大石内科循環器科医院

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不整脈の治療法について循環器専門医が解説

2024.11.22 循環器

ドキッとしたり、脈が飛ぶような感覚、あるいは息切れや動悸に悩んでいませんか?

もしかしたら、それは不整脈かもしれません。日本人の約3人に1人が経験すると言われる不整脈は、心臓のリズムが乱れる症状で、種類も治療法も多岐に渡ります。放置すると脳梗塞などの重大な合併症につながる危険性もあるため、早期発見と適切な治療が不可欠です。

この記事では、分かりやすく不整脈の種類を解説します。洞不整脈、期外収縮、心房細動、心室頻拍、房室ブロックといった主要な5種類について、その症状や原因を丁寧に説明します。さらに薬物療法、カテーテルアブレーション、ペースメーカーやICDといったデバイス治療、そして外科手術といった様々な治療法についても詳しく解説。それぞれの治療法のメリット・デメリット、成功率、そして生活習慣の改善が治療に与える影響についても掘り下げます。

不整脈の症状に心当たりがある方、あるいはご家族に不整脈の症状がある方は、ぜひこの記事を読み、専門医への相談を検討してみてください。あなた自身の健康を守るために、今すぐ知識を深めましょう。

不整脈の種類とそれぞれの治療法

心臓は、全身に血液を送るポンプの役割を果たしています。このポンプ機能は、規則正しいリズムで動くことで成り立っています。しかし、様々な原因でこのリズムが乱れることがあります。これが「不整脈」です。今回は、不整脈の種類やそれぞれの治療法について解説します。

不整脈の主要な種類5つ

不整脈は脈の速さやリズムの乱れ方、発生場所などによって、いくつかの種類に分けられます。ここでは代表的な5つの種類を紹介します。

  1. 洞不整脈: 心臓の鼓動のリズムを作る司令塔である洞結節の活動が変化することで起こります。脈が速くなる「洞性頻脈」と遅くなる「洞性徐脈」があります。
    • 洞性頻脈: 健康な人でも、運動時や緊張した時などに起こります。これは正常な反応です。しかし、安静時にも常に脈が速い場合は、甲状腺機能亢進症などの病気が隠れている可能性があります。
    • 洞性徐脈: 運動習慣のある人では、安静時に脈が遅くなることがあります。これも正常な反応です。しかし、脈が極端に遅くなると、めまいや失神を起こすことがあります。
  2. 期外収縮: 心臓が本来のリズムとは別に、ときどき余分な脈を打つ不整脈です。「脈が飛ぶ」「ドキッとする」といった症状が現れます。健康な人でも、疲労やストレス、カフェインの摂取などで起こることがあります。
    • 期外収縮を自覚して来院される患者さんは多くいらっしゃいます。「心臓が止まるんじゃないか」と不安になる方もいますが、ほとんどの場合は心配ありません。しかし、頻度が多い場合や他の心臓病を合併している場合は、治療が必要になることもあります。
  3. 心房細動: 心臓の上の部屋である心房が細かく震えることで、脈がバラバラになる不整脈です。動悸やめまい、息切れなどの症状が現れることがあります。また、心房内に血栓(血の塊)ができやすくなり、脳梗塞のリスクを高める危険な不整脈です。
    • 心房細動は、加齢とともに発症率が高くなります。放置すると脳梗塞を引き起こす可能性があるため、適切な治療が必要です。抗不整脈薬や血液をサラサラにする薬を用いる薬物療法、カテーテルアブレーションというカテーテルを用いた治療などがあります。
  4. 心室頻拍: 心臓の下の部屋である心室から発生する非常に速い不整脈です。心室は全身に血液を送るポンプの役割を果たしているため、心室頻拍が起こると血液をうまく送り出せなくなり、意識を失ったり、最悪の場合は突然死につながる危険な不整脈です。
    • 心室頻拍は、心筋梗塞などの心臓病が原因で起こることがあります。緊急を要する不整脈であり、発見次第すぐに病院へ行く必要があります。
  5. 房室ブロック: 心臓の上の部屋(心房)と下の部屋(心室)の間の電気信号の伝わりが悪くなる不整脈です。脈が遅くなり、めまいや失神などを引き起こすことがあります。
    • 房室ブロックには、軽度から重度まで様々な段階があります。軽度の場合は経過観察で済みますが、重度の場合はペースメーカーの埋め込みが必要になります。

