寝ている間に、呼吸が止まる無呼吸の状態を繰り返される病気を「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」といいます。具体的には、1時間に5回以上10秒以上の間呼吸が止まる状態かもしくは就寝中(7時間程度)の間に30回以上気道の空気が止まると、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
寝ている時は無意識なので自分で気づくことが難しく、家族の方に指摘されて初めて呼吸が止まっていることに気づくケースも少なくありません。寝ている時に無呼吸の状態になると、低酸素状態になり、朝起きた時にすっきりしない、倦怠感が続くなどの症状が出てきます。日中の強い眠気などから、仕事や勉強がはかどらないなど、日常生活に影響があるだけでなく、運転中の居眠りなどで事故の確率が上がることが分かっています。
また、継続して睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合、血管に負担がかかりやすく、高血圧や心臓病、血管系の疾患と関連が深いと考えられています。そのため、「脳梗塞」「心筋梗塞」「狭心症」「糖尿病」などのリスクや悪影響を及ぼすことが報告されています。
治療をすることで、症状が改善しやすい疾患なので、家族の方などに「いびき」や「無呼吸」を指摘されたことがある方は、ぜひ当院にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群の原因は、無呼吸が起きる原因によって大きく2つに分けられます。
1つめは、空気の通り道である上気道が狭くなって、呼吸が止まってしまう「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ」です。9割程度の方がこちらのタイプに当てはまります。
2つめは、脳から呼吸中枢に指令が出なくなってしまう「中枢性睡眠時無呼吸タイプ」です。
のどや気道が狭くなり、空気の通る十分なスペースが確保できずに、呼吸が止まってしまうタイプです。多くの方はこの閉塞性睡眠時無呼吸タイプで、首やのどのまわりに脂肪がついたり、舌が下がって塞いでしまったりするなどの原因が考えられます。
そのため、「肥満」「あごが小さい」「花粉症・蓄膿症・扁桃肥大」などが閉塞性睡眠時無呼吸タイプになりやすいといわれています。肥満になると、首周りに脂肪がつくため、空気の通り道が狭くなります。さらに、仰向けになると、気道が狭くなることや舌が落ち込みやすく、いびきをかきやすくなります。
いびきをかいている方が横向きになると、いびきがおさまった経験はないでしょうか。寝ている時は、筋肉が緩みやすく、無呼吸が起こりやすい状態になっています。そのため、電車などで座っている時にいびきをかいている方は、かなり気道が狭くなっている可能性があり、注意が必要です。
また、あごが小さいと舌のスペースが確保しにくく、気道に落ち込みやすくなります。花粉症・蓄膿症は鼻がつまるため、鼻呼吸がしにくくなり、口呼吸になっていびきをかきやすくなります。
肺や呼吸器官などに異常がないのに、脳から呼吸の指令が出ないなどの原因で、無呼吸になるのは、中枢性睡眠時無呼吸タイプです。閉塞性睡眠時無呼吸タイプとは異なり、気道のスペースはある状態にも関わらず、無呼吸の症状が出ます。
閉塞性睡眠時無呼吸タイプは、呼吸をする指令が出ているので、呼吸をしようと努力しますが、中枢性睡眠時無呼吸タイプは呼吸をしようとする努力がみられません。
原因として考えられるのは、「脳卒中」「心不全」などが関係して、呼吸中枢に異常が生じて、寝ている時に無呼吸になることがあります。
心臓の機能が低下した方に中枢性睡眠時無呼吸タイプが見られる傾向があると考えられています。
良質な睡眠は、身体を休めるために大切なものです。睡眠は時間だけでなく、質のよい睡眠を取ることが十分な休息につながるといわれています。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の状態の時には、酸素が十分に供給できず、不足しています。走った時も酸素が不足した状態になりますが、強い疲労感や心拍が上がることで身体に負担がかかります。
身体だけでなく、睡眠が浅いと脳も断続的に覚醒した状態になり、身体が休まりません。その結果、集中力の低下や日中の倦怠感などを引き起こしてしまいます。
下記の症状は、睡眠時無呼吸症候群の方に見られる症状です。思い当たる症状がありましたら、当院にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群の検査は、まず簡易検査を行って、必要があると判断された場合、精密検査を受けます。
睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかスクリーニングする検査で、自宅で検査機器(パルオキシメーター)を指に装着して寝ることで、酸素濃度を計測できます。自宅でいつもと同じ状況で就寝することができるため、日常生活のリズムを崩すことなく検査が可能です。
さまざまな検査器具を装着して、就寝中の「脳波」「筋電図」「心電図」「呼吸」などの詳しい内容を測定します。(当院では検査機器をご自宅にレンタルしてご自宅での検査が可能です。)
これらの検査結果をもとに、1時間あたりの10秒以上の低呼吸・無呼吸の値、閉塞性睡眠時無呼吸タイプか中枢性睡眠時無呼吸タイプか判断ができます。
