大石内科循環器科医院

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骨粗鬆症の薬は危険?副作用と正しい服用方法を詳しく解説

2025.07.08 骨粗鬆症

骨粗鬆症の治療には薬物療法が有効ですが「薬は怖い」、「副作用が心配」といった声も耳にします。この記事では、骨粗鬆症の薬の種類や効果、そして気になる副作用や正しい服用方法について詳しく解説します。骨粗鬆症の薬について正しく理解し、治療への不安を解消しましょう。

骨粗鬆症は早期発見・早期治療が大切です。大石内科循環器科医院では、骨密度検査を実施していますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。

骨粗鬆症の薬の種類と特徴

骨粗鬆症は、骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症の治療には、食事や運動などの生活習慣の改善に加えて、薬物療法が重要な役割を果たします。骨粗鬆症の薬は以下に示すような薬があり、それぞれ特徴が異なります。

  • ビスフォスフォネート系薬剤(アレンドロン酸・リセドロン酸など)
  • 副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)
  • 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(ラロキシフェン)
  • RANKL阻害薬(デノスマブ)

ビスホスフォネート系薬剤(アレンドロン酸・リセドロン酸など)

ビスホスフォネート系薬剤は、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑えることで、骨がもろくなるのを防ぎます。骨粗鬆症の治療薬として、世界中で最も多く使用されている薬です。飲み薬で、毎日服用するタイプと週に1回服用するタイプがあり、生活スタイルに合わせて選ぶことができます。

ビスホスフォネート系薬剤は、高齢者の骨粗鬆症治療において第一選択薬として広く用いられています。長年の臨床経験と研究にもとづいた確かなエビデンスがあるためです。

服用にあたっては、いくつか注意点があります。食道に刺激を与えることがあるため、服用後30分は横にならないようにしてください。まれに顎骨壊死という副作用が報告されています。顎骨壊死は、年間10万人の使用者あたり1~90件程度と報告されています。

抜歯などの侵襲的な歯科処置を受けた後に発生するリスクが高まるため、服用中は歯科医師に相談することが重要です。副作用は、必ずしもすべての方に起こるものではありません。気になる症状が現れた場合は、担当医に相談してください。

副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)

副甲状腺ホルモン製剤は、骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを活性化し、新しい骨の形成を促進する薬です。骨密度を高める効果が高く、他の薬で効果が不十分な場合に用いられることがあります。注射薬で、毎日自分で注射する必要があります。

副甲状腺ホルモン製剤は、骨を新たに作り出すという点で、他の骨粗鬆症治療薬とは異なるメカニズムで作用します。しかし、使用期間は24か月までに制限されており、骨に腫瘍がある人や、骨の周りに放射線治療を受けたことがある人は使用できません

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(ラロキシフェン)

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は、飲み薬です。女性ホルモンであるエストロゲン受容体に作用し、骨を守る効果を高めます。骨密度を高め、骨折のリスクを減らすだけでなく、乳がんの発症リスクを減らす効果も期待できます。

閉経後の女性は、エストロゲンの減少により骨密度が低下しやすくなります。SERMは、骨に対してはエストロゲンと似た働きをする一方、乳房や子宮などへの作用は抑えるため、ホルモン補充療法に代わる選択肢として注目されています。ただし、血栓症(血のかたまりができる病気)のリスクがわずかに上昇する可能性があるため、注意が必要です。

RANKL阻害薬(デノスマブ)

RANKL阻害薬は、骨を壊す細胞(破骨細胞)の形成に関わるRANKLという物質の働きを阻害することで、骨吸収を抑える薬です。注射薬で、6か月に1回、病院で注射します。骨密度を高め、骨折のリスクを減らす効果が高く、ビスホスフォネート系薬剤で効果が不十分な場合や副作用が出た場合に用いられることがあります。

RANKL阻害薬は、比較的新しい薬ですが、骨粗鬆症治療において重要な役割を果たしています。長期の治療継続が必要な骨粗鬆症において、半年に1回の注射で済むことは、患者さんの負担軽減につながります

しかし、まれに顎骨壊死の副作用が報告されています。ビスホスフォネート系薬剤と同様に、侵襲的な歯科処置との関連性が指摘されているため、服用中は歯科医師への相談が重要です。カルシウムの値が下がる副作用があるため、カルシウム製剤と併用する必要があります。