各不整脈における治療法の概要

不整脈の治療法は種類や症状の重さ、原因によって異なります。主な治療法には薬物療法、カテーテルアブレーション治療、デバイス治療、外科手術などがあります。

不整脈の種類治療法の概要
洞不整脈症状が軽い場合は経過観察。症状が重い場合や、原因となる病気が見つかった場合は、薬物療法やペースメーカーの埋め込みなどを行います。
期外収縮ほとんどの場合、治療は不要です。しかし、症状が気になる場合や、頻度が多い場合、心臓に負担がかかっている場合は、薬物療法を行うことがあります。
心房細動薬物療法、カテーテルアブレーション治療、デバイス治療など、様々な治療法があります。個々の患者さんの状態に合わせて最適な治療法を選択します。
心室頻拍薬物療法、カテーテルアブレーション治療、デバイス治療、外科手術、植込み型除細動器(ICD)など、様々な治療法があります。重症の場合は、電気ショックで心臓のリズムを正常に戻す治療を行います。
房室ブロックペースメーカーの埋め込みが主な治療法です。

生活習慣が治療法に与える影響

不整脈の治療において、薬や手術と同じくらい大切なのが生活習慣の改善です。

  • 食生活: 塩分の過剰摂取は高血圧の原因となり、不整脈を悪化させる可能性があります。減塩を心がけましょう。また、カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂るのも効果的です。加工食品やインスタント食品は塩分が多いので注意が必要です。具体的には、1日の塩分摂取量を6g未満にするのが理想です。
  • 嗜好品: コーヒーやアルコール、タバコは不整脈を誘発する可能性があります。過剰摂取は避け、節度を守ることが大切です。例えば、コーヒーは1日に2~3杯まで、アルコールはビールなら中瓶1本程度までにしておきましょう。タバコは禁煙が理想です。
  • 運動: 適度な運動は心臓の健康に良いですが、激しい運動は逆に不整脈を引き起こす可能性があります。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。
  • 睡眠: 睡眠不足や不規則な睡眠は、自律神経のバランスを崩し、不整脈を悪化させる可能性があります。毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。
  • ストレス: ストレスは不整脈の大きな原因の一つです。趣味やリフレッシュの時間を持つ、リラックスできる環境を作るなど、ストレスを溜め込まない工夫をしましょう。

規則正しい生活を送りバランスの良い食事を摂り、ストレスを溜め込まないことが不整脈の治療や予防にはとても大切です。

これらの生活習慣の改善は不整脈の治療効果を高めるだけでなく、再発予防にもつながります。ご自身の生活習慣を見直し、健康な心臓を維持するために積極的に取り組んでいきましょう。

薬物療法の効果とリスクを理解する

不整脈の治療には大きく分けて薬物療法、カテーテルアブレーション、デバイス治療、外科手術といった方法があります。それぞれメリット・デメリットがありますが、今回は薬物療法について詳しく見ていきましょう。薬物療法は、他の治療法と比べて体に負担が少ないというメリットがある一方、副作用のリスクも存在します。この章では、薬物療法の効果とリスクについて、患者さんの不安を少しでも和らげられるよう、わかりやすく説明していきます。最適な治療法を一緒に見つけていきましょう。

主な薬物療法の種類と期待される効果

薬には大きく分けて脈をゆっくりにする薬と、脈のリズムを整える薬の2種類があります。脈をゆっくりにする薬は心臓のブレーキ役のようなもので、ドキドキする症状を和らげます。例えばベータ遮断薬という種類のお薬は、運動している時のようなドキドキ感を抑えてくれます。狭心症の治療にも使われ、心臓の負担を軽減する効果も期待できます。

