大石内科循環器科医院

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脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症は生活習慣病のひとつで、血液中の脂質(コレステロール・中性脂肪など)の値が基準値を外れて異常な状態になる病気です。以前は「高脂血症」「高コレステロール血症」と呼ばれていましたが、コレステロール値が高い場合だけでなく、HDL(善玉コレステロール)値が低い場合も問題であるため、2007年に名称が変更されました。

脂質異常症の総患者数は約400万人にも上ります*1。発症しても痛みなどの自覚症状が現れないことから、治療の必要性を感じない人が多いですが、放置すると日本人の死因の1/3を占める病気(心筋梗塞や脳卒中など)のもととなる「動脈硬化」を引き起こします。動脈硬化は一旦進行すると、健康な状態に戻す治療法が今のところないため、脂質異常症は「早期発見・早期治療」が重要となります。

この記事では、脂質異常症(高脂血症)とは何なのか、種類や原因、症状、治療法について解説します。健康診断・人間ドックで中性脂肪やコレステロール値の異常が見つかった方、ご家族に脂質異常症の方がいて心配な方は、お気軽に当院までご相談ください。

(参考)脂質異常症の総患者数(P.19)|令和2年患者調査 厚生労働省

脂質異常症とは脂質の摂取量が正常範囲を超えた状態

脂質異常症(高脂血症)とは、血液中の脂質、特に中性脂肪やコレステロールが正常範囲を超える状態を指します。脂質は体にとって欠かせない成分ですが、過剰になると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。脂質異常症には、悪玉コレステロール(LDL)が高い場合、中性脂肪が多い場合、善玉コレステロール(HDL)が少ない場合の3つのタイプがあります。自覚症状がないため、定期的な健康診断での発見が重要です。治療には、食事や運動など生活習慣の改善が有効です。

脂質異常症の種類と診断基準

血液中の脂質の約7~8割は糖や脂肪を使って肝臓で合成され、残りは食事から取り込まれることで、一定量に保たれるよう調節されています。しかし、脂質のバランスが崩れ、基準値から外れてしまうと「脂質異常症」となります。

脂質異常症は血液検査によって診断され、異常値の内容から以下の病気に分けられます。

脂質異常症の診断基準

*2「境界域」の場合、高リスク要因の有無により治療の検討が必要となります。

*3「空腹時」とは絶食10時間以上。空腹時と確認できないときは「随時採血」の基準を使用する。(2022年追加)

Non-HDLコレステロールとは総悪玉コレステロール

Non-HDLコレステロールとは、総コレステロールから善玉(HDL)コレステロールを除いたもので、「総悪玉コレステロール」の値を示します。「Non-HDLコレステロール」は、新たに追加された診断基準です。

近年、注目されている理由として、動脈硬化を引き起こすLDLコレステロールとは「別の悪玉」の存在があります。この別の悪玉は「小型化LDLコレステロール」のことで、「超悪玉コレステロール」とも呼ばれます。血中の中性脂肪が多いとき、中性脂肪はLDLコレステロールと結びつくと、コレステロールの少ない「小さいサイズのLDLコレステロール」に変化します。小型化により、通常のLDLコレステロールと比べて血管の隙間から入りやすく、肝臓に吸収されにくいので長く留まり、酸化する特徴を持ちます。血中に中性脂肪が多い程、小型化LDLコレステロールも増加して、さらに動脈硬化を悪化させる原因となります。

脂質異常症の原因|8割は生活習慣の乱れ

脂質異常症には、体質・遺伝子異常によって引き起こされる「原発性脂質異常症」と、生活習慣の乱れなどによって引き起こされる「続発性脂質異常症」の2種類があります。

続発性脂質異常症

環境的要因や病気・薬剤などの二次的原因によって引き起こされる、脂質異常です。脂質異常症の多くは「続発性」であり、原因となっている病気や薬剤を取り除いたり、生活習慣の見直したりすることで、脂質異常の改善が期待できます。

