「冷え性」とは、体が温まりにくいため、手足・腕・太もも・お腹などが冷えているような感覚が常にある状態のことです。
現代の生活環境では冬だけでなく、一年を通して「冷え」を感じやすくなっています。
「冷え性=女性」というイメージがあるかもしれませんが、男性にも起こります。実は男性の約4割、特に20代の約半数で「冷え性を自覚している」というアンケート結果が出ています。
「冷えは万病のもと」ということわざがあるように、冷え性を放置してしまうと免疫力が下がり、肩こり・腰痛、頻尿・生理不順・むくみ・頭痛・便秘といった身体症状から、不眠・やる気が出ないなどの精神症状まで様々な全身症状や不調を招きます。
不調の陰に「冷え性」が隠れているかもしれません。
冷えが気になる、冷えてつらいなど「冷え性」でお悩みの場合、お気軽に当院までご相談ください。
「冷え性」と言うと、体温が低かったり実際に触ると冷たかったりする「身体の冷え」を思い浮かべてしまいがちですが、実は身体の様々な不調を引き起こします。
以下の項目に思い当たる数が多い程、冷え性や隠れ冷え性(身体の表面は温かいが、内臓が冷えている状態)の可能性が高いと思われます。
当院では、冷え性改善のサポートをしています。お気軽にご相談ください。
冷え性は西洋医学的には病気ではなく身体が温まりにくいことにより、常に冷えを感じる「体質的なもの」とされています。そのため、はっきりとした診断基準はありません。
ただし「冷え性=実際に体温が低い、触ると冷たい」だけではなく、ご本人が冷えを自覚していないケースも多々あります。
気付かないとはいえ、そのまま放置していると病気に繋がったり不妊の原因になったりする場合があるので、できるだけ早く改善させることが大切です。
冷え性は、以下の4つのタイプに分けられます。※2つ以上のタイプが合わさる「混合型」の場合もあります。
冷え性の特徴として有名なのが、手足が氷のように冷たいタイプです。食事量が少なかったり運動不足などで体を温めるエネルギーが足りなかったりすることによって、血の巡りが末端(=手足)まで行かない状態です。また、冷えるからとカイロで手足を温めても、一時的にしか改善されません。
【なりやすい人】10~20代の女性、過度のダイエットをしている人、痩せ型
【原因】末端まで血液が循環しにくい
【改善方法】食事量を増やす(特に熱を生むタンパク質)
主に足などの下半身が冷えるタイプで、冷え性で受診したうちの過半数を占めます。座りっぱなしによってお尻やふくらはぎの筋肉が硬直することで、坐骨神経の圧迫ならびに足の動脈・静脈の血流不良が起こり、足の冷えが生じます。加齢に伴い、腰・お尻に筋肉のこわばりが少しずつ出てくるため、働き盛りの男女に多い冷え性です。また、下半身へ行くはずだった熱が上半身に伝わって、顔・頭がほてる「冷えのぼせ」状態になるケースもあります。
【なりやすい人】30代以降の中高年男女、デスクワーク、車の運転など座りっぱなし作業が多い人
【原因】足の血行不良
【改善方法】運動、入浴、ストレッチなどでお尻・ふくらはぎの筋肉をほぐす
基礎代謝の低下によって身体の外も中も冷えてしまうタイプ。このタイプの人は「平熱36℃以下」と体温が低いという特徴があります。ご本人に手足の冷え自覚がなかったり、免疫力の低下によって、よく風邪を引いたりお腹を壊したりしやすい傾向があります。一方で、冷えやすい体質ではなく、甲状腺機能低下症といった病気が原因の場合もあります。
【なりやすい人】女性、高齢者、慢性的なストレスがある、不摂生・昼夜逆転の生活を送っている人
【症状】肌寒いような寒気がある、身体全体が寒い
【原因】基礎代謝の低下、ストレス、栄養失調、自律神経・ホルモンの乱れなど
【改善方法】生活習慣の改善(食事・運動など)で基礎代謝を上げる、漢方薬
手足は温かいのに、身体の中だけが冷えているタイプです。副交感神経が強いため、身体から熱が逃げやすく、体内温度が低下します。お腹が空くと身体が冷えるので、ついつい多く食べてしまいがちですが、食べ過ぎには要注意です。また、冷たいものばかり摂取するのは避け、夏でも温かいものを摂ると良いでしょう。
【なりやすい人】アレルギー体質、ぽっちゃり体型、食欲旺盛、汗をかきやすい
【症状】お腹が冷える、お腹が張る、お腹にガスが溜まりやすい、便秘など
【原因】ストレス、不規則な生活、睡眠不足など自律神経の乱れ
【改善方法】生活リズムの改善、適度な運動で自律神経のバランスを整える、漢方薬
冷え性が続くと、身体全体に様々な症状・不調が現れます。
冷え性の直接的原因は「血行不良」です。血行不良を引き起こす要因には様々あります。
近年はエアコンの普及により、家庭・職場など一年中快適な室内で過ごせるようになっています。その結果、気温に対する感覚が鈍くなって、昔と比べて自律神経が乱れやすい環境となっています。環境に加え、ストレス、過労、不規則な生活リズム、睡眠不足などによって自律神経が乱れると、適切な体温調節ができなかったり腸の運動も乱れたりするため、血行不良を起こして「冷え」に繋がります。
生命活動に必要な最低限のエネルギーである「基礎代謝」が低下すると、十分な熱を作り出せなくなるため低体温を引き起こして冷え性に繋がります。
血行が悪くなると、血流不足になります。毛細血管まで血が巡らなくなるため、血管が収縮して冷えを引き起こします。
ミネラル、ビタミンが不足することで血の巡りが悪くなりため、冷え性に繋がります。
さらに、生理のある女性では、鉄分不足によって冷え性だけでなく、体調不良や倦怠感も伴う場合があります。
