大石内科循環器科医院

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いびきは女性もかくの?原因と男女の違い、治療法について解説

2025.07.08

夜中に突然パートナーに起こされ、「いびきがうるさい」と言われたことはありませんか?実は、女性のいびきは男性とは異なる原因で起こることが多く、放置すると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、女性特有のいびきの原因から手軽に試せる改善グッズ、専門的な治療法まで、具体的な対策方法を詳しく解説します。女性ホルモンの変化や体型の特徴がいびきに与える影響を理解し、適切な対策を取ることで、健康的な睡眠を取り戻せます。

女性のいびきに多く見られる原因

実は女性のいびきも多く見られます。そもそもいびきとは、睡眠中に気道が狭くなることで発生する現象です。空気の通り道で粘膜が振動し、音が鳴ります。誰でもいびきをかく可能性がありますが、女性は男性とは異なる要因で、いびきをかきやすい傾向です。女性に多く見られるいびきの原因は、以下のとおりです。

ホルモンの影響

女性ホルモンの一種であるプロゲステロンは、上気道の筋肉活動を活性化させる作用があります。このため、女性は睡眠中に気道が狭くなりにくい傾向があります。しかし、閉経期に入るとホルモンの分泌量が減少し、いびきをかくリスクが高まります。

体格と顎の構造

女性は一般的に男性よりも顎が小さく、気道が狭くなることがあります。特に、顎が小さいと舌が気道に落ち込みやすく、いびきが発生しやすくなります。また、現代の食生活が柔らかい食べ物中心であるため、顎の発達が不十分な場合も多く、いびきの原因となることがあります。

体型の変化

肥満は、いびきの主要な原因の一つです。特に首回りに脂肪が蓄積すると、気道が圧迫され、狭くなります。特に、首回りが35cm以上の女性は、いびきのリスクが高まるとされています。体重管理は、いびき予防の重要な要素となります。

解剖学的特徴

生まれつきの骨格や顔立ちも、いびきに影響を与えます。小さなあごや後退したあご、低い鼻、小さな鼻孔などの特徴は、気道の狭窄につながり、いびきを引き起こす可能性があります。この特徴は遺伝的要因によるものが多く、完全な改善は難しいですが、適切な治療法で症状を軽減できる場合があります。

加齢の影響

年齢を重ねるにつれ、筋肉量の減少や組織のたるみが進行し、気道が狭くなりやすくなります。特に40代以降は、女性ホルモンの分泌量が減少し始めるため、気道周辺の組織のたるみが顕著になる傾向があります。適度な運動や筋力トレーニングで、影響を軽減できる可能性があります。

生活習慣

アルコール摂取は、筋肉を弛緩させ、気道を狭くする効果があります。特に就寝前の飲酒は、いびきを悪化させる可能性が高いです。また、睡眠薬や精神安定剤などの薬物も、筋肉弛緩作用により、いびきを誘発する可能性があります。

アレルギーと呼吸器疾患

アレルギー性鼻炎や花粉症による鼻づまりは、口呼吸を促し、いびきの原因となります。季節性のアレルギーがある場合、症状が悪化する時期にいびきも増加する傾向があります。

内分泌系の問題

甲状腺機能低下症は、代謝の低下と舌のむくみを引き起こし、気道を狭くする可能性があります。この症状は、適切な甲状腺ホルモン補充療法で改善できる場合があります。

上記の原因は、単独で存在することもあれば、複数が組み合わさって影響を与えることもあります。いびきの改善には、個々の原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。

女性のライフステージによるいびきの増加要因

女性のライフステージの中で、妊娠中と更年期は特にいびきが増加しやすい時期です。妊娠中と更年期の時期には、ホルモンバランスの大きな変化が起こり、いびきの増加につながりやすいです。以下でより詳しくいびきの増加要因を解説します。

