大石内科循環器科医院

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【認知症】同じ言葉を繰り返してしまうのはなぜ?

2024.11.21 認知症

「あれ?いつの間にかさっきと同じこと言ってる…」

そんな経験はありませんか? 誰しも一度は経験する、些細な出来事かもしれません。しかし、この「同じ言葉を繰り返す」という現象、実は重大な病気のサインである可能性も秘めているのです。

近年、高齢化社会の進展に伴い認知症患者数は増加の一途を辿っています。そして、その初期症状として多く見られるのが、「反復言語」と呼ばれる、同じ言葉を繰り返してしまう症状です。 これは単なるうっかりミスではなく、脳の機能障害が引き起こす深刻な問題となる場合があるのです。

この記事では日常生活で起こりうる「同じ言葉を繰り返す」という現象について、その原因を徹底的に解明します。単なる忘れっぽさから認知症などの深刻な病気まで、様々な可能性を丁寧に解説。 具体的には、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症といった様々な認知症の種類における症状の特徴や、精神的ストレスとの関連性についても深く掘り下げていきます。

さらに、脳の働きと「反復言語」の関係性、症状の評価方法、そして薬物療法やリハビリテーションといった治療法の選択肢についても詳しく解説します。 あなたは、自分の症状がどの程度のものなのか、どのように対処すれば良いのか、この記事を通じて明確な理解を得られるでしょう。 もしかしたら、あなたの不安や疑問を解消し、より穏やかな日々を送るための第一歩となるかもしれません。 ぜひ、読み進めてみてください。

同じ言葉を繰り返す原因と病態生理の解説

「さっきも同じこと言ってたよ」と家族に指摘されたり、自分でも同じ言葉を繰り返したりすることに気づいてドキッとした経験はありませんか? 実は誰にでも起こりうることなのですが、その頻度や背景には様々な要因が潜んでいます。単なるもの忘れや一過性のものから、病気のサインである場合もあるため軽視せずにその原因を探ることが大切です。

認知症における反復言語のメカニズム

認知症は脳の神経細胞がダメージを受け、情報伝達がスムーズにいかなくなる病気です。これは図書館の本棚が乱雑になり、目的の本を探し出すのが困難になる状態に似ています。特に記憶や言語をつかさどる部分がダメージを受けると、言葉がうまく出てこなくなったり同じ言葉を繰り返してしまったりする「反復言語」が起こりやすくなります。

例えばアルツハイマー型認知症では、アミロイドβと呼ばれる異常なタンパク質が脳に蓄積し神経細胞を傷つけます。これは図書館に不要な物が散乱し、通路を塞いでしまうようなものです。その結果、新しい情報を覚えたり、言葉を探し出したりすることが困難になり「今日は何日?」「ご飯食べた?」といった言葉を何度も繰り返してしまうのです。

認知症の種類反復言語の特徴具体例
アルツハイマー型認知症同じ質問を何度も繰り返す、最近の出来事を忘れて何度も同じ話を繰り返す「財布はどこ?」と何度も聞いてくる、今日の昼食の内容を何度も話す
血管性認知症言葉が出てこない、同じ言葉を何度も繰り返す伝えたい言葉が出てこず、「あれ」「それ」を繰り返す
レビー小体型認知症複雑な文章が理解しづらい、同じ言葉を繰り返す指示が理解できず、同じ言葉をオウム返しに繰り返す
前頭側頭型認知症同じ言葉を執拗に繰り返す、意味のない言葉を発する特定の単語やフレーズを何度も繰り返す

このように認知症の種類によって反復言語の症状は少しずつ異なります。重要なのは、単に繰り返す言葉の内容だけでなく、その頻度や状況、その他の症状(物忘れ、理解力の低下など)も合わせて観察することです。

精神的ストレスと同じ言葉を繰り返す関連性

精神的なストレスも、同じ言葉を繰り返す原因となります。強いストレスを感じている時は脳の働きが不安定になり、言葉のコントロールが難しくなるためです。これはパソコンに過剰な負荷がかかり、処理速度が遅くなったりフリーズしてしまう状態に似ています。

また不安障害や強迫性障害といった精神疾患でも、反復言語が見られることがあります。例えば特定の言葉やフレーズを何度も繰り返さないと気が済まない、といった症状が現れることがあります。

同じ言葉を繰り返す症状の背後にある脳の働き

私たちの脳は無数の神経細胞が複雑にネットワークを形成し、情報を伝達することで機能しています。言葉を発する際には、これらの神経細胞がリレーのように情報を伝え合い口や舌の筋肉を動かしています。この情報伝達に問題が生じると言葉がうまく出てこなくなったり、同じ言葉を繰り返してしまったりします。これは電話回線にノイズが入り会話が途切れたり、同じ言葉を何度も繰り返さなければ伝わらなくなる状況と似ています。

