猫と触れ合うたびに、くしゃみや鼻水が止まらなくなる、もしかしたらそれは猫アレルギーかもしれません。近年、猫アレルギーは増加傾向にあり2020年には150万人もの人が猫アレルギーに悩んでいる、というデータも出ています。
猫アレルギーは猫の毛や唾液などに含まれるアレルゲンが原因で、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状を引き起こします。猫と触れ合った後、数分から数時間以内に症状が現れることも多く重症化すると呼吸困難に陥るケースもあるため、早期発見と治療が重要です。
この記事では猫アレルギーの主な症状や原因、検査方法、そして治療法について詳しく解説していきます。猫との生活を安心して楽しむために、ぜひ読み進めてみてください。
猫アレルギーは猫の毛や唾液、皮膚などに含まれるアレルゲンによって引き起こされます。まるで鍵と鍵穴の関係のように、特定のアレルゲンが私たちの体の免疫システムと反応することで、くしゃみや鼻水、目のかゆみなど様々な症状を引き起こします。
猫アレルギーの代表的な症状として、くしゃみや鼻水があります。これは猫の毛やフケなどが、まるでホコリのように空気中に舞い上がり私たちの鼻の粘膜に付着することで起こります。この時、私たちの体は侵入者であるアレルゲンを排除しようと、過剰に反応してしまうのです。
例えば、くしゃみは、鼻に入ったアレルゲンを体の外に出そうとする防御反応です。また鼻水はアレルゲンを洗い流すと同時に、鼻の粘膜を保護する役割も担っています。
風邪と似た症状ですが、猫アレルギーによる症状は熱が出ることはほとんどありません。また、風邪のようにだるさや食欲不振などの全身症状が出ないのも特徴です。しかし、安心はできません。猫アレルギーによるくしゃみや鼻水は猫と触れ合った後、数分から数時間以内に現れることが多く、症状の程度は人によって異なります。
軽い場合は、くしゃみや鼻詰まり程度で済むこともありますが、重症化すると、息苦しさや喘鳴(ぜんめい)などの呼吸困難を引き起こす場合もあるため注意が必要です。喘鳴とは、空気の通り道である気管支が狭くなることで、呼吸をする際にゼーゼー、ヒューヒューといった音がする症状です。
実際に私の患者さんの中にも、猫アレルギーによる喘鳴で呼吸困難に陥り救急搬送された方がいらっしゃいます。幸い適切な処置により快方に向かわれましたが、猫アレルギーを甘く見てはいけないと改めて実感させられる出来事でした。
猫アレルギーによって、目のかゆみや涙の増加といった症状が現れることもあります。これは猫の毛やフケなどが目に接触することで、結膜と呼ばれる目の表面を覆う薄い膜に炎症が起こる「アレルギー性結膜炎」が原因です。
アレルギー性結膜炎は、猫アレルギー以外のアレルギーでも起こることがあります。例えば花粉症やダニアレルギーなども、アレルギー性結膜炎を引き起こす可能性があります。
猫アレルギーによる目のかゆみや涙の増加は、くしゃみや鼻水と同様に、猫と触れ合った後、数分から数時間以内に現れることが多く症状がひどい場合には、まぶたの腫れや充血を伴うこともあります。
猫アレルギーは、皮膚にアレルギー反応を引き起こすこともあります。これは猫の毛やフケが皮膚に接触することで、皮膚のバリア機能が乱れ炎症を引き起こすためです。
皮膚に現れるアレルギー反応としては、じんましん、湿疹、接触性皮膚炎など、様々なものが考えられます。じんましんは皮膚が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴うのが特徴です。まるで蚊に刺された後のように、皮膚が膨れ上がります。
湿疹は皮膚が赤くなり、小さな水ぶくれやカサカサとした状態になるのが特徴です。赤ちゃんの肌によく見られる症状ですが、大人でも発症することがあります。
接触性皮膚炎は、猫と触れた部分が赤くなり、かゆみや痛みを伴うのが特徴です。例えば猫を抱っこした腕や、猫が顔をこすりつけた頬などに症状が現れることが多いです。
これらの症状は猫と触れ合った後、数時間以内、あるいは数日後に現れることもあり症状の持続期間も数時間から数週間と人によってさまざまです。重症化すると、皮膚が厚く硬くなってしまうこともあります。
近年、アレルギー疾患に対する治療法として、アレルゲン免疫療法が注目されています。アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量ずつ体内に投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を和らげる治療法です。
この治療法は、スギ花粉症やダニなどのアレルギー疾患に対して有効性が認められていますが、近年では、猫アレルギーに対しても有効性が示唆されています。
例えばイネ科花粉アレルギーの患者さんを対象とした研究では、アレルゲン免疫療法によって、アレルギー症状を抑制する働きを持つ免疫細胞の一種である「IL-10産生型2型自然リンパ球(ILC2)」が増加することが報告されています。
ILC2は免疫細胞の一種で、アレルギー反応の制御に関わっています。この細胞が増えることで、アレルギー反応が抑えられ、症状が改善すると考えられます。このことから、猫アレルギーに対してもアレルゲン免疫療法によってILC2が増加し、アレルギー症状の改善効果が期待できる可能性があります。
猫を飼い始めたことをきっかけにくしゃみや鼻水が止まらない、猫カフェに行った後から肌がかゆい……。もしかしたら、それは猫アレルギーのサインかもしれません。 猫アレルギーは、猫と触れ合うことで、くしゃみや鼻水、皮膚の炎症といったアレルギー反応を引き起こすものです。
