肥満は、見た目の問題にとどまらず、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高める深刻な健康問題です。日本では成人の約3人に1人が肥満に該当すると言われており、その数は年々増加傾向にあります。
当院の肥満外来では、患者さん一人ひとりの状態に合わせた食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせた治療を提供しています。この記事では、当院で処方している肥満治療薬(リベルサスやオゼンピック、マンジャロ、ルセフィ)について、それぞれ異なる特徴や効果を解説します。
肥満でお悩みの方、健康診断で肥満を指摘された方は、当院の肥満外来にご相談ください。
肥満外来で処方される主な薬の種類は以下のとおりです。
リベルサスとオゼンピックは体内のGLP-1ホルモンと同じ働きをする薬です。 通常、GLP-1は食後に腸から分泌され、脳に満腹感を伝えます。これらの薬はGLP-1受容体に直接作用し、食欲を抑制して体重減少を促進します。
リベルサスは錠剤タイプで1日1回の内服、オゼンピックは週1回の自己注射タイプです。投与頻度が少ないオゼンピックは、より高い体重減少効果があります。服用の手軽さを求める方にはリベルサス、より強い効果を求める方にはオゼンピックが向いています。
マンジャロは1回の注射で2つの満腹ホルモンの働きを同時に得られる体重減少薬です。 体内に自然に存在するGLP-1とGIPという2種類のホルモンに作用します。GLP-1は脳に満腹感の信号を送る役割を持ち、GIPは食後に分泌されてインスリン分泌を促進します。
この2つのホルモン作用により、胃腸の動きを自然に調節して満腹感を持続させ、より強力な食欲抑制と体重減少効果が期待できます。週1回の自己注射で済むため、毎日の服薬管理が不要で、より高い体重減少効果を求める方に適しています。
ルセフィは、尿に糖を排出することで血糖値を下げる働きを持つSGLT2阻害薬です。SGLT2とは、腎臓で糖を再吸収するために必要なタンパク質の一種です。通常、腎臓は血液中の糖を再吸収しますが、ルセフィは再吸収を抑え、糖を尿として排出させます。
食欲を抑える薬ではなく、体外に糖を出すことで体重減少を促す仕組みが特徴の内服薬です。
以下の肥満治療薬の効果と違いについて解説します。
前提として、費用はすべて自己負担となりますのでご注意ください。
リベルサスは体内に存在するGLP-1ホルモンと同様に働き、胃腸の動きを制御して満腹感を持続させる薬です。少量の食事でも満足できるようになり、無理なく摂取カロリーを減らせる点が特徴です。服用開始から1〜3か月程度で体重減少効果が現れ始めます。
主な副作用は吐き気や胸やけ、下痢などの胃腸障害です。胃腸障害は服用を継続することで徐々に緩和していくことが多く、一般的には問題なく服用できる方がほとんどです。リベルサスの価格は用量によって異なっており、1か月あたりの目安は以下のとおりです。
治療初期は低用量から開始し、効果を見ながら徐々に増量するため、治療期間によって費用は変動します。
リベルサスの効果や副作用、注意点などを以下の記事でより詳しく解説しています。
>>リベルサスとは?効果や副作用、服用方法と注意点について解説
オゼンピックはGLP-1受容体作動薬で、胃腸の動きを制御して満腹感を持続させます。リベルサスが内服薬であるのに対し、オゼンピックは週1回の自己注射薬です。体重減少効果は高く、半年から1年で平均5〜6キロの体重減少が報告されています。
主な副作用は食欲減退や吐き気、下痢、便秘、嘔吐などの消化器症状です。注射を継続すると、消化器症状は徐々に緩和することが多く、ほとんどの方は問題なく使用できます。
まれに重篤な副作用として、低血糖や急性膵炎、胆嚢炎・胆管炎などが報告されています。重篤な副作用が現れた場合は、すぐに使用を中止して医師に相談する必要があります。オゼンピックは1本30,000円で、投与量によって使用期間が変わります。
初めは低用量から開始し、その後効果に応じて増量することがあります。1本購入すると注射針と消毒綿が8個ずつセットになっています。
マンジャロは、GLP-1受容体に加え、GIP受容体にも作用する2種類のホルモンの効果を持つ薬です。胃腸の動きを制御して満腹感を持続させ、少量の食事でも満足感を得られます。週1回の自己注射薬で、リベルサスやオゼンピックよりも高い体重減少効果が報告されています。針の装着や用量設定が不要なペン型で使い切りタイプのため、使い勝手が良いのも特徴です。
主な副作用は食欲減退や吐き気、下痢、便秘、嘔吐などの消化器症状です。注射を継続するにつれて症状が緩和することが多く、ほとんどの方は問題なく使用できます。
まれに重篤な副作用として、低血糖(お腹がすく、冷汗、手足の震えなど)、急性膵炎(激しい上腹部痛、背中の痛みなど)、胆嚢炎・胆管炎(発熱、右上腹部痛、黄疸など)が報告されています。これらの症状が現れた場合は使用を中止し、医師に相談してください。
マンジャロは、以下のとおり用量によって価格が異なります。
効果に応じて段階的に用量の調整が可能で、初めは低用量から開始します。
