大石内科循環器科医院

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【医師が解説】認知症の検査で行われる長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは

2025.04.11 認知症

物忘れが気になる… ご自身やご家族のことで、こうした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。国民の約5人に1人が認知症になる時代。早期発見が鍵となる認知症ですが、その認知症の診断に広く用いられているのが「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」です。

この検査は、わずか10分ほどで認知機能の状態を評価できる簡便な方法として知られています。年齢や日付、場所の認識、計算問題、記憶力などが問われ、日常生活に必要な認知機能を反映している点が特徴です。30点満点で、点数によって認知機能の状態を大まかに把握できます。20点以下は認知症の可能性が高く、21~29点は軽度認知障害(MCI)の可能性も示唆されます。しかし、HDS-Rはあくまでスクリーニング検査。最終的な診断には、他の検査結果との総合的な判断が必要です。

この記事では、HDS-Rの検査内容や採点方法、結果の解釈、さらに認知症予防のための生活習慣改善まで、分かりやすく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、認知症への備えを一緒に考えていきましょう。不安な気持ちを抱えている方は、ぜひ読み進めてみてください。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の基礎知識

もの忘れが増えてきた、あるいは身近な人の物忘れが以前より目立つようになったと感じると、不安になるのは当然のことです。ご自身やご家族がより良い生活を送るためには、認知症の早期発見と早期対応が非常に重要です。長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、認知症の検査で広く使われている簡便な検査方法の一つです。この検査を受けることで、現在の認知機能の状態を把握する手がかりを得ることができ、早期発見・早期対応の一助となります。

長谷川式認知症スケールとは何か?その目的と重要性

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、認知症のスクリーニング検査として用いられる簡便なテストです。認知症の疑いがあるかどうかを調べるための簡易的な検査であり、認知機能の低下を早期に発見することを目的としています。

高齢者の認知機能低下には、加齢に伴う正常な物忘れから、主観的認知障害、軽度認知障害(MCI)、そして認知症まで、様々な段階があります。HDS-Rは、これらの段階を明確に区別するものではありませんが、認知機能低下の可能性を早期に示唆する重要なツールとなります。

HDS-Rは30点満点で採点され、点数が高いほど認知機能が良好であると判断されます。しかし、HDS-R単独で認知症の診断が確定するわけではありません。これは、あくまでスクリーニング検査であり、他の認知機能検査や画像検査、血液検査などと組み合わせて総合的に判断する必要があるためです。HDS-Rで低い点数が出た場合は、精密検査が必要となります。

HDS-Rで評価される項目には、年齢、日付、場所などの見当識、簡単な計算問題、物の記憶、数字の逆唱などがあります。これらの項目は、日常生活で必要な認知機能を反映しており、低下が見られる場合には日常生活にも影響が出ている可能性があります。

項目内容
年齢生年月日から現在の年齢を計算してもらいます「今日は令和5年10月27日です。あなたは昭和20年生まれですね。今おいくつですか?」
現在の年月日現在の年月日と曜日を答えてもらいます「今日は何月何日何曜日ですか?」
場所現在の場所(病院名など)を答えてもらいます「ここはどこですか?」
5つの物の記憶5つの単語を記憶し、後で思い出してもらいます「桜、猫、電車、時計、りんご」を覚えてもらい、後で思い出してもらう
100-7の計算100から7を順番に引いていく計算問題です「100から7を引いてください。次にその数からまた7を引いてください。これを5回繰り返してください。」
逆唱数字を逆の順番で繰り返してもらいます「3-5-2」を「2-5-3」と逆の順番で繰り返してもらう

検査方法と手順の詳細

HDS-Rは、医師や看護師、臨床心理士などの医療従事者によって行われます。検査時間は約10分程度と短いため、患者さんの負担も少なく済みます。検査を受ける方がリラックスした状態で検査を受けられるよう、落ち着いた雰囲気の中で行うことが重要です。検査中は、回答の正誤だけでなく、反応速度や表情、質問への取り組み方なども観察し、総合的に評価します。

例えば、100-7の計算で間違えたとしても、すぐに間違いに気づいて訂正しようとする場合は、認知機能の低下が軽度である可能性があります。逆に、間違いに気づかなかったり、訂正しようとしなかったりする場合は、認知機能の低下がより進行している可能性が考えられます。

長谷川式認知症スケールと他の認知機能検査との違い

認知機能検査には、HDS-R以外にも様々な種類があります。例えば、ミニメンタルステート検査(MMSE)、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、認知機能評価尺度(CDR)などです。これらの検査は、それぞれ目的や検査内容、評価方法が異なります。

