足のむくみや痛みは誰にでも起こり得る症状ですが、実はその裏に深部静脈血栓症という重大な病気が隠れていることがあります。飛行機でよく知られるエコノミークラス症候群もその一つです。放置すると血栓が肺に移動し、命に関わる肺塞栓症を招く恐れもあります。
本記事では、深部静脈血栓症の原因・症状・検査方法・治療法・日常でできる予防策についてわかりやすく解説します。正しい知識を持つことで不安を軽減し、健康な日常生活を送るための一歩を踏み出しましょう。
静岡市で足のむくみや痛み、長時間の移動後に違和感がある方は、大石内科循環器科医院にご相談ください。深部静脈血栓症は血管の中に血の塊(血栓)ができる病気で、肺に血栓が飛ぶとエコノミークラス症候群を引き起こす危険があります。
当院では循環器専門医が丁寧に症状を伺い、超音波検査などで早期発見と予防をサポートします。気になる足の症状は放置せず、安心できる体制のもとで早めにご相談ください。

深部静脈血栓症とは、体の奥にある太い静脈に血の塊(血栓)ができる病気です。本来、血は出血を止めるために固まりますが、その仕組みが必要のない場所で働くと血流を妨げてしまいます。特に足に血栓ができやすく、むくみや痛みの原因となります。
血栓ができやすい状況の例は、次のとおりです。
この病気を放置すると血栓が肺に流れ、命に関わる肺塞栓症を招く危険があります。
エコノミークラス症候群は、深部静脈血栓症が原因で肺塞栓症を起こす状態です。狭い座席で長時間動かずにいると血流が滞り、足に血栓ができやすくなります。その血栓が肺に詰まると呼吸困難や胸の痛みを引き起こすのです。特に注意が必要な場面は、次のとおりです。
「エコノミークラス症候群」とは特別な病気ではなく、日常生活の中で誰にでも起こり得るリスクだと知っておくことが大切です。
深部静脈血栓症は、血液の流れが滞る・血液が固まりやすい・血管が傷つく、という3つの要因が重なることで発症します。単独では問題にならなくても、複数の条件が重なると血栓ができやすくなるため注意が必要です。代表的なリスク要因は、次のとおりです。
これらの要因が組み合わさると、足の深部静脈で血流が妨げられ、血栓が形成されやすくなります。特に手術後や長時間の移動では、普段は健康な方でもリスクが高まります。
深部静脈血栓症は決して特別な人だけの病気ではなく、誰にでも起こりうるものです。だからこそ、日常の生活習慣や健康状態に目を向け、予防を心がけることが大切です。
特に動脈硬化は血管の柔軟性を損ない、血栓リスクを高める要因の一つです。以下の記事では、動脈硬化が体に与える影響や進行を抑える可能性のある方法を詳しく解説しています。
>>動脈硬化の詳細を見る
深部静脈血栓症の代表的なサインは以下のとおりです。
深部静脈血栓症では、片足だけがむくむことが大きなサインとなります。夕方になると靴がきつくなる、足首からふくらはぎにかけて腫れているなどは一見すると疲労や立ち仕事のせいに思えますが、実は血栓によって血流が妨げられている可能性があります。特に注意すべきは、次のような場合です。
単なる水分や疲労によるむくみと違い、深部静脈血栓症のむくみは片足だけに強く出ることが特徴です。このサインを見逃さず、早めの受診につなげることが大切です。
深部静脈血栓症では、筋肉痛に似た足の痛みが現れることがあります。鈍い痛みや締め付けられるような痛み、ズキズキする痛みなど、その感じ方は以下のようにさまざまです。
これは、運動で筋肉が血液を必要とするときに、血栓で流れが妨げられ、十分に供給できないために起こります。実際に患者さんの中には「最初は軽い筋肉痛かと思った」と話す方もおり、見逃されやすい症状の一つです。
普段の筋肉痛と違い、片足だけ繰り返し起こる痛みは要注意と覚えておくことが大切です。
深部静脈血栓症では、血栓のある部分の皮膚が赤みや青紫色に変化することがあります。普段と違う色調の変化は、血流が滞っているサインです。典型的には、次のような変化が見られます。
これは血液がスムーズに流れず、酸素や栄養が十分に届かないことで起こる現象です。特にふくらはぎや足の甲に多く現れ、目に見える変化として気づきやすい症状です。「ただの皮膚トラブル」と思って放置すると危険なケースもあるため、こうした変色を見たら早めの受診が重要です。
深部静脈血栓症では、血栓のある部分の皮膚が周囲より熱く感じられることがあります。これは血栓による炎症が原因です。ただし、むくみや痛み、色の変化、熱感などの症状はすべてそろって出るわけではなく、他の病気でも見られます。