また、トマト、キュウリ、ナスなど夏が旬の野菜に加え、暑いからとそうめん・ひやむぎといった冷たい麺類ばかり食べていると、身体を冷やすことに繋がります。
体温の約4割は筋肉で作られています。運動不足になると、必然的に筋肉を使わなくなるため、筋肉量が低下して血行不良となります。特にふくらはぎの筋肉は、血液を下半身から心臓に戻すための「ポンプ」として機能しているので、ふくらはぎの筋肉が少なくなると、血行への影響が大きく、冷えに繋がります。
次のような病気によって、症状として冷え性が現れることがあります。
甲状腺ホルモンは「元気の源」と呼ばれるホルモンで、代謝を司る働きを持ちます。甲状腺ホルモンが低下すると、エネルギー不足となり熱を作り出せないので、血行不良から冷え症を引き起こします。
女性では40歳を過ぎる頃から女性ホルモンの分泌量が減少していくことにより、のぼせ、ほてり、異常発汗(ホットフラッシュ)などの更年期症状が現れます。人によっては、冷え、頭痛、イライラなどの症状がみられる場合があります。
貧血とは、体内の血液循環に必要な赤血球が少ない状態です。酸素の運搬能力が低いのでエネルギー不足に繋がり、血行不良となることで冷えが現れます。
自己免疫疾患である「膠原病」に伴って現れる冷え症を「レイノー現象」と呼びます。寒さや緊張などで血管収縮が起こり血流悪化から、手足の末端が冷える、ピリピリ痛む、指先が白・紫色に変色するという症状が現れます。
足の冷えで代表的な病気です。足の動脈硬化が進んで血管が狭くなり血流が悪くなることにより、初期症状として「足先の冷え」を引き起こします。進行すると、足の痛みで歩けなくなったり、安静時も足が痛くなったりするケースがあります。最終的には足が黒く変色して、壊死(細胞死)する場合もあります。
たばこに含まれているニコチンには、血管収縮作用があるため血行不良から冷えに繋がります。
冷え性が疑われる場合には、背後に「原因となる病気がないか」ということを確認する必要があります。
どこが冷えるのか、冷え以外の症状はあるのかなど、詳しくお伺いします。
甲状腺機能の異常、貧血、膠原病などがないか、調べます。
主に心臓、甲状腺、下肢動脈について、状態や機能、血管閉塞はしていないかなど詳しく調べます。
手足の血圧比較や脳波の伝わり方を調べて、動脈硬化の進行度を確認します。
冷え性の治療では、「血流改善」が重要となります。基本的には冷え性の原因に合わせて、日常生活の見直しとお薬を併用して進めます。
貧血、女性ホルモンの低下、甲状腺機能異常などがある場合には西洋医学的な薬物療法を使って治療します。一方、病気が原因でない場合、患者様の冷え性のタイプ・身体の状態に合わせて、漢方薬で体を温め、冷えの改善を図ります。
冷え性は「体質的な問題」となるため、スパッとすぐに治るものではありませんが「身体を温めること」「温まりやすい身体づくり」を意識してみましょう。ちょっとした生活習慣の見直しで少しずつ体質が変化していき、冷え性改善が期待できます。
できる限り、毎日ぬるめの(38℃~40℃)湯船に30分程度、じんわり汗ばむくらいゆっくり浸かって温まりましょう。
副交感神経が優位になることで、血管が広がって血行が良くなります。また、入浴によってリラックス効果もあります。入浴後は、早めに靴下を履いて、冷えを防ぎましょう。
冷たい飲食物、甘いもの、ファーストフードなどの食べ過ぎは、血行不良に繋がって冷えの原因となります。また、無理なダイエットも栄養が偏るため、冷えの元となります。
栄養バランス良く食べることが何より大切ですが、冷え性の方では特に「身体を温める食材」を積極的に摂りたいです。なお、身体を冷やす食材を使用する場合には、お味噌汁やスープに入れる、加熱調理するなど、生のままではなく温めてから食べると良いでしょう。
一般的に土の中で育つもの、寒い地域で採れるもの、冬が旬のものです。
生姜(しょうが)、にんにく、ごぼう、かぶ、かぼちゃ、人参、山椒、ネギ、ニラ、シソ、とり肉、チーズ、ぶどう、味噌、納豆、シナモン、唐辛子、紅茶など
一般的に地上で育つもの、暑い地域で採れるもの、夏が旬のものです。
トマト、きゅうり、なす、バナナ、すいかなど
筋肉量が少ないと、体内で熱を作れないので、冷えの原因となります。運動は、代謝や血液循環に重要なカギです。筋肉を増やすためには、ジョギング、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。週3回30分程度、汗ばむ程度の運動量を習慣化させましょう。運動の習慣化→筋肉量が増えていく→体内で熱を作りやすくなる→冷え体質の改善へと繋がります。なるべく階段を使ったり、歩いたりと日常生活の中で、少し運動を増やすだけでも、毎日行えば効果的です。
当院では運動教室を開設しています。運動強度の弱いものから、全身の筋肉を使ったやや強度の高いものまで運動習慣をつけるお手伝いをしています。
睡眠不足は自律神経の乱れや血行不良の原因となり、冷えの元です。規則正しい生活リズムを意識してください。
また、ときには、スポーツや趣味などに使う自由時間を設け、ストレスを溜めないようにしましょう。
喫煙は、百害あって一利なしです。吸った直後から血管の末梢部分が収縮するため、手足の先などに血液が回らなくなります。禁煙して1週間も経てば、冷え性の改善が期待できるというデータもあります。この機会に、禁煙してみることをおすすめします。
当院では「禁煙外来」を開設しております。医療機関での禁煙治療の成功率は、自力での禁煙と比べて、約2~3倍高まると分かっています。この機会に禁煙してみませんか?
