突然、胸に痛みを感じると「心臓の病気では?」と不安に襲われるものです。しかし、胸の痛みの背景には、心臓だけでなく肺・食道・神経などさまざまな原因が隠れていることがあります。命に関わる重大な病気のサインもあれば、ストレスや神経痛といった一過性のものもあります。
重要なのは、痛みがどこで、どのように現れるかを見極めることです。この記事では、胸の「左・右・真ん中」の場所ごとの原因や考えられる病気、危険なサイン、受診の目安を詳しく解説します。胸の痛みを正しく理解することで、必要なときに早めの行動がとれるようになり、安心して日常を過ごせるようになるはずです。
胸の痛みにお悩みの方は、大石内科循環器科医院へご相談ください。当院では循環器専門医が心電図や超音波検査などを用いて原因を丁寧に確認し、必要に応じた治療や生活改善をサポートしています。違和感がある場合は放置せず、早めの受診で安心と健康を守りましょう。
胸の痛みは場所によって原因が異なり、見極めが重要です。左・右・真ん中のどこが痛むかによって、心臓、肺、消化管、血管など関わる臓器は大きく変わります。以下では、痛みの部位ごとに考えられる病気について解説します。
左胸や胸の真ん中の痛みは「狭心症」や「心筋梗塞」の可能性もあります。いずれも心臓を養う冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで起こり、命に関わる危険があります。狭心症は、胸が締め付けられる圧迫感が特徴です。階段を上るなど体を動かしたときに誘発されやすく、数分で治まるのが一般的です。
心筋梗塞は経験したことのない激しい痛みが長く続きます。冷や汗、吐き気、息苦しさを伴うことも多く、痛みは15分以上続いて安静にしても改善せず、首や肩、みぞおちに広がることもあります。
このような強い症状がある場合は、ためらわず救急要請を検討することが大切です。病院では心電図や血液検査(高感度トロポニンなど)を用いて診断されますが、検査だけでなく症状や診察の結果を総合して判断されます。
右胸の痛みの原因として、まず考えられるのが肺炎や胸膜炎です。息を吸ったときや咳をしたときにチクチク、ズキズキと痛みが強まり、発熱や黄色い痰を伴うのが特徴です。
次に気胸があります。突然、鋭い胸の痛みと強い息苦しさが現れ、肺に穴が開いて空気が漏れることで肺がしぼんでしまう病気です。背が高く痩せた若い男性に起こりやすいとされています。
胆石症や胆のう炎は、右の肋骨の下から右胸にかけて痛みが出やすいです。天ぷらや唐揚げなど脂っこい食事をした後に起こる傾向があります。吐き気や発熱を伴う場合も少なくありません。
胸の真ん中が痛むときは、逆流性食道炎や急性大動脈解離が原因の可能性があります。痛みの特徴を知ることが大切です。
逆流性食道炎は生活習慣の見直しで改善が期待できますが、急性大動脈解離は一刻を争う緊急疾患です。胸の真ん中に突然の激痛が走った場合は、迷わず救急車を呼んでください。胸焼けや違和感が続く場合は消化器内科の受診を検討しましょう。
胸の痛みは「どのように痛むか」で原因が大きく変わります。チクチクするのか、ズキズキするのか、締め付けられるのかなどの感覚の違いが、病気を見分けるヒントになります。以下では、痛みの特徴別に考えられる主な原因を解説します。
胸の表面にチクチク・ズキズキと針で刺されるような痛みがある場合は「肋間神経痛」や「帯状疱疹」が考えられます。いずれも胸の奥ではなく、表面に近い場所で起こるため「ここが痛い」と指で特定しやすいのが特徴です。
肋間神経痛は、肋骨に沿った神経が刺激されて起こる痛みで、咳や深呼吸、体をひねる動きで悪化します。帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスが再び活動して発症し、ピリピリした痛みの後に赤い発疹や水ぶくれが体の片側に帯状に現れます。
次のような症状がある場合は、整形外科や皮膚科の受診を検討してください。
検査で心臓や肺に異常がなくても、胸の痛みや動悸、息苦しさを感じることがあります。これは「心臓神経症」と呼ばれ、ストレスや不安が体の症状として表れる病気です。几帳面な方や心配性の方に多いとされ、心と体のつながりが深く関わっています。
代表的な症状は次のとおりです。
「命に関わる病気かもしれない」という不安が、さらに症状を悪化させることもあります。特に若い方や女性では不安が強まりやすいと報告されています。まずは循環器内科などを受診して心臓に異常がないことを確認するだけでも安心につながり、症状が軽くなる方も少なくありません。
必要に応じて、心療内科で心のケアを行うことも効果が期待できます。以下の記事では、症状別の動悸への対処法や