夜中に何度も目が覚める…朝起きてもスッキリしない…そんな経験はありませんか?
もしかしたら、睡眠時無呼吸症候群(以下SASという)が原因の可能性が考えられます。 SASは眠っている間に呼吸が何度も止まり、体の酸素が不足してしまう病気です。 放置すると高血圧や心臓病などのリスクを高めることも報告されています。
この記事では、夜中に何度も目が覚める原因と、原因の1つであるSASについて詳しく解説します。自分の睡眠の質を見直すきっかけになります。
「何度も目が覚める」という問題には、いくつかの原因があります。主なものは、ストレスや不安、睡眠環境やライフスタイルの乱れ、そして健康状態の影響が考えられます。さまざまな要因が組み合わさることで、夜中に目が覚めてしまうことが多くなります。それぞれの原因を具体的に見ていきましょう。
ストレスや不安は、私たちの日常生活に大きな影響を与える要因です。例えば、仕事のプレッシャーがあると、「うまくできなかったらどうしよう」と考えてしまい、心配で夜も眠れなくなることがあります。不安やプレッシャーは、心が常に緊張している状態を引き起こし、結果的に「何度も目が覚める」原因となります。
睡眠環境も大きな影響を与えます。例えば、部屋が明るすぎたり、騒音が気になったりすると、快適に眠れません。近くで車の音や話し声が聞こえると、目が覚めてしまうことがあります。温度も重要です。夏は暑すぎたり冬は寒すぎたりすると、体が快適に眠れないために何度も目を覚ますことになります。環境要因を改善することで、より良い睡眠を得ることができます。
不規則な生活リズムやカフェイン、アルコールの摂取は、「何度も目が覚める」原因となることがあります。まず、不規則な生活リズムを考えてみましょう。例えば、平日は夜遅くまで起きているのに、週末は昼まで寝てしまうような生活を続けると、体内時計が乱れます。リズムの乱れは、睡眠の質を低下させ、夜中に目が覚めやすくなります。
次に、カフェインやアルコールの影響です。カフェインを含む飲み物(コーヒーやエナジードリンクなど)を夕方以降に摂取すると、脳が興奮状態になり、入眠が難しくなります。例えば、友達と遊びながら夜遅くにコーヒーを飲むと、その後の睡眠に悪影響を及ぼし、何度も目が覚めることになります。アルコールは一見リラックス効果がありますが、実際には睡眠の深さを妨げるため、夜中に目が覚めやすくなるのです。このように、不規則な生活や不適切な飲み物の摂取は、質の良い睡眠を妨げる大きな要因となります。
健康状態が「何度も目が覚める」原因はいくつかあります。特に、SASは大きな要因の一つです。SASは、睡眠中に呼吸が一時的に停止する状態で、繰り返されることで睡眠の質が低下します。具体的には、SASの患者さんは無呼吸発作によって酸素不足に陥り、脳が目を覚まさせる信号を送ります。脳の酸素不足により、夜中に何度も目が覚めてしまうのです。
夜中に何度も目が覚める原因はさまざまですが、もしかしたら、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が原因の可能性が考えられます。 ここからは、SASについて解説していきます。
SASは、眠っている間に呼吸が何度も止まり、体の酸素が不足してしまう病気です。 息を止めてプールに潜っている状態を想像してみてください。 息を止めている間は当然、体の中に酸素は入ってきません。 SASは、まさにプールに潜っている状態が、寝ている間に何度も繰り返される病気です。
SASになる一番の原因は、「気道」と呼ばれる、空気の通り道が狭くなってしまうことです。 寝ている間に、のどの奥にある筋肉がリラックスしてしまい、気道が塞がってしまうイメージです。 太っている方は首回りに脂肪がつきやすく、気道が狭くなりやすいと言われています。
SASの代表的な症状を、いくつか例に挙げてみましょう。
症状 | 説明 |
いびき | 睡眠中に、大きないびきをかいたり、呼吸が止まったりを繰り返してしまいます。 |
日中の眠気 | 睡眠が十分に取れていない状態が続くため、日中でも強い眠気に襲われます。まるで、徹夜明けのような状態が毎日続くイメージです。 |
集中力・記憶力の低下 | 睡眠不足によって、集中力や記憶力が低下しやすくなります。会議中に集中できなかったり、人の名前が思い出せなくなったりすることがあります。 |
朝の頭痛 | 睡眠中の無呼吸状態が続くと、脳に十分な酸素が送られず、その結果、朝起きたときに頭痛を引き起こすことがあります。 |
夜間頻尿 | 睡眠中に何度もトイレに行きたくなることがあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群によって心臓に負担がかかり、その結果、夜間頻尿が起こりやすくなると考えられています。 |
「もしかして、自分もSASかも?」と思ったら医療機関を受診し、検査を受けることが大切です。 SASの検査では「ポリソムノグラフィー検査」が一般的です。ポリソムノグラフィー検査によって睡眠中の無呼吸の状態や、睡眠の質などを詳しく調べることができます。
当院には、いびき・無呼吸外来があるため、検査をご希望の方はお気軽にご相談ください。
SASは放置しておくと、高血圧や心臓病、脳卒中などのリスクを高めることが報告されています。 睡眠中の無呼吸によって体内の酸素が不足することで、心臓や血管に大きな負担がかかってしまうためです。 高血圧の患者さんの約30~70%にSASの合併が見られるという報告もあります。
またSASは、糖尿病やメタボリックシンドロームとの関連も指摘されています。 例えばSASと診断された手術を受ける患者さんは、そうでない患者さんと比べて、術後に合併症を起こすリスクが約2倍高くなってしまいます。
