「しびれ」と表現される症状は幅広く、実態は人によって異なります。
「しびれ」の病状には主に3種類あり、触っても感覚が鈍い「感覚の低下」、ジンジン・ビリビリする、焼けつくような感じがする「異常感覚」、手足に力が入りにくい「運動麻痺」に分かれます。
また、しびれを引き起こす原因は多数あり、「脳」「脊椎(せきつい)」「末梢神経」「内科」といった様々な病気が背景に隠れています。特に脳疾患が原因である場合は、しびれ症状がすぐに治っても「危険な発作予兆」であるため注意が必要です。
当院では、しびれを引き起こしている原因について詳しく検査し、糖尿病・アルコール性・ホルモン異常など内科的要因から起こる「しびれ」に対する治療を中心に行っております。
「長く続いて治らないしびれがある」「徐々にしびれが強くなっている」という場合は、放置しないで早めに当院までご相談ください。
しびれの症状
「しびれ」とは人によって個人差があり、幅広い範囲の病状を表す言葉として使用されています。
実際引き起こされている病状は、主に以下の3種類に分けられます。
しびれの種類
しびれる場所から考えられる病気
しびれが起こる部位(領域)は、大まかに5つに分けられます。
しびれの部位から予測される主な病気は、次の通りです。
- 片側の右半身/左半身
脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)
- 片側の上肢(肩・腕・手指)
頚椎症、手根管症候群など
- 片側の下肢(股関節・膝・足趾)
椎間板ヘルニア、足根管症候群、バージャー病、閉塞性動脈硬化、静脈血栓症など
- 両側の下肢(股関節・膝・足趾)
糖尿病性神経障害、脊髄損傷、脊髄腫瘍、ギランバレー症候群など
- 四肢末梢
糖尿病性神経障害、多発性ニューロパチー、多発性神経炎、手根管症候群、足根管症候群など
しびれの原因
しびれの原因は、大きく4つに分けられます。
ただし、検査では特に異常はみられない「原因不明のしびれ」や、ストレスなどが引き金となる「心因的しびれ」もあります。
脳血管障害
しびれの原因の中でも、一番怖いのが「脳血管障害」です。
脳血管障害が原因となる「しびれ」では、後遺症や命の危険に繋がる可能性があり、専門病院での緊急対応が必要となるため、すぐに救急車を要請しましょう。
【症状の特徴】
- 急に片側だけ、しびれが現れる
- 例)脳の右側に障害が起これば、左の手足にしびれが現れます。
- ※脳幹(脳の真ん中)に疾患ができると、病気と同じ側の顔面にしびれが起こることがあります。
- しびれに加えて、以下のような症状を伴う
【主な疾患】
- 脳卒中(脳梗塞、脳出血など)
脳梗塞・脳出血の初期症状のひとつに、手足のしびれがあります。脳内の感覚神経にも障害が起こるため、障害の反対側にしびれが現れます。
- 一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)
しびれが短時間で解消されますが、脳梗塞の前兆とされるので、すぐに受診してください。
- 血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こる認知症です。初期症状として、手足のしびれ、足のすくみなどがあります。
認知症かも!?と思ったら大石内科循環器科医院の認知症(もの忘れ)外来へ
- 脳腫瘍
徐々にしびれたり、感覚が鈍くなったりしてきます。
- 脳炎
炎症が脊髄まで及ぶと、しびれ・麻痺などの神経症状が起こることがあります。
脊椎障害
慢性的なしびれの原因として多いのが、脊椎障害です。脊椎とはいわゆる「背骨」のことです。中には脊髄(せきずい)という脳から続く中枢神経が通っており、木の幹にあたる神経です。
首(頚椎/けいつい)の神経が圧迫されると上肢(肩~手指)のしびれ、腰(腰椎/ようつい)の神経が圧迫されると、下肢(腰~足)にしびれを引き起こします。圧迫される部位によって、しびれる範囲は異なります。
【症状の特徴】
- 症状の出方・強さに変動がある
- 発症時期が不明なことが多い
