身近な人が些細なことで怒りっぽくなったり、身に覚えのないことを言い出したりして戸惑った経験はありませんか? 実は、こうした変化は認知症の「周辺症状」と呼ばれるもので、患者本人だけでなく周囲の人も深く悩ませることが少なくありません。
認知症と診断されると、多くの人が「もの忘れ」といった症状をイメージするでしょう。しかし認知症は行動や心理面にも、様々な変化を引き起こします。例えば「徘徊」「もの盗られ妄想」「幻覚」などがその代表的な例です。一体なぜ、このような症状が現れるのでしょうか?
この記事では認知症の周辺症状について、その原因や具体的な例、そして対応策などを詳しく解説していきます。認知症の方と、そしてご家族が少しでも穏やかに過ごしていくためのお役に立てれば幸いです。
認知症と診断されたら、誰でも不安を抱えるものです。患者さんご本人だけでなくご家族にとっても、これからどのように過ごしていけばいいのか迷うことも多いでしょう。認知症は進行性の病気であり、症状は徐々に進んでいきます。そして、その症状は「中核症状」と「周辺症状」の二つに分けられます。
ここではご本人とご家族の負担を少しでも軽くするために、特に「周辺症状」について詳しく解説していきます。
認知症の中核症状は、もの忘れや理解力の低下といった、いわゆる認知機能が衰えていくことです。これは脳の神経細胞がダメージを受けることで、情報の伝達や処理がスムーズにいかなくなるために起こります。
一方、周辺症状は、この中核症状を背景に現れる行動や心理面の変化のことです。周辺症状は周囲の人には理解しにくい行動や感情の起伏として現れるため、対応に苦慮することも少なくありません。
例えば、これまで穏やかだった方が些細なことで怒り出したり、急に不安が強くなって落ち着かなくなったりすることがあります。また「誰かに物を盗まれた」と訴えたり、実際にはいない人が見えたりするといった症状が現れることもあります。
周辺症状は、脳の機能低下が原因で起こります。私たちの脳は思考、感情、行動などをコントロールする司令塔のような役割を担っています。認知症では、この脳の神経細胞がダメージを受け情報伝達がうまくいかなくなることで様々な機能に影響が出ます。
特に感情や行動をコントロールする部分が影響を受けると、周囲の状況を正しく判断したり自分の感情をコントロールすることが難しくなります。そのため些細な刺激に対して過剰に反応したり、不安や恐怖を感じやすくなったりすると考えられています。
例えば脳の扁桃体と呼ばれる部分は感情反応、特に恐怖や不安に深く関わっています。認知症によってこの扁桃体の機能が低下すると、本来であれば恐怖を感じないような状況でも過剰に不安を感じてしまうことがあります。
また前頭葉は、思考、判断、行動の抑制などを司る脳の最高中枢です。認知症によって前頭葉の機能が低下すると周囲の状況に合わせて適切な行動をとることが難しくなり、反社会的な行動や衝動的な行動が増加することがあります。
さらに環境の変化やストレス、身体的な不調なども周辺症状の引き金になることがあります。例えば、入院や施設入居といった環境の変化は、認知症の方にとって大きなストレスとなり、不安や混乱を招きやすいため、周辺症状が悪化する可能性があります。
周辺症状は、大きく「行動・心理症状」と「精神症状」の二つに分けられます。
行動・心理症状は、周囲の人から見てわかりやすい変化として現れます。
精神症状は本人の内面に起こる変化であり、周囲の人からは気づかれにくい場合もあります。
私が診察した患者さんで、毎日決まった時間に散歩に出かけていた方がいました。しかし認知症が進行するにつれて、道に迷ってしまうことが増え次第に不安や焦燥感が強くなりました。その結果、外出を極端に怖がるようになり家に閉じこもりがちになってしまったケースがありました。
認知症の周辺症状とは中核症状である認知機能の低下を背景に現れる、行動や心理面の変化のことです。周辺症状は、脳の機能低下によって感情や行動のコントロールが難しくなることが原因で起こります。具体的な症状としては徘徊、もの盗られ妄想、介護への抵抗、睡眠障害、幻覚、妄想、不安・焦燥、抑うつなどがあります。
当院は物忘れ外来を行っております。また。認知対応型通所介護センター(デイサービス)も併設しておりますので、気になる症状等がある方は当院にご相談ください。
大石内科循環器科医院
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