喉が渇きやすい、疲れやすいといった症状は、さまざまな原因が考えられますが、高血糖のサインである可能性もあります。高血糖は初期症状が現れにくい状態ですが、放置すると糖尿病などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。
高血糖は初期症状に注意することで早期発見・早期治療につながる可能性があります。この記事では、見逃しやすい高血糖の初期症状5つのポイント、放置した際に引き起こされる可能性のある合併症、具体的な予防・改善策を詳しく解説します。
具体的な数字や事実を交えながら解説しますので、ぜひご自身の状況と照らし合わせて、健康管理のヒントにしてみてください。
大石内科循環器科医院では、糖尿病の検査も実施しています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
高血糖は、自覚症状が現れにくいため、初期症状を見つけることは早期治療のためにとても大切です。高血糖の初期症状を見つける5つのポイントは以下のとおりです。
喉の渇きや多飲は、高血糖の初期症状としてよく見られます。健康な状態でも、運動後や暑い日には喉が渇きますが、高血糖による喉の渇きは少し異なります。健康な状態では一時的なものですが、高血糖の場合、慢性的に喉の渇きを感じることが多いです。一度に大量の水を飲んでもすぐにまた喉が渇いてしまうなどの特徴もあります。
高血糖になると、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなります。体は血液を薄めようとして、尿として水分を排出しようとします。血液中のブドウ糖濃度が高くなることで、浸透圧が上がり、体内の水分が尿として排出されやすくなり、喉が渇くのです。
慢性的な喉の乾きや、大量に飲水してしまうなどの症状に心当たりがある場合は、血糖値の確認をおすすめします。
トイレに行く回数が増えたり、尿の量が増えたりするのも、高血糖のサインである可能性があります。高血糖の状態では、血液中に過剰に存在するブドウ糖を体外に排出しようと、腎臓がより多くの尿を作り出します。腎臓は血液を濾過して老廃物を尿として排出する臓器ですが、通常の状態ではブドウ糖は再吸収されて血液中に戻ります。
高血糖の状態では、腎臓で処理しきれないほどのブドウ糖が血液中に存在するため、尿中に排出され、頻尿になったり尿の量が増えたりします。
夜中に何度もトイレに起きるようになった場合は注意しましょう。高血糖が原因の頻尿になると、1日に20回以上トイレに行くこともあります。尿量も増加し、一度のトイレで排出される尿の量が増えます。1日に2〜3リットル、場合によっては10リットルにも及ぶこともあります。
頻尿や尿量の増加は、膀胱炎などの他の病気でも起こることがあります。高血糖の可能性も考えられるため、気になる場合は医療機関を受診しましょう。
疲れやすい、集中力が続かないなどの症状も高血糖で現れることがあります。細胞がエネルギー源として利用するブドウ糖が、細胞に取り込まれにくくなることが原因と考えられます。
高血糖の状態では、インスリンというホルモンの働きが低下したり、細胞がインスリンに反応しにくくなったりするため、ブドウ糖が細胞内に取り込まれにくくなる可能性があります。エネルギーが不足すると、体がだるく感じたり、集中力が低下したりする可能性があります。慢性的な疲労感や、仕事中・勉強中にぼーっとすることもあります。
倦怠感や集中力の低下は、他の病気やストレスなどでも起こり得ますが、高血糖の可能性も考えられます。他の初期症状と合わせて注意深く観察し、必要に応じて医療機関に相談することをおすすめします。
食後に強い眠気やだるさを感じる場合も、高血糖のサインである可能性があります。食後、血糖値が急上昇することで、一時的に体がだるく感じることがあります。食後に強い眠気を感じ、長時間眠ってしまうことがある場合は、医療機関での相談を検討しましょう。
食事制限をしていないのに体重が減っていく場合は、高血糖のサインである可能性があります。高血糖の状態では、細胞がエネルギー源としてブドウ糖を十分に利用できないことがあります。体はエネルギー不足を補うために、脂肪や筋肉を分解し始め、体重が減少することもあります。急激な体重減少が見られる場合は、注意が必要です。
体重減少は、他の病気でも起こることがあります。他の初期症状と合わせて体重減少が見られる場合は、高血糖の可能性も視野に入れ、医療機関で相談することをおすすめします。
高血糖を放置すると、さまざまな合併症が発症するリスクが高まります。高血糖が引き起こす合併症について、以下の内容を解説します。