また、睡眠の質(分断の有無・睡眠の深さ)や睡眠障害、不整脈の有無なども確認が可能です。そして、その結果から治療計画を立てていきます。
睡眠時無呼吸症候群は早期の発見できると治療の負担も軽減できるため、思い当たる症状がある場合は当院へご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群は、鼻などの疾患が関係して起きている場合もあるので、X線やCTなどの画像診断を行うこともあります。
就寝中のマウスピースを着ける方法は、中等度までの睡眠時無呼吸症候群の方が対象になります。マウスピースは「スリープスプリント」とも呼ばれます。
マウスピースを装着することで、上顎よりも下顎が前に固定されるように設計されており、上気道を広く保つことで、いびきを軽減させる方法です。
マウスピースの製作は、睡眠時無呼吸症候群の治療に対応している歯科医院で行いましょう。マウスピースを装着するだけなので、手軽に取り入れることができる一方で、重度の睡眠時無呼吸症候群の方には効果が不十分という報告もあります。睡眠時無呼吸症候群の症状を正しく把握して、治療方法を選択することが大切です。
欧米や日本でも広く取り入れられている方法で、寝ている間に気道のスペースを確保するために、鼻に装着したマスクから空気を送り込む方法です。症状の程度に応じて空気圧を調整することで、睡眠中に気道が狭くなることを防ぎ、スムーズに呼吸ができるようになります。
一般的に、CPAP療法を開始する前に、1日入院をして、鼻から送る空気の圧などを調整します。CPAP療法を行うことで、無呼吸が改善されて、十分な睡眠が取れるようになると、日中の眠気などを改善ができます。また、睡眠時無呼吸症候群だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などの血管に由来する疾患の進行の予防にも役立つことが分かっています。
ただし、CPAP療法は根本的な治療ではなく対処療法のため、マスクをしない状態では睡眠時無呼吸症候群の症状が出てしまいます。マスクを正しく装着して、継続的に治療を行うことが大切です。
また、患者さまに応じて空気圧を調整していますので、症状や体重などが変化した場合には、空気圧の調整が必要になる場合があります。
治療を開始したばかりのころは、マスクを装着することに慣れない場合がありますが、多くの方がすぐに慣れて就寝できるようになります。
アデノイド肥大や扁桃肥大などで気道のスペースが狭くなっている場合には、その原因を除去するために、外科手術を行う場合があります。
お子さんのアデノイド肥大は大人になるにつれて、小さくなるのが一般的ですが、睡眠時無呼吸症候群の症状がある場合には、成長を待たずに手術をするケースがあります。※当院では外科的治療は行っておりません。
睡眠時無呼吸症候群は、肥満などが原因で首やのどに脂肪がつくことで、空気の通り道が狭くなります。そのため適度な運動や規則正しいバランスの取れた食生活などを取り入れて、適正体重を維持しましょう。
日本人はあごが小さい傾向にあるため、ちょっとした体重の増加が気道を狭くするリスクにつながる場合があります。健康維持のためにも、適正体重を維持して睡眠時無呼吸症候群も予防しましょう。
普段はあまりいびきをかかない方でも、飲酒をした時にいびきをかく場合があります。これは、アルコールを摂取すると、筋肉が弛緩しやすくなるため、のども同様に弛緩しています。
そのためいつも以上に筋肉の弛緩が強まり、上気道が狭くなっていびきの原因につながるのです。いびきをかく方は、寝る前の飲酒を控えることおすすめします。
通常は鼻で呼吸をする鼻呼吸が正しいのですが、アレルギー性鼻炎や蓄膿症、歯並びの悪さなどが原因で口呼吸になる場合があります。口呼吸をしていると、咽頭が狭くなるため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなります。
それだけでなく、鼻で呼吸をしている場合には、鼻毛がフィルターの役割をしているので、ウイルスや細菌を防いでくれますが、口呼吸の場合には、そのまま吸い込んでしまいます。そのため、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスクも高めてしまいます。
口呼吸は鼻の疾患や歯並びが原因になっていることもあるため、まずは当院にご相談ください。
当院では、現在(2024年2月)100人以上の患者様が睡眠時無呼吸症候群の診断でCPAP治療を行っております。
睡眠時無呼吸症候群があると、血管に負担がかかりやすく、高血圧や心臓病、血管系の疾患(循環器疾患)と関連が深く、「脳梗塞」「心筋梗塞」「狭心症」「糖尿病」などの疾患のリスクや悪影響を及ぼすことが報告されています。当院では循環器専門医が、睡眠だけを診るのではなく疾患予防を念頭に、患者様を総合的に診させていただきます。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている時に呼吸が止まってしまい、酸素が十分に供給できない疾患です。そのため、朝起きた時に疲労感や倦怠感などがあり、日中の集中力の低下にもつながってしまいます。
また、長期間その状態が続くと、血管に負担がかかってしまい、高血圧や心疾患、脳疾患などに悪影響を及ぼすこともあります。
睡眠時無呼吸症候群は自分では気づきにくいため、ご家族の方からいびきや呼吸が止まっていると指摘された方はお早めに当院へご相談ください。