原因の約8割は生活習慣の乱れとされます。主な要因には次のようなものがあります。

  • 食べすぎ(特に高カロリー・高脂肪の食事)
    脂肪の多い肉類・卵、乳脂肪分の多いバター・チーズ、インスタント麺、果物、甘いお菓子など
  • 運動不足
  • 肥満
  • 喫煙アルコールの飲みすぎ
  • ストレス

続発性脂質異常症による疾患は以下が関係します。

  • 甲状腺機能低下症
  • 肝臓病
  • 糖尿病肥満(特に内臓脂肪型肥満)クッシング症候群
  • ネフローゼ症候群・慢性腎不全などの腎疾患

薬剤は、ステロイド薬や利尿剤、経口避妊薬などを用いて改善を図っていきます。

原発性脂質異常症

体質や遺伝子異常など遺伝的要因によって起こる脂質異常です。

遺伝的要因が大きく、若いうちから発症しやすいとされる「家族性高コレステロール血症」が有名です。ほかに、環境要因や生活習慣などが発症に影響を及ぼし、成人以降に発症する病型(家族性Ⅲ型高脂血症)など、いくつかの病型に分かれますが、全ての病型を合わせて発症率100人に1~2人程度です。

脂質異常症の症状

脂質異常症を発症しても多くの場合は無症状です。しかし、体内では血管に少しずつ脂肪(悪玉コレステロール)が沈着していきます。脂肪がドロドロ状のプラーク(粥状物質)となって次第に血管壁が狭くなると、血流が妨げられることで動脈硬化が進行します。
その結果、狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患や、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)などの危険な合併症の発作リスクが高くなります。

脂質異常症の治療法

脂質異常症の治療は、生活習慣(食事・運動療法)の見直しを中心として、必要に応じて薬物療法を行い、数値の正常化を目指します。なお、脂質異常を引き起こす原因となる疾患がある場合には疾患の治療を優先して行い、原因となる薬剤があれば変更・中止などの対処をします。

当院では診療ガイドラインに沿って、患者様の将来的な動脈硬化性疾患リスクに合わせた「脂質管理目標値」を定めています。また、薬物療法だけでなく、食事・運動・体重管理などを含めた総合的な治療を行っています。不安や疑問点などありましたら、お気軽にご相談ください。

リスク区分別脂質管理目標値

※家族性高コレステロール血症(FH)・急性冠症候群・糖尿病・冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞で高リスク疾患を合併する場合は、LDHコレステロールを70mg/dL未満に管理する

食事療法

脂質異常症の食事療法では、「カロリーの過剰摂取を防ぐ」「栄養バランスの良い食事を摂る」ことがポイントです。特に肥満がある場合は、減量することで脂質の数値が改善するだけでなく、高血圧・糖尿病・脂肪肝など他の疾患の改善も期待できます。長く続けていくことが大切なので、普段の生活から、「適正体重の維持」を心がけましょう。

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脂質異常のタイプ別の食事療法のポイントは、次のとおりです。

中性脂肪が高いケース

中性脂肪が高いケースの場合は、以下を意識しましょう。

  • 「もう少し食べたい」と感じる「腹八分目」でやめておく
  • 野菜を多めに和食中心の食事にする
  • 間食・夜遅くに食べないように注意する
  • アルコールは控えめにする

食べすぎた糖質・タンパク質からも中性脂肪は作られます。満腹になるまで食べるのではなく、「もう少し食べたい」と感じる「腹八分目」の状態で食事を終えるのが望ましいです。

ニンジンやゴボウ、大根などの根菜類、イモ類やキノコ類、海藻類、こんにゃく、納豆には食物繊維が豊富に含まれています。糖質の吸収を緩やかにするので、中性脂肪の上昇を抑えます。主食には玄米や胚芽米、麦飯、全粒粉のパン、蕎麦がおすすめです。

砂糖・果物・ジュースなどの糖類を含む間食や寝る前の夜食では、中性脂肪が上がりやすくなるので、避けましょう。アルコールは糖質が多いので、少量でも中性脂肪が上がります。肝臓に溜まると、脂肪肝にもつながります。

