あなたは、毎日どれくらいの塩分を摂っていますか? 実は普段何気なく食べているものの中に、たくさんの塩分が隠れているかもしれません。例えばラーメン一杯には約6gもの塩分が含まれており、健康な大人の一日の摂取目標量(男性8g未満、女性7g未満)に匹敵する量です。
「ラーメン一杯くらい大丈夫だろう」と油断していると、知らないうちに塩分の摂りすぎになってしまい、血管に大きな負担をかけてしまう可能性があります。
今回は、静かなる健康の脅威とも言われる高血圧と、私たちの食生活に欠かせない「塩分」の関係について、詳しく解説していきます。
毎日の食事、あなたはどんなことに気を付けていますか? 実は、毎日の食事で口にするものが、あなたの血管の健康状態に大きく影響しているかもしれません。
今回は、静かなる健康の脅威とも言われる高血圧と、私たちの食生活に欠かせない「塩分」の関係について、詳しく解説していきます。
体中に張り巡らされた血管は、体中に酸素と栄養を運ぶための重要なライフラインです。このライフラインの中を流れる血液の圧力を「血圧」と言います。
心臓がドックン、ドックンと力強く収縮するたびに、血液は勢いよく血管へと送り出されます。この時、血管の壁には大きな圧力がかかります。これが「収縮期血圧(最高血圧)」で、心臓が一生懸命働いている状態を表しています。
一方、心臓が少し休んで拡張する際には、血管にかかる圧力は下がります。これが「拡張期血圧(最低血圧)」で、心臓がリラックスしている状態を表しています。
血圧の値は、心臓のポンプ機能と血管の柔軟性のバランスによって常に変化しています。健康な状態を保つためには、このバランスが非常に重要です。
「塩分を取りすぎると血圧が上がる」とはよく言いますが、一体なぜなのでしょうか?
塩分の主成分であるナトリウムには、体内の水分バランスを調整する働きがあります。しかし塩分の摂りすぎによって体内のナトリウム濃度が高くなると、血液の中に水分を過剰に溜め込もうとする力が働きます。
これは濃い塩水に、野菜や果物をつけると水分が出てしまうのと同じ原理です。体内の水分量が増えれば、当然ながら血管の中を流れる血液量も増加します。
想像してみてください。決まった太さのホースに、より多くの水を流そうとすると、水圧が上がりホースがパンパンに膨らんでしまいますよね? 血管もこれと同じように、血液量が増加することで血管壁にかかる圧力が高まり、血圧上昇につながってしまうのです。
「減塩」と聞いても、具体的にどれくらい減らせばいいのか、迷ってしまいますよね。健康な大人の場合、一日に摂取しても良い塩分の量は、男性で8g未満、女性で7g未満とされています。イメージしにくい場合は、計量スプーンを使うとわかりやすいでしょう。計量スプーンの小さじ1杯は約5gなので、男性は約1.5杯、女性は約1.4杯までが目安です。
外食が多い方や、味の濃いものが好きな方は、知らず知らずのうちに塩分を摂りすぎている可能性があります。例えば、ラーメン一杯には約6g、醤油大さじ一杯には約3gの塩分が含まれています。毎日の食事の中で、どれだけの塩分を摂取しているのか、意識することが大切です。
すでに高血圧と診断されている方は、さらに塩分摂取量に気を配る必要があります。目標とする塩分摂取量は、医師と相談の上で決定しますが高血圧の方の場合、一日の塩分摂取量を6g未満に抑えるように指導されることが多いです。
塩分制限というと、食事が味気なくなってしまうのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし少しの工夫で、おいしく減塩することができます。
例えば減塩タイプの調味料を使ったり、香辛料やハーブを上手に活用したりすることで、塩分を減らしても満足感のある食事を作ることができます。また、だし汁や柑橘類の酸味を活かすことも効果的です。
塩分の摂りすぎは、高血圧のリスクを高めるだけでなく、動脈硬化のリスクも高めます。動脈硬化は、血管の壁にコレステロールや中性脂肪などが溜まり、血管が硬く狭くなってしまう病気です。
塩分を摂りすぎると、血管の内側の内皮細胞が傷つきやすくなり、そこにコレステロールなどが溜まりやすくなってしまいます。
