大石内科循環器科医院

静岡市葵区鷹匠2-6-1 新静岡駅より 徒歩3分 駐車場あり

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脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症(高脂血症)とは

脂質異常症は生活習慣病のひとつで、血液中の脂質(コレステロール・中性脂肪など)の値が基準値を外れて異常な状態になる病気です。

以前は「高脂血症」「高コレステロール血症」と呼ばれていましたが、コレステロール値が高い場合だけでなく、HDL(善玉コレステロール)値が低い場合も問題であるため、2007年に名称が変更されました。

脂質異常症の総患者数は約400万人にも上ります*1。発症しても痛みなどの自覚症状が現れないことから、治療の必要性を感じない人が多いのですが、放置すると日本人の死因の1/3を占める病気(心筋梗塞・脳卒中など)のもととなる「動脈硬化」を引き起こします。動脈硬化は一旦進行すると、健康な状態に戻す治療法が今のところないため、脂質異常症は「早期発見・早期治療」が重要となります。

脂質異常症は食事療法・運動療法を中心に薬物療法を併用した適切な治療を行うことで、改善できる病気です。当院では、食事・栄養指導、運動教室なども行っています。

健康診断・人間ドックで中性脂肪やコレステロール値の異常が見つかった方、ご家族に脂質異常症の方がいて心配な方は、お気軽に当院までご相談ください。

(参考)脂質異常症の総患者数(P.19)|令和2年患者調査 厚生労働省

脂質異常症になりやすい人

脂質異常症の約8割は、生活習慣の乱れによって引き起こされています。
以下の項目で思い当てはまるものが多い程、脂質異常症を発症するリスクが高まります。

  • 甘いもの・脂っぽい食べ物が好き
  • 肉類・卵・チーズ・アイスクリーム・スナック菓子など動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品をよく食べる
  • 日頃から車移動が多く、運動不足
  • 外食が多い
  • 肥満/太っている
  • アルコールをよく飲む
  • 日頃からストレスを感じることが多い/ストレスが溜まりやすい
  • 睡眠不足
  • 喫煙者
  • 家族に脂質異常症(高コレステロール血症)の人がいる

脂質とは?

脂質は私たちにとって欠かすことのできない成分です。脂質は、主に以下の3つに分けられます。

中性脂肪(トリグリセリド)

体脂肪のほとんどを占めるのが、中性脂肪です。脂肪組織に蓄えられており、身体を動かすエネルギー源としての役割のほか、皮下脂肪として体温の保持、身体を衝撃から守る働きもしています。

コレステロール

「コレステロール=悪いもの」というイメージがあるかもしれませんが、「細胞の膜を作る」「副腎皮質ホルモンや脂肪の消化・吸収を助ける胆汁酸の材料になる」など、体に欠かすことのできない役割をしています。コレステロールは、さらに2種類に分けられます。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)

肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きをしています。しかし、余ると身体にコレステロールを貯める作用があり、増えすぎると動脈硬化を引き起こす原因になることから、「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。

HDLコレステロール(善玉コレステロール)

余分なコレステロールを全身から回収して、肝臓へ戻す働きをしています。余分なコレステロールを回収することから「善玉コレステロール」とも呼ばれます。

コレステロールの役割

脂質異常症の種類と診断基準

血液中の脂質の約7~8割は糖や脂肪を使って肝臓で合成され、残りは食事から取り込まれることで、一定量に保たれるよう調節されています。しかし、脂質のバランスが崩れ、基準値から外れてしまうと「脂質異常症」となります。

脂質異常症の種類と診断基準

脂質異常症は血液検査によって診断され、異常値の内容から以下の病気に分けられます。

脂質異常症の診断基準

*2「境界域」の場合、高リスク要因の有無により治療の検討が必要となります。

*3「空腹時」とは絶食10時間以上。空腹時と確認できないときは「随時採血」の基準を使用する。(2022年追加)

Non-HDLコレステロールとは?

