健康診断で「糖尿病予備軍」と判定され「まだ病気ではないから大丈夫」と、生活改善を後回しにしていませんか?自覚症状がほとんどない段階では、少しずつ動脈硬化が進行している可能性があります。研究では、食後の血糖値が高くなる方は、心臓や血管の病気で亡くなることと関連すると言われています。
糖尿病予備軍の段階は、生活習慣を見直し、糖尿病の発症を予防する機会になります。本記事では、今日から無理なく始められる生活改善のポイントを解説します。できることから取り入れて、糖尿病を予防する生活を始めていきましょう。
大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
糖尿病予備軍の状態について、以下の内容を解説します。
糖尿病予備軍の注意すべき点は、自覚症状がほとんどないことです。症状がなく血糖値が高い状態は、血管への負担が生じている可能性があります。状態が慢性化すると、血管内壁にも影響を与える場合があり、次第に血管は弾力を失い、硬く内側が狭くなる「動脈硬化」になります。
動脈硬化は、以下のステップで起こります。
動脈硬化は静かに進行し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。症状がないときから、行動を始めることが大切です。
健康診断結果で見られる検査値に「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」があります。HbA1cは、過去1〜2か月間の血糖値の平均的な状態を示し、普段の血糖値の状態を反映する大切な指標です。ガイドラインによると、糖尿病の判定は、以下の段階に分けられます。
糖尿病の診断確定には、血液検査や種類、回数、症状を加味し、総合的に判断されます。正常高値と境界型は、将来的な糖尿病発症リスクに該当し、生活習慣の改善や経過観察の対象となります。
糖尿病予備軍の状態が続くと、糖尿病へ進行する可能性が高まります。注意が必要なのは、糖尿病予備軍の段階でも動脈硬化といった血管へのダメージが進行している点です。心筋梗塞や脳梗塞といった、重篤な疾患リスクが上昇することもわかっています。
生活習慣の改善は、糖尿病予防に加え、他の疾患リスクの低下にも寄与する可能性があります。研究では、糖尿病リスク減少食(DRRD)により、下記の効果が報告されています。
個人差はありますが、糖尿病予備軍の段階での対策は、糖尿病だけでなく、健康を守るうえで大切です。
今日から始められる生活改善のポイントについて、以下の5つを解説します。
食事改善で大切なのは「食べる順番」と「糖質の質と量」を意識することです。食べる順番で効果が期待できるのは「野菜を先に食べること(ベジタブルファースト)」です。具体的な順番は、以下のとおりです。
糖質の「質と量」を見直すことも大切です。お菓子やジュース、菓子パンなどに含まれる糖質は、血糖値を急激に上げやすいため、控えましょう。主食は、白米を玄米や雑穀ごはんに、食パンを全粒粉パンに変えると、摂取する食物繊維が増え、血糖値の上昇が緩やかになります。
外食の際は、丼ものや麺類などの単品メニューは避け、主食・主菜・副菜がそろった定食を選ぶとバランスが良くなります。
運動は、食事で摂取した糖をエネルギーとして消費し、血糖値を下げる効果が期待できます。筋肉は糖を貯蔵する役割もあります。筋肉量が増えると、普段の生活で消費するエネルギー量(基礎代謝)も増え、血糖値が上がりにくい体質となります。
運動は「有酸素運動」と「筋力トレーニング」を組み合わせることがポイントです。具体的な内容は、以下のとおりです。
研究によると、食事の見直しと運動の組み合わせは、運動だけを行う場合よりも体重を減少させると報告されています。3か月以上という長期的な視点で取り組むことで、糖尿病の原因となる内臓脂肪を減らす効果が期待できます。
一駅分歩く、エレベーターを階段に変えるなど生活の中に運動を取り入れることから始めてみましょう。
睡眠時間が不足すると、血糖コントロールに影響を及ぼすホルモンを分泌しやすくなります。コルチゾールは、肝臓で糖を作り出す働きが促進され、血糖が上がりやすくなります。
