大石内科循環器科医院

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【循環器専門医が解説】心不全の治療法

2024.10.19 循環器

心臓は、私たちの生命維持に欠かせない臓器です。24時間休むことなく血液を送り続け、全身に酸素と栄養を供給しています。しかし、この働き者の心臓も様々な要因によって疲れ、十分に血液を送り出せなくなることがあります。これが「心不全」と呼ばれる状態です。心不全は、息切れやむくみなどの症状を引き起こし、日常生活に支障をきたす可能性があります。

あなたは、心臓が疲れているサインに気づいていますか?この記事では、心臓専門医が解説する心不全の治療法について詳しく解説します。心不全の原因や症状、治療法、そして日常生活における注意点などをわかりやすく解説することで、心不全に対する理解を深め、早期発見・早期治療につなげ、より健康的な生活を送るためのヒントを提供します。

心不全の治療法の種類とそれぞれの効果

心臓は、毎日休むことなく私たちの体中に血液を送り届けるために働いています。まるで24時間営業の宅配便のように、酸素や栄養素を体の隅々まで届けているのです。しかし、この働き者の心臓も過労や病気によって疲れてしまい、十分に血液を送り出せなくなることがあります。

これが「心不全」という状態です。心不全になると息切れやむくみなどが現れ、日常生活に支障をきたすようになります。

「え、私の心臓も疲れてるの?」

「このままでは、大好きな旅行にも行けなくなってしまうの?」

そんな不安を抱えている方もいるかもしれません。

しかし、安心してください。心不全は適切な治療と生活習慣の改善によって、症状をコントロールし、より長く元気に過ごすことが可能な病気です。

今回は心不全の治療法について、具体的にわかりやすく解説していきます。心不全の治療は、大きく分けて「薬物療法」「外科手術」「生活習慣改善」の3つの柱からなります。それぞれの治療法にはどのようなものがあり、どのような効果が期待できるのでしょうか。

心不全の薬物療法:主要な薬剤とその作用

心不全の薬物療法は心臓の負担を減らし、まるで疲れた心臓にそっと手を差し伸べるように、その働きを助けるために非常に重要な治療法です。心不全の薬は、その働き方や効果によっていくつかの種類に分けられます。ここでは代表的な薬剤とその作用について、わかりやすく解説します。

薬剤の種類作用具体例
ACE阻害薬血管を広げて、心臓が血液を送り出しやすくする薬です。エナラプリル
ARBACE阻害薬と同様の作用です。バルサルタン、オルメサルタン
β遮断薬心臓の拍動を抑え、心臓の負担を軽減する薬です。カルベジロール、ビソプロロール
ループ利尿薬尿の量を増やして、体内の余分な水分を排出する薬です。むくみの改善に効果があります。フロセミド、トラセミド
アルドステロン阻害薬体内の塩分と水分のバランスを調整する薬です。スピロノラクトン、エプレレノン
SGLT2阻害薬尿中に糖を排出することで血糖値を下げ、心臓を守る効果も期待される薬です。糖尿病の方も使用されることがあります。エンパグリフロジン、カナグリフロジン

これらの薬は患者さんの症状や状態に合わせて、単独または組み合わせて使用されます。薬の効果や副作用には個人差があるため、医師の指示に従って正しく服用することが大切です。

外科手術の選択肢:心不全に対する手術の考え方

心不全の中には、薬物療法や生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合があります。このような重症な心不全に対しては、外科手術が検討されることがあります。

外科手術というと「大きな傷が残ってしまうのではないか」「手術後、ちゃんと日常生活を送れるのだろうか」と不安を感じる方もいるかもしれません。

しかし近年では医療技術の進歩により、身体への負担が少ない手術法も開発されています。外科手術は、患者さんにとって大きな決断を伴う治療法です。そのため手術を受けるかどうかは、患者さんの状態や手術のリスク、そして患者さん自身の希望などを総合的に考慮して医師とよく相談した上で決定されます。

ここでは心不全に対する主な外科手術の種類と、それぞれの手術がどのような場合に適応されるのかについて解説します。

  1. 冠動脈バイパス手術: 心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭窄または閉塞している場合に、体の他の部分の血管を使って迂回路(バイパス)を作り血流を改善する手術です。 心臓の血管が詰まってしまい心臓の筋肉に十分な血液が供給されなくなってしまった状態を、水道管が詰まってしまった状態に例えることができます。この詰まりを解消するために別の水道管をつないで水を流すバイパス工事を行うように、心臓の血管にバイパスを作る手術がこの冠動脈バイパス手術です。
  2. 心臓弁膜症手術: 心臓の弁に異常がある場合に、弁の修復や人工弁への置換を行う手術です。 心臓の弁は、血液が逆流するのを防ぐために重要な役割を担っています。しかし、この弁がうまく機能しなくなってしまうことがあります。その場合、心臓弁膜症手術が必要となります。
  3. 補助人工心臓:弱った心臓の代わりに、ポンプの役割を果たす医療機器を体内に埋め込む手術です。 心臓のポンプ機能が著しく低下し、薬物療法やその他の治療法では効果が期待できない重症な心不全患者さんに対して行われる手術です。
  4. 心臓移植:心臓の機能が回復の見込みがない重症な心不全患者さんに対して、提供者(ドナー)の方から提供された心臓を移植する手術です。 心臓移植は、心臓病の最終手段ともいえる治療法です。

