大石内科循環器科医院

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実は関係している?睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病の関連性とは

2024.09.30 生活習慣病いびき・睡眠無呼吸外来

あなたは、夜中に何度も呼吸が止まっているかもしれません。 実は日本人の成人男性の約3人に1人、女性の約5人に1人が「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の可能性があると言われています。 SASは睡眠中に呼吸が止まり、様々な健康問題を引き起こす病気です。しかし自覚症状がない場合も多く静かに進行していくため、潜在的な患者数はさらに多いと推測されています。

今回はSASと、高血圧や糖尿病といった生活習慣病との意外な関係について解説していきます。 もしかしたら、あなたも知らないうちにSASのリスクにさらされているかもしれません。

この機会に、SASについて正しく理解し、健康的な睡眠と生活習慣を手に入れましょう。

睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病の関連性とは

「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と「生活習慣病」。最近よく耳にするこれらの病気ですが、実は密接な関係があることをご存知でしょうか? 例えば、肥満体型で高血圧を抱えている方がSASを合併すると、心臓への負担がさらに増大し、心不全のリスクが高まる可能性があります。

今回は、SASと生活習慣病の関係について詳しく解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病の定義と特徴

  1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)ってどんな病気?
    SASは、睡眠中に呼吸が止まる、あるいは浅くなる状態を繰り返す病気です。いびきや日中の強い眠気などの症状が現れますが、自覚症状がない場合もあるため注意が必要です。
  2. 生活習慣病ってどんな病気?
    生活習慣病は食生活の乱れや運動不足、喫煙、過度の飲酒など、偏った生活習慣が長期間にわたって続くことで発症する病気の総称です。 高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病などが代表的な例として挙げられます。
  3. 2つの病気は深く関係している!?
    SASと生活習慣病は、それぞれ独立した病気として捉えられがちですが実際には密接に関係しています。 例えば高血圧や糖尿病などの生活習慣病があると、血管が傷つきやすくなり動脈硬化が進行しやすくなります。 この動脈硬化は、心臓や脳などの重要な臓器に血液を送り出す血管にも影響を及ぼしSASのリスクを高める可能性があります。 また肥満はSASの大きなリスク因子の一つですが、同時に糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のリスクも高めます。

睡眠時無呼吸症候群が生活習慣病に与える影響

SASは睡眠中の呼吸トラブルだけでなく体全体の健康状態を悪化させ、様々な生活習慣病のリスクを高めることが分かっています。

  1. 高血圧: SASになると、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、体が酸素不足の状態に陥ります。 この酸素不足を補おうと、心臓はより多くの血液を送り出す必要があり、その結果、血圧が上昇しやすくなります。 高血圧は、心臓病や脳卒中などのリスクを高める危険因子であるため、注意が必要です。
  2. 糖尿病: SASは、インスリンというホルモンの働きを悪くすることがあります。 インスリンは血液中の糖分を細胞に取り込み、エネルギーに変換する役割を担っています。SASによってその働きが阻害されると、血液中の糖分が増加し、糖尿病のリスクが高まります。
  3. 脂質異常症: SASになると、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質が増えやすくなることがあります。 これはSASによって血管の内壁が傷つきやすくなり、そこにコレステロールなどが溜まりやすくなるためです。 脂質異常症は動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中のリスクを高めるため注意が必要です。
  4. 心臓病: SASによって引き起こされる高血圧や不整脈は、心臓に大きな負担をかけます。 また睡眠中の無呼吸状態では、心臓は酸素不足を補うため、より多くの血液を送り出そうと懸命に働きます。 この状態が長く続くと、心臓は疲弊し、心不全などの心臓病のリスクが高まります。

このように、SASは様々な生活習慣病のリスクを高める危険因子となります。

生活習慣病が睡眠時無呼吸症候群に影響を及ぼす可能性

生活習慣病がSASに悪影響を与えるケースも少なくありません。

  1. 肥満: 肥満は、SASの最大の原因の一つです。 首回りに脂肪が蓄積すると気道が狭くなり、睡眠中に呼吸が浅くなったり止まってしまったりしやすくなるためです。 これは、まるで太いホースよりも細いホースの方が水の流れが悪くなるように、気道が狭くなることで空気の通りが悪くなるイメージです。
  2. 高血圧: 高血圧によって血管が硬くなると血液の流れが悪くなり、心臓に負担がかかります。 この状態が続くと、心臓は酸素不足に陥りやすくなりSASが悪化する可能性があります。
  3. 糖尿病: 糖尿病になると血液中の糖分が増加し、血管を傷つけやすくなります。 その結果、気道の炎症が起こりやすくなり、SASが悪化する可能性があります。 また糖尿病によって神経障害が起こると、呼吸をコントロールする神経にも影響が及び、SASのリスクが高まる可能性があります。

