あなたは、心臓が疲れているサインに気づいていますか?心臓は、私たちの生命維持に欠かせない臓器です。24時間休むことなく血液を送り続け、全身に酸素と栄養を供給しています。心臓はさまざまな要因によって疲れ、十分に血液を送り出せなくなることが「心不全」と呼ばれる状態です。
心不全は、息切れやむくみなどの症状を引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。この記事では、心不全の治療法などを詳しく解説します。心不全に対する理解を深め、早期発見・早期治療につなげ、より健康的な生活を送るためのヒントを提供します。
心不全は、適切な治療によって症状は改善しますが、基本的に完治することはなく、慢性疾患として生涯付き合う必要があります。きちんと治療を受け、生活習慣を改善することで進行を抑えることは可能ですが、悪化と改善を繰り返しながら進行する病気です。
心不全の改善には、医師との連携と継続的な治療が欠かせません。症状の進行を抑えつつ、より快適な日常生活を送るために、早期発見と治療が鍵となります。少しでも不安な場合は、医療機関を受診し、適切な診断、治療を受けてください。
心不全になると息切れやむくみなどが現れ、日常生活に支障をきたします。心不全の治療は、大きく分けて「薬物療法」「外科手術」「デバイス療法」「生活習慣改善」の4種類です。それぞれの治療法の概要や効果を解説します。
心不全の薬物療法は心臓の負担を減らし、働きを助けるために欠かせない治療法です。心不全の薬は、働き方や効果によって種類が分かれます。代表的な薬剤と作用を解説します。
薬剤の種類 | 作用 | 具体例 |
---|---|---|
ACE阻害薬 | 血管を広げて、心臓が血液を送り出しやすくする薬です。 | エナラプリル |
ARB | ACE阻害薬と同様の作用です。 | バルサルタン、オルメサルタン |
β遮断薬 | 心臓の拍動を抑え、心臓の負担を軽減する薬です。 | カルベジロール、ビソプロロール |
ループ利尿薬 | 尿の量を増やして、体内の余分な水分を排出する薬です。むくみの改善に効果があります。 | フロセミド、トラセミド |
アルドステロン阻害薬 | 体内の塩分と水分のバランスを調整する薬です。 | スピロノラクトン、エプレレノン |
SGLT2阻害薬 | 尿中に糖を排出することで血糖値を下げ、心臓を守る効果も期待される薬です。糖尿病の方も使用されることがあります。 | エンパグリフロジン、カナグリフロジン |
治療薬は患者さんの症状や状態に合わせて、単独または組み合わせて使用します。薬の効果や副作用には個人差があるため、医師の指示に従って正しく服用しましょう。
心不全の中には、薬物療法だけでは十分な効果が得られない場合があり、外科手術を行う場合もあります。外科手術は、患者さんにとって大きな決断を伴う治療法です。近年では医療技術の進歩により、身体への負担が少ない手術法も開発されています。
手術を受けるかどうかは、患者さんの状態や手術のリスク、患者さん自身の希望などを総合的に考慮して医師とよく相談したうえで決定されます。心不全の主な外科手術の種類は以下のとおりです。
冠動脈バイパス手術とは、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭窄または閉塞している場合に、体の他の部分の血管を使って迂回路(バイパス)を作り血流を改善する手術です。
心臓弁膜症手術とは、 心臓の弁に異常がある場合に、弁の修復や人工弁への置換を行う手術です。 心臓の弁は、血液が逆流するのを防ぐために重要な役割を担っています。弁がうまく機能しなくなった場合、心臓弁膜症手術が必要です。
補助人工心臓とは、弱った心臓の代わりに、ポンプの役割を果たす医療機器を体内に埋め込む手術です。 心臓のポンプ機能が著しく低下し、薬物療法やその他の治療法では効果が期待できない重症な心不全患者さんに対して行われます。
心臓移植とは、心臓の機能が回復の見込みがない重症な心不全患者さんに対して、提供者(ドナー)の方から心臓を移植する手術です。 心臓移植は、心臓病の最終手段ともいえる治療法です。