新たに追加された診断基準として、「Non-HDLコレステロール」があります。

Non-HDLコレステロールとは、総コレステロールから善玉(HDL)コレステロールを除いたもので、「総悪玉コレステロール」の値を示します。

近年、注目されている理由として、動脈硬化を引き起こすLDLコレステロールとは「別の悪玉」の存在があります。この別の悪玉は「小型化LDLコレステロール」のことで、「超悪玉コレステロール」とも呼ばれます。血中の中性脂肪が多いとき、中性脂肪はLDLコレステロールと結びつくと、コレステロールの少ない「小さいサイズのLDLコレステロール」に変化します。小型化により、通常のLDLコレステロールと比べて血管の隙間から入りやすく、肝臓に吸収されにくいので長く留まり、酸化する特徴を持ちます。血中に中性脂肪が多い程、小型化LDLコレステロールも増加して、さらに動脈硬化を悪化させる原因となります。

脂質異常症の症状

脂質異常症を発症しても多くの場合は無症状です。しかし、体内では血管に少しずつ脂肪(悪玉コレステロール)が沈着していきます。脂肪がドロドロ状のプラーク(粥状物質)となって次第に血管壁が狭くなると、血流が妨げられることで動脈硬化が進行します。
その結果、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患や、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)といった危険な合併症の発作リスクが高くなります。

脂質異常症の原因

脂質異常症には、体質・遺伝子異常によって引き起こされる「原発性脂質異常症」と、生活習慣の乱れなどによって引き起こされる「続発性脂質異常症」の2種類があります。

続発性脂質異常症

環境的要因や病気・薬剤といった二次的原因によって引き起こされる、脂質異常です。脂質異常症の多くは「続発性」であり、原因となっている病気や薬剤を取り除いたり、生活習慣の見直しをしたりすることで、脂質異常の改善が期待できます。

生活習慣の乱れ

原因の約8割は生活習慣の乱れとされます。主な要因には次のようなものがあります。

  • 食べ過ぎ(特に高カロリー・高脂肪の食事)
    脂肪の多い肉類・卵、乳脂肪分の多いバター・チーズ、インスタント麺、果物、甘いお菓子など
  • 運動不足
  • 肥満
  • 喫煙アルコールの飲みすぎ
  • ストレス

疾患

  • 甲状腺機能低下症
  • 肝臓病
  • 糖尿病肥満(特に内臓脂肪型肥満)クッシング症候群
  • ネフローゼ症候群・慢性腎不全などの腎疾患

薬剤

  • テロイド薬
  • 利尿剤
  • 経口避妊薬など

原発性脂質異常症

体質や遺伝子異常など遺伝的要因によって起こる脂質異常です。

遺伝的要因が大きく、若いうちから発症しやすいとされる「家族性高コレステロール血症」が有名です。ほかに、環境要因や生活習慣などが発症に影響を及ぼし、成人以降に発症する病型(家族性Ⅲ型高脂血症)など、いくつかの病型に分かれますが、全ての病型を合わせて発症率100人に1人~2人程度です。

脂質異常症の検査

脂質異常症の多くは無症状なので自身では気づきにくく、健康診断や人間ドック、他の病気の検査などで発見されることが多い病気となります。
※血液検査の結果をお持ちの場合には、持参の上、ご受診ください。

当院では、診療ガイドラインに沿って、血液検査と問診を柱に脂質異常症(高脂血症)の診断を行います。

問診

自覚症状、既往症(特に心疾患・脳卒中・生活習慣病)、体重変化、喫煙・飲酒・運動といった生活習慣、家族歴(ご家族に脂質異常症の方がいるか)など詳しくお伺いします。

血液検査

採血検査は必須となります。
血液中の「HDL-コレステロール」「LDL-コレステロール」「中性脂肪」「non-HDLコレステロール」の値を調べます。
※血液検査の数値は、受ける前の数日間の生活や健康状態によって変化します。
健診・人間ドックで脂質異常を指摘された方でも、脂質異常が突発的なものか日常的なものかどうかを確認するため、採血による血液検査を再度行います。

脂質異常症の合併症など他の疾患の発症が疑われる場合には、必要に応じて以下のような検査を組み合わせて行うことがあります。

  • 頸動脈エコー(頸動脈超音波検査)
  • 甲状腺機能検査(血液検査)
  • 肝機能検査(血液検査)
  • 腹部エコー(腹部超音波検査)

脂質異常症の治療

脂質異常症の治療は、生活習慣(食事・運動療法)の見直しを中心として、必要に応じて薬物療法を行い、数値の正常化を目指します。
なお、脂質異常を引き起こす原因となる疾患がある場合には疾患の治療を優先して行い、原因となる薬剤があれば変更・中止などの対処をします。
当院では診療ガイドラインに沿って、患者様の将来的な動脈硬化性疾患リスクに合わせた「脂質管理目標値」を定めています。また、薬物療法だけでなく、食事・運動・体重管理などを含めた総合的な治療を行っています。不安や疑問点などありましたら、お気軽にご相談ください。