HDS-Rは、簡便で短時間で実施できるため、多くの医療機関でスクリーニング検査として広く利用されています。他の検査と比較すると、HDS-Rは計算能力の評価により重点が置かれている点が特徴です。一方、MMSEはHDS-Rよりも幅広い認知機能領域を評価し、より詳細な情報を得ることができます。CDRは、日常生活における認知機能の低下を評価することに重点を置いており、家族や介護者からの情報も参考にします。

どの検査が適切かは、検査を受ける方の状態や目的に合わせて判断されます。多くの場合、HDS-Rで認知機能低下の可能性が示唆された場合、MMSEなどのより詳細な検査を追加で行い、認知機能の状態を詳しく評価します。

軽度認知障害(MCI)は、認知症の前段階と考えられており、日常生活に支障が出るほどの認知機能低下はありませんが、健常な高齢者と比較して認知機能の低下が見られる状態です。MCIには様々な原因があり、認知症への移行を防ぐための効果的な介入方法を明らかにするための研究が盛んに行われています。例えば、有酸素運動などのライフスタイルの変更は、認知機能の維持や認知症への進行抑制に効果的であることが示唆されており、虚弱の予防にも推奨されています。

>> 大石内科循環器科医院では、MCIスクリーニング検査ができます。

長谷川式認知症スケールの結果の解釈と意義

認知症の検査でよく耳にする「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」。検査を受けた後、その結果が何を意味するのか、不安に思う方もいるかもしれません。検査を受ける前は誰でも不安になるものです。

ここでは、HDS-Rの結果をどのように解釈すれば良いのか、そしてその結果が持つ意義について、できるだけわかりやすく解説していきます。HDS-Rはあくまでも簡易的な検査であり、それだけで認知症の確定診断を行うものではありません。あくまでも、認知症の疑いがあるかどうかを調べるための検査です。この結果を踏まえ、今後の生活や医療について一緒に考えていきましょう。

長谷川式認知症スケールの採点方法と解釈ポイント

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、合計30点満点で採点されます。採点方法は、それぞれの質問に対する答えに応じて点数が割り振られ、その合計点で評価します。

点数認知機能の状態具体的な例
20点以下認知症の疑いが高い日常生活で頻繁に物忘れが起こり、時間や場所がわからなくなる、同じことを何度も聞いたり言ったりする、といった症状が見られることがあります。
21~29点軽度認知障害(MCI)の可能性がある少し物忘れが増えたと感じることはあるものの、日常生活には大きな支障がない状態です。
30点認知機能は正常範囲内年齢相応の物忘れは多少あるかもしれませんが、日常生活に支障はありません。

これらの点数はあくまでも目安です。点数だけで認知症の有無を判断することはできません。これは、テストの点数が良かったとしても、日常生活で困っていることがあれば、注意が必要になるのと同じです。例えば、学校のテストでは良い点数が取れても、忘れ物が多い、約束を守れないといった場合は、生活面での工夫が必要ですよね。

HDS-Rの場合も同様で、高学歴の方や普段から知的活動に熱心な方は、認知症の初期段階でも比較的高い点数が出る場合があります。逆に、普段からあまり頭を使わない生活を送っている方は、認知症でなくても低い点数が出る可能性があります。

解釈のポイントは、点数だけでなく、日常生活での様子と合わせて総合的に判断することです。例えば、HDS-Rの点数は高くても、日常生活で記憶障害や判断力の低下が見られる場合は、専門医に相談することが大切です。

結果が示す認知機能の状態とは

HDS-Rの結果は、認知機能の状態を大まかに把握する手がかりとなります。30点満点に近いほど認知機能は良好で、点数の下がるにつれて認知機能の低下が示唆されます。これは、学校のテストで100点に近いほど良い成績で、点数が低いほど勉強が苦手というのと同じような考え方です。

  • 20点以下: 認知症の可能性が高いと考えられます。日常生活に支障が出ている場合が多く、専門医療機関での精密検査が必要です。専門医による詳しい検査が必要です。
  • 2129点: 軽度認知障害(MCI)の可能性があります。MCIは認知症の前段階とも言われており、将来的に認知症に進行するリスクがあります。日常生活への影響はまだ少ない場合もありますが、認知機能の維持・改善に取り組むことが重要です。MCIは、例えるなら、風邪のひき始めに少しだけ喉が痛い状態です。本格的な風邪にならないように、早めに対策することが重要です。
  • 30点: 認知機能は正常範囲内と考えられます。年齢相応の物忘れはあるかもしれませんが、日常生活には問題がない状態です。