このように、生活習慣病とSASは互いに悪影響を及ぼし合い、症状を悪化させる可能性があります。 日頃から生活習慣に気を配り、SASの予防や改善に努めることが大切です。 また、すでに生活習慣病がある方は、SASのリスクも考慮し当院へご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の症状と原因について

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。実は、SASは気が付かないうちに進行している場合も多い病気です。今回はSASの症状と原因、そして生活習慣病との関係について詳しく解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群の主な症状と影響

SASの代表的な症状として「大きないびき」が挙げられます。これは睡眠中に気道が狭くなることで、呼吸の度に空気の通り道が狭くなり、のどちんこや軟口蓋が振動することで起こります。

またSASの人は睡眠中に何度も呼吸が止まるため、深い睡眠がとれず日中に強い眠気や倦怠感を訴えることが多くなります。会議中に頭がぼーっとしてしまったり、車の運転中に眠くなってしまったりすることがあります。これは脳が酸素不足に陥ることで、正常な働きを維持できなくなるためです。

さらに「集中力・記憶力の低下」も見られることがあります。睡眠不足は脳の働きを低下させ、集中力や記憶力の低下につながります。人の名前が思い出せなくなったりミスが増えたり、仕事や勉強の効率が著しく落ちてしまうこともあります。

症状具体的な例
大きないびき隣で寝ている人を起こしてしまうほどの大きな音、呼吸と呼吸の間が詰まったような苦しそうな音
日中の眠気日中、我慢できないほどの眠気に襲われる、会議や運転中に眠ってしまう
集中力・記憶力の低下物事に集中できない、人の名前や約束を忘れてしまう、ミスが増える

睡眠時無呼吸症候群の原因と発症要因

SASの原因は、大きく分けて2つあります。1つ目は「肥満」です。肥満になると首回りに脂肪がつき、気道が狭くなってしまいます。これは、太った人が首を絞められている状態に似ています。2つ目は「遺伝」です。家族にSASの人がいたり生まれつき顎が小さい、首が短いなどの骨格的な特徴があるとSASになりやすいと言われています。

その他にも加齢に伴う気道の筋肉の衰えや、飲酒、喫煙などもSASのリスクを高める要因となります。飲酒は筋肉を弛緩させる作用があるため、気道周りの筋肉も弛緩し、気道が狭くなってしまいます。喫煙は、気道の炎症を引き起こし、気道を狭くしたり、閉塞させたりする原因となります。

原因説明
肥満首回りに脂肪がつき、気道が狭くなる
遺伝家族歴、顎が小さい、首が短いなど
加齢気道の筋肉が衰え、気道が狭くなる
飲酒・喫煙アルコールやタバコは、気道の筋肉を弛緩させたり、炎症を起こしたりすることで、気道を狭くする

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生活習慣病が睡眠時無呼吸症候群の発症に与える影響

SASは高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と深く関わっています。例えば高血圧の人は、そうでない人に比べてSASのリスクが約1.4倍高くなるという報告もあります。これは高血圧によって血管が硬くなり血流が悪くなることで、気道の周りの組織にも影響を及ぼしSASを引き起こしやすくなると考えられています。

また糖尿病の人は、インスリンというホルモンの働きが悪くなり、血糖値が上がりやすくなっています。高血糖状態が続くと血管が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行します。その結果、SASのリスクも高まってしまうのです。

このように、SASと生活習慣病は密接に関係しており、互いに悪影響を及ぼし合います。そのためSASの予防や改善のためには、生活習慣病の予防と改善も非常に重要になります。

効果的なSAS治療には、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)などの医療機器の使用に加えて、生活習慣の改善、特に、減量、禁煙、節酒などが重要です。これらのアプローチを組み合わせることでSASの症状を効果的に管理し、生活の質を向上させることができます。

睡眠時無呼吸症候群の診断と治療について

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、放っておくと様々な病気のリスクを高める可能性がある病気です。しかし適切な診断と治療を受けることで、そのリスクを減らし安心して眠れるようになる可能性があります。今回はSASの診断方法や治療法について、実際の症例を交えながら詳しく解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群の診断方法と検査

SASの診断は問診や診察に加えて、睡眠中の状態を詳しく調べる検査が必要となります。風邪をひいて一時的にいびきをかいているだけなのか、それともSASのように習慣的に無呼吸になっているのかを判断するために様々な角度からの検査が必要となります。

例えば、日中の強い眠気を訴えて来院された患者さんについて説明しましょう。問診では、睡眠時の様子や日中の自覚症状などについて詳しく伺います。「毎晩奥さんにいびきがうるさいと起こされる」「仕事中に強い眠気に襲われることがある」といった情報は重要な手がかりになります。