妊娠中のいびき

妊娠中は、さまざまな身体的変化がいびきの増加につながります。

  • ホルモンの影響
    妊娠中は、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が増加します。2つのホルモンは鼻の粘膜を腫れやすくし、鼻づまりを引き起こします。
  • 体重増加
    妊娠に伴う体重増加は、首や顔周りにも脂肪を蓄積させ、気道を狭くする可能性があります。平均的な妊娠中の体重増加は10〜12kgですが、体重増加により気道周辺の脂肪も増加します。
  • 子宮の拡大
    妊娠後期になると、拡大した子宮が横隔膜を押し上げ、肺の容量を減少させます。子宮の拡大により呼吸が浅くなり、いびきが増加する可能性があります。

更年期のいびき

更年期は、女性ホルモンの大きな変化が起こる時期であり、いびきの増加につながります。

  • ホルモンバランスの変化
    更年期には、エストロゲンの分泌量が急激に減少します。エストロゲンには気道の筋肉を維持する働きがあるため、その減少により気道周辺の筋肉が弛緩し、いびきが増加する可能性があります。
  • 体重増加
    更年期には代謝が低下し、体重が増加しやすくなります。体重増加は気道を圧迫し、いびきを悪化させる可能性があります。
  • 睡眠の質の低下
    のぼせやほてり、発汗などの更年期症状により、睡眠の質が低下することがあります。睡眠の質の低下は、筋肉の弛緩を促進し、いびきを増加させる可能性があります。

上記の要因は、妊娠中や更年期の女性のいびきを増加させる主な原因となります。ただし、個人差も大きいため、すべての女性が上記の症状を経験するわけではありません。気になる症状がある場合は、医療専門家に相談することをおすすめします。

女性と男性のいびきの違い

女性は男性と比較して、解剖学的に気道が狭く、筋肉量も少ない傾向があります。わずかな要因で気道が閉塞しやすく、いびきが発生しやすいです。

気道の違いを例えると、男性の気道は太いホース、女性の気道は細いストローのようなものと考えられます。細いストローは少しの圧力で空気の流れが妨げられやすいのと同様に、女性の気道も閉塞しやすいのです。

女性特有の要因として、ホルモンバランスの変化があります。女性ホルモンの分泌量が変化すると、気道周辺の組織にむくみが生じやすくなり、気道がさらに狭くなる可能性があります。

いびきによる病気のリスク

いびきは単なる騒音問題ではなく、女性の健康に深刻な影響を与える可能性があります。特に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインとなることがあり、適切な対処をしないと重大な健康リスクにつながる恐れがあります。女性のいびきが引き起こす可能性のある病気のリスクについて説明します。

心臓病のリスク

いびきは心臓病のリスクを高める可能性があります。SASを伴ういびきの場合、特に注意が必要です。SASは夜間に頻繁に呼吸が停止する状態(無呼吸)です。無呼吸状態が続くことで、以下のような影響が生じます。

  • 酸素不足:体内の酸素レベルが低下し、心臓に負担がかかる。
  • 血圧上昇:無呼吸のたびに血圧が上昇し、高血圧のリスクが高まる。
  • 心臓への負担:酸素不足と血圧上昇の繰り返しにより、心臓に過度の負担がかかる。

上記の影響が長期間続くと、次のような心臓病のリスクが高まる可能性があります。

  • 高血圧
  • 不整脈
  • 心筋梗塞
  • 心不全

医師の診断を受けずに放置していると、数年後に突然心臓発作を起こすなど、重大な事態に発展する可能性があります。したがって、持続的ないびきがある場合は、早めに専門医の診断を受けることが重要です。

脳卒中のリスク

いびきは脳卒中のリスクも高める可能性があります。SASによる無呼吸状態が続くことで、以下のような流れで影響が生じます。

  1. 酸素不足:夜間の繰り返される無呼吸により、脳への酸素供給が不安定になる。
  2. 血流の変化:酸素不足と血圧の変動により、脳血管への負担が増加する。
  3. 血管の損傷:長期間にわたる負担により、脳血管が徐々に損傷を受ける。

上記の影響が続くと、次のようなリスクが高まる可能性があります。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
  • 認知機能の低下
  • 日中の眠気による事故