副作用は、必ずしもすべての方に起こるものではありません。気になる症状が現れた場合は、担当医に相談してください。骨粗鬆症の治療は医師とよく相談し、自分に合った薬を選び、正しく服用することが大切です。治療を始める際には、薬の効果だけでなく、副作用や服用方法、費用についても確認し、納得したうえで治療を開始しましょう。

以下の記事では、骨粗鬆症を放置してはいけない理由や初期症状、治療法などを網羅的に解説していますので、併せてご確認ください。
>>骨粗鬆症について

骨粗鬆症の薬の副作用とリスク

副作用は薬の種類によって異なり、すべての人に起こるわけではありません。多くは軽微な症状で自然と治まることもありますが、中には重篤な副作用につながるケースもあります。代表的な副作用には以下のようなものがあります。

  • 顎骨壊死
  • 非定型方大腿骨骨折
  • 食道炎
  • 消化器症状(吐き気・便秘など)
  • 皮膚症状(発疹・かゆみなど)

顎骨壊死

顎骨壊死は、あごの骨が壊死(えし)してしまう病気です。骨粗鬆症の治療薬の中でも、ビスホスフォネート系薬剤やRANKL阻害薬を使用している場合に起こる可能性があります。発生頻度は稀で、年間10万人の使用者あたり1~90件程度と報告されています。

抜歯などの侵襲的な歯科治療を受けた後に発症リスクが高まります。抜歯だけでなく、歯周病治療やインプラントなども顎骨壊死のリスクを高める可能性があります。

  • 歯茎の腫れや痛み
  • 膿が出る
  • あごの骨が露出する

上記のような症状が現れたら、すぐに歯科医師や主治医に相談しましょう。顎骨壊死は早期発見・早期治療が重要です。

骨粗鬆症の薬を服用している方は、治療開始前に必ず歯科検診を受け、虫歯や歯周病などの治療を済ませておくことが大切です。服用中は定期的な歯科検診を受け、医師や歯科医師と治療についてよく相談することが重要です。

非定型大腿骨骨折

非定型大腿骨骨折とは、太ももの骨(大腿骨)に起こる特殊な骨折です。ビスホスフォネート系薬剤を長期間(数年以上)服用している人にまれに起こることがあります。通常の骨折は、転倒など強い衝撃が加わった際に起こりますが、非定型大腿骨骨折は、わずかな外力や、何もしていない状態でも起こることがあります

太ももや股関節の痛みや違和感などが初期症状として現れるため、異変を感じたらすぐに医師に相談することが大切です。レントゲン検査で骨折の有無を確認し、適切な治療を受ける必要があります。日常生活で「いつもと何か違う」と感じたら、放置せずに医療機関を受診しましょう。

食道炎

食道炎は、食道に炎症が起こる病気です。ビスホスフォネート系薬剤を服用する際に、正しい方法で飲まなかった場合に起こることがあります。薬を服用した後に以下のような症状が現れたら、医師や薬剤師に相談しましょう。

  • 胸やけ
  • 胸の痛み
  • 飲み込みにくい

食道炎を予防するためには、薬を多めの水で服用し、服用後30分は横にならないようにすることが大切です。具体的には、コップ1杯(約180~200ml)の水で服用し、その後30分間は横にならないようにしましょう。

消化器症状(吐き気・便秘など)

骨粗鬆症の治療薬の中には、吐き気や便秘などの消化器症状を引き起こすものがあります。ビスホスフォネート系薬剤やビタミンD製剤などでみられることがあります。多くの場合は一時的なもので、体が薬に慣れてくると軽快していきます。症状が続く場合やひどい場合は、医師や薬剤師に相談し、対処法を検討する必要があります。

便秘の場合は、食物繊維を多く摂ったり、適度な運動をしたり、水分を十分に摂取したりなどの生活習慣の改善で、症状が和らぐことがあります

皮膚症状(発疹・かゆみなど)

副甲状腺ホルモン製剤などを使用した場合、皮膚に発疹やかゆみなどの症状が現れることがあります。アレルギー反応である可能性もあるため、症状が現れたらすぐに医師に相談することが重要です。適切な処置を受けることで、症状を改善し、重症化を防ぐことができます。

骨粗鬆症の治療は長期にわたるため、治療を継続していくうえで、薬の副作用について理解しておくことは重要です。副作用は必ずしも起こるわけではありませんが、副作用と思われる症状が現れた場合は自己判断せずに、医師や薬剤師に相談しましょう。

骨粗鬆症の薬の正しい服用方法と注意点

骨粗鬆症の治療薬は、骨密度を維持・向上させ、骨折のリスクを低減するために重要な役割を果たします。薬の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるために以下の点について留意する必要があります。