食欲や満腹感を調節するホルモンは、バランスが崩れ、総摂取エネルギーが増えます。研究では、体重増加や糖代謝障害のリスクが高まると報告されています。理想的な睡眠時間は、個人差はありますが、1日7時間前後です。質の良い睡眠のためのチェックリストは、以下のとおりです。
質の良い睡眠時間の確保は、食事や運動の効果を引き出すための土台にもなります。
ストレスは、血糖値を上げる原因の一つです。ストレスを感じると、体は「コルチゾール」や「アドレナリン」などのホルモンを分泌します。ホルモンには、エネルギー源である糖を血液中に放出する働きがあります。慢性的なストレスは、血糖コントロールに影響するため、ストレス解消が大切です。
効果が期待できるストレス解消法として、以下が挙げられます。
ストレスをゼロにはできませんが、上手にコントロールする工夫を取り入れていきましょう。
タバコやお酒の習慣も、血糖値に影響します。タバコに含まれるニコチンなどの有害物質は、インスリンの効きを悪くすることがわかっています。糖尿病予備軍の方が喫煙を続けると、将来的に心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患リスクが上がる可能性があります。
禁煙が難しい場合は、禁煙外来などで専門家のサポートを受けましょう。飲酒は、適量を守ることが大切です。お酒を飲むと食欲が増してしまうため、血糖コントロールを難しくさせます。お酒と上手に付き合うために、以下のポイントを意識しましょう。
少しの工夫で、適量を守りながらお酒と上手に付き合いましょう。
生活改善がもたらす主な健康効果について、以下の内容を解説します。
糖尿病予備軍の段階で適切な食事や運動の見直しを行うことは、血糖値の改善に有用と言われています。生活改善によって、以下の効果が期待できます。
血糖値が安定すると、食後の血糖値の急激な上昇が緩やかになります。血糖値を下げるインスリンの働きも助け、インスリンを作り出す膵臓の負担が軽くなります。研究では、生活習慣の改善によって糖尿病の発症リスクを低下させることがわかっています。
何もせず放置すると、糖尿病へ進行する可能性があります。糖尿病予備軍の段階で適切な対策をとることは、将来の発症リスク軽減に有用な方法です。
以下の記事では、血糖値を下げるために効果が期待できる生活習慣の改善ポイントを7つに分けて詳しく紹介していますので、実践の参考にしてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
生活改善は、血糖値だけでなく高血圧や脂質異常症など、他の生活習慣病の予防や改善も期待されます。具体的な生活改善と予防・改善が期待できる内容は、以下のとおりです。
1つの改善が複数の症状の改善につながるため、前向きに取り入れてみましょう。以下の記事では、高血圧がなぜ起こるのかという原因から、日常生活でできる予防・対策方法までわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>高血圧はなぜ起こる?原因と対策をわかりやすく解説
生活習慣の改善により、以下の変化を感じる方もいます。
変化を実感できると、生活改善は「義務」から「続けたい楽しみ」となり、日常生活に定着しやすくなります。目先の数値を改善するだけでなく、日々の生活の質(QOL)を高め、重篤な疾患発症リスクの低下が期待されます。可能な範囲で、ご家族と一緒に生活改善に取り組みましょう。
糖尿病予備軍は、糖尿病と診断される一歩手前の段階です。生活習慣を見直すことで、糖尿病発症の予防が期待できます。糖尿病だけではなく、他の生活習慣病による症状の予防、改善も期待され、重篤な疾患発症リスクの低減につながる可能性もあります。
今日から始める生活習慣の見直しが、将来の健康につながります。食べる順番や歩く時間を増やす、睡眠時間と質の確保、ストレスマネジメント、禁煙、節酒など、できることから始めましょう。
当院でも糖尿病の診療を行っており、お悩みの方のご相談を受け付けております。以下の記事では糖尿病の症状や合併症、インスリンや血糖値の関係などについて詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
>>糖尿病について
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