爪は健康状態を表すバロメーターです。健康な爪は、薄ピンク色で滑らか、そして適度な厚みと硬さを持ちますが、糖尿病になると、爪の様子が変化する可能性があります。高血糖の状態が続く糖尿病では、血管が傷つき血流が悪くなることで、体の末端である爪にも影響が出る場合が多いです。
この記事では、糖尿病と爪の関係性、そして具体的な症状やケア方法を解説します。糖尿病の早期発見、早期治療のために、今すぐあなたの爪をチェックしてみましょう。
大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
糖尿病によって爪に異常が起こる3つの原因は以下のとおりです。
血流障害は爪の状態を悪化させる原因の一つです。糖尿病になると高血糖の状態が続きます。高血糖は血管を傷つけるため、血流障害の原因です。血流障害によって爪への栄養供給が滞ると、爪の成長が遅くなったり、もろくなったり、変形・変色することがあります。
健康な爪はピンク色で滑らかですが、血流が悪くなると爪の色が白っぽく濁る場合や、黄色っぽく変色する場合があります。爪の表面に縦線や横線が現れたり、爪が割れやすくなったりすることも代表的な症状です。
糖尿病による高血糖が続くと、末梢神経に悪影響を及ぼします。神経障害によって爪の感覚が鈍くなると、小さな傷や異変に気づきにくくなり、感染症のリスクを高めるため注意が必要です。
日常生活で爪に傷がついても、痛みを感じにくいため、そのまま放置してしまう場合があります。爪の傷を放置すると、傷口から細菌が侵入し、感染症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。神経障害は爪の変形にもつながることがあります。
糖尿病は免疫システムにも影響を与えるため、感染症への抵抗力を弱める原因です。健康な人であれば感染しない程度の菌でも、糖尿病の方は感染しやすくなります。特に、爪白癬(そうはくせん)などの真菌感染症のリスクが高まります。
爪白癬は、白癬菌というカビの一種が爪に感染することで起こる病気です。爪白癬になると、爪が厚くなったり、白く濁ったり、もろく崩れやすくなります。免疫力が低下していると、感染症の治りが遅くなり、重症化しやすくなるため、注意が必要です。初期の段階では自覚症状がない場合も多いので、定期的な爪の状態のチェックが大切です。
以下の記事では、糖尿病の早期発見に役立つ健康診断の見どころや、見逃してはいけない数値について詳しく解説しています。合併症を予防するためにも、ぜひ参考にしてください。
>>糖尿病の健康診断で見るべき数値!早期発見のポイント
糖尿病で起こる爪の症状は以下のとおりです。
巻き爪は、爪の両端が内側に巻き込むように変形した状態です。陥入爪は、爪の角が周囲の皮膚に食い込んでしまう状態です。糖尿病の方は、神経障害によって痛みを感じにくいため、爪の食い込みに気づかず、症状が悪化するケースが多く見られます。傷の治りも遅くなるため、細菌感染を起こしやすく、炎症や化膿のリスクも高まります。
神経障害による足の感覚の鈍麻は、きつい靴を履いていても圧迫感に気づきにくくさせるため、巻き爪や陥入爪を悪化させる原因です。初期には軽い痛みや違和感がある程度ですが、放置すると激しい痛みや腫れ、出血を伴うこともあります。重症化すると、歩くことさえ困難になる場合もあるため、早期の治療が重要です。
爪白癬は一般的に「爪水虫」と呼ばれており、白癬菌が爪に感染して起こる病気です。糖尿病になると免疫力が低下するため、爪白癬などの感染症にかかりやすくなります。爪白癬になると、爪の色が白や黄色に変色したり、もろくなったり、表面がボロボロと崩れます。
健康な方であれば、多少の白癬菌感染があっても発症に至らないケースも多いです。一方で、糖尿病の方は白癬菌に感染しやすく、治りにくい傾向があります。初期症状は軽微で気づきにくい場合もありますが、放置すると他の爪に感染が広がり、周囲の人にうつす可能性があります。早期発見と適切な治療が重要です。
糖尿病では、爪が厚く硬くなる「爪肥厚」や、爪の形がいびつになる「爪変形」の症状が現れることがあります。血流障害や神経障害、栄養不足などが原因です。爪が肥厚すると、靴を履いた際の圧迫感が増し、痛みを伴うこともあります。変形した爪は、巻き爪や陥入爪と同様に皮膚に食い込みやすく、炎症を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
爪がもろくなり、割れやすくなったり、剥がれやすくなるケースもあります。爪の変化は、日常生活にも支障をきたす可能性があるため適切な処置が必要です。靴紐を結ぶ、ボタンを留めるなどの動作が困難になるケースも考えられます。
健康な爪はピンク色ですが、糖尿病では、爪の色が変化することがあります。白濁や黄色、黒色など、さまざまな色の変化が見られます。爪の変色は、血行不良や爪白癬、あるいは他の病気が隠れているサインです。爪の色が変化するのみならず、爪の表面に白い斑点や線が現れることもあります。
爪の色や模様の変化は見た目にも影響するため、精神的な負担につながる場合もあります。爪の変色は、単なる見た目だけの問題ではなく、健康状態の変化を示す重要なサインです。黒色の変色はメラノーマなどの悪性腫瘍の可能性も考えられるため、注意が必要です。早期発見のためにも、異変に気づいたら早めに医療機関を受診しましょう。
2022年に発表された論文によると、糖尿病患者の爪白癬の有病率は29.18%と報告されています。爪白癬の発症は糖尿病性神経障害やHbA1c値の上昇と有意な関連があることも明らかになっています。
