大石内科循環器科医院

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女性の睡眠時無呼吸症候群|知っておくべき症状と対策を解説

2025.07.08

日中の耐えがたい眠気やいくら寝ても取れない疲れに悩まされていませんか?実は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインの可能性があります。

特に女性は、男性とは異なる症状が現れやすく、更年期障害やその他の不調と勘違いして見過ごされがちです。今回は、女性の睡眠時無呼吸症候群について、症状や予防方法などを解説します。ご自身の健康状態をチェックするうえでも、ぜひ参考にしてください。

いびきに悩まされる女性も多いです。以下の記事では、女性のいびきについて、男女の違いや治療法について解説しているのでチェックしてみてください。
>>いびきは女性もかくの?原因と男女の違い、治療法について解説

女性の睡眠時無呼吸症候群とは?

女性の睡眠時無呼吸症候群には「朝起きたときにスッキリしない」「日中、耐えられないほどの眠気に襲われる」という症状が見られます。更年期障害による不調だと思い込んで婦人科を受診していた方が、実はSASだったというケースもあるのです。

睡眠時無呼吸症候群のメカニズムや女性ホルモンとの関係性についても解説します。

睡眠時無呼吸症候群のメカニズム

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が何度も止まる、もしくは浅くなる病気です。

呼吸が止まると、血液中の酸素濃度が低下します。脳は生命の危機を感じて緊急事態と判断し、浅い睡眠状態へと移行させます。結果、深い睡眠を十分に取ることができなくなり、日中の強い眠気や倦怠感につながるのです。

SASの主な原因は、気道の閉塞です。肥満体型の方は、首周りの脂肪が気道を圧迫しやすいため、SASになりやすい傾向があります。舌の付け根が大きい方やあごが小さい方は、寝ている間に気道を塞いでしまう可能性が高いです。

女性特有の症状:いびき以外にも要注意

「SASの症状=いびき」というイメージをお持ちの方も多いですが、症状はいびきだけではありません。特に女性の場合は、いびきをしていないにも関わらず、SASになっているケースもあるのです。

代表的な症状としては、以下が挙げられます。

  • 日中の強い眠気
  • 倦怠感
  • 頭痛
  • 寝汗
  • 精神症状
  • 集中力・記憶力の低下

日中の強い眠気や倦怠感は、うつ病や甲状腺機能低下症の症状と似ており、頭痛や寝汗は、更年期障害や自律神経失調症の症状と類似しているため注意が必要です。

閉経など女性ホルモンとの関係性

女性ホルモンは、呼吸をコントロールする中枢にも影響を与えています。閉経後、女性ホルモンの分泌が減少すると、気道の筋肉が弱くなり気道が狭まりやすくなります。

また、妊娠中もホルモンバランスや体重が大きく変化するため、SASを発症しやすくなります。妊娠後期になるとお腹が大きくなり、横隔膜が押し上げられて肺が圧迫されるためです。

睡眠時無呼吸症候群の対策は日々の見直し

睡眠時無呼吸症候群の対策は、日々の見直しが最も大切です。生活習慣や睡眠を見直すことでSASの予防・改善につながります。それぞれ解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

生活習慣の改善:ダイエット、禁煙、飲酒制限

SASの予防や改善には、生活習慣の見直しが重要です。肥満は、首回りに脂肪がつき、気道を狭くする原因となります。適正体重を維持するためのダイエットを心がけましょう。

タバコに含まれる有害物質は気道を炎症させ、呼吸をさらに悪くします。禁煙はSASの改善だけでなく、さまざまな病気の予防にもつながります。アルコールは筋肉を弛緩させる作用があり、気道が閉塞しやすくなります。飲酒量を控えることも、SASの予防・改善に効果的です。

睡眠環境の改善:適切な睡眠時間、寝室の環境

質の高い睡眠は、SASの予防・改善に大きく貢献します。毎日同じ時間に寝起きし、体内時計をリセットすることで、規則正しい睡眠リズムを保ちましょう。

寝室は、静かで暗く、涼しい環境に整え、リラックスできる空間を作ることも重要です。寝る前にカフェインを摂取したり、スマートフォンやパソコンを長時間見たりすることは、睡眠の質を低下させるため避けましょう。

女性の睡眠時無呼吸症候群の合併症

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、単にいびきがうるさい、寝苦しいといった睡眠の質に関わる問題だけでなく、さまざまな体の不調につながる可能性がある病気です。特に女性は、ホルモンバランスの変化や妊娠など、特有の要因によってSASのリスクが高まる時期があります。

ご自身の健康を守るためにも、女性のSASで起こりうる合併症と、予防策について一緒に考えましょう。

高血圧

SASになると、睡眠中に呼吸が何度も止まり、体に酸素が十分に行き渡らなくなります。体は酸素不足を補おうと心臓を速く動かし、血管を収縮させて血圧を上げます。繰り返すことで、高血圧になってしまうのです。

高血圧は、血管に常に負担がかかっている状態です。まるで、常に水を出しっぱなしにしているホースのように、血管が硬くもろくなってしまいます。結果として、脳卒中や心臓病といった生命に関わる病気を引き起こすリスクが高まります。

糖尿病

SASは、糖尿病のリスクも高めます。睡眠中に呼吸が止まると、体の中の糖のバランスが乱れ、血糖値のコントロールが難しくなるためです。

睡眠不足になると、甘いものが無性に食べたくなるという経験はありませんか?体が糖分を必要としているサインの一つです。SASも同様に、体内の糖代謝を悪くし、糖尿病のリスクを高めるのです。