足のむくみは心臓や腎臓の病気、妊娠や立ち仕事でも起こり、痛みも椎間板ヘルニアや坐骨神経痛が原因のこともあります。自己判断は危険です。少しでも気になる症状があれば早めに当院にご相談ください。
深部静脈血栓症の診断には、下記のような検査が行われます。
診断の第一歩は問診です。医師が症状や生活習慣、既往歴などを詳しく確認し、深部静脈血栓症の可能性を探ります。主に確認されるポイントは次のとおりです。
これらの情報は診断に欠かせない重要な手がかりとなります。「ただの足のむくみ」ではない背景を見極めるためにも、問診では正確に伝えることが大切です。
深部静脈血栓症の診察では、医師が実際に足を観察・触診し、血栓を疑うサインを確認します。診察でチェックされる主なポイントは次のとおりです。
これらは一見すると軽いむくみや疲れと似ていますが、深部静脈血栓症では片足だけに強く出ることが特徴です。診察で得られた所見は、次のステップで行う検査や診断の重要な手がかりとなります。
深部静脈血栓症の確定診断には画像検査が重要です。主に超音波検査(エコー)が基本となり、必要に応じて造影CT検査が行われます。それぞれの検査には以下の特徴があります。
超音波検査では血栓の有無だけでなく、大きさや位置、血流の詰まり具合まで確認できます。造影CT検査では、造影剤を用いてより詳細に血管を調べることができ、特に肺塞栓症の評価に有効です。
検査結果を総合して診断が確定されます。深部静脈血栓症は早期発見が何より大切なため、体の異変を感じたら早めの受診を心がけましょう。
深部静脈血栓症の治療法として、以下の3つを解説します。
薬物療法は深部静脈血栓症の基本的な治療法であり、血栓の拡大を防ぎ合併症を予防することが目的です。治療に用いられるのは、主に抗凝固薬と血栓溶解薬です。抗凝固薬は血液を固まりにくくし、血栓が大きくなるのを抑えることで肺塞栓症などの合併症を防ぐ重要な役割を果たします。
代表的なものには、ヘパリンの注射薬や内服薬があります。血栓溶解薬は血栓を直接溶かす強力な作用を持ち、重症例や血栓ができて間もない場合に限定して使用される治療法です。
カテーテル治療は、血管内に細い管(カテーテル)を挿入して血栓を直接処置する方法です。足の付け根などからアプローチし、血栓を取り除いたり溶かしたりすることで血流を回復させます。代表的な方法には、次のようなものがあります。
これらは、薬物療法だけでは効果が不十分な場合や、重症例で選択される治療法です。血栓を直接処置するため、出血などのリスクが伴う可能性があります。患者さんの状態に応じて慎重に治療の判断がされます。
下大静脈フィルター治療は、血栓が肺に流れていくのを防ぐために下大静脈にフィルターを留置する方法です。足や骨盤にできた血栓が肺へ移動し、肺塞栓症を起こすのを予防することが目的です。主に次のようなケースで用いられます。
下大静脈フィルターは血栓そのものを溶かす治療ではなく、肺塞栓症を防ぐための予防的処置です。状況によっては一時的に使用され、必要がなくなれば取り外すこともあります。
深部静脈血栓症は、日常生活の工夫によって予防できる病気です。特に長時間同じ姿勢が続くと血流が滞りやすいため、意識的な対策が重要です。代表的な予防法は、次のとおりです。
これらの習慣を取り入れることで、血流を保ち血栓ができるリスクを減らせる可能性があります。特に飛行機やバスでの移動、長時間のデスクワーク時には意識して実践することが大切です。
同じ姿勢を長く続けることは深部静脈血栓症の大きな原因になります。とくに座りっぱなしの状態では足の血流が滞り、血栓ができやすくなります。
飛行機でのエコノミークラス症候群が有名ですが、長距離バスや新幹線、さらにはデスクワークでも同じ状況が起こり得ます。意識して姿勢を変えたり、軽く体を動かしたりすることが血栓予防の第一歩です。
定期的に休憩をとって体を動かすことは、血栓予防に欠かせません。長時間座り続けると足の血流が滞り、血栓ができやすくなります。デスクワークや長距離移動の際は、1時間に一度は立ち上がって歩いたり、軽いストレッチをしたりすることが理想的です。
こまめに体を動かすことで血液の循環が良くなり、深部静脈血栓症のリスク軽減に繋がります。「少し動くだけでも効果がある」と意識することが継続のポイントです。
足をこまめに動かすことは、深部静脈血栓症の予防に役立つとされています。座ったままでも簡単にできる運動があり、ふくらはぎの筋肉を使うことで血流を促すことができます。代表的な運動は次のとおりです。
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど血流を押し戻す力を持っています。小さな動きを習慣化するだけで、血栓予防に大きな効果が期待できます。