アレルギー反応は私たちの体が本来無害なはずの物質に対して、過剰に反応してしまうことで起こります。 猫アレルギーの場合、その原因となる物質は猫の毛やフケ、唾液などに含まれる「Fel d 1」というタンパク質です。
アレルギー反応を引き起こす物質を、アレルゲンと呼びます。 猫アレルギーにおけるアレルゲンは、主に猫の毛、フケ、唾液などに含まれる「Fel d 1」というタンパク質です。 「Fel d 1」は非常に小さく、軽いタンパク質のため空気中に長時間漂っていることがあります。
例えば、家のソファで猫が寝転がったとします。 すると、目には見えない小さな「Fel d 1」がソファに付着します。 その後、猫アレルギーの人がそのソファに座ると「Fel d 1」が体内に侵入し、アレルギー反応を引き起こしてしまうのです。 「Fel d 1」は空気中を漂いやすく、長い間家の中に残ってしまうため猫がいなくなった後でも、アレルギー症状が出る可能性があります。
アレルギーは生まれつきの体質と、生活環境が複雑に関係して発症すると考えられています。 猫アレルギーも例外ではありません。
両親がアレルギー体質の場合、子どももアレルギー体質になりやすいと言われています。 アレルギー反応を起こしやすい体質は、遺伝する可能性があるためです。 両親が猫アレルギーでなくても祖父母が猫アレルギーの場合は、子どもも猫アレルギーを発症する可能性があります。
またアレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)に長く触れていると、アレルギーを発症しやすくなることがあります。 例えば猫を飼い始めたのをきっかけに、猫アレルギーを発症するケースなどが挙げられます。 生まれた時から猫と一緒に生活している人は、猫アレルギーを発症する可能性が低いという報告もあります。
猫アレルギーの人は、猫以外の動物アレルギーを持っていることも少なくありません。 これは動物の種類が違っても、アレルゲンとなるタンパク質の構造が似ている場合があるためです。
例えば、猫アレルギーの人が犬アレルギーも併発しているケースがよく見られます。 これは猫アレルゲンである「Fel d 1」と、犬アレルゲンである「Can f 1」の構造が似ているため、両方に反応してしまうと考えられます。
また猫アレルギーの人は豚肉や牛肉など、動物由来の食品にアレルギー反応を示す場合もあります。 これは、「交差反応」と呼ばれる現象です。 特定の食品に含まれるタンパク質と、動物アレルゲンの構造が似ているために起こります。 例えば猫アレルギーの人が豚肉を食べた後に、口の中がかゆくなったり、じんましんが出たりすることがあります。
アレルギー反応を抑制する働きを持つ免疫細胞に、「IL-10産生型2型自然リンパ球(ILC2)」があります。 ILC2は、免疫細胞の一種で、アレルギー反応の制御に関わっています。 この細胞が増えることでアレルギー反応が抑えられ、症状が改善すると考えられています。
イネ科花粉アレルギーの患者さんを対象とした研究では、アレルゲン免疫療法によって、ILC2が増加することが報告されています。 アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量ずつ体内に投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を和らげる治療法です。 この治療法は、スギ花粉症やダニなどのアレルギー疾患に対して有効性が認められていますが、近年では、猫アレルギーに対しても有効性が示唆されています。 このことから、猫アレルギーに対しても、アレルゲン免疫療法によってILC2が増加し、アレルギー症状の改善効果が期待できる可能性があります。
このように猫アレルギーは、遺伝的要因と生活環境、そして他の動物アレルギーとの関連性を考慮しながら、総合的に理解していくことが大切です。
猫アレルギーかな?と思ったら自己判断せずに医療機関を受診して、きちんと検査を受けることが大切です。今回は、猫アレルギーの検査方法と治療法について詳しく解説していきます。
猫アレルギーの検査方法には、いくつか種類がありますが、その中でも簡便に行える検査として、ドロップスクリーン検査があります。これは、ほんのわずかな血液で、猫アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)に対するIgE抗体の量を測定する検査です。
採血は注射器を使わずに、指先などからほんの数滴の血液を採取するだけなので痛みも少なく、お子さんでも比較的受けやすい検査となっています。
検査の手順を、わかりやすく例えると宝探しゲームのようなものです。まず、少量の血液を採取し特別な試薬が入った小さな容器に垂らします。この容器の中には猫のアレルゲンと反応する物質が入っており、例えるなら宝の地図と宝箱を開けるための鍵のようなものです。
もしも、あなたが猫アレルギーを持っている場合、血液中のIgE抗体がアレルゲンと結びつき目に見える反応が起こります。これは宝の地図と鍵がピッタリと合い、宝箱が開いた状態をイメージするとわかりやすいでしょう。
検査結果が出るまでの時間も短く、約30分~1時間ほどで判定できます。、すぐに結果がわかり安心ですね。
ドロップスクリーン検査の結果はクラス0からクラス6までの7段階で評価され、クラスが高いほど猫アレルギーの反応が強いことを示します。検査結果が陽性だった場合、猫アレルギーである可能性が高いと考えられますが、症状の重さや生活環境などを考慮して医師が総合的に判断します。
猫アレルギーは、まるで静かに燃え広がる火のようなもので初期の段階では軽い症状しか現れないこともありますが、放置すると喘息などの呼吸器疾患を合併したり、症状が悪化したりする可能性もあります。重症化を防ぐためにも、早期発見・早期治療が重要です。