リスク区分別脂質管理目標値

※家族性高コレステロール血症(FH)・急性冠症候群・糖尿病・冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞で高リスク疾患を合併する場合は、LDHコレステロールを70mg/dL未満に管理する

生活習慣の見直し①食事療法

脂質異常症の食事療法では、「カロリーの過剰摂取を防ぐ」「栄養バランスの良い食事を摂る」ことがポイントです。

特に肥満がある場合は、減量することで脂質の数値が改善するだけでなく、高血圧・糖尿病・脂肪肝など他の疾患の改善も期待できます。長く続けていくことが大切なので、普段の生活から、「適正体重の維持」を心がけましょう。

脂質異常のタイプ別の食事療法のポイントは、次の通りです。

中性脂肪が高いケース

「もう少し食べたい」と感じる「腹八分目」でやめておく

食べ過ぎた糖質・たんぱく質からも中性脂肪は作られます。「お腹いっぱい!」と満腹になるまで食べるのではなく、「もう少し食べたい」と感じる「腹八分目」の状態で食事を終えるのが望ましいです。

野菜を多めに和食中心の食事にする

ニンジン、ゴボウ、大根などの根菜類、イモ類、キノコ類、海藻類、こんにゃく、納豆には食物繊維が豊富に含まれており、糖質の吸収を緩やかにするので、中性脂肪の上昇を抑えます。また、主食には玄米や胚芽米、麦飯、全粒粉のパン、蕎麦がおすすめです。

間食・夜遅くに食べないように注意する

砂糖・果物・ジュースなどの糖類を含む間食や寝る前の夜食では、中性脂肪が上がりやすくなるので、避けましょう。

アルコールは控えめに

アルコールは糖質が多いので、少量でも中性脂肪が上がります。肝臓に溜まると、脂肪肝にも繋がります。さらに、アルコールには食欲増進作用があり、おつまみを食べすぎる要因となるので、注意しましょう。
目安:1日あたり日本酒1合、ビールであれば500ml、ワインなら180ml程度です。

LDLコレステロールが高いケース

脂質の多い食品は控える

肉類の中でも脂身の多いバラ肉・ひき肉、鶏肉の皮、ラード、バター、生クリームなど動物性脂肪の多い食べ物は控えましょう。
肉類よりも魚料理、特にEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)の多いイワシ・サバ・アジなどの青魚には多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、コレステロールを下げる作用、悪玉を増やさずに動脈硬化を防ぐ働きがあるため、積極的に摂りたい食材です。
また、マーガリン・ショートニングなどトランス脂肪酸は動脈硬化を促進させる恐れがあるので、揚げ物類やスナック菓子、クッキー類といった市販の洋菓子の食べ過ぎには要注意です。

コレステロールを上げる食品・下げる食品を意識して食べる

脂っこいもの、卵類、内臓類、果物は、食べる量・頻度を控えめにしましょう。
コレステロール含有量の例:親子丼380mg、オムレツ320mg、レバニラ炒め150mg、ショートケーキ90mgなど

コレステロールを上げる・下げる食品イメージ

HDLコレステロールが低いケース

トランス脂肪酸の摂り過ぎを避ける

マーガリンやショートニング、それらを使った洋菓子・パンなどは、HDLコレステロールを下げ、LDLコレステロールを上げるとされています。控えめにしましょう。

栄養バランスの取れた食事を摂る

極端に糖質制限をするのではなく、栄養バランスを考えて、食事を摂るようにしましょう。豆腐・納豆など植物性たんぱく質にはコレステロールの吸収を抑える働きがあります。また、オリーブ油・菜種油、青魚を積極的に摂ることもオススメです。

大石内科循環器科医院の食事・栄養指導についてはこちら

生活習慣の見直し②運動療法

脂質異常症の治療では、ウォーキング、早歩き、水泳・水中歩行、ラジオ体操などの有酸素運動がおすすめです。血中の過剰な脂質を減らして、善玉コレステロール(HDL)を増やします。
普段運動していない方は、「できるだけ歩く」「階段を使う」「自転車で買い物に行く」「ラジオ体操」「バランス運動」など、日常生活の中で身体活動量を増やすことから始めましょう。運動量は、1日の合計で、できれば30分以上、週3回以上、ややキツイと感じて汗ばむ程度の強さの運動が目安です。なお、運動前後には準備・整理運動を行うことが大切です。
※心臓病・糖尿病・高血圧などの持病がある方は医師に運動の可否、適切な運動量を確認してください。