ルセフィは、SGLT2阻害薬に分類される薬で、尿に糖を排出することで血糖値を下げる働きがあります。他の肥満治療薬とは異なるメカニズムで、腎臓での糖の再吸収を抑制して尿中に排出させます。個々の体質や体重などにもよりますが、平均すると1日あたり約400kcalを尿糖として排出します。
ルセフィ2.5mgは半年で平均2〜3キロの体重減少が報告されており、GLP-1受容体作動薬ほどではありませんが、安定した効果が期待できます。ルセフィの主な副作用は、低血糖や脱水症状、ケトアシドーシス(嘔気、腹痛、口渇、倦怠感、意識障害)、尿路感染症などです。
ルセフィの価格も用量によって異なります。
1日1回の内服薬で、食前・食中・食後のいつ服用しても問題ありません。通常は1日3食の場合、朝に服用することでルセフィの糖の排出作用をより効果的に得ることができます。GLP-1受容体作動薬と比較すると安価で、費用面で選択肢になる場合があります。
肥満治療薬の服用に関する注意点は、以下のとおりです。
肥満治療薬の効果を最大限に引き出すためには、決められた服用方法を正しく守ることが重要です。医師や薬剤師の説明をよく聞き、指示通りに服用するようにしてください。
GLP-1受容体作動薬のオゼンピックは週1回の自己注射です。週に1回だけの投与で済むため、日々の服薬管理の負担が少なく続けやすいのが特徴です。注射は専用のペン型注入器を使用し、0.25mgから開始して徐々に0.5mgへと増量していきます。未開封の製剤は冷蔵保存が必要ですが、開封後は室温保存も可能です。
SGLT2阻害薬のルセフィは1日1回の内服薬で、2.5mgもしくは5mgを服用します。食前・食中・食後のいつでも服用可能ですが、1日3食の場合は朝に服用することで糖質カット効果を最大限に活かせます。
どの肥満治療薬も、食生活や運動療法と組み合わせることで、より効果的に体重を減らすことができます。自身の生活リズムに合わせた薬を選択し、無理なく治療を継続することが大切です。
肥満治療薬には、吐き気や便秘、下痢といった副作用が現れる可能性があります。副作用の程度や種類は薬によって異なり、必ずしもすべての人に現れるわけではありません。薬を服用している最中に気になる症状が現れたら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。自己判断で服用を中止せず、適切な対応をすることが重要です。
肥満治療薬は、あくまで生活習慣の改善をサポートするものです。バランスの良い食生活を送り、適度な運動を続けることが、健康的に痩せるために不可欠です。薬だけに頼るのではなく、毎日の生活習慣を見直すことが、長期的な健康維持につながります。
野菜や果物を積極的に摂り、脂質・糖質の多い食事は控えましょう。揚げ物や甘いお菓子の食べすぎは、カロリー過多になりがちです。脂質の多い食事は、心血管疾患のリスクも高めます。
ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる運動を習慣づけましょう。1日30分のウォーキングでも、毎日続けることで大きな効果が期待できます。
当院では、食事栄養指導も行っています。気になる方は以下の記事をご確認ください。
>>大石内科循環器科医院の食事・栄養指導はこちら
肥満治療には、漢方薬を併用することもあります。漢方薬は、体質や症状に合わせて処方され、食欲を抑えたり、代謝を促進したりする効果が期待できます。便秘がちな方には、大柴胡湯(ダイサイコトウ)や防風通聖散(ボウフウツウショウサン)といった漢方薬が用いられることがあります。
漢方薬は、便通の改善が代謝向上に寄与し、肥満の改善に役立つ可能性があります。すべての漢方薬が肥満治療に効果的とは限りません。漢方薬にも副作用のリスクは存在しており、肥満治療薬との飲み合わせにも注意が必要です。自己判断で漢方薬を服用せず、医師や漢方医に相談し、適切な処方を受けることが大切です。
肥満は見た目だけでなく、さまざまな病気のリスクを高めるため、早めの対策が大切です。肥満治療薬はあくまで補助的なものであり、生活習慣の改善と組み合わせることで効果を発揮します。ライフスタイルや目標に合わせて最適な薬を選ぶことが重要です。
薬物治療では、リベルサス(内服薬)、オゼンピック・マンジャロ(週1回自己注射)、ルセフィ(尿糖排出)など、それぞれ特徴の異なる薬を処方しています。ライフスタイルや目標に合わせて最適な薬を選ぶことが重要です。
当院の肥満外来では、個々の状態に合わせた食事・運動・薬物療法を組み合わせた治療を提供しています。薬物治療では、リベルサス(内服薬)、オゼンピック・マンジャロ(週1回自己注射)、ルセフィ(尿糖排出)など、それぞれ特徴の異なる薬を処方しています。
専門の医師が栄養指導や運動プログラム、必要に応じて治療薬の処方を通じて、個別のケアプランを提供します。肥満治療薬が気になる方や肥満にお悩みの方は、お気軽に当院にご相談ください。
大石内科循環器科医院
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