- 圧迫された神経によって、しびれの現れる部分が異なる
【主な疾患】
- 変形性頚椎症
加齢によって、首の骨が変形してトゲ(骨棘/こっきょく)ができた状態です。骨棘が脊髄や脊髄から枝分かれした神経根を圧迫することで、しびれが引き起こされます。
- 頚椎椎間板ヘルニア
30代~50代の男性に多くみられます。頚椎の骨と骨の間「椎間板」にあるゼリー状組織が外に飛び出して神経が圧迫されると、しびれなどの症状を引き起こします。圧迫要因には、加齢や首に負担のかかる姿勢での仕事・作業・スポーツがあります。
- 腰椎椎間板ヘルニア
腰椎の骨と骨の間「椎間板」にあるゼリー状組織が外に飛び出してしまうことで神経が圧迫され、しびれなどの症状を引き起こします。20代~40代の発症が約70%を占めます。
- 頚椎後縦靭帯骨化症
脊髄の前(喉側)にある後縦靭帯が厚くなって骨に変わる病気です。骨化によって脊髄や脊髄から分枝する神経根を圧迫して、手足のしびれ、手指の細かい運動(はしをうまく使えない、ボタンのかけ外しが難しい)が行いにくくなります。
末梢神経障害
背骨の中の脊髄が「木の幹」であれば、背骨から出た後の末梢神経は「木の枝」であり、身体全体に分布しています。末梢神経は脳・脊髄のように背骨で守られていないので外傷・圧迫など障害を受けやすく、障害されると、その神経が支配している領域にしびれや感覚の低下などが現れます。
なお、日常生活において長時間同じ姿勢をしているなどにより、末梢神経が一時的に障害されることでも、しびれが生じます。
【症状の特徴】
- 手足のしびれの原因として最も多い
- 日常でよく起こりやすい「しびれ」
- 一時的なしびれは、日常生活の些細な原因で起こる
【主な疾患】
- 手根管症候群・足根管症候群
親指・人差し指を動かすための正中神経は、手首にある「手根管」と呼ばれるトンネルの中を通っています。手(手首)を使い過ぎたり怪我をしたりすると、手根管内で神経が圧迫されてしまい、親指・人差し指・中指、薬指の親指側半分がしびれ、痛み、運動障害を起こします。朝方にしびれ・痛みが強くなりますが、手を振る、指を曲げ伸ばすことで、症状が軽減します。しかし、原因不明の場合も多く、妊娠中、授乳中、更年期の女性に多くみられます。
一方、足根管症候群では、内くるぶしの踵側にある神経「足根管」が圧迫されることでかかと以外の足裏から足の指にかけて、しびれが生じます。ただし、足の甲・足首はしびれません。
- 胸郭出口症候群
なで肩女性や重いものを運ぶ仕事の人に発症しやすい病気です。鎖骨付近の神経と鎖骨下動脈が圧迫されることで、腕を上げる動作によって上肢にしびれ、肩・腕・肩甲骨周囲の痛みが現れます。また、小指側の手~腕にうずくような痛み、しびれや手の握力低下、細かい作業が行いにくいなどの運動麻痺の症状が生じます。
- 多発性単ニューロパチー
2つ以上の神経が、主に左右非対称で同時または連続して障害される病気です。障害を受けた神経によって、手の力が入りにくい、手足の先の感覚が分かりにくい、しびれなどが現れます。
- 血行不良
寒さ、血管圧迫、筋肉の緊張などが要因となり血行不良が起こると、手のしびれが生じることがあります。正座で足がしびれるのも、一時的に足の血流が悪くなるためです。血行改善には、身体を締め付ける下着は避ける、適度に温める、マッサージ・ストレッチが良いでしょう。
- 肩こり・筋肉痛
猫背など不自然な姿勢が続くと、部分的に血流不良となり、肩こりを引き起こします。一方、筋肉痛によって、筋肉が硬くなることで神経が圧迫されます。肩こりや筋肉痛があると、利き腕と反対側に手のしびれ・痛みが現れやすくなります。いずれの症状も、改善にはマッサージ・ストレッチなどが効果的とされますが、慢性化してくるとマッサージだけでは改善しにくくなるため、ビタミンB1やビタミン12などの栄養素を積極的に摂取して、身体の内側から肩こり・筋肉痛の軽減を図ることをおすすめします。
内科的要因
内科的要因から末梢神経障害が起こることにより、手足のしびれを引き起こします。
【特徴】
手足の末梢に強い左右対称のしびれ「手足靴下型」が多い