検査結果に基づいて医師と相談しながら、適切な治療法や生活環境の改善策などを検討していくようにしましょう。
猫アレルギーの検査方法はドロップスクリーン検査以外にも血液検査でアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定する「RAST検査」や、アレルゲンを皮膚に少量つけて反応を見る「プリックテスト」などがあります。検査方法によって費用や検査にかかる時間、わかることなどが異なるため、どの検査方法が最適かは症状や検査の目的などを考慮して医師と相談して決定します。
例えばRAST検査はドロップスクリーン検査よりも感度や精度が高い検査ですが、費用が高く結果が出るまでに時間がかかるというデメリットがあります。これは、より精密な地図と高性能な金属探知機を使って宝を探すようなもので時間と費用はかかりますが、より正確に宝を見つけ出すことができます。
一方、プリックテストは、結果がすぐにわかるというメリットがありますが、皮膚に針を刺すため、痛みを伴うというデメリットがあります。それぞれの検査方法の長所と短所を理解した上で、自分に合った検査方法を選択することが大切です。
またアレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となる物質を少量ずつ体内に入れることで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を起こりにくくする治療法です。
近年では、イネ科花粉アレルギーの患者さんを対象とした研究で、アレルゲン免疫療法を受けた患者では、IL-10産生型2型自然リンパ球(ILC2)が増加することが報告されています。ILC2は、アレルギー反応を抑制する働きを持つ免疫細胞の一種です。
わかりやすく例えると私たちの体は、外部から侵入してくるウイルスや細菌などの異物から身を守るために、免疫システムという防衛システムを持っています。この免疫システムは軍隊のようなもので、様々な種類の兵士がそれぞれの役割を担って体を守っています。
ILC2は、この免疫システムの中でもアレルギー反応を抑える役割を担う、いわば「平和維持部隊」のようなものです。アレルゲン免疫療法は、このILC2を増やすことでアレルギー反応を抑えようとする治療法なのです。
これまでの研究でアレルゲン免疫療法を受けた患者では、ILC2が増加することが報告されておりアレルギー症状の改善効果が期待できます。
猫アレルギーは、猫の毛やフケなどに含まれるアレルゲンが原因で起こるアレルギー反応です。 主な症状は、くしゃみや鼻水、目のかゆみ、皮膚の炎症などです。 猫アレルギーの検査には、ドロップスクリーン検査、RAST検査、プリックテストなどがあります。
治療法としては、アレルゲンを避ける、薬物療法、アレルゲン免疫療法などが挙げられます。 猫アレルギーの症状が気になる場合は、自己判断せず当院へご相談ください。
Golebski K, Layhadi JA, Sahiner U, Steveling-Klein EH, Lenormand MM, Li RCY, Bal SM, Heesters BA, Vilà-Nadal G, Hunewald O, Montamat G, He FQ, Ollert M, Fedina O, Lao-Araya M, Vijverberg SJH, Maitland-van der Zee AH, van Drunen CM, Fokkens WJ, Durham SR, Spits H and Shamji MH. Induction of IL-10-producing type 2 innate lymphoid cells by allergen immunotherapy is associated with clinical response. Immunity 54, no. 2 (2021): 291-307.e7.
[title]: Induction of IL-10-producing type 2 innate lymphoid cells by allergen immunotherapy is associated with clinical response.,
アレルゲン免疫療法によるIL-10産生型2型自然リンパ球(ILC2)の誘導は臨床的反応と関連している
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33450188,
[quote_source]: Golebski K, Layhadi JA, Sahiner U, Steveling-Klein EH, Lenormand MM, Li RCY, Bal SM, Heesters BA, Vilà-Nadal G, Hunewald O, Montamat G, He FQ, Ollert M, Fedina O, Lao-Araya M, Vijverberg SJH, Maitland-van der Zee AH, van Drunen CM, Fokkens WJ, Durham SR, Spits H and Shamji MH. “Induction of IL-10-producing type 2 innate lymphoid cells by allergen immunotherapy is associated with clinical response.” Immunity 54, no. 2 (2021): 291-307.e7.
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