アルコールには食欲増進作用があり、おつまみを食べすぎる要因となるので、注意しましょう。目安は、1日あたり日本酒1合、ビールであれば500ml、ワインなら180ml程度です。

LDLコレステロールが高いケース

LDLコレステロールが高いときは、脂質の多い食品は控えましょう。肉類の中でも以下のような食品は、動物性脂肪が多いです。

  • 脂身の多いバラ肉
  • ひき肉
  • 鶏肉の皮
  • ラード

肉類よりも魚料理がおすすめです。特にEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)の多いイワシ・サバ・アジなどの青魚には多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。多価不飽和脂肪酸はコレステロールを下げる作用、悪玉を増やさずに動脈硬化を防ぐ働きがあるため、積極的に摂りたい食材です。
また、マーガリン・ショートニングなどトランス脂肪酸は動脈硬化を促進させる恐れがあります。揚げ物類やスナック菓子、クッキー類などの市販の洋菓子の食べすぎには要注意です。脂っこいものや卵類、内臓類や果物は、食べる量・頻度を控えめにしましょう。
コレステロール含有量の例:親子丼380mg、オムレツ320mg、レバニラ炒め150mg、ショートケーキ90mgなど

コレステロールを上げる・下げる食品イメージ

HDLコレステロールが低いケース

HDLコレステロールが低いときは、トランス脂肪酸の摂りすぎを避け、栄養バランスを考えた食事を摂りましょう。マーガリンやショートニング、それらを使った洋菓子・パンなどは、HDLコレステロールを下げ、LDLコレステロールを上げるとされています。

極端に糖質制限をするのではなく、栄養バランスを考えて、食事を摂りましょう。豆腐・納豆など植物性タンパク質にはコレステロールの吸収を抑える働きがあります。また、オリーブ油・菜種油、青魚を積極的に摂ることもおすすめです。

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運動療法

脂質異常症の治療では、ウォーキングや早歩き、水泳・水中歩行、ラジオ体操などの有酸素運動がおすすめです。血中の過剰な脂質を減らして、善玉コレステロール(HDL)を増やします。
普段運動していない方は、以下の方法で日常生活の中で身体活動量を増やすことから始めましょう。

  • できるだけ歩く
  • 階段を使う
  • 自転車で買い物に行く
  • ラジオ体操
  • バランス運動

運動量は、1日の合計で、できれば30分以上、週3回以上、ややキツイと感じて汗ばむ程度の強さの運動が目安です。なお、運動前後には準備・整理運動を行うことが大切です。
※心臓病・糖尿病・高血圧などの持病がある方は医師に運動の可否、適切な運動量を確認してください。

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薬物治療

生活習慣の見直しだけでは、脂質の管理目標値に至らないときや、狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患をお持ちで動脈硬化による合併症の発症リスクが高い場合には、薬物療法を併用します。
※あくまでも薬物療法は補助的治療であり、生活習慣の改善は継続して取り組むことが必要です。

脂質異常症の治療薬は大きく分けて、以下のような3つに分けられており、患者様の脂質異常症の病態に合わせて、組み合わせて使用します。

脂質異常症のタイプ別の薬薬の種類
コレステロールを下げるお薬・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)
※第一選択薬(最初に選択する薬)
・陰イオン交換樹脂製剤
・プロブコール
・小腸コレステロール輸送体阻害剤
・PCSK9阻害薬(2016年登場の注射薬)
コレステロールと中性脂肪を下げるお薬ニコチン酸類
コレステロールと中性脂肪を下げるお薬・フィブラート系薬剤
※スタチン系製剤や抗血栓薬(ワーファリン)、糖尿病薬との併用には注意が必要です。これらの薬を服用している場合には、必ず医師に申告してください。
・EPA製剤
※血液凝固薬(ワーファリン)などを服用中の方は併用すると出血しやすくなるので、注意が必要です。