  • 服用時間と方法(食前・食後や水での服用など)
  • 薬の飲み合わせ
  • 服用期間と休薬
  • 副作用が出た場合の対処法

服用時間と方法(食前・食後や水での服用など)

骨粗鬆症の薬は、種類によって最適な服用時間や方法が異なります。薬の吸収率や副作用に影響を与える可能性があるため正しく把握しておくことが大切です。

ビスホスフォネート系薬剤(アレンドロン酸、リセドロン酸など)は、食道への刺激を避けるため、朝起きてすぐ、コップ1杯(約180ml以上)の水で服用し、その後30分は横にならないようにします。ミネラルウォーターを使用すると薬の吸収が妨げられる可能性があるので、水道水で服用するようにしてください

ビタミンK2製剤は、食後に服用することで吸収率が高まります。食事と一緒に摂ることで、体への負担も軽減されます。服用のタイミングや方法を間違えると、薬の効果が十分に発揮されなかったり、副作用のリスクが高まったりする可能性があります。

薬を処方された際には、医師や薬剤師から具体的な服用方法の説明を受け、必ず指示を守って服用するようにしましょう。

薬の飲み合わせ

骨粗鬆症の薬の中には、他の薬と併用することで効果が弱まったり、副作用が強まったりするものがあります。ビタミンK2製剤と血液をサラサラにする薬であるワルファリンを一緒に服用すると、ワルファリンの効果が弱まり、血栓ができるリスクが高まる可能性があります

複数の医療機関を受診している場合や、市販薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に相談し、飲み合わせを確認するようにしましょう。お薬手帳を活用し、現在服用している薬を医療機関に伝えることで、安全な薬物療法を受けられます。

服用期間と休薬

骨粗鬆症の薬は、長期間にわたって服用することが一般的です。薬の種類によっては、長期服用によって特定の副作用のリスクが増加する可能性があります。

ビスホスフォネート系薬剤は、長期服用により顎骨壊死や非定型大腿骨骨折のリスクが上昇することが報告されています。そのため、数年間服用した後、一定期間休薬するケースもあります。休薬期間中は、骨密度や骨折リスクの変化を注意深く観察し、必要に応じて薬の再開を検討します。

副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチド)は、骨形成を促進する効果が高い薬ですが、使用期間は24か月までに制限されています。長期間使用した場合の安全性に関するデータが限られているためです。服用期間や休薬については、一人ひとりの病状やリスクに応じて医師が判断します。疑問や不安がある場合は、遠慮なく医師に相談しましょう。

副作用が出た場合の対処法

骨粗鬆症の薬は、多くの場合安全に服用できますが、副作用が現れる可能性もあります。代表的な副作用は以下のとおりです。

  • 顎骨壊死
  • 非定型大腿骨骨折
  • 食道炎
  • 吐き気
  • 便秘
  • 発疹
  • かゆみ
  • 血栓症
  • 高カルシウム血症

副作用の症状や重症度は人それぞれです。軽微な副作用であれば、経過観察のみで問題ない場合もありますが、重篤な副作用の場合は、薬の変更や休薬が必要になることもあります。薬を服用している間に体に異変を感じたら、自己判断で服用を中止せず、すぐに医師や薬剤師に相談しましょう。

ビスホスフォネート系薬剤やRANKL阻害薬を服用している場合は、定期的な歯科検診を受けることも重要です。顎骨壊死の早期発見・早期治療につながります。安心して治療を続けるためには、薬の副作用について正しく理解し、医師と積極的にコミュニケーションを取りましょう。

骨粗鬆症の治療薬の中には、腎機能に影響を与えるものもあります。特に腎機能が低下している場合、カルシウムやリンの代謝バランスが乱れ、骨密度の低下を引き起こす可能性があるため注意が必要です。腎機能を把握するために重要な指標であるクレアチニンについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
>>高齢者のクレアチニンが基準値より高いのは危険?原因やリスク、合併症について

まとめ

骨粗鬆症の薬は、種類によって効果や副作用、服用方法が異なります。それぞれの薬の特徴を理解し、ご自身の状態に合った薬を選ぶことが大切です。薬の効果を最大限に活かし、安全に治療を続けるためには、医師や薬剤師とよく相談し、指示された服用方法を守りましょう

定期的な検査や診察を受けることで、副作用の早期発見・早期治療にもつながります。薬について疑問や不安があれば、医療専門家に相談してください。

参考文献

大石内科循環器科医院
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