日中、我慢できないほどの眠気に襲われる、会議や運転中に眠ってしまう |
集中力・記憶力の低下 | 物事に集中できない、人の名前や約束を忘れてしまう、ミスが増える |
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因は、大きく分けて2つあります。1つ目は「肥満」です。肥満になると首回りに脂肪がつき、気道が狭くなってしまいます。2つ目は「遺伝」です。家族にSASの人がいたり生まれつき顎が小さい、首が短いなどの骨格的な特徴があったりするとSASになりやすいと言われています。
その他にも加齢に伴う気道の筋肉の衰えや、飲酒、喫煙などもSASのリスクを高める要因となります。飲酒は筋肉を弛緩させる作用があるため、気道周りの筋肉も弛緩し、気道が狭くなってしまいます。喫煙は、気道の炎症を引き起こし、気道を狭くしたり、閉塞させたりする原因です。
SASの発症要因を表にまとめると、以下のとおりです。
原因 | 説明 |
肥満 | 首周りに脂肪がつき、気道が狭くなる |
遺伝 | 家族歴、顎が小さい、首が短いなど |
加齢 | 気道の筋肉が衰え、気道が狭くなる |
飲酒・喫煙 | アルコールやタバコは、気道の筋肉を弛緩させたり、炎症を起こしたりすることで、気道を狭くする |
当院には禁煙外来があります。禁煙をしたい方は一度ご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、放っておくとさまざまな病気のリスクを高める可能性がある病気です。しかし適切な診断と治療を受けることで、リスクを減らし安心して眠れるようになる可能性があります。今回はSASの診断方法や治療方法について、実際の症例を交えながら詳しく解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断は問診や診察に加えて、睡眠中の状態を詳しく調べる検査が必要となります。風邪をひいて一時的にいびきをかいているだけなのか、SASのように習慣的に無呼吸になっているのかを判断するためにさまざまな角度からの検査が必要となります。
問診や診察である程度の疑いが持たれた場合、さらに詳しく調べるために、睡眠ポリグラフ検査(PSG)と呼ばれる検査を行います。睡眠中の無呼吸や低呼吸の回数、持続時間、血液中の酸素飽和度の変化などを総合的に評価することで、SASの確定診断を行います。
当院では、病院に泊まらず自宅でセンサーを装着して寝ることで、簡易的に睡眠中の呼吸状態を調べる家庭用簡易睡眠ポリグラフ検査(HSAT)を行っています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療方法は症状の重さや生活習慣、体質などを考慮して、医師と患者さんで一緒に決めていきます。軽症の場合は、生活習慣の改善だけで症状が改善するケースもありますが、中等症以上の場合は、医療機器を使った治療が必要となります。
SASの治療方法を解説します。
生活習慣病を改善することで、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療につながります。具体的には以下の生活習慣を見直していきましょう。
CPAPはContinuous Positive Airway Pressureの略で、日本語では「持続的陽圧呼吸療法」とも呼ばれます。鼻に装着したマスクから空気を送り込むことで、気道を広げて呼吸を楽にする治療方法です。CPAP療法は、SASの治療において最も効果的な治療方法の一つであり、多くの患者さんで症状の改善が見られます。
マウスピースのような装置を口に装着することで、下顎を前に押し出し、気道を広げる治療方法です。CPAP療法がどうしても合わない方や、軽度から中等度のSASの方に適しています。
鼻や喉の奥の気道を広げる手術を行うことで、SASの症状を改善する方法です。その他の治療方法で効果が得られない場合や、扁桃肥大などの解剖学的な問題がある場合に検討されます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まる病気で大きないびき、日中の眠気、集中力・記憶力の低下などが主な症状です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は肥満や遺伝などが原因で起こりやすく、高血圧、糖尿病などの生活習慣病と密接に関係しています。治療方法は以下のとおりです。
適切な治療を行うことで症状の改善や生活の質の向上が期待できます。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は慢性的な病気であるため、医師の指示に従い治療を継続していくことが重要です。
当院では多くの睡眠時無呼吸症候群の診察経験があります。睡眠時の無呼吸やいびき、生活習慣病でご不安な方は、当院にご相談ください。
Sforza M, Salibba A, Carollo G, Scarpellino A, Bertone JM, Zucconi M, Casoni F, Castronovo V, Galbiati A and Ferini-Strambi L. Boosting obstructive sleep apnea therapy by non-pharmacological approaches: A network meta-analysis.. Sleep medicine 115, no. (2024): 235-245.
大石内科循環器科医院
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