例えば脳卒中などで脳の一部が損傷すると、言語中枢と呼ばれる言語機能を司る領域が影響を受け言葉の理解や発話が困難になることがあります。このような場合にも、反復言語が見られることがあります。また加齢によっても神経細胞の働きは徐々に衰え、情報処理能力が低下するため言葉の探し出しや発話に時間がかかり結果として同じ言葉を繰り返す場合もあります。このように、同じ言葉を繰り返す症状は様々な原因によって引き起こされる可能性があります。

同じ言葉を繰り返す症状の名称と種類

「あれ、また同じこと言っちゃった…」と、心の中で呟いたことはありませんか?誰しも好きな歌のフレーズが頭から離れなかったり、大事な用事の前には同じ心配事を何度も繰り返したりするものです。これらは正常な脳の働きで、特に心配する必要はありません。しかし認知症の症状として同じ言葉を繰り返す場合は、少し様子が異なります。

今回は認知症における言葉の繰り返しの症状について、その名前や種類、特徴などを詳しく見ていきましょう。認知症における言葉の繰り返しは、単なるクセや一過性のものとは異なり脳の機能変化が背景にある深刻な症状である可能性があります。早期発見と適切な対応が重要ですので、ぜひ最後までお読みください。

繰り返し現れる言葉の特徴

認知症で同じ言葉を繰り返す症状は「反復言語」や「perseveration(パーセベレーション)」と呼ばれます。「パーセベレーション」とはラテン語の「perseverare(粘り続ける)」に由来する言葉で、医学用語としては「持続」を意味します。これは特定の思考や行動、言葉が状況にそぐわなくなっても繰り返される状態を指します。

例えば私の患者さんの一人、70代の女性は「今日は何曜日?」と何度も繰り返し、既に何度も答えている家族を困らせていました。また別の患者さんである80代の男性は「お腹すいた」と何度も訴え、食事を済ませた後でも同じ言葉を繰り返していました。

これらの例のように反復言語は特定の言葉やフレーズ、時には文全体を何度も繰り返す形で現れます。内容も「ご飯まだ?」「家に帰る」といった日常的な言葉から、全く脈絡のない言葉まで様々です。

特徴具体例私の診療経験
特定の言葉の反復「お名前は?」と聞かれると、毎回自分の名前だけでなく、住所や生年月日も繰り返す。アルツハイマー型認知症の患者さんで、自分の名前を何度も繰り返す方がいました。
フレーズの反復「今日はいい天気ですね」と言われると、「今日はいい天気ですね。今日はいい天気ですね…」と何度も繰り返す。レビー小体型認知症の患者さんで、挨拶の言葉を何度も繰り返す方がいました。
文の反復「これからどうされますか?」と聞かれると、「これからどうされますか?これからどうされますか?」と繰り返す。前頭側頭型認知症の患者さんで、ある質問に対して、同じ質問を繰り返す形で返答する方がいました。
状況にそぐわない反復夕食後にも関わらず、「ご飯まだ?」と何度も聞く。アルツハイマー型認知症の患者さんで、既に食事が終わっているにも関わらず、「ご飯まだ?」と繰り返し、家族を困らせている方がいました。

このように反復言語は様々な形で現れ、本人は繰り返している自覚がない場合が多いです。そのため、周囲の人々が異変に気付き、適切な対応をすることが重要です。

認知症以外の病気における反復の例

認知症以外にも脳の損傷や機能障害によって、同じ言葉を繰り返す症状が現れることがあります。例えば脳卒中などで脳の一部が損傷した場合、損傷部位の機能に応じて様々な言語障害が現れ、その一つとして反復言語が見られることがあります。

また統合失調症などの精神疾患でも、思考の混乱や思考の貧困といった症状から同じ言葉を繰り返してしまうことがあります。統合失調症の患者さんは、妄想や幻覚の内容に関連した言葉を執拗に繰り返す場合もあります。

症状の評価と治療法の選択肢

同じ言葉を繰り返してしまう…誰にでもあることとはいえ、それが頻繁になると不安になりますよね。もしかしたら病気のサインかも?と心配になる方もいるかもしれません。実際、私の診療経験でも、認知症の初期症状として言葉の繰り返しが目立つようになった患者さんを何人も見てきました。

ご本人だけでなく、ご家族も不安に感じるこの症状。でも、落ち着いてください。正しく評価し、適切な治療法を選択することで、症状を和らげ、より穏やかな日常生活を送ることができる可能性があります。

具体的な治療法に入る前に、まずはご自身の症状を客観的に見つめることが大切です。

繰り返しの程度を評価する方法

同じ言葉を繰り返す症状は、その程度によって適切な対応が変わってきます。軽度の場合は、生活習慣の改善やストレスマネジメントで十分な場合もありますし、重度の場合は専門的な治療が必要になることもあります。