デバイス療法は、小さな機械を体内に埋め込み、心臓の働きをサポートする治療法です。代表的なデバイスとして、植え込み型除細動器(ICD)と心臓再同期療法(CRT)があります。ICDは、心臓が突然、痙攣を起こしたように不規則に動き出す「致死性不整脈」が発生した際に、電気ショックを与えて正常なリズムに戻す役割です。
心停止から命を守るための、まさに“命綱”と言える装置です。心筋梗塞の後遺症で心臓の一部が傷ついている患者さんは、致死性不整脈を起こしやすい状態にあります。致死性不整脈を起こしやすい患者さんにとって、ICDは突然死のリスクを減らすための重要な選択肢になります。
CRTは、心不全によって心臓の収縮のリズムが乱れ、ポンプ機能が低下している場合に、心臓の筋肉が効率よく収縮するように調整します。心臓の左側と右側で収縮のタイミングがずれている場合、CRTによって両側のバランスを整え、ポンプ機能を改善することができます。CRTにはICDの機能を併せ持つCRT-Dもあり、致死性不整脈の予防と心臓の収縮機能改善の両方に効果が期待できます。
心不全の治療において、薬物療法や外科手術と同じくらい重要なのが生活習慣の改善です。特に食事と運動は心不全の症状をコントロールし、進行を遅らせるために欠かせない要素です。
「先生、食事や運動なんて本当に効果があるんですか?」
疑問に思う方もいますが、毎日の生活習慣を少し変えるだけで、心臓への負担を減らし心不全の症状を改善できることがわかっています。
心不全の治療は日進月歩で進歩しています。新しい薬剤の開発や、より安全で効果的な手術法の開発など、多くの研究が行われています。
「先生、私の心不全は治るのでしょうか?」
外来で、患者さんから質問を受けることがあります。心不全は、かつては「不治の病」とされていましたが、医療技術の進歩により、多くの患者さんで症状をコントロールし日常生活を送ることが可能になっています。心不全の治療における研究成果を、いくつかご紹介します。
研究成果は心不全の治療成績の向上や、患者さんの生活の質(QOL)の向上に大きく貢献することが期待されています。
「先生、せっかく治療の成果が出てきたのに、また再発してしまうのは怖いです」
患者さんから不安の声を聞くこともあります。心不全の再発は、患者さんにとって大きな不安材料です。日常生活の中で以下の点に注意することで、再発のリスクを減らし健康な状態を長く保てます。
当院では禁煙外来も設けています。一人での禁煙に悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。
心不全は心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみなどの症状を引き起こす病気です。治療法は薬物療法、外科手術、デバイス療法、生活習慣改善の4つに分けられます。薬物療法では、心臓の負担を減らし、働きを助ける薬剤を使用します。
外科手術は、薬物療法では効果が得られない重症な心不全に対して検討されます。デバイス療法では、ICDやCRTなどのデバイスを体内に埋め込み、心臓の働きをサポートします。生活習慣改善では、食事療法と運動療法が重要です。塩分制限や水分管理、バランスの取れた食事や適度な運動を心がける必要があります。
心不全は日進月歩で治療法が進歩しており、研究成果により、効果的な治療法が期待されています。再発を防ぐためには、規則正しい生活、服薬の継続、体重管理、禁煙、節酒、定期的な検査など、日常生活での注意が必要です。心不全や動悸、胸の痛みで不安を感じたら循環器専門医の当院へご相談ください。
Wilcox JE, Fang JC, Margulies KB, Mann DL. Heart Failure With Recovered Left Ventricular Ejection Fraction: JACC Scientific Expert Panel. Journal of the American College of Cardiology 76, no. 6 (2020): 719-734.
大石内科循環器科医院
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