水分不足は血液をドロドロにして血栓を作りやすくするため、こまめな水分補給が予防の基本です。泥水が流れにくいのと同じように、脱水状態では血液も流れにくくなります。水分補給のポイントは次のとおりです。
特に旅行中や就寝前後は脱水に気づきにくいため、意識的な補給が大切です。適度な水分摂取を習慣にすることで、血流を保ち血栓予防につながります。
弾性ストッキングは、足を適度に圧迫して血流を改善し、血栓の再発や合併症を防ぐために用いられます。薬物療法やカテーテル治療と併用されることが多く、日常生活の中で取り入れやすい治療のひとつです。
期待できる効果は次のとおりです。
弾性ストッキングは正しく装着することが重要で、サイズや着用方法を誤ると十分な効果が得られません。医師の指導のもとで使用することで、安全に継続でき、再発予防や生活の質の改善につながります。
深部静脈血栓症を放置すると、血栓そのものだけでなく長期的にさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。主な合併症には次のようなものがあります。
これらの合併症は生活の質を大きく低下させ、場合によっては命に関わることもあります。少しの症状でも軽視せず、早めの受診で合併症を防ぐことが大切です。
深部静脈血栓症の合併症の中で最も注意が必要なのが肺塞栓症です。足の静脈にできた血栓が剥がれて血流に乗り、肺の血管を詰まらせることで発症します。主な症状には次のようなものがあります。
重症化すると呼吸困難に陥り、命に直結する危険な病気です。肺塞栓症は緊急性の高い病気であり、早期の診断と治療が不可欠です。深部静脈血栓症と診断された場合には、適切な治療を速やかに受けることが強く求められます。
なお、その他の合併症としては、慢性的な足の痛みやしびれ、皮膚潰瘍、肺高血圧症なども知られています。
深部静脈血栓症の後遺症として、足の血流が慢性的に悪くなると「静脈うっ滞性皮膚炎」を起こすことがあります。これは血栓や静脈弁の障害によって血液がうまく戻らず、足に酸素や栄養が届きにくくなることで生じます。
症状としては、むくみや皮膚の色の変化に加え、痛み・かゆみ・しびれなどが続くのが特徴です。進行すると皮膚が硬くなったり炎症を繰り返したりして、生活の質を大きく下げてしまいます。一度起こると慢性化しやすいため、早期の治療や予防的ケアが重要です。
深部静脈血栓症の後遺症として、皮膚に治りにくい傷=皮膚潰瘍ができることがあります。これは血流のうっ滞によって皮膚に酸素や栄養が届かなくなり、組織が弱ってしまうために起こります。
初期には小さな傷ができやすくなり、なかなか治りにくくなります。さらに進行すると皮膚が壊死し、深い傷(潰瘍)を形成することがあります。皮膚潰瘍は慢性化しやすく、感染や強い痛みを伴うため、生活の質を大きく損なう合併症です。早めのケアと適切な治療が不可欠です。
深部静脈血栓症に伴う肺塞栓症を繰り返すと、肺の血管に慢性的な負担がかかり「肺高血圧症」を発症することがあります。血管が硬くなり流れが悪化することで、心臓にも強い負荷がかかります。肺高血圧症の特徴としては、以下のようなものがあります。
この病気は進行すると日常生活に大きな制限をもたらし、生命予後にも影響します。深部静脈血栓症や肺塞栓症を早期に治療し、再発を防ぐことが最大の予防につながります。
深部静脈血栓症は適切な治療で改善することが多い病気ですが、治療後も足の症状が残ることがあります。これを「深部静脈血栓症後症候群(PTS)」と呼びます。PTSは血栓によって静脈の弁が壊れ、血液の逆流を防げなくなることで起こります。
その結果、足の痛み・しびれ・むくみなどの不快な症状が慢性的に続き、生活の質を下げる要因になります。命に直結するものではありませんが、長期的な不調として悩みの原因になるため注意が必要です。
深部静脈血栓症は足の静脈に血栓ができる病気で、エコノミークラス症候群の原因にもなります。長時間同じ姿勢を続けたり、血液が固まりやすい体質や状況があると発症リスクが高まります。足のむくみや痛みなどの症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
治療は薬物療法やカテーテル治療などがあり、血栓の大きさや症状に応じて選択されます。予防のためには、日常生活で以下の行動を意識しましょう。
放置すると肺塞栓症などの合併症を招く恐れがあるため、日頃から予防を心がけ、気になる症状があれば当院へご相談ください。
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