【主な疾患】
- 糖尿病(糖尿病性神経障害)
- 糖尿病による高血糖状態によって、毛細血管が動脈硬化を起こすようになると、手足(特に足先)の末梢神経が侵されるため、ビリビリ・ジンジンといった「しびれ」が現れます。糖尿病性では、両手・両足、左右対称に症状が現れることが多いです。しびれは、進行するにしたがって痛み・麻痺に変わり、さらに壊死(細胞死)まで進展すると切断の可能性があるため、早期治療が必要となります。
- 自己免疫疾患(膠原病)
- 身体の免疫システムが自分の細胞を敵として攻撃してしまう病気「膠原病」でも、手足のしびれ、力の入りにくさなどが現れることがあります。膠原病の代表的な病気には、風邪・胃腸炎後に手足のしびれ・力の入りにくさが出現する「ギランバレー症候群」、両手のこわばり、関節の痛みが特徴的な「関節リウマチ」などがあります。
- 薬の副作用
- がん治療に使われるお薬では、副作用として、手足のしびれ、感覚異常、筋力低下などの末梢神経障害が起こることがあります。しびれが現れたり、物が持ちにくくなったりしたら、症状が軽くてもすみやかに主治医にご相談ください。
- ホルモン異常
- ホルモンの異常によって、しびれやむくみが生じます。
- 妊娠・出産、更年期など急激な「女性ホルモン」の変動
- アルコール障害
- 長期的に過度なアルコール摂取をしている場合、神経へのダメージならびにビタミン欠乏によって、神経障害を引き起こしやすくなります。その結果、しびれに繋がります。
- ビタミン欠乏
- 極端なダイエット・偏食や慢性的に過度なアルコール摂取をしている人では、ビタミンB1・ビタミンB12・葉酸などのビタミン欠乏による神経障害が増えており、手足にしびれが現れます。末梢神経が侵される「脚気(かっけ)」と中枢神経が侵される「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」があります。
- 食中毒
- フグ、貝やきのこの一部は食べると、神経に有害な作用を起こす場合があります。多くは食後30分まで舌・唇にしびれ・ピリピリした感覚が現れ、次第に顔・指先などに広がっていきます。発語困難、全身の運動麻痺や呼吸困難を起こし、死に至るケースもあります。口にしびれが現れたら、すぐに救急車を要請して、医療機関を受診してください。
心因性
説明できるような器質的疾患*1がなく、ストレス・不安といった精神的な問題によって、しびれや痛みが生じているケースも少なくありません。
ストレスを感じていると、血管が縮まって血流が悪くなります。その結果、全身に酸素が行き渡らず、しびれや筋肉のこわばりなどが起こりやすくなります。
心因性のしびれ治療には、安定剤を使用する場合があります。
*1器質的疾患:臓器に炎症など何らかの異常があること
しびれで受診するときのポイント
これまで見てきた通り、しびれ症状・原因は多岐に渡りますそのため、受診の際はご自身の状況を整理して医師に伝えると、適切な診断に繋がりやすくなります。
なお、症状がひどいときに受診した方が診察には望ましいため、症状が落ち着くまで我慢せず、すみやかにご受診ください。
- しびれや痛みが起こる部位
- いつごろから起き始めたのか
- 症状がずっと続いているのか
- 徐々にひどくなっている/同じような状態が続いている
- しびれや痛み以外に症状はない/ほかにも症状がある
- 麻痺や脱力感があるか、足を引きずっていないか
- 動かす・温める・冷やすと、どうなるか(ひどくなる/変わらない/和らぐ)
- 入浴すると、どうなるか(ひどくなる/変わらない/和らぐ)
- 飲酒で変わるか(ひどくなる/変わらない/和らぐ)
他にも持病や罹ったことがある病気・怪我、飲んでいるお薬などについても、整理しておくと良いでしょう。
しびれがあるときの検査
しびれは、自覚症状や問診・視診・触診などから、大まかな原因の見当を付けることが可能です。疑われる原因(病気)を予測した上で、診察結果に応じた検査を行います。
※ただし、原因が不明な場合もあります。
問診・視診・触診