薬物治療中に自己判断でお薬を中止したり減量したりすることは危険です。お薬の効き方や副作用など少しでも気になるときには、必ず医師までご相談ください。

脂質異常症になりやすい人

脂質異常症の約8割は、生活習慣の乱れによって引き起こされています。
以下の項目で思い当てはまるものが多い程、脂質異常症を発症するリスクが高まります。

  • 甘いもの・脂っぽい食べ物が好き
  • 肉類・卵・チーズ・アイスクリーム・スナック菓子など動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品をよく食べる
  • 日頃から車移動が多く、運動不足
  • 外食が多い
  • 肥満/太っている
  • アルコールをよく飲む
  • 日頃からストレスを感じることが多い/ストレスが溜まりやすい
  • 睡眠不足
  • 喫煙者
  • 家族に脂質異常症(高コレステロール血症)の人がいる

脂質異常症(高脂血症)についてのよくあるご質問

脂質異常症(高脂血症)についてのよくあるご質問をまとめています。

Q1.脂質異常の自覚症状はないけど病院に行く必要がある?

医療機関の受診をおすすめします。脂質異常症自体の症状はありませんが、放置すると少しずつ動脈硬化が発症・進行します。
何か自覚症状が出てきたときには、既に病状が進行している可能性があるうえ、場合によっては、できる治療が限られてしまうこともあります。
そうならない為に早い段階から治療および動脈硬化性疾患などの合併症の発症予防に取り組むことが望ましいです。当院までお気軽にご来院ください。

Q2.痩せていれば脂質異常症にはならない?

脂質異常症は痩せ型の方にも発症することがあります。痩せ型の方でも「遺伝的要因」がある場合や、外見上痩せているようにみえても「隠れ肥満」と呼ばれる、お腹に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満である場合には、注意が必要です。

Q3.脂質異常症を予防するにはどうすれば良い?

脂質異常症では生活習慣が主な原因となっていることが多いため、以下のポイントに注意しましょう。

  • 食べすぎを防いで、バランスの取れた食生活を心がける
  • 適正体重を目指す・維持する
  • 日頃から運動をする

三食きちんと食べて、「早食い」「まとめ食い」は避けましょう。脂っこいもの・甘いものなど摂りすぎないようにして、食物繊維をしっかり摂ることをおすすめします。また、食事は就寝前2時間前には済ませておきましょう。

肥満傾向がある場合には、適正体重を目標に減量しましょう。急激に減らすのではなく、1か月間で現在の体重の5%程度の減量から少しずつ始めるのが、成功の秘訣です。

ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を汗ばむ程度、30分以上続けることが目標です。運動不足だった方は「自転車で買い物をする」「できるだけ階段を使う」などの普段の生活の中でできることから、無理のない範囲で始めましょう。

Q4.脂質異常症になったら薬を一生飲み続ける必要がある?

答えは「△」で、病気のコントロール次第です。「なるべくなら、お薬を飲みたくない」と思われる方は多いでしょう。特に脂質異常症や糖尿病・高血圧などの生活習慣病では、自覚症状がないので、服薬の必要性を感じにくいのも事実です。とはいえ、放置すると動脈硬化を促進させ、危険な合併症を引き起こすリスクが高まるので、脂質は基準値内に抑えておく必要があります。
生活習慣の改善だけで中性脂肪・コレステロールの数値が下がらない場合には、お薬を使う必要があります。ただし、お薬を使っても生活習慣を改善していかなければ、十分な効果が得られない可能性があります。
一方、食事内容を見直して運動を続けることで脂質の数値が基準値内に収まり、良い状態をコントロールできれば、お薬を減らしたり中止したりできるケースもあります。

まとめ

脂質異常症は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行する可能性がありますが、放置すると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。治療には、食事や運動の見直しが重要で、必要に応じて薬物治療も行われます。定期的な健康診断で早期発見し、生活習慣を改善することで、脂質異常症のリスクを減らし、健康を守りましょう。


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