睡眠の質が低下することで、日中の眠気や集中力の低下を引き起こし、交通事故や労働災害などのリスクも高まります。適切な治療を受けずにいると、ある日突然、脳卒中で倒れてしまう可能性があります。

持続的ないびきがある場合は、SASの可能性を考慮し、専門医の診断を受けることが重要です。早期発見と適切な治療により、脳卒中のリスクを軽減できる可能性があります。

あなたや大切な人の健康を守るため、いびきについて正しく理解し、適切な対策を講じましょう。以下の記事では、睡眠時無呼吸症候群のメカニズムや種類についても解説しています。
>>そのいびきは睡眠時無呼吸症候群のサインかも?メカニズムと種類を詳しく解説

効果的ないびきの対策

いびきは、単なる騒音問題だけでなく、睡眠の質低下や健康への悪影響も懸念されます。特に女性の場合、ホルモンバランスの変化や妊娠など、特有の要因がいびきに関与することがあります。いびき改善グッズを用いた対策と、生活習慣の改善による対策について解説します。

いびき改善グッズを用いた対策

いびき改善のために、手軽に試せるグッズが多数販売されています。おすすめの2つのグッズを紹介します。

鼻腔拡張テープ

鼻腔拡張テープは、鼻に貼ることで鼻腔を広げ、鼻呼吸をスムーズにする効果があります。鼻腔拡張テープの特徴は以下のとおりです。

  • アレルギー性鼻炎の方に有効
  • 薬局やドラッグストアで購入可能
  • 肌に合わない場合がある

上記の特徴でも説明したとおりドラッグストアなどで購入可能であり、安価であるため鼻詰まりによるいびきが原因の方にはおすすめです。

横向き寝用の枕

横向きの寝姿勢は気道確保に有効であり、いびきを軽減する効果が期待できます。横向き寝用の枕は、体のラインに合わせて設計されており、自然な姿勢で横向きに寝ることができます。横向き寝用の枕の特徴は以下のとおりです。

  • 仰向け寝で舌が喉に落ち込む方に効果的
  • 体型に合った枕選びが重要
  • 慣れるまで時間がかかる場合がある

上記のグッズは、個人の症状や体質に合わせて選択することが重要です。効果には個人差があるため、医療専門家に相談しながら使用することをおすすめします。

生活習慣改善によるいびき対策方法

いびきは生活習慣の乱れが原因で起こることも少なくありません。日常生活での意識改善により、いびきの軽減が期待できます。女性に特に効果的な生活習慣改善といびき対策について説明します。

肥満の解消

肥満は、首回りに脂肪がつきやすく、気道を狭くする原因となります。BMI25以上の場合、減量でいびきが改善する可能性が高いです。BMIの計算方法は、体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)で計算できます。減量をするなら、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが効果的です。適度な運動とバランスの取れた食事で体重管理を心がけましょう。

禁煙

タバコに含まれる有害物質は気道の炎症を引き起こし、いびきの原因となることがあります。禁煙により、気道の状態が改善される可能性があります。喫煙者は非喫煙者に比べ、いびきのリスクが高いです。ニコチン代替療法や禁煙外来の利用をおすすめします。急に禁煙することが難しい方は、徐々に減らすなど自分にあった方法を探しましょう。

アルコール摂取の制限

アルコールは筋肉を弛緩させ、気道を狭くする効果があります。摂取量を控えることで、いびきの改善につながる可能性があります。重要なポイントは以下のとおりです。

  • 就寝3時間前からのアルコール摂取を避ける
  • アルコール摂取量を週に14単位以下に抑える(1単位 = ビール250ml)
  • アルコールの代わりにハーブティーなどのノンアルコール飲料を選ぶ

上記の生活習慣改善は、個人の状況に応じて段階的に取り入れることが重要です。急激な変化は逆効果になる可能性があるため、無理のない範囲で継続的に実践することをおすすめします。

いびきの治療方法

生活習慣の改善やいびき改善グッズで十分な効果が得られない場合、医療機関での専門的な治療を検討する必要があります。ここでは、女性のいびきに効果的な専門治療について詳しく説明します。

