「胸が痛い」と感じたら、心臓病などの深刻な病気が隠れているかもしれません。 しかし胸の痛みは心臓だけでなく、肺や胃など様々な臓器の病気でも起こりうる症状です。 2023年に発表された調査によると胸の痛みを訴える患者のうち、約3割が心臓病以外の原因によるものでした。
この記事では胸の痛みの原因となる様々な病気について解説し、その症状や治療法を詳しく紹介します。 胸の痛みの原因を突き止め適切な治療を受けるために、ぜひこの記事を読んでみてください。
「胸が痛い」と感じたら、誰でも不安を感じることでしょう。実は、その痛みの原因は心臓病のような重篤なものから、日常生活で起きやすいものまで様々です。
今回は胸の痛みがどんな病気のサインであるのか、具体的な例を交えながらわかりやすく解説していきます。
心臓は、毎日休むことなく全身に血液を送り出す、いわば体全体のエンジンともいえる重要な臓器です。この心臓自身にも栄養や酸素を供給する血管があり、これを冠動脈といいます。
この冠動脈に問題が生じると心臓に十分な血液が供給されなくなり、胸の痛みを引き起こします。車がガス欠を起こすと止まってしまうように、心臓も栄養不足になると正常に機能しなくなってしまいます。
例えば動脈硬化によって冠動脈が狭くなると、心臓に十分な血液が供給されず胸の痛みを感じることがあります。これは、道路が渋滞して車がスムーズに進めない状態に似ています。さらに血管が完全に詰まってしまうと、心筋梗塞を引き起こし命の危険さえあります。これは、道路が完全に封鎖されて車が全く動けなくなってしまう状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
狭心症や心筋梗塞による胸の痛みは、心臓がぎゅーっと締め付けられるような、あるいは重苦しい圧迫感があるのが特徴です。痛みの場所は、ちょうど心臓がある胸の中央に生じることが多くみられますが、場合によっては左肩や左腕、背中、さらには顎(あご)にまで広がることがあります。
特に注意が必要なのは、安静にしていても突然激しい胸の痛みが起こる場合や、冷や汗、吐き気、息切れ、めまいなどの症状を伴う場合です。このような場合は心筋梗塞の可能性が高く、命に関わることもありますので一刻を争う事態であり、すぐに救急車を呼ぶようにしてください。
特徴 | 症状 |
---|---|
痛みの種類 | 締め付けられるような、圧迫されるような重い痛み |
痛みの場所 | 胸の中央、左肩、左腕、背中、あごなどに広がる場合も |
持続時間 | 数分から数十分 |
誘因 | 運動、ストレス、寒さなど |
改善因子 | 安静、ニトログリセリン |
注意点 | 冷や汗、吐き気、息切れを伴う場合は緊急度が高い! |
心臓だけでなく、肺の病気でも胸の痛みを感じることがあります。
例えば肺炎は、細菌やウイルスが肺に感染して炎症を起こす病気です。風邪をこじらせてしまう場合などを想像してみてください。肺炎になると、発熱や咳、痰などの症状と共に、呼吸に伴って悪化する胸の痛みがみられます。これは炎症を起こした肺が呼吸のたびに膨らんだり縮んだりすることで、周囲の組織と摩擦を起こし痛みを感じやすくなるためです。
また肺塞栓症は、肺の血管である肺動脈が、血のかたまり(血栓)によって詰まってしまう病気です。エコノミークラス症候群などで耳にする機会もあるかもしれません。肺塞栓症は、突然の息切れや胸の痛み、咳、血痰などの症状が現れ、命に関わることもあります。これは血栓によって肺への血流が途絶え、酸素を取り込む機能が低下してしまうためです。
これらの病気は、胸部レントゲン検査やCT検査、血液検査などによって診断されます。
病気 | 症状 | 検査方法 |
---|---|---|
肺炎 | 発熱、咳、痰、呼吸に伴って悪化する胸の痛み | 胸部レントゲン検査、血液検査など |
肺塞栓症 | 突然の息切れ、胸の痛み、咳、血痰 | 胸部CT検査、肺動脈造影検査、血液検査など |
肺は、薄いラップのような胸膜という膜で包まれています。この胸膜に炎症が起こる病気を胸膜炎といいます。
胸膜炎になると、呼吸をするたびに胸が刺すように痛みます。これは炎症を起こした胸膜同士が呼吸のたびにこすれあい、痛みを引き起こすためです。痛みの特徴としては深呼吸や咳、くしゃみなどで悪化し、息をゆっくり止めると楽になる傾向があります。
また、横向きになったり、痛い方の胸を下にして寝ると痛みが和らぐことがあります。これは体位を変えることで、炎症を起こした胸膜への刺激が軽減されるためです。
胃食道逆流症は、胃酸が食道に逆流することで、胸やけや胸の痛み、酸っぱいものがこみ上げてくるなどの症状が現れる病気です。食後や就寝時に症状が出やすく、前かがみになったり、ベルトを締めたりすると悪化することがあります。これは、これらの動作によって胃酸が食道に逆流しやすくなるためです。
強いストレスや不安、緊張などが原因で、心臓や肺などの臓器に異常がないにもかかわらず、胸の痛みを感じることがあります。これは、自律神経の乱れによって引き起こされると考えられています。
ストレス性の胸の痛みは、締め付けられるような感じや、チクチクと刺すような痛みなど、症状はさまざまです。また、動悸やめまい、息切れ、吐き気などの症状を伴うこともあります。
ストレス性の胸の痛みは、命に関わるような病気ではありませんが、症状が長引くと日常生活に支障をきたすこともあります。症状を改善するためにはストレスの原因を突き止め、それを解消することが大切です。十分な睡眠や休息をとる、趣味やリラックスできる活動を楽しむ、信頼できる人に相談するなど、自分なりのストレス解消法を見つけてみましょう。
胸の痛みは、心臓や肺などの様々な原因が考えられます。
冠動脈疾患では、心臓への血液供給が不足することで、締め付けられるような胸の痛み、冷や汗、吐き気などの症状が現れます。
肺炎では、呼吸に伴って悪化する胸の痛み、発熱、咳などの症状が現れます。
肺塞栓症では、突然の息切れ、胸の痛み、咳、血痰などの症状が現れます。
胸膜炎では、呼吸時に悪化する刺すような痛み、体位による痛みの変化が見られます。
胃食道逆流症では、胸やけ、胸の痛み、酸っぱいものがこみ上げてくるなどの症状が現れます。
精神的なストレスによっても胸の痛みを感じる場合があり、症状が長引く場合は、ストレスを解消することが大切です。
胸の痛みが続く場合は、原因を特定するためにも循環器専門医の当院までご相談ください。
大石内科循環器科医院
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