大石内科循環器科医院

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肥満の人は検査が必要?睡眠時無呼吸症候群と肥満の関連性

2024.09.27

あなたは、睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことはありますか? 実はそれは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。

肥満気味の方、特に首回りに脂肪が多い方は要注意です。 脂肪が気道を圧迫し呼吸を妨げてしまうため、SASのリスクが高まります。 実際にBMIが高い人ほど、SASのリスクが高くなるという研究結果も出ています。

今回は、肥満と睡眠時無呼吸症候群の意外な関係について詳しく解説していきます。 もしかしたら、あなたにも関係があるかもしれません。 ぜひ、ご自身のことと照らし合わせながら読み進めてみてください。

睡眠時無呼吸症候群と肥満の関連性

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。実は、このSASと肥満には深い関係があり肥満傾向にある方は、そうでない方に比べて、SASになるリスクが高くなります。

肥満が睡眠時無呼吸症候群のリスクを増加させる理由

肥満になると、首の周りにも脂肪がつきやすくなります。気道は鼻や口から肺へと空気を運ぶための大切な通路ですが首回りに脂肪が蓄積すると、この気道が狭くなってしまうのです。これは、まるで太った人が首にきついマフラーをしているような状態です。この状態になると、呼吸がしにくくなってしままいSASのリスクが高まります。

さらに、肥満は舌の付け根にも影響を与えます。舌の付け根にある脂肪が増えて、舌が大きくなってしまうことがあるのです。大きくなった舌が、まるで蓋のように気道を塞いでしまうことで、さらにSASのリスクが高まります。

肥満と睡眠時無呼吸症候群の関連性についての研究結果

肥満とSASの関係は、多くの研究で明らかになっておりBMI(ボディマス指数)が高い人ほどSASのリスクが高くなるという結果が出ています。BMIは体重と身長から計算される体型の指標で、BMIが高いほど肥満度が高いことを示します。

また、お腹周りの脂肪が多い人、いわゆる「りんご型肥満」の方も、SASのリスクが高いという研究結果があります。お腹周りの脂肪は内臓脂肪と呼ばれ内臓脂肪が多いとSASだけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクも高まることが知られています。これらの研究結果から肥満は、SASの大きなリスク要因であることが分かります。肥満の方はSASの予防や早期発見、早期治療のために生活習慣の見直しや医療機関への相談を検討することが大切です。

睡眠時無呼吸症候群の検査方法について知る

「もしかして、睡眠時無呼吸症候群かもしれない…」と感じたら、当院へご相談ください。 検査を受けることで、適切な診断と治療に繋げることができます。

睡眠時無呼吸症候群の初期症状と検査の適応基準

睡眠時無呼吸症候群は自覚症状がない場合や、症状があっても他の病気と勘違いしてしまうことがあります。 そのため、検査が必要かどうか判断に迷う方もいるかもしれません。

次のような症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を検討しましょう

  • 大きないびき: 周りの人からうるさいと言われるほどの、大きないびきをかいている。
  • 睡眠中の無呼吸: 睡眠中に呼吸が止まっていることを、家族に指摘されたことがある。
  • 日中の強い眠気: 日中に強い眠気に襲われ、仕事中に居眠りをしてしまう、運転中に危ない思いをしたことがある。
  • 起床時の頭痛: 朝起きた時に頭痛がする、スッキリと目覚められない。
  • 集中力の低下: 集中力が続かず、仕事や勉強に身が入らない。
  • イライラしやすくなる: 些細なことでイライラしやすくなった、感情のコントロールが難しくなった。

これらの症状は睡眠時無呼吸症候群以外にも、他の病気の可能性もあります。 自己判断せずにまず当院へ受診していただき、医師へご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の検査方法とその手順

睡眠時無呼吸症候群の検査には、主に以下のような方法があります。

  1. 問診: まずは、医師が症状や生活習慣(喫煙、飲酒、睡眠時間など)について詳しく聞き取りを行います。
  2. 身体診察: 首の太さや舌の大きさ、扁桃腺の腫れ具合などを確認します。
  3. 終夜ポリソムノグラフィー検査: 自宅で指や鼻にセンサーをつけて寝るだけの簡単な検査です。睡眠中の呼吸状態を測定することで、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかどうかを調べます。
  4. 終夜ポリソムノグラフィー検査(入院フルPSG検査): 医療機関に入院して、睡眠中の様々な生理的な情報を測定する検査です。最も詳細な情報を得ることができ、睡眠時無呼吸症候群の確定診断や重症度の判定に役立ちます。