いつから、どこがしびれているのか、首や手を動かすとしびれは変わるのか、細かい動作は行いにくくないか、しびれ以外の症状はあるかなど、詳しく伺います。
血液検査
糖尿病、腎疾患、ビタミン欠乏、自己免疫疾患など内科的要因がないかを確認します。
神経伝導検査
手や足の神経が正常に機能しているか調べる検査です。手足の神経の上から電気刺激を与え、誘発される筋反応から刺激が伝わる速さを測定したり、波形を分析したりする検査です。
X線検査(レントゲン)・CT検査・MRI検査
脳または脊髄・脊椎の病気が疑われる場合には、レントゲン検査・CT検査・MRI検査などの画像検査を実施します。
しびれの治療
しびれの治療には、「しびれ原因に対する治療」「しびれ症状に対する治療」の2種類があります。
しびれの原因に対する治療
当院では、主に内科的要因からの末梢神経障害による「しびれ」に対する治療を行っております。
※脳疾患、脊椎疾患ならびに末梢神経の物理的圧迫がある場合には、対応する医療機関をご紹介します。
- 脳疾患が原因
急性期対応が必要な場合には、救急対応の病院をすぐにご紹介します。
- 脊椎(頚椎・腰椎など)が原因
薬物療法、レーザー治療、外科的手術などが必要となることがあります。
- 末梢神経障害・内科的要因
薬物療法、日常生活の改善などを中心に進め、末梢神経に物理的圧迫が起こっているときは、外科的手術の検討が必要です。
しびれ症状に対する治療
しびれ・痛みに対する治療として、お薬による薬物療法を行います。原因となる病気や患者様によって、使われるお薬は異なります。
よく使われるお薬は次の通りです。
- 炎症を抑える「消炎鎮痛薬」
症状の軽減・緩和目的として、使用します。
- 神経の働きを助ける「ビタミン薬」
ビタミンは神経の修復を助けます。末梢神経障害が原因となっているときに使用されることが多いです。
- 血流を良くする「末梢循環改善薬」
血流低下が原因となっている場合、手足の血流改善のために用います。
- 神経過敏を抑えるお薬
主に糖尿病性神経障害に用いられますが、損傷した神経が過剰反応することで起こるしびれを抑えます。
そのほか、抗うつ病や抗てんかん薬が有効なケースもあります。
よくあるご質問
自分でできる「しびれ」を和らげる方法はありますか?
しびれの原因は多岐に渡るので、完全に抑える方法は難しいのですが、以下のセルフケアによって、しびれの緩和が期待できます。
- 温める
しびれが少し落ち着いてきたら、温めると血流改善され、症状緩和に効果的です。ただし、糖尿病性神経障害など神経麻痺が起こっている場合には、熱さを感じにくくなっているので、やけどに注意が必要です。
- 適度な運動
適度な運動は、血流改善に効果的です。ウォーキング、散歩など、比較的軽い運動がおすすめです。症状が強いときや不安定な時期は避けましょう。
- 悪い姿勢を正す
無意識の猫背、巻き肩、腰を曲げて座るなど悪い姿勢がしびれを引き起こしているケースも少なくありません。意識して、姿勢を正すようにしましょう。それだけで、しびれ症状が改善されるケースがあります。
- ストレス解消・発散
しびれ・痛みはストレスや心配事で悪化しやすい反面、心が穏やかなときには軽減する傾向があります。症状が続いていると、不安を覚えやすいですが、過剰な心配はよくありません。
しびれが続く場合には、医療機関できちんと診察を受けましょう。また、趣味など自分の時間を設け、適度にストレスを発散して、ストレスを溜めないようにすることも大事です。
すぐに受診した方が良い「しびれ」はありますか?
しびれの原因が脳だった場合、緊急対応が必要となります。
「急に体の片側だけ(右半身/左半身)しびれが現れた」という症状に加えて、以下のような他の症状を伴う場合には、すぐに救急車を要請してください。
また、しびれがすぐに治まったとしても、身体の片側だけのしびれが起こった場合には、重篤な病気の予兆の可能性があるため、すみやかに医療機関を受診することをおすすめします。
その他、症状が酷くなった時には、当院までお気軽にご相談ください。
病状から探すへもどる