私が患者さんの症状を評価する際に注目しているのは、以下の3つのポイントです。

  1. 繰り返しの頻度: 1日に何回繰り返すか、あるいは1回の会話の中で何回繰り返すかを具体的に記録してみましょう。例えば、「1時間に5回以上繰り返す」「1回の会話で3回以上繰り返す」といった具合です。私の患者さんの中にも、ご家族から「1日に何度も同じ質問をされる」と相談に来られた方がいらっしゃいました。具体的な頻度を把握することで、症状の程度を客観的に判断することができます。
  2. 繰り返しの持続時間: 同じ言葉を繰り返す状態がどれくらい続くのかにも注目しましょう。数秒で終わる場合もあれば、数分間続く場合もあります。例えば、「5秒以内」「10秒以上」「数分続く」といったように記録してみてください。
  3. 状況による変化: 場所、時間帯、相手など、状況によって症状が変化するかどうかを観察することも重要です。例えば、「自宅では繰り返さないが、病院では繰り返す」「朝は繰り返さないが、夕方になると繰り返す」「家族と話しているときは繰り返さないが、他人と話しているときは繰り返す」などです。ある患者さんは、初対面の私の前では緊張からか言葉の繰り返しが顕著でしたが、何度か診察を重ねるうちに症状が軽快していきました。

これらのポイントをメモしておき、医師に伝えることで、より正確な診断と適切な治療方針を決定することができます。ご自身の状態を把握し医師と共有することで、よりスムーズな治療につながるのです。

薬物療法の選択肢と効果

言葉の繰り返しの原因が特定の疾患、例えば認知症や統合失調症、不安障害などである場合、その疾患に対する薬物療法が検討されます。

例えば、アルツハイマー型認知症による反復言語には、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬が処方されることがあります。これらの薬は、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑えることで、認知機能の低下を抑制する効果が期待できます。

また、不安や緊張が原因で言葉の繰り返しが悪化している場合は、抗不安薬が有効な場合があります。抗不安薬は、不安や緊張感を和らげることで、精神的な安定をもたらし、症状の改善を促します。ただし、薬物療法はあくまで症状を和らげるための対症療法であり、根本的な原因を解決するものではありません。また、薬の種類や服用量、服用期間などは、患者さんの状態に合わせて個別に調整する必要があります。薬の効果や副作用には個人差がありますので、医師とよく相談し、ご自身に合った薬を見つけることが大切です。

非薬物療法(リハビリテーション)の可能性

薬物療法だけでなく、非薬物療法も症状の改善に大きく貢献します。特に、認知症や脳卒中などによって言葉の繰り返しが生じている場合、リハビリテーションが非常に有効です。

例えば、言語聴覚士によるリハビリテーションでは、発声練習や会話練習を通して、言葉の流暢さやコミュニケーション能力の向上を目指します。具体的な練習方法としては、音読、復唱、会話練習などがあり、患者さんの状態に合わせて適切なプログラムが作成されます。

また、音楽療法や芸術療法、園芸療法などの活動を通して、心身のリラックスを促し、コミュニケーション能力を高めることも期待できます。これらの療法は、患者さんの意欲や生活の質の向上にもつながるため、積極的に取り入れることをお勧めします。

さらに、ご家族の協力も欠かせません。患者さんの話をじっくりと聞き共感的な態度で接することで、患者さんの不安や緊張を和らげ症状の改善をサポートすることができます。日常生活の中で、患者さんが安心して過ごせる環境を整えることも大切です。

非薬物療法は患者さん一人ひとりの状態や生活背景に合わせて、様々な方法を組み合わせることができます。医師や専門家と相談しながら、最適な方法を見つけていきましょう。

まとめ

本記事は、同じ言葉を繰り返すという症状の原因と対応について解説しています。この症状は単なるクセや一時的なものから、認知症などの深刻な病気のサインである可能性まで幅広く軽視すべきではありません。

認知症の種類(アルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型)によって、繰り返す言葉の特徴が異なります。また、精神的ストレスや脳卒中、統合失調症など、認知症以外の疾患でも同様の症状が現れる可能性があります。

この症状は「反復言語」または「パーセベレーション」と呼ばれ、その頻度、持続時間、状況による変化などを注意深く観察することで、症状の程度を評価できると述べられています。治療法としては、認知症であればコリンエステラーゼ阻害薬などの薬物療法、不安や緊張が原因の場合は抗不安薬などが考えられます。さらに、言語聴覚士によるリハビリテーションや、音楽療法などの非薬物療法も有効です。

結論として同じ言葉を繰り返す症状は様々な原因が考えられ、その背景にある疾患を適切に診断し薬物療法やリハビリテーションなどの治療を選択することが重要です。 症状に気づいたら、早めに医療機関を受診し専門家のアドバイスを受けることが大切です。

当院は物忘れ外来を行っております。また。認知対応型通所介護センター(デイサービス)も併設しておりますので、気になる症状等がある方は当院にご相談ください。

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