睡眠時無呼吸症候群の検査結果を読み解く

検査の結果は、主に「AHI」という指標を用いて評価します。 AHI(無呼吸低呼吸指数)とは、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数を表す指標です。

AHI重症度
5未満正常
5~15軽症
15~30中等症
30以上重症

AHIの値が大きくなるほど、睡眠時無呼吸症候群の重症度は高くなります。 AHIの値だけでなく、日中の眠気の程度や他の病気の合併なども考慮して治療方針を決定します。

睡眠時無呼吸症候群の治療方法を知る

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されたら、治療が必要になります。適切な治療を受けることで症状を改善し、健康的な生活を取り戻すことができるからです。ここでは、SASの治療方法について解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群の治療の目的と重要性

睡眠中に無呼吸になると、体が酸素不足になってしまいます。SASの治療は体がしっかりと酸素を取り込めるようにして、ぐっすり眠れるようにすることを目的としています。

SASを治療せずに放っておくと日中の眠気や集中力の低下など、様々な問題が起こります。例えば授業中に眠くなってしまったり、居眠り運転をしたりしてしまう危険性も高まります。さらに、高血圧や糖尿病などの病気のリスクも高まることがわかっています。

一般的な睡眠時無呼吸症候群の治療法

SASの治療法には、大きく分けて以下の3つの方法があります。

  1. CPAP(シーパップ)療法
    CPAP療法は、鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げて、無呼吸を防ぐ治療法です。これは、まるで、寝ている間に鼻に繋がった小さな空気ポンプで、新鮮な空気を送り込んでもらっているようなイメージです。CPAP療法は、現在、SASの最も一般的な治療法であり、多くの人が症状の改善を実感できます。
    例えば、CPAPを装着して寝るようになってから、朝までぐっすり眠れるようになった、日中の眠気がなくなって活動的になった、集中力が増して勉強がはかどるようになった、などの声が聞かれます。
  2. 歯科装置(マウスピース)
    SASの症状が軽度の場合やCPAP療法が合わない場合には、歯科装置(マウスピース)が用いられることもあります。歯科装置は下あごを少し前に出すことで、気道を広げ無呼吸を予防します。
    歯科装置はCPAPに比べて装着感が楽で、旅行などに持っていくのも簡単というメリットがあります。しかし全ての人に効果があるわけではなく、症状が改善しない場合は他の治療法を検討する必要があります。
  3. 生活習慣の改善
    肥満や飲酒、喫煙などは、SASのリスクを高めることがわかっています。肥満は気道を狭くしてしまうため、SASのリスクを高めます。飲酒は喉の筋肉を弛緩させ気道を狭くしてしまうため、SASのリスクを高めます。喫煙は気道の炎症を引き起こし、気道を狭くしてしまうため、SASのリスクを高めます。
    その為、肥満の解消や禁煙、飲酒量の制限などの生活習慣の改善も、SASの治療には重要です。例えば毎日30分のウォーキングや、バランスの取れた食事を心がけることで、肥満の解消を目指します。また禁煙外来を受診したり、禁煙アプリを利用したりするのも効果的です。飲酒量を減らすために、お酒を飲む日を決める、お酒の強い種類を避ける、などの工夫も有効です。

当院は禁煙外来も行っておりますので、ぜひご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の保険適用と治療費のこと

SASの治療費は治療法や医療機関によって異なりますが、CPAP療法や歯科装置は健康保険が適用されます。ただし保険適用を受けるためには、医療機関でSASと診断され適切な治療が必要と判断される必要があります。

治療費の自己負担額は加入している保険の種類や所得によって異なりますが、一般的には3割負担の場合は月額4,000円程度が目安となります。

睡眠時無呼吸症候群の治療効果と予防方法

適切な治療によって睡眠中の呼吸が楽になり、日中の眠気や倦怠感といった症状を改善できます。また合併症のリスクを減らし、健康で生き生きとした生活を取り戻せる可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の治療効果と改善される症状

SASの治療効果は、症状の改善、QOL(生活の質)の向上、合併症の予防という3つの側面から捉えることができます。

例えば日中の強い眠気に悩まされていた方が、治療により日中スッキリと過ごせるようになり仕事や家事の効率が上がったり趣味に打ち込めるようになったりというケースは少なくありません。また高血圧や糖尿病などの生活習慣病を合併していた方が、SASの治療によってこれらの病気の症状も改善した、という報告もあります。