ホルモン療法

更年期の女性は、エストロゲンの減少によりいびきが悪化することがあります。

ホルモン療法の特徴は以下のとおりです。

  • エストロゲンを補充し、気道の筋緊張を維持する
  • 経口薬やパッチなど、さまざまな投与方法がある

注意点:

以下はホルモン療法を行う際の注意点です。

  • 乳がんや血栓症のリスクが上昇する可能性がある
  • 個々の状況に応じて、慎重に検討する必要がある

ホルモン療法は特に女性特有の治療法だと言えます。医師の判断に基づいて慎重に検討することが重要です。

マウスピース

マウスピースは、就寝時に装着することで下顎を前方に移動させ、気道を広げる効果があります。マウスピースにより、空気の通りがスムーズになり、いびきの音を軽減できます。マウスピースの特徴は以下のとおりです。

  • 顎が小さく気道が狭い方に効果的
  • オーダーメイドと既製品がある
  • 装着に慣れるまで時間がかかる場合がある

いびき防止用のマウスピースは医師の診断を受けた後にカスタムメイドすることが一般的です。一般でも市販マウスピースは購入可能ですが、医師の指導のもとで使用することをおすすめします。

CPAP療法

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法は、就寝時にマスクを着用し、持続的に空気を送り込む治療法です。CPAP療法では、気道を開いた状態に保ち、いびきや無呼吸を防ぐことができます。非侵襲的で、即効性があるのも特徴です。CPAP療法を行う際は、以下の点に注意しましょう。

  • マスク装着に慣れが必要
  • 定期的な機器のメンテナンスが必要
  • 保険適用に関しては事前に確認が必要

手術治療

いびきの原因となる解剖学的な問題がある場合、手術治療が選択肢となります。鼻中隔矯正術や

口蓋垂軟口蓋形成術(UPPP)を行います。鼻中隔矯正術は、鼻中隔湾曲症による鼻閉塞がいびきの原因の場合に有効です。鼻中隔矯正術の特徴は以下のとおりです。

  • 曲がった鼻中隔を矯正し、鼻呼吸を改善
  • 局所麻酔または全身麻酔で実施

鼻中隔矯正術は日帰りまたは短期入院で治療可能です。

口蓋垂軟口蓋形成術(UPPP)は、口蓋垂(のどちんこ)や軟口蓋が長すぎる場合に行います。UPPPの特徴は以下のとおりです。

  • 余分な軟組織を切除し、気道を拡大
  • 全身麻酔で実施
  • 入院が必要

上記の専門的治療法は、それぞれメリットとリスクがあります。治療法の選択は、症状の程度、原因、全身の健康状態などを考慮し、必ず医師と相談のうえで決定してください。また、治療開始後も定期的な経過観察が重要です。

まとめ

女性のいびきは、男性とは異なる原因で起こることが多く、適切な対策が必要です。

主な原因は以下のとおりです。

  • 気道の狭さと筋肉量の少なさ
  • 女性ホルモンの変化(特に更年期)
  • 肥満や加齢

効果的な対策として以下が挙げられます。

  • マウスピースや鼻腔拡張テープなどのグッズの使用
  • 生活習慣の改善(減量、禁煙、アルコール制限)
  • ホルモン療法やCPAP療法など専門的な治療

重症の場合は、専門医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。いびきは睡眠時無呼吸症候群のサインの可能性もあるため、気になる症状がある場合は早めの対応が大切です。

以下の記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状や原因、治療方法について網羅的に説明しているので、ぜひチェックしてみてください。
>>もしかして睡眠時無呼吸症候群(SAS)?症状と原因、治療方法について解説

参考文献

Schmickl CN, Li Y, Orr JE, Jen R, Sands SA, Edwards BA, DeYoung P, Owens RL and Malhotra A. Effect of Venlafaxine on Apnea-Hypopnea Index in Patients With Sleep Apnea: A Randomized, Double-Blind Crossover Study.. Chest 158, no. 2 (2020): 765-775.

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