糖尿病では、爪の成長速度が遅くなったり、成長が完全に止まったりしてしまうこともあります。血行不良によって爪に必要な栄養が十分に届かなくなることが原因です。健康な爪は1か月に約3mm伸びると言われていますが、糖尿病の方は爪の伸びが遅いと感じるケースがあります。爪が薄くなったり、もろく割れやすくなったりすることもあります。
爪の成長異常は、日常生活での細かい作業が難しくなる場合が多いです。爪の成長が遅いと感じる場合は、早めに医療機関を受診し、適切なアドバイスを受けましょう。
家庭でできる爪のケア方法を、以下の項目に沿って解説します。
爪は、指先と同じくらいの長さに、まっすぐ四角く切る「スクエアカット」がおすすめです。爪の角は、やすりで丸く整える「スクエアオフ」で仕上げることで、爪が皮膚に食い込むのを防ぎ、巻き爪や陥入爪の予防になります。
深爪は、爪周囲の組織を傷つけ、感染症のリスクを高めるため、避けましょう。糖尿病の方は神経障害により痛みを感じにくい場合があるため、爪の切りすぎには特に注意が必要です。
糖尿病の方は、皮膚が乾燥しやすいため、保湿ケアが欠かせません。足を洗った後は、水分をしっかり拭き取り、保湿クリームを塗りましょう。特に、乾燥しやすいかかとや爪の周りは念入りな保湿が大切です。保湿クリームは、尿素配合のものがおすすめです。
2022年に発表された研究では、糖尿病の人の足の皮膚の改善に、10%尿素を含むクリームの効果が示されています。皮膚のバリア機能を高めることで、感染症の予防にもつながる場合があります。
毎日、爪や足の状態を観察し、傷や変化がないか確認しましょう。以下のポイントを重点的に確認してください。
少しでも異変を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。早期発見・早期治療が、重症化を防ぐ鍵になります。
自分に合った靴選びも、爪のケアに欠かせません。糖尿病の方は、靴ずれや小さな傷に気づきにくく、症状が悪化してしまうケースも少なくありません。サイズの合わないきつい靴や、つま先が窮屈な靴を履いていると、爪への負担が大きくなり、変形や損傷のリスクが高まります。傷口から細菌が侵入し、感染症を引き起こす危険性もあるため、靴選びは慎重に行いましょう。
靴を選ぶ際には、自分の足のサイズに合ったものを選び、つま先にゆとりがあるか、締め付けすぎていないかを確認しましょう。通気性の良い素材を選び、蒸れを防ぐことも大切です。ヒールが高すぎる靴は避け、足への負担を軽減しましょう。靴紐はきつく締めすぎず、適度なゆとりを持たせることが大切です。
新しい靴を履き始める際は、短い時間から始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。毎日同じ靴を履くのではなく、数足をローテーションで履くことで、靴の劣化を防ぎ、足を休ませることもできます。
糖尿病における爪トラブルの治療法について、以下の項目を解説します。
爪白癬の治療には、抗真菌薬の外用薬や内服薬が用いられます。外用薬は、爪に直接塗るタイプで、毎日継続して使用することが重要です。内服薬の場合は、体の中から白癬菌を退治する薬で、医師の指示に従って服用します。自己判断で薬の使用を中断することは避けてください。他の薬を服用している方は、事前に医師に相談しましょう。
爪白癬は完治するまでに数か月〜1年以上かかる場合もあり、根気強く治療を続けることが大切です。爪白癬は再発しやすい病気でもあるため、完治後も定期的な観察が必要です。
巻き爪や陥入爪の場合は、テーピングや手術など、物理的な方法で治療を行います。軽度の巻き爪や陥入爪の場合は、テーピングやコットンパッキング、ワイヤーによる矯正などの保存的治療を行います。爪の成長を促し、変形を矯正することが目的です。
痛みが強い場合や炎症がひどい場合は、爪の一部を切除する手術を行うこともあります。手術には、フェノール法や爪甲抜去術などがあり、症状や患部の状態に合わせて適切な方法が選択されます。
爪に何らかの変化を感じたら、自己判断せずに、早めに皮膚科や形成外科、あるいは糖尿病専門医を受診しましょう。痛みや腫れ、出血、膿などの症状がある場合は、緊急性が高い可能性があるため、すぐに受診することが重要です。
早期発見・早期治療によって、症状の悪化を防ぎ、より早く回復することが期待できます。糖尿病の方は爪に異常が起こりやすいため、定期的に足の検査を受けましょう。
糖尿病による血流障害や神経障害、免疫力の低下は、爪にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。爪の変形や変色は代表的な症状です。糖尿病による爪のトラブルは、初期段階では自覚症状に乏しい場合もあります。日頃から爪の状態をチェックする習慣を身につけることが大切です。
毎日のフットケアを適切に行い、爪の切り方や保湿、観察を心がけましょう。少しでも異変を感じたら、自己判断せずに専門医に相談することが重要です。早期発見・早期治療が、健康な爪を維持し、より快適な生活を送るためにつながります。
以下の記事では、糖尿病による心血管系の合併症とその予防策について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
>>糖尿病による合併症リスク|心臓と血管に与える影響と対策方法
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