心血管疾患

心血管疾患とは、心臓や血管の病気をまとめて呼ぶ言葉です。SASは、高血圧や糖尿病のリスクを高めるだけでなく、直接的に心臓や血管に負担をかけ、心血管疾患のリスクを高めます。

SASによって引き起こされる低酸素状態は、心臓に大きな負担をかけます。心臓が一生懸命働いて、少ない酸素を全身に送り届けようとするためです。狭心症や心筋梗塞といった、命に関わる病気を引き起こすリスクが高まります。

妊娠合併症

妊娠中は、お腹が大きくなるにつれて横隔膜が押し上げられ、肺の働きが制限されます。さらに、ホルモンバランスや体重の変化も重なり、SASのリスクが高まります。

SASは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった妊娠合併症のリスクを高めるため、特に注意が必要です。妊娠中に急に血圧が上がったり、尿に糖が出たりした場合は、SASの可能性も考慮して検査を受けることが重要です。

女性の睡眠時無呼吸症候群の検査と治療法

「もしかしたら、睡眠時無呼吸症候群かも…?」と不安に感じている方は、まずご自身でできる簡易検査から始めてみましょう。さらに医療機関で精密検査を受けることで、より正確な診断と適切な治療法の選択が可能になります。

家庭でできる簡単なチェック方法から病院での精密検査、そして自分に合った治療法の選び方まで解説します。安心して検査を受け、快適な睡眠を取り戻しましょう。

家庭でできる簡易検査

簡易検査は、自宅で手軽にできる方法です。STOP-BANG質問票というものがあります。いびきの有無や日中の眠気の程度、高血圧の有無など、8つの質問に答えるだけで、睡眠時無呼吸症候群のリスクを評価できます。インターネットで検索すれば簡単に見つけることができます。ぜひ試してみてください。

スマートフォンのアプリを利用する方法もあります。いびきの音を録音し、呼吸の状態を分析してくれるアプリも登場しています。

最近では、自宅でできる簡易検査キットを希望する患者さんが増えています。検査キットには、指先に装着するパルスオキシメーターと、記録用のシートが含まれています。睡眠時にパルスオキシメーターを装着し、翌朝、記録された酸素飽和度の変化をシートに記入して提出してもらうことで、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかどうかを判断できます。

あくまで簡易的なチェックなので、確定診断のためには、医療機関を受診する必要があります。

医療機関での精密検査(終夜睡眠ポリソムノグラフィーなど)

医療機関では、終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査が行われます。一晩入院して、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸状態、血液中の酸素飽和度などを同時に記録する検査です。

少し大変そうに感じますが、病院のスタッフが丁寧にサポートしてくれるので安心してください。検査中は、リラックスして普段通りに眠るだけで大丈夫です。

PSG検査を受けることで、睡眠中の無呼吸や低呼吸の回数、持続時間、血液中の酸素濃度の低下などを詳しく調べることができます。データにもとづいて、睡眠時無呼吸症候群の確定診断が得られ、適切な治療法を選択できるのです。

従来のPSG検査に加えて、近年では、ビデオや音声、体の動きを分析する非接触型の検査方法も開発されており、感度と特異度が高いことが報告されています。

CPAP療法:機器の種類と使い方

CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群の最も一般的な治療法です。CPAP装置という小さな機械を使って、鼻や口に空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防ぎます。

CPAP装置には、さまざまな種類があります。空気圧を自動調整するタイプ、加湿機能付きのタイプ、小型で持ち運びに便利なタイプなど、患者さんの状態や好みに合わせて最適な機種を選ぶことができます。

使い方は簡単で、寝る前にマスクを装着し、電源を入れるだけです。最初は少し違和感がある可能性がありますが、徐々に慣れて快適に眠れます。

マウスピース(口腔内装置):種類と選び方

CPAP療法が合わない方には、マウスピース(口腔内装置)という治療法もあります。下顎を少し前に出して、気道を広げるための装置です。

種類もいくつかあり、歯科医院で患者さん一人ひとりの歯型に合わせて作ってもらいます。マウスピースは、CPAP装置に比べて小型で持ち運びやすく、装着も簡単です。ただし、顎関節症のある方や、歯並びに問題のある方には適さない場合があります。

まとめ

女性の睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、男性とは異なる症状や原因があり、見過ごされやすい病気です。日中の強い眠気や倦怠感、頭痛、寝汗、精神症状、集中力・記憶力の低下など、他の病気と間違えやすい症状が現れます。

女性ホルモンの変動、肥満、甲状腺機能低下症、顎の形状などが原因として挙げられます。特に更年期や妊娠中は、ホルモンバランスの変化によりSASのリスクが高まります。SASの治療法は以下のとおりです。

  • CPAP療法
  • マウスピース
  • 手術

予防策として、バランスの良い食事や禁煙、飲酒制限や適度な運動などの生活習慣の改善などが重要です。早期発見・早期治療のため、家庭でできる簡易検査や、医療機関での精密検査(終夜睡眠ポリソムノグラフィーなど)を活用しましょう。

以下の記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状や原因、治療方法について網羅的に説明しているので、ぜひチェックしてみてください。
>>もしかして睡眠時無呼吸症候群(SAS)?症状と原因、治療方法について解説

参考文献

Khalil C, Zarabi S, Kirkham K, Soni V, Li Q, Huszti E, Yadollahi A, Taati B, Englesakis M and Singh M. “Validity of non-contact methods for diagnosis of Obstructive Sleep Apnea: a systematic review and meta-analysis.” Journal of clinical anesthesia 87, no. (2023): 111087.

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