治療効果具体的な例
日中の眠気の改善仕事中に居眠りすることがなくなった、会議に集中できるようになった、車の運転中に眠気を感じなくなって安全運転ができるようになった
いびきの改善パートナーから指摘されていたうるさいいびきが軽減した、旅行先で気兼ねなく眠れるようになった
集中力・記憶力の向上仕事や勉強に集中できる時間が増えた、新しいことを覚えやすくなった
気分のむら・抑うつ症状の改善イライラしにくくなった、気分が晴れやかになった、以前は楽しめなかった趣味に再び興味を持つようになった
生活の質の向上活動的に過ごせるようになった、家族や友人との時間をより楽しめるようになった、旅行など趣味に積極的に参加できるようになった
合併症の予防・改善高血圧や糖尿病などの生活習慣病の進行抑制、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病気のリスク軽減
肥満治療との相乗効果SAS治療と並行して減量に取り組むことで、より効果的に症状を改善できる。特に小児のSAS治療においては、加温加湿高流量鼻カニューラ療法と並行して肥満治療を行うことで、高い治療効果が期待できる

睡眠時無呼吸症候群の治療による予防方法と生活の変化

SASの治療は、ただ症状を抑えるだけでなく生活習慣を見直し、健康的なライフスタイルを手に入れるためのきっかけになります。治療を通して自分の体と向き合い、より良い生活習慣を身につけることでSASの再発を予防し、健康寿命を延ばすことにもつながります。

例えば、お酒やタバコが好きな方がSASの治療をきっかけに、これらの習慣を見直し規則正しい生活を送るようになったというケースもあります。また運動不足を感じていた方が、治療を通して運動の大切さを実感しウォーキングなどの軽い運動を習慣化するようになったという方もいます。

  • 食事: 塩分や脂肪分の多い食事を控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。特に野菜、果物、海藻類など、カリウムや食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂るようにしましょう。和食中心の食生活は塩分控えめで栄養バランスが良く、SASの予防にも効果が期待できます
  • 運動: 習慣的に運動を行うことは肥満の解消だけでなく、心肺機能の向上、ストレス解消など、様々な健康効果をもたらします。毎日30分程度のウォーキングや軽いジョギング、水泳などを習慣に取り入れてみましょう。運動が苦手な方はストレッチやヨガなど、無理なく続けられる運動を見つけましょう。
  • 睡眠: 睡眠時間は人それぞれですが、一般的には7~8時間程度の睡眠を心がけましょう。質の高い睡眠を得るためには寝る前にカフェインを控える、リラックスできる環境を作る、規則正しい睡眠リズムを維持するなどの工夫も大切です。

睡眠時無呼吸症候群の治療による健康リスクの軽減

SASは、単なる「いびきがうるさい病気」ではありません。放っておくと高血圧、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの深刻な病気のリスクを高める可能性があります。

SASの治療によって睡眠中の無呼吸状態が改善され体への負担が軽減されることで、これらの病気のリスクを減らす効果も期待できます。

例えば高血圧の患者さんがSASの治療を受けた結果、血圧が安定し降圧剤の量が減らせたというケースもあります。また糖尿病の患者さんがSASの治療を受けた結果、血糖値がコントロールしやすくなった、という報告もあります。

SASの治療は自分自身の健康を守るだけでなく、大切な家族や周りの人たちを守ることにつながります。安心して毎日を過ごすためにも、SASの治療は重要な役割を担っていると言えるでしょう。

まとめ

肥満は睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクを高める大きな要因です。 肥満により首回りに脂肪がつくと気道が狭くなり、呼吸が阻害されるためです。 SASの疑いがある場合は、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要となります。 治療法には、CPAP療法、歯科装置、生活習慣の改善などがあり、症状や生活スタイルに合った方法を選択することができる。 SASの治療により、日中の眠気や倦怠感などの症状改善だけでなく、合併症のリスク軽減など、健康面で多くのメリットが期待できます。

当院は、いびき・睡眠無呼吸外来を行っており、豊富な治療経験があります。気になる症状がある方はぜひ当院にご相談ください。

参考文献

Fishman H, Al-Shamli N, Sunkonkit K, Maguire B, Selvadurai S, Baker A, Amin R, Propst EJ, Wolter NE, Eckert DJ, Cohen E and Narang I. “Heated humidified high flow nasal cannula therapy in children with obstructive sleep apnea: A randomized cross-over trial.” Sleep medicine 107, no. (2023): 81-88.



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