通常、病院で処方されるお薬(西洋薬)は、1つの有効成分で作られているものが多く、特定の病気・症状に対して、すみやかに効果を発揮するよう作られています。一方、漢方薬は、植物・動物・鉱物に含まれる天然成分を加工した「生薬(しょうやく)」を組み合わせているお薬なので、複数の有効成分が含まれており、1つのお薬で様々な症状に効果を発揮します。
漢方薬には様々な種類があるため、患者様の冷えのタイプ・身体の状態に合わせて、選択します。なお、当院で処方する漢方薬は、厚生労働省から認可されている「医療用漢方製剤」なので、健康保険が適用されます。
冷え性改善に使われるよくある漢方薬は、以下の通りです。
全身型タイプの冷え性にオススメの漢方薬です。この漢方薬は、消化吸収機能を高めて元気をつける生薬、滋養強壮作用のある生薬、血行を良くする生薬が含まれています。新陳代謝が悪くなり、昔より元気がなく、活動量が減ったと感じる方の冷えにも処方されます。
高齢者の冷え性、下半身の冷えで夜間のトイレが近い方にオススメの漢方薬です。
この漢方薬は、滋養強壮作用のある生薬、血の巡りを良くする生薬、体を温める生薬が含まれています。
上半身がのぼせるのに、下半身が冷えるという方にオススメの漢方薬です。更年期障害でホットフラッシュ改善にもよく使われるお薬です。
この漢方薬には、血液循環や血行促進によって、下半身の血の巡りを整える生薬が含まれています。
疲れやすい体質、ストレスがあってイライラしやすい、冷えのぼせがある方にオススメの漢方薬です。
この漢方薬は、自律神経を調整する生薬、血行を良くする生薬などが含まれています。
お腹の冷えがある方にオススメの漢方薬で、「3大婦人科薬」のひとつです。この漢方薬は、身体全体の血行促進ならびに貧血症状を改善し、体を温める作用のある生薬、むくみを改善する生薬などが含まれています。
末端冷え性の方にオススメの漢方薬です。
この漢方薬は、血行促進と体を温める作用のある生薬で構成されています。特に手足が冷えて、しもやけができやすい方、冷えがある女性の月経痛にも適しています。
冷え性改善に効果的な西洋薬として、「ビタミンE」があります。ビタミンEには、末梢血管の血行を改善する働きがあるため、特に手足が冷える「四肢末端型冷え性」方におすすめです。
また、ビタミンEにはホルモン分泌の調整作用があるため、自律神経の乱れを整えることにも有効です。
最近では男性の冷え性の方も増えていますが、いまだ女性に多い傾向があります。理由の一因として、女性の構造的な問題があります。
<女性の冷え>
<男性の冷え>
男性でも、筋肉量が低い人、自律神経が乱れているケースでは冷えを感じやすいです。筋肉量は加齢により次第に低下していき、同様に臓器も老化することで基礎代謝が下がっていくため、男性でも高齢になると冷え性になりやすいです。男性の場合、「手足の冷えだけ」というよりも、冷えによる頻尿・腰痛・肩こりなどの症状を併発することが多いです。
「男性は冷え性にはならない」と思われる方が多く、見落とされがちですが、気になる症状がありましたら、お気軽に当院までご相談ください。
できることから、少しずつ始めましょう。
「冷えてつらい」と感じるとき、冷えによって日常生活に支障を来しているときは、我慢せず医療機関を受診してください。
また、「冷え」とともに以下のような症状を伴うケースでは、冷えの原因となる病気が隠れている可能性があります。その場合には、病気の治療が必要となります。
当院では漢方薬の処方など、冷え性改善のサポートを行っています。「ただの冷え性だから」と我慢せず、お気軽にご相談ください。