HDS-Rは、あくまでも認知機能の簡易的な検査であり、診断を確定するものではありません。結果が示すのは、あくまで現在の認知機能の状態の目安です。

HDS-R結果に基づく適切な対応策

HDS-Rの結果に基づいて、適切な対応策を検討することが重要です。

  • 20点以下の場合: 速やかに専門医療機関を受診し、精密検査を受けることをおすすめします。認知症と診断された場合は、薬物療法や非薬物療法など、適切な治療を開始します。
  • 2129点の場合: 生活習慣の改善や認知機能トレーニングなど、認知機能の低下を予防・改善するための取り組みを始めましょう。定期的な検査で経過観察を行い、必要に応じて専門医に相談することも大切です。MCIの主な原因の一つとしてアルツハイマー病が挙げられますが、血管性認知症やレビー小体型認知症、パーキンソン病関連認知症なども原因となる場合があります。これらの病気はそれぞれ特徴が異なり、治療法も異なります。専門医の診断を受けて、適切な治療を受けることが大切です。
  • 30点の場合: 現在のところ認知機能に問題はないと考えられますが、加齢とともに認知機能は低下していくため、認知機能の維持・向上に努めることが大切です。バランスの良い食事、適度な運動、知的活動などを心がけましょう。

HDS-Rの結果は、今後の生活をより良くするための指針となります。結果を前向きに捉え、ご自身の健康管理に役立ててください。

認知症予防と早期発見に向けた対策

認知症は、誰にとっても大きな不安を抱えるものです。しかし、早期発見と適切な対応によって、進行を遅らせたり、症状を和らげたり、より良い生活を送る可能性を高めることができます。

ご自身の不安を少しでも軽減し、将来に備えるために、認知症を予防するための生活習慣、軽度認知障害(MCI)、そして認知症の初期症状について理解を深めていきましょう。

軽度認知障害(MCI)の理解と診断基準

軽度認知障害(MCI)とは、認知機能の低下が見られるものの、日常生活に大きな支障がない状態です。健常な高齢者と比較すると記憶力や思考力など、認知機能の衰えが見られますが、日常生活にはそれほど大きな影響は出ていない状態です。

MCIは必ずしも認知症に進行するとは限りません。しかし、認知症の前段階である可能性があるため、注意深く経過観察し、適切な対応をすることが重要です。MCIと診断された方のうち、年間で約10~15%が認知症に進行すると言われています。

MCIの診断基準は、主に以下の3つのポイントを総合的に判断します。

  1. **記憶力や思考力など、特定の認知機能の低下が認められる:**例えば、新しい情報を覚えにくくなったり、複雑な問題を解決するのが難しくなったりすることがあります。
  2. **日常生活への支障は軽微である:**家事や仕事、趣味など、普段の生活は概ね問題なく送れています。
  3. **認知症ではない:**認知症の診断基準を満たしていません。

MCIには、原因疾患によって、アルツハイマー型MCI、血管性MCI、レビー小体型MCIなど、さまざまな種類があります。原因を特定し、それぞれに適した対応をすることが重要です。例えば、アルツハイマー病が原因であるアルツハイマー型MCIの場合、現在では根本的な治療法は見つかっていませんが進行を遅らせる薬剤が開発されています。

また血管性MCIの場合、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が血管性認知症の大きなリスクファクターであることが知られています。生活習慣の改善を通じて、これらの病気を管理することで、血管性MCIの進行を抑制できる可能性があります。

認知症の初期症状と兆候

認知症の初期症状は、加齢による変化と見分けにくい場合もあり、早期発見が難しいことが少なくありません。ご自身やご家族の変化に気づき、早期に対応するために、以下の初期症状に注意してみてください。

  • **物忘れがひどくなる:**単なる物忘れと異なり、置き場所を忘れてしまう、約束を忘れてしまう、同じことを何度も聞いたり言ったりすることが増えます。
  • **時間や場所がわからなくなる:**今日が何月何日かわからなくなったり、自宅への帰り道がわからなくなったり、自分が今どこにいるのかわからなくなることがあります。
  • **判断力が低下する:**簡単な計算ができなくなったり、状況に合わせた適切な判断ができなくなったり、以前は簡単にできていたことが難しくなります。
  • **人格が変化する:**これまで温厚だった人が怒りっぽくなったり、活動的だった人が無気力になったり、疑り深くなったり、変化が見られます。
  • **感情のコントロールが難しくなる:**些細なことで感情的になったり、急に泣き出したり、感情の起伏が激しくなることがあります。