身体診察では、鼻や喉の奥の状態などを確認します。鼻茸(鼻の奥のポリープ)や扁桃肥大など、気道を狭くするような要因がないかを確認します。

問診や診察である程度の疑いが持たれた場合、さらに詳しく調べるために、睡眠ポリグラフ検査(PSG)と呼ばれる検査を行います。この検査では睡眠中の無呼吸や低呼吸の回数、持続時間、血液中の酸素飽和度の変化などを総合的に評価することで、SASの確定診断を行います。

当院では、病院に泊まらず自宅でセンサーを装着して寝ることで、簡易的に睡眠中の呼吸状態を調べる家庭用簡易睡眠ポリグラフ検査(HSAT)を行っています。

睡眠時無呼吸症候群の治療法と選択肢

SASの治療法はその方の症状の重さや生活習慣、体質などを考慮して、医師と患者さんで一緒に決めていきます。軽症の場合は、生活習慣の改善だけで症状が改善するケースもありますが、中等症以上の場合は、医療機器を使った治療が必要となります。

  1. 生活習慣の改善
    • 減量: 肥満はSASのリスクを高めるため、体重管理が重要です。体重が10%減ると、無呼吸低呼吸指数(AHI)が改善すると言われています。
    • 禁煙: タバコは気道の炎症を引き起こし、SASを悪化させる可能性があります。禁煙すると、AHIが改善すると言われています。
    • 節酒: アルコールは喉の筋肉を弛緩させ、気道を狭くしてしまうため、飲み過ぎに注意が必要です。アルコール摂取量を減らすと、AHIが改善すると言われています。
    • 横向きで寝る: 仰向けで寝るよりも気道が狭くなりにくいため、横向きで寝ることを心がけましょう。横向きで寝ることで、AHIが改善すると言われています。
  2. CPAP療法(経鼻的陽圧換気療法)
    • 鼻に装着したマスクから空気を送り込むことで、気道を広げて呼吸を楽にする治療法です。CPAP療法は、SASの治療において最も効果的な治療法の一つであり、多くの患者さんで症状の改善が見られます。
    • CPAPはContinuous Positive Airway Pressureの略で、日本語では「持続的陽圧呼吸療法」とも呼ばれます。
  3. 口腔内装置療法
    • マウスピースのような装置を口に装着することで、下顎を前に押し出し、気道を広げる治療法です。
    • CPAP療法がどうしても合わない方や、軽度から中等度のSASの方に適しています。
  4. 手術療法
    • 鼻や喉の奥の気道を広げる手術を行うことで、SASの症状を改善する方法です。
    • その他の治療法で効果が得られない場合や、扁桃肥大などの 解剖学的な問題がある場合に検討されます。

睡眠時無呼吸症候群の治療効果と予後

SASの治療は適切に行われれば、多くの場合症状の改善や生活の質の向上に繋がります。しかしSASは慢性的な病気であることが多く、治療を継続することが重要です。

  • CPAP療法などの適切な治療により日中の眠気や疲労感が改善し、集中力や作業効率が向上するなどの効果が期待できます。
  • 治療により、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを低下させる効果も期待できます。
  • SASは治療を中断すると症状が再発する可能性があるため、医師の指示に従って継続することが大切です。

例えばCPAP療法を始めた方の中には、最初はマスクの装着に慣れず治療を継続するのが難しいと感じる方もいます。しかし医師や医療スタッフと相談しながら、自分に合ったマスクや装着方法を見つけ辛抱強く治療を続けることで、症状の改善や生活の質の向上を実感できるはずです。治療を継続することで、AHI(睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数)を正常範囲まで改善できる可能性もあります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まる病気で大きないびき、日中の眠気、集中力・記憶力の低下などが主な症状です。

SASは肥満や遺伝などが原因で起こりやすく、高血圧、糖尿病などの生活習慣病と密接に関係しています。 治療法には、生活習慣の改善、CPAP療法、口腔内装置療法、手術療法などがあり、適切な治療を行うことで症状の改善や生活の質の向上が期待できます。

SASは慢性的な病気であるため、医師の指示に従い治療を継続していくことが重要です。当院では多くの睡眠時無呼吸症候群の診察経験があります。睡眠時の無呼吸やいびき、そして生活習慣病でご不安なb方は、当院にご相談下さい。


大石内科循環器科医院
420-0839
静岡市葵区鷹匠2-6-1
TEL:054-252-0585

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参考文献

Sforza M, Salibba A, Carollo G, Scarpellino A, Bertone JM, Zucconi M, Casoni F, Castronovo V, Galbiati A and Ferini-Strambi L. Boosting obstructive sleep apnea therapy by non-pharmacological approaches: A network meta-analysis.. Sleep medicine 115, no. (2024): 235-245.