糖尿病神経障害は、糖尿病によって手足のしびれや痛み、感覚の異常などの症状が出る病気です。高血糖の状態が続くと、血管の内壁が傷つき、もろくなる可能性があります。細い血管への影響が大きく、神経に栄養を運ぶ毛細血管も影響を受けます。神経への栄養供給が滞ると、神経は徐々にダメージを受け、しびれや痛みが現れることがあります。
症状は手足の末梢、つまり指先や足先から現れることが多く、左右対称に症状が現れる傾向があります。初期症状は、足先や指先のピリピリとしたしびれ感や、靴下を履いているような違和感などが多いです。
初期症状を放置すると、灼熱痛(焼けるような激しい痛み)や、全く感覚がなくなる麻痺などの重篤な症状になる可能性があります。糖尿病神経障害は、足の潰瘍や壊疽(えそ:組織の腐敗)などの深刻な合併症を引き起こす危険性もあります。
足に小さな傷ができたとしても、神経障害によって痛みを感じにくいため、傷の存在に気づかず放置してしまうことがあります。高血糖の状態では免疫機能が低下することで、傷が治りにくく、細菌感染を起こしやすくなります。
最悪の場合、足の切断に至るケースもあります。手足のしびれや痛みを感じたら、医療機関へ相談しましょう。
糖尿病網膜症は、高血糖によって網膜の血管が傷つき、網膜への酸素供給が不足し、視力に障害が出る病気です。初期には自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに病気が進行してしまうケースが少なくありません。病気が進行すると、以下の症状が現れます。
症状がさらに進行すると、視力に深刻な影響が出る可能性があります。視力に問題が生じると日常生活に支障をきたすだけでなく、生活の質も低下してしまう可能性があります。
糖尿病網膜症は、初期症状が出にくいからこそ、定期的な眼科検診が重要です。眼底検査を受けることで、網膜の状態を詳しく調べられ、早期発見・早期治療につながる可能性があります。
Kreiderらの研究(2018)によれば、糖尿病網膜症は、世界中で視力障害の主要な原因の一つとなっています。早期発見と適切な管理によって視力障害のリスクを軽減できる可能性があります。
糖尿病腎症は、糖尿病によって老廃物が体内に蓄積し、腎臓の機能が徐々に低下してしまう病気です。腎臓は、血液を濾過して老廃物や余分な水分を尿として排出します。高血糖の状態が続くと、腎臓の糸球体と呼ばれる毛細血管の塊が損傷し、濾過機能が低下する可能性があります。
糖尿病腎症が進行すると、腎不全に至る可能性があります。腎臓が正常に機能しなくなるため、人工透析が必要となる場合もあります。人工透析は週に数回、数時間かけて行う必要があり、生活に大きな制約が生じる可能性があります。
糖尿病腎症も初期には自覚症状が少ないため、定期的な尿検査や血液検査で腎機能をチェックすることが重要です。
動脈硬化とは、血管の壁が厚く硬くなってしまう状態です。高血糖状態が続くと、血管が傷つき、血管内壁にコレステロールなどの物質が蓄積しやすくなります。コレステロールが蓄積すると、血管が狭く硬くなることがあります。
動脈硬化が進行すると、血液の流れが悪くなり、さまざまな臓器に酸素や栄養が十分に届かなくなる可能性があります。心臓の血管が狭くなると、心筋梗塞のリスクが高まることがあります。脳の血管が狭くなると、脳卒中のリスクが高まることがあります。
高血糖は、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。
高血糖の状態が続くと、免疫力が低下し、感染症にかかるリスクが増加します。高血糖は白血球の機能に影響を与えるため、細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まることがあります。肺炎や尿路感染症、皮膚感染症など、さまざまな感染症のリスクが高まる可能性があります。
特に高齢者の場合、感染症が重症化しやすい傾向があるため、注意が必要です。高血糖は自覚症状が少ないため、放置するとさまざまな合併症を引き起こし、生活の質を低下させる可能性があります。定期的な健康診断や、心配な症状がある場合は医療機関への相談を心がけることが大切です。
糖尿病が引き起こす影響は感染症だけでなく、心臓や血管のトラブルにも及びます。以下の記事では、糖尿病による心臓・血管へのリスクや、その予防法について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
>>糖尿病による合併症リスク|心臓と血管に与える影響と対策方法
日常生活の中で、意識と行動の変化を加えることで、高血糖の予防や改善に役立つ可能性があります。具体的な予防と改善策は、以下の5つです。
高血糖の予防と改善策として、まず「バランスの良い食事」が欠かせません。バランスの良い食事とは、以下の栄養素を適切な比率で摂取することを指します。