大石内科循環器科医院の運動教室についてはこちら

薬物治療

生活習慣の見直しだけでは、脂質の管理目標値に至らないときや、狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患をお持ちで動脈硬化による合併症の発症リスクが高い場合には、薬物療法を併用します。
※あくまでも薬物療法は補助的治療であり、生活習慣の改善は継続して取り組む必要があります。

脂質異常症の治療薬は大きく分けて、以下のような3つに分けられており、患者様の脂質異常症の病態に合わせて、組み合わせて使用します。

コレステロールを下げるお薬

  • HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤) 
    ※第一選択薬(最初に選択する薬)
  • 陰イオン交換樹脂製剤
  • プロブコール
  • 小腸コレステロール輸送体阻害剤
  • PCSK9阻害薬(2016年登場の注射薬)

コレステロールと中性脂肪を下げるお薬

  • ニコチン酸類

中性脂肪を下げるお薬

  • フィブラート系薬剤
    ※スタチン系製剤や抗血栓薬(ワーファリン)、糖尿病薬との併用には注意が必要です。これらの薬を服用している場合には、必ず医師に申告してください。
  • EPA製剤
    ※血液凝固薬(ワーファリン)などを服用中の方は併用すると出血しやすくなるので、注意が必要です。

薬物治療中に自己判断でお薬を中止したり減量したりすることは危険です。お薬の効き方や副作用など少しでも気になる時には、必ず医師までご相談ください。

よくあるご質問

①健康診断で脂質異常を指摘されたが、特に自覚症状はない。病院に行く必要がある?

医療機関の受診をおすすめします。脂質異常症自体の症状はありませんが、放置すると少しずつ動脈硬化が発症・進行します。
何か自覚症状が出てきたときには、既に病状が進行している可能性がある上、場合によっては、できる治療が限られてしまうこともあります。
そうならない為に早い段階から治療および動脈硬化性疾患などの合併症の発症予防に取り組むことが望ましいです。当院までお気軽にご来院ください。

② 痩せていれば脂質異常症にはならない?

いいえ、脂質異常症は痩せ型の方にも発症することがあります。痩せ型の方でも「遺伝的要因」がある場合や、外見上痩せているようにみえても「隠れ肥満」と呼ばれる、お腹に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満である場合には、注意が必要です。

③ 脂質異常症を予防するには、どうすれば?

脂質異常症では生活習慣が主な原因となっていることが多いため、以下のポイントに注意しましょう。

食べ過ぎを防いで、バランスの取れた食生活を心がける

三食きちんと食べて、「早食い」「まとめ食い」は避けましょう。脂っこいもの・甘いものなど摂り過ぎないようにして、食物繊維はしっかり摂ることをおすすめします。また、食事は就寝前2時間前には済ませておきましょう。

適正体重を目指す・維持する

肥満傾向がある場合には、適正体重を目標に減量しましょう。急激に減らすのではなく、1か月間で現在の体重の5%程度の減量から少しずつ始めるのが、成功の秘訣です。

日頃から運動をする

ウォーキング、軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を汗ばむ程度、30分以上続けることが目標です。これまで運動不足だった方は「自転車で買い物をする」「できるだけ階段を使う」といったような普段の生活の中でできることから、無理のない範囲で始めましょう。

④脂質異常症になったら薬を一生飲み続ける必要がある?

答えは「△」で、病気のコントロール次第です。
「なるべくなら、お薬を飲みたくない」と思われる方は多いでしょう。特に脂質異常症や糖尿病・高血圧などの生活習慣病では、「痛い」「苦しい」などの自覚症状がないので、服薬の必要性を感じにくいのも事実です。とはいえ、放置すると動脈硬化を促進させ、危険な合併症を引き起こすリスクが高まるので、脂質は基準値内に抑えておく必要があるのです。
生活習慣の改善だけで中性脂肪・コレステロールの数値が下がらない場合には、お薬を使う必要があります。ただし、お薬を使っても生活習慣を改善していかなければ、十分な効果が得られない場合が少なくありません。
一方、食事内容を見直して運動を続けることで脂質の数値が基準値内に収まり、良い状態をコントロールできれば、お薬を減らしたり中止したりできるケースもあります。

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