私は動悸と息切れを訴える患者さんへ、ベータ遮断薬を処方したケースを多く経験しています。服用後、症状が改善され日常生活が楽になったと喜んでいただけることが多くありました。

またカルシウム拮断薬という種類のお薬は、心臓の筋肉の収縮を抑えて脈を落ち着かせる効果があります。高血圧の治療にも使われており、血管を広げる作用も持っています。

症状や不整脈の種類に合わせて、最適な薬を選択することが重要です。

一方、脈のリズムを整える薬は心臓の指揮者のように、バラバラになったリズムを正しい順番に戻す働きをします。例えば、ナトリウムチャネル阻害薬という種類のお薬は、心臓の電気信号の流れを調整して、脈が飛ぶのを防ぎます。心房細動や心室頻拍などの治療に用いられます。

またカリウムチャネル阻害薬という種類のお薬も、心臓の電気信号に働きかけて正常なリズムを取り戻す助けをします。心房細動や心室頻拍などの治療に使用されます。

薬の種類効果具体例使用される不整脈
脈をゆっくりにする薬ドキドキする症状を和らげるベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬など洞性頻脈、期外収縮など
脈のリズムを整える薬バラバラになったリズムを正しい順番に戻すナトリウムチャネル阻害薬、カリウムチャネル阻害薬など心房細動、心室頻拍など

このように不整脈の薬には様々な種類があり、それぞれ効果も異なります。医師は患者さんの症状や不整脈の種類、他の病気の有無などを総合的に判断して最適なお薬を選びます。

薬物療法に伴う副作用とその管理法

薬には効果がある一方で、副作用のリスクも伴います。副作用は、薬の種類や患者さん個人によって様々です。

例えば脈をゆっくりにする薬は、脈が遅くなりすぎたり血圧が下がったり、めまい、ふらつき、倦怠感などが起こることがあります。

脈のリズムを整える薬は、めまいや吐き気、食欲不振、便秘、肝機能障害、不整脈の悪化などの症状が現れることもあります。

副作用が心配な方もいるかもしれませんが、副作用の症状や程度は、薬の種類や個人差によって様々です。また多くの副作用は薬の量を調整したり、他の薬に変更したりすることでコントロールすることができます。

副作用が出た場合は一人で悩まずに、すぐに医師や薬剤師に相談することが大切です。自己判断で薬の服用を中止してしまうと、不整脈が悪化してしまう可能性もあります。医師や薬剤師は、患者さんの症状に合わせて、薬の量や種類を調整したり、副作用を軽減するためのアドバイスをしてくれます。

副作用の種類対処法具体例
めまいゆっくりと立ち上がる、水分をこまめに摂るソファから立ち上がる際に、一旦座った姿勢で数秒間静止してから立ち上がる
吐き気食事を少量ずつに分けて食べる、刺激の強い食べ物を避ける一度にたくさん食べずに、数回に分けて少量ずつ食べる
便秘水分や食物繊維を多く摂る、適度な運動をする毎日ヨーグルトを食べる、1日30分のウォーキングをする
肝機能障害定期的な血液検査肝機能の数値が悪化した場合は、薬の種類や量を調整する

副作用への適切な対処法を知ることで、安心して薬物療法を続けることができます。医師や薬剤師とよく相談しながら、自分に合った治療法を見つけていきましょう。薬物療法は継続的な治療が必要となる場合が多く、定期的な通院と検査が重要となります。

カテーテルアブレーションとデバイス治療の選択肢

不整脈の治療は、薬物療法だけではありません。特に動悸が続くなど、つらい症状がある不整脈には、心臓の電気信号の異常を直接治すための、カテーテルアブレーション治療やデバイス治療といった選択肢もあります。今回は、これらの治療法についてわかりやすく解説します。

カテーテルアブレーション治療の手順と成功率

カテーテルアブレーション治療とは、細い管(カテーテル)を血管から心臓まで入れて、心臓の中で電気信号の異常を起こしている場所を焼く治療法です。細いといっても、直径はわずか2〜3mm程度です。