これらの症状は、単独で現れることもあれば、いくつか組み合わさって現れることもあります。また、症状の程度や現れ方には個人差があります。

症状具体例
物忘れ財布や鍵の置き場所を忘れる、約束をすっぽかす、同じ質問を何度も繰り返す
時間や場所の認識困難今日が何曜日かわからない、見慣れた道で迷子になる、自分がどこにいるのかわからなくなる
判断力の低下ATMの操作がわからなくなる、食材の買い忘れが増える、季節に合わない服装をする
人格変化温厚だった人が些細なことで激怒する、趣味を楽しんでいた人が何事にも無関心になる、家族や友人を疑うようになる
感情のコントロール困難些細なことで急に泣き出す、感情の起伏が激しくなる

これらの症状に気づいたら、早めに医療機関を受診し、専門医の診察を受けることをおすすめします。

認知症予防のための生活習慣改善法

認知症の予防には、生活習慣の改善が効果的です。特に、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、認知機能の維持や認知症への進行を遅らせる効果があると多くの研究で示唆されています。これは、有酸素運動が脳への血流を改善し、神経細胞の成長を促すためと考えられています。また、運動は生活習慣病の予防にも効果的であり、血管性認知症のリスクを軽減する効果も期待できます。

具体的な生活習慣改善法は以下の通りです。

  • **バランスの良い食事:**野菜、果物、魚などをバランスよく摂取し、栄養不足を避ける。
  • **適度な運動:**ウォーキングやジョギング、水泳など、無理のない範囲で体を動かす習慣を身につける。週に3回以上、1回30分程度の運動を目標にすると良いでしょう。
  • **十分な睡眠:**質の良い睡眠を確保し、睡眠不足を解消する。
  • **趣味や社会活動への参加:**脳を活性化させるために、読書やゲーム、音楽鑑賞、地域活動など、積極的に趣味や社会活動に参加する。
  • **禁煙:**喫煙は認知症のリスクを高めるため、禁煙を心がける。
  • **節酒:**過度な飲酒は認知症のリスクを高めるため、適量を守る。
  • **定期的な健康診断:**早期発見・早期治療のために、定期的に健康診断を受ける。

これらの生活習慣を心がけることで、認知症のリスクを減らし、健康寿命を延ばすことに繋がります。ご自身の生活習慣を見直し、できることから始めてみましょう。

まとめ

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、認知症の早期発見に役立つ簡便な検査です。10分ほどで終了し、日常生活に必要な認知機能(記憶力、計算力など)を評価します。30点満点で、20点未満は認知症の可能性が高く、精密検査が必要です。21~29点は軽度認知障害(MCI)の可能性があり、30点は正常範囲内です。しかし、点数だけで診断はできません。日常生活の様子も踏まえ、不安な点があれば、医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。早期発見は治療や生活の質向上に繋がります。ご自身の健康のために、積極的に検査を受けてみてください。

参考文献

  • Jongsiriyanyong S, Limpawattana P. Mild Cognitive Impairment in Clinical Practice: A Review Article. American journal of Alzheimer’s disease and other dementias 33, no. 8 (2018): 500-507.

追加情報

[title]: Mild Cognitive Impairment in Clinical Practice: A Review Article.,

臨床現場における軽度認知障害(MCI):レビュー論文

【要約】

  • 高齢者の認知機能低下は、加齢に伴う正常な認知機能低下から、主観的認知障害、軽度認知障害(MCI)、認知症まで幅広いスペクトルを示す。
  • 本論文は、アルツハイマー病、血管性認知機能障害、パーキンソン病に起因するMCIの診断基準、MCIの管理、予防介入を含む、MCIに関する最新のエビデンスをレビューしている。
  • MCIには様々な原因があり、認知症前段階における認知機能維持の実用的方法を明らかにするための多くの研究が行われている。
  • 有酸素運動などのライフスタイルの変更は、認知能力を維持し、認知症への進行速度を低下させるための承認された方法であり、虚弱予防にも推奨されている。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30068225,

[quote_source]: Jongsiriyanyong S and Limpawattana P. “Mild Cognitive Impairment in Clinical Practice: A Review Article.” American journal of Alzheimer’s disease and other dementias 33, no. 8 (2018): 500-507.



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