朝起きた時にふらふらしたり、立ち上がった時に目の前が真っ暗になったりしたことはありませんか?
これらの症状は、起立性低血圧と呼ばれる病気のサインかもしれません。近年、高齢者だけでなく、若い世代でも増加傾向にある起立性低血圧。「ただの立ちくらみ」と安易に考えて放置すると、日常生活に支障をきたすことも。
この記事では、起立性低血圧の定義から症状、原因、そして具体的な治療法までを詳しく解説します。自身の症状と照らし合わせながら起立性低血圧について理解を深め、健康的な生活を送るためのヒントを見つけてください。
朝、ベッドから急に立ち上がると目の前が真っ暗になったり、クラッとしたり、あるいは立ちくらみだけでなく吐き気や動悸がしたりしたことはありませんか?
これらの症状は、起立性低血圧のサインかもしれません。高齢の方だけでなく若い方でも起こりうる症状なので、具体的な症状の特徴を理解しておくことは日常生活を安全に送る上で非常に重要です。
起立性低血圧の最も一般的な症状は、立ちくらみやめまいです。
急に立ち上がった際に、まるで世界がグルグルと回転しているような感覚、あるいは足元の地面が揺れているような感覚、ふわふわと宙に浮いているような不安定な感覚を覚えることがあります。
これは体位を変えた時に重力によって血液が下半身に移動することで、心臓に戻る血液量が一時的に減少するためです。その結果、心臓から送り出される血液量が減少し、脳への血流が不足することで立ちくらみやめまいが生じます。
例えばベッドで横になっていた状態から急に立ち上がったり、長時間しゃがんでいた姿勢から急に立ち上がったり、あるいは満員電車で長時間立っていた後に電車を降りた瞬間に、これらの症状が現れやすくなります。
また、脱水症状がある場合や、食後などにも起こりやすいため注意が必要です。
立ちくらみやめまいに加えて、頭痛や倦怠感を感じることもあります。
これらの症状は脳への血流不足によって引き起こされると考えられており、重度の場合は思考力の低下や集中力の散漫といった症状を伴うこともあります。
例えば午前中は頭がスッキリせず集中力が続かない午後になると急激に疲労感が増し、何もする気が起きない、といった症状が現れる場合、起立性低血圧の可能性も考慮する必要があります。
特に、これらの症状が慢性的に続く場合は医療機関への受診をおすすめします。
症状が重い場合には、吐き気や視覚障害を伴うこともあります。
吐き気は自律神経系の乱れによって引き起こされると考えられており、血圧の急激な低下により自律神経が過剰に反応することで吐き気を催すことがあります。
また、視覚障害としては一時的に視界が暗くなったり、ぼやけたり、視野が狭まったり物が二重に見えたりすることがあります。
これらの症状は、脳への血流不足によって視覚中枢の機能が一時的に低下するために起こります。
例えば、立ちくらみとめまいと同時に吐き気を催したり、目の前がチカチカしたり、あるいは、視野が狭まったりする場合は、すぐに安全な場所に移動し、しゃがむか、横になるなどして安静にすることが大切です。
発症するタイミング
起立性低血圧は、特定のタイミングで発症しやすいという特徴があります。
タイミング | 説明 |
朝起きたとき | 寝ている間は血圧が低いため、急に立ち上がると血圧の調整が追いつかず、症状が出やすいです。 |
食後 | 食後は消化のために血液が胃腸に集中するため、脳への血流が相対的に減少します。 |
長時間立っていた後 | 長時間立っていると、足の血管に血液が溜まり、心臓に戻る血液量が減少するため、血圧が下がりやすくなります。 |
入浴後 | 特に熱いお風呂に長時間入ると、血管が拡張し、血圧が下がりやすくなります。 |
脱水状態のとき | 体内の水分が不足すると血液量が減少し、血圧が下がりやすくなります。 |
薬の服用後 | 降圧剤をはじめ、一部の薬には血圧を下げる作用があるため、症状を誘発する可能性があります。 |
これらのタイミングに心当たりがある方は、一度医療機関を受診し、起立性低血圧の検査を受けてみることをおすすめします。早期発見、早期治療が重要です。
立ちくらみは誰しも一度は経験したことがある、ありふれた症状です。しかし、その背後には深刻な病気が隠れている可能性もあるのです。
「ただの立ちくらみ」と安易に考えて放置せず、その原因を探り適切な対処をすることが大切です。