具体的には心臓や血管に関する合併症や、呼吸に関する合併症、さらには入院期間が長引いたり、集中治療室に入ることになったりするリスクが高くなります。 そのためSASは、決して軽視できない病気です。
当院には、いびき・無呼吸外来がありますので検査をご希望の方はご相談ください。
夜中に何度も目が覚めてしまう原因がSASと診断された場合、治療が必要です。 「治療」と聞くと、大掛かりなものを想像して不安になる方もいるかもしれません。しかし、安心してください。SASの治療は症状の重さや生活習慣、体質などを考慮し医師と患者さんが一緒に決めていきます。
SASの治療は、大きく分けて「生活習慣の改善」「CPAP療法」「マウスピース療法」の3つのアプローチがあります。
肥満の方は、適度な運動とバランスの取れた食事を心がけることで体重を減らすことを推奨します。毎日の生活の中で、寝る前の飲酒や喫煙を控えたり、横向きで寝たりするようにするだけでも、症状が改善されることがあります。寝る前の習慣を見直すことは、睡眠の質を向上させるための第一歩です。
CPAP(シーパップ)という装置を使い、鼻に装着したマスクを通して空気を送り込むことで、気道を広げて呼吸を楽にする治療法です。CPAPは、睡眠中に装着する医療機器なので、最初は違和感を感じる人もいるかもしれません。しかし効果が高い治療法として広く使われており、多くの患者さんが効果を実感しています。
寝ている間に装着するマウスピースで、下あごを少し前に出すことで気道を広げ、呼吸をスムーズにする治療法です。CPAP療法に比べて、装着が簡単で、持ち運びにも便利というメリットがあります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が何度も止まってしまう病気です。実はSASは生活習慣と密接に関係しており日々の生活習慣を改善することで症状を和らげたり、予防したりすることが期待できます。日々の生活の中で少し意識を変えるだけで、SASのリスクを減らせる可能性があります。
SASの症状を和らげるためには、いくつかの生活習慣の改善が有効です。以下に、4つの視点から生活習慣の改善方法をまとめます。
肥満はSASのリスクにつながる要因の一つです。体重が重くなると、気道が圧迫されやすくなり、呼吸が止まりやすくなってしまいます。首回りに脂肪がつくことで、気道を物理的に狭くしてしまうイメージです。
タバコの煙は気道を狭くしたり、炎症を起こしたりするため、SASのリスクを高めます。タバコの煙で気道がむくんでしまうイメージです。タバコをやめることで気道の炎症が治まり、呼吸がスムーズになる効果が期待できます。禁煙はSASだけでなく、さまざまな病気のリスクを減らす効果があるので、積極的に取り組みましょう。
アルコールは、筋肉を弛緩させる作用があるため、睡眠中に気道が狭くなる原因です。特に寝る直前の飲酒は、睡眠中の呼吸に悪影響を及ぼす可能性があります。
寝る前のアルコール摂取は特に避け、飲酒量を控えるように心がけましょう。お酒を飲んだ日は、いつもより呼吸が浅くなっていることを意識してみてください。
睡眠の質を高めることも大切です。静かで暗い部屋で寝るようにし、自分に合った枕や布団を選びましょう。寝る前にリラックスする時間を作ることも効果的です。寝室の環境を整え、質の高い睡眠をとることで、SASの症状を軽減できる可能性があります。
SASは、生活習慣の工夫や睡眠姿勢によって予防できる可能性があります。生活習慣における工夫は以下のとおりです。
睡眠姿勢についてのメリットやデメリットは以下のとおりです。
睡眠姿勢 | メリット | デメリット |
仰向け | 体への負担が少ない | 気道が狭くなりやすい |
横向き | 気道を確保しやすい、いびきをかきにくい | 寝返りが打ちにくい、肩や腰に負担がかかる |
うつ伏せ | いびきをかきにくい | 腰痛を引き起こす可能性がある、呼吸がしにくい |
SASを予防するためにできることから、工夫してみましょう。
夜中に何度も目が覚める原因はさまざまありますが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性も考えられるため注意が必要です。SASは睡眠中に呼吸が止まり、体の酸素が不足する病気です。主な症状は、いびき、日中の眠気、集中力・記憶力の低下などです。
SASは放置すると、高血圧や心臓病などのリスクを高めるため、早期の診断と治療が重要です。治療法は、生活習慣の改善、CPAP療法、マウスピース療法などがあります。症状の重さや体質によって、適切な治療法を選択する必要があります。
SASは、肥満や喫煙、アルコール摂取など、生活習慣と密接に関係しています。日々の生活習慣を改善することで、症状を和らげたり、予防したりすることが期待できます。気になる症状等があるときは、ぜひ当院にご相談ください。
Pivetta B, Sun Y, Nagappa M, Chan M, Englesakis M and Chung F. Postoperative outcomes in surgical patients with obstructive sleep apnoea diagnosed by sleep studies: a meta-analysis and trial sequential analysis.. Anaesthesia 77, no. 7 (2022): 818-828.
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