生活習慣改善による効果:食事と運動の重要性

心不全の治療において、薬物療法や外科手術と同じくらい重要なのが生活習慣の改善です。特に食事と運動は心不全の症状をコントロールし、進行を遅らせるために欠かせない要素です。

「先生、食事や運動なんて本当に効果があるんですか?」

そう疑問に思う方もいるかもしれません。しかし毎日の生活習慣を少し変えるだけで、心臓への負担を減らし心不全の症状を改善できることがわかっています。

食事療法のポイント

  • 塩分を控える: 塩分の過剰摂取は体内に水分を溜め込み、心臓に負担をかけます。 塩辛い食べ物は、ついつい食べ過ぎてしまいがちですよね。しかし心不全の予防・改善のためには、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが重要です。
  • 水分の摂取量に注意する: 水分の過剰摂取も心臓に負担をかけます。 「水分は体に良い」というイメージがありますが心不全の患者さんでは、水分の摂りすぎはむくみや息切れの原因となることがあります。医師から指示された水分摂取量を守りましょう。
  • カリウムを摂る: カリウムは体内の塩分を排出する働きがあります。 カリウムは塩分を摂りすぎたときに、体内の塩分バランスを整えてくれる大切な栄養素です。カリウムを多く含む食品、例えばバナナ、ほうれん草、納豆などを積極的に食べましょう。
  • バランスの取れた食事を心がける: たんぱく質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなど、バランスの取れた食事を心がけましょう。 極端な食事制限は栄養バランスを崩し、健康を害する可能性があります。様々な食品をバランスよく食べることが大切です。

運動療法のポイント

  • 無理のない範囲で: 心臓に負担をかけすぎない程度の運動を選びましょう。 激しい運動は、心臓に大きな負担をかけてしまいます。ウォーキングや軽い体操など、有酸素運動がおすすめです。
  • 継続することが大切: 毎日、あるいは週に数回など、無理のないペースで運動を続けることが大切です。 「今日は疲れたから」「明日は忙しいから」と運動を後回しにするのではなく、習慣化することが重要です。

心不全の治療における最新の研究成果

心不全の治療は日進月歩で進歩しています。新しい薬剤の開発や、より安全で効果的な手術法の開発など、多くの研究が行われています。

「先生、私の心不全は治るのでしょうか?」

外来で、患者さんからこのような質問を受けることがあります。

心不全は、かつては「不治の病」とされていましたが医療技術の進歩により、多くの患者さんで症状をコントロールし日常生活を送ることが可能になっています。

ここでは心不全の治療における最新の研究成果を、いくつかご紹介します。

  • 新しいタイプの心不全治療薬の開発: これまでは効果が期待できなかったタイプの心不全に対しても有効な薬剤や、心臓の再生を促す薬剤の開発が進められています。
  • 遺伝子治療:遺伝子レベルで心臓の機能を改善する治療法の研究が進められています。
  • 再生医療:患者さん自身の細胞を使って、損傷した心臓の組織を再生させる治療法の研究が進められています。

これらの最新の研究成果は心不全の治療成績の向上や、患者さんの生活の質(QOL)の向上に大きく貢献することが期待されています。

心不全の再発防止策:日常生活での注意点

心不全は一度改善しても、再発する可能性がある病気です。

「先生、せっかく治療の成果が出てきたのに、また再発してしまうのは怖いです。」

患者さんから、このような不安の声を聞くこともあります。

心不全の再発は、患者さんにとって大きな不安材料です。しかし日常生活の中で以下の点に注意することで、再発のリスクを減らし健康な状態を長く保つことができます。

  1. 規則正しい生活:睡眠を十分にとりバランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を継続しましょう。
  2. 服薬の継続:医師から処方された薬は自己判断で中断せずに、指示通りに服用しましょう。
  3. 体重管理:体重増加は心臓に負担をかけます。毎日体重を測り、急激な体重増加がないように注意しましょう。
  4. 禁煙:喫煙は心臓や血管に悪影響を与えます。禁煙しましょう。
  5. 節酒:アルコールの過剰摂取も心臓に負担をかけます。飲酒する場合は、適量を守りましょう。
  6. 定期的な検査:医師の指示に従って、定期的に検査を受けましょう。

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心不全は生活習慣病の一種とも言われています。生活習慣を改善し、健康的なライフスタイルを維持することで、心不全の再発を予防しましょう。

まとめ

心不全は心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみなどの症状を引き起こす病気です。治療法は薬物療法、外科手術、生活習慣改善の3つに分けられます。薬物療法では、心臓の負担を減らし、働きを助ける薬剤を使用します。

外科手術は、薬物療法では効果が得られない重症な心不全に対して検討されます。生活習慣改善では、食事療法と運動療法が重要です。塩分制限、水分管理、バランスの取れた食事、適度な運動を心がける必要があります。

心不全は日進月歩で治療法が進歩しており、最新の研究成果により、より効果的な治療法が期待されています。再発を防ぐためには、規則正しい生活、服薬の継続、体重管理、禁煙、節酒、定期的な検査など、日常生活での注意が必要です。

心不全や動悸、胸の痛みで不安を感じたら循環器専門医の当院へご相談ください。



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