動脈硬化は、心臓病や脳卒中など、命に関わる病気を引き起こす可能性があります。心臓に血液を送る血管である冠動脈が動脈硬化を起こすと、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まります。また、脳に血液を送る血管が動脈硬化を起こすと、脳梗塞のリスクが高まります。
塩分を控えることは、これらの病気のリスクを減らし、健康な毎日を送るために非常に大切です。
毎日の食事の中で、ほんの少しの工夫をするだけで、簡単に塩分をカットすることができます。
例えば料理の味付けをするときに、醤油などの調味料を使う前に、まずは、だし汁や昆布、鰹節など、うま味成分を活かしてみましょう。「うま味」を上手に活用することで、塩分を減らしても、満足感のある食事を作ることができます。
またレモンやかぼすなどの柑橘類や、お酢などの酸味を加えることも効果的です。酸味は料理の味にメリハリを与え、さっぱりとした風味に仕上げてくれます。
さらに生姜や唐辛子、コショウなどの香辛料を積極的に使うこともおすすめです。香辛料の風味を加えることで、塩味が薄くても物足りなさを感じにくくなります。
その他にも調理方法を工夫することで、減塩につなげることもできます。例えば食材を小さく切ることで表面積が増え、味が染み込みやすくなるため調味料を減らすことができます。
また蒸し料理や焼き料理は茹で料理に比べて、食材に含まれる水分が逃げにくいため素材本来のうま味を活かすことができます。
減塩と同時に、積極的に摂りたいのが、カリウムを豊富に含む食品です。カリウムには、体内の余分なナトリウムを排出する働きがあり、高血圧の予防に効果が期待できます。
高血圧予防に効果的な食材を、いくつかご紹介します。
種類 | 食品例 | 効果 |
---|---|---|
野菜 | トマト、ほうれん草、セロリ、カリフラワー | カリウムが豊富で、塩分を体の外に出す働きがあります。 |
果物 | キウイ、バナナ、りんご、みかん | カリウムが豊富で、血圧を下げる効果が期待できます。 |
魚介類 | まぐろ、鮭、いわし | DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸が豊富で、血圧を下げる効果があります。 |
乳製品 | 牛乳、ヨーグルト | カルシウムが豊富で、血圧を正常に保つ働きがあります。 |
海藻類 | わかめ、昆布、ひじき | カリウムやマグネシウムが豊富で、血圧を下げる効果があります。 |
これらの食材をバランス良く食事に取り入れることで、無理なく塩分をコントロールし血圧を下げる効果が期待できます。
外食が多い方も、ちょっとした心がけで、塩分摂取量を抑えることができます。
例えばラーメンやうどん、そばなどの麺類を注文する際は、スープを全部飲み干さずに半分程度残すようにしましょう。
また定食や丼ものを注文する際は、ご飯の量を減らしてもらい、その分、野菜や豆腐などの副菜を多めに摂るように心がけましょう。
外食だけでなく、加工食品の選び方にも注意が必要です。ハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉加工品や、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなどの魚肉練り製品、漬物、佃煮などは、塩分を多く含む傾向があります。これらの食品を選ぶ際は、栄養成分表示をよく確認し、減塩タイプのものや、塩分量が少ないものを選ぶようにしましょう。
毎日の食事は、私たちの健康を支える大切なものです。毎日の食事を見直し、塩分を控えることを意識することで、高血圧のリスクを減らし、健康的な毎日を送ることができます。
当院では多くの高血圧患者様の診療を行っております。また、管理栄養士による食事指導や、様々な運動プログラムもご用意しております。血圧でお困りの方はぜひ当院にご相談下さい。
大石内科循環器科医院
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