特に食物繊維は、糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。野菜や果物、海藻、きのこ類などに多く含まれているため、毎食の献立に取り入れることを意識しましょう。
血糖値の上昇が緩やかな食品を選ぶことも重要です。白米やパン、うどんなどの精製された穀物よりも、玄米や全粒粉パン、そばなどの未精製の穀物のほうが血糖値の上昇は緩やかです。
食事の量と食べるペースにも注意が必要です。一度にたくさんの量を食べると血糖値が急上昇しやすい可能性があるため、腹八分目を心がけてください。よく噛んでゆっくり食べることも、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。早食いの傾向がある方は、一口30回を目安に噛む回数を増やすことを意識してみましょう。
高血糖対策として、適度な運動が役立つとされています。運動には、血糖値を下げる効果があるインスリンの働きを助ける作用があると考えられています。ハードなトレーニングは不要で、以下の運動がおすすめです。
無理なく続けられる運動を生活に取り入れ、習慣化することが大切です。1日30分程度の運動を週に数回行うことで、血糖値の改善に役立つ可能性があります。日常生活の中で体を動かす機会を増やすことも有効な場合があります。エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩く、などの工夫を積み重ねることが推奨されます。
運動だけでなく、食事や睡眠などの生活習慣全体を見直すことで、より効果的に血糖値を下げることが可能です。以下の記事では、血糖値を下げるための7つの具体的な方法について解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
ストレスは血糖値を上昇させる要因の一つの可能性があり、適切なストレス管理は高血糖対策において重要です。ストレスを感じると、体内でコルチゾールというホルモンが分泌されると考えられています。コルチゾールは血糖値を上昇させる可能性があるため、慢性的なストレスは高血糖につながる危険性があります。
おすすめのストレス解消法は以下のとおりです。
自分に合った方法を見つけて継続しましょう。
高血糖は自覚症状が現れにくく、定期的な健康診断での血糖値チェックは早期発見のために不可欠です。健康診断では、空腹時血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー:過去1〜2か月の平均血糖値を反映する数値)などの検査項目で血糖値の状態を調べることができます。
検査値が高い場合は、医師へ相談し、適切な指導や治療を受けるようにしましょう。早期発見・早期治療によって、合併症のリスクを軽減し、健康な生活を送る可能性が高まります。
喫煙は血管を収縮させ、血流を悪くし、高血糖の状態を悪化させる可能性があります。禁煙によってインスリンの感受性が改善し、血糖コントロールがしやすくなるとされており、生活習慣の中でも優先度の高い改善点の一つです。
禁煙は高血糖の予防と改善だけでなく、全身の健康状態の改善にもつながるとされています。医師のサポートや禁煙補助薬を活用することで、成功率は高まる可能性があります。ご自身の健康を守るためにも、禁煙に取り組んでみましょう。
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高血糖は初期症状に乏しく、気づかないうちに進行し、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。喉の渇きや頻尿、倦怠感、食後の眠気、原因不明の体重減少などのサインを見逃さないようにしましょう。放置すると糖尿病神経障害や糖尿病網膜症、糖尿病腎症、動脈硬化、感染症リスク増加など、深刻な合併症につながる恐れがあります。
日頃からバランスの良い食事や適度な運動、適切なストレス管理を心がけ、定期的な健康診断と禁煙を意識することで、高血糖の予防や改善が可能です。ご自身の健康のため、記事の内容を参考にして生活習慣を見直してみてください。
以下の記事では、糖尿病の早期発見に欠かせない健康診断の検査項目や見落としやすい数値、チェックすべきポイントについて詳しく解説しています。定期検診の前にぜひご確認ください。
>>糖尿病の健康診断で見るべき数値!早期発見のポイント
参考文献
Kathryn Evans Kreider, Angelika A Gabrielski, Felisa B Hammonds. Hyperglycemia Syndromes. Nurs Clin North Am, 2018, 53, 3, p.303-317
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