手順を簡単に説明すると、まず、足の付け根や首の血管に小さな穴を開けます。そこからカテーテルを挿入し、心臓まで進めます。

心臓内に入ると、カテーテルの先端にある電極で心臓の電気信号を詳しく調べ、異常な電気信号が出ている場所を特定します。

異常な場所が見つかったら、その場所に高周波電流を流して焼灼(やき)します。例えるなら電気ゴテで焼き鳥を焼くように、ピンポイントで焼いていくイメージです。こうすることで、不整脈の原因を取り除くことができます。

カテーテルアブレーション治療は、体にメスを入れる必要がないため、体に負担が少ない治療法です。入院期間も数日程度で済みます。

成功率は不整脈の種類によって異なりますが、多くの場合90%以上です。例えば、発作性上室性頻拍という不整脈では、95%以上の患者さんで根治が期待できます。

ペースメーカーとICDの役割とリスク

ペースメーカーとICDは、どちらも小さな機械を体の中に埋め込む治療法ですが役割が異なります。

ペースメーカーは心臓がゆっくり動きすぎる時に、適切なペースで動くように電気刺激を与える機械です。まるで、運動会で足が遅い友達を応援するように、心臓を励ましてくれる存在です。

一方、ICDは心臓が急に速く動きすぎる危険な不整脈を感知し、電気ショックを与えて正常なリズムに戻してくれる機械です。まるで道路でスピード違反の車を止めるパトカーのように、危険な不整脈をすぐに止めてくれる頼もしい存在です。

心室細動という、心臓が細かく震えて血液を送り出せなくなる非常に危険な不整脈があります。ICDは、この心室細動が起こった際に、自動的に電気ショックを与え心臓の動きを正常に戻してくれます。

ICDを埋め込んだ患者さんで、外出中に突然心室細動を起こした方がいました。ICDが作動し、電気ショックによって一命を取り留めたというケースもありました。

ペースメーカーもICDも電池で動くため、5~10年程度で電池交換が必要になります。また、感染症や機械の故障といったリスクもわずかに存在します。しかし、これらのリスクは、適切な管理を行うことで最小限に抑えることができます。

外科手術の必要性と回復期間の実際

ほとんどの不整脈は、薬物療法、カテーテルアブレーション、デバイス治療で治療できます。しかし、これらの治療で効果がない場合や、心臓に他の病気がある場合は、外科手術が必要になることもあります。

外科手術には、心臓を切開して行う開心術と、小さな穴から行う低侵襲手術があります。開心術は体に負担が大きいですが、低侵襲手術は体に優しく、回復も早いです。

回復期間は手術の方法や患者さんの状態によって異なりますが、通常は数週間から数ヶ月かかります。手術後は、リハビリテーションを行いながら、日常生活に戻っていきます。

それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあります。医師とよく相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。

まとめ

不整脈は心臓のリズム異常で、種類は洞不整脈、期外収縮、心房細動、心室頻拍、房室ブロックなどがあります。治療法は不整脈の種類や重症度によって異なり、薬物療法、カテーテルアブレーション、ペースメーカーやICDなどのデバイス治療、外科手術などがあります。

薬物療法は脈をゆっくりさせる薬やリズムを整える薬があり、副作用のリスクも考慮する必要があります。カテーテルアブレーションは心臓内の異常部分を焼灼する治療で、成功率が高いですが、全ての人に適応するわけではありません。ペースメーカーは脈が遅い場合に、ICDは危険な速い不整脈を感知して電気ショックを与える装置です。外科手術は他の治療法が効果ない場合に選択されます。

どの治療法もメリット・デメリットがあり、生活習慣の改善(減塩、禁煙、適度な運動、睡眠、ストレス軽減)も重要です。医師と相談し、自身の状態に最適な治療法を選択することが大切です。

脈が飛ぶ、安定しないなど不整脈で不安を感じたら、循環器専門医の当院にご相談ください。




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