ここでは起立性低血圧の主な原因と、その発症メカニズムについて5つのポイントに絞って解説します。
私たちの体は自律神経と呼ばれる神経によって、意識しなくても心臓が動き呼吸をし体温が調節されています。
自律神経には活動時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」の2種類があり、シーソーのようにバランスを取りながら働いています。
起立性低血圧は、この自律神経のバランスが乱れることで起こることがあります。
例えば椅子から立ち上がった時、通常であれば交感神経が働き血管を収縮させて血圧を維持しようとします。
しかし自律神経に異常があると、この反応が鈍くなり血液が下半身に溜まってしまい脳への血流が一時的に不足するのです。すると目の前が暗くなったり、クラッとしたりする症状が現れます。
私のクリニックでも過度なストレスや不規則な生活習慣が原因で自律神経の乱れをきたし、起立性低血圧を発症する若い患者さんを多く見てきました。
自律神経の乱れは、現代社会において大きな問題となっています。
私たちの体は、成人で約60%が水分で構成されています。この水分が不足すると、血液の量が減り、血圧の維持が難しくなります。
特に暑い夏場や激しい運動の後、あるいは下痢や嘔吐が続く場合は、脱水症状に陥りやすく起立性低血圧のリスクが高まります。
高齢の方は、のどの渇きを感じにくいため、気づかないうちに脱水になっているケースも多いので注意が必要です。
また、夏場に外で作業をする方なども、こまめな水分補給を心掛けてください。当院でも脱水症状による起立性低血圧で、来院される高齢の患者さんを多く診ています。
内分泌系はホルモンと呼ばれる化学物質を分泌する器官の集まりで、ホルモンは血液を通して全身に運ばれ、体のさまざまな機能を調節しています。
例えば副腎という臓器からは、血圧を調節するホルモンが分泌されています。
もし副腎の機能が低下すると血圧が低くなり、起立性低血圧の症状が現れることがあります。
その他にも甲状腺機能低下症などの内分泌系の疾患も、起立性低血圧の原因となることがあります。
内分泌系の障害は、血液検査などでホルモンの値を調べることで診断できます。
高血圧の薬や利尿剤、抗うつ薬など、いくつかの薬には、起立性低血圧を副作用として引き起こすものがあります。これらの薬を服用している方は、特に立ち上がる時や姿勢を変える時に注意が必要です。
もし薬の副作用で起立性低血圧の症状が現れた場合は、自己判断で服薬を中止せず必ず医師や薬剤師に相談しましょう。薬の種類や量を調整することで、症状を改善できる場合があります。
私は患者さんに薬を処方する際には必ず副作用についても詳しく説明し、何か異変を感じたらすぐに連絡するように伝えています。
パーキンソン病や糖尿病などの疾患は、自律神経の機能に影響を与え、起立性低血圧を引き起こすことがあります。
また、心臓病や貧血なども、起立性低血圧の症状を悪化させる可能性があります。もし他の疾患で治療を受けている方は、医師にそのことを伝えるようにしましょう。複数の疾患を抱えている場合、治療が複雑になるため各専門医との連携が重要になります。
立ちくらみやめまいを感じると「もしかして起立性低血圧?」と不安になりますよね。ご安心ください。ここでは、起立性低血圧の診断方法と治療法について解説します。どんな検査をするのか、どんな治療をするのか、といった疑問を解消し不安を少しでも和らげることができれば幸いです。
起立性低血圧の診断は、主に血圧測定と医師による問診によって行います。
寝ている状態と立ち上がった直後の血圧を測り、その変化を調べます。健康な人であれば、立ち上がると一時的に血圧が下がりますが、すぐに元の値に戻ります。しかし、起立性低血圧の患者さんの場合は、血圧が下がり過ぎたり、回復が遅れたりします。
医師は、患者さんの症状や生活習慣、服用している薬などについて詳しく質問します。
起立性低血圧の治療は、原因や症状の程度に合わせて、薬物療法と生活改善策を組み合わせます。
起立性低血圧とは急に立ち上がった際に血圧が低下し、立ちくらみやめまい、頭痛などの症状を引き起こす病気です。高齢者だけでなく、若い人でも発症する可能性があります。主な原因は自律神経の異常、脱水症状、内分泌系の障害、薬物の副作用、他の疾患との関連性などです。診断は血圧測定と問診によって行い、治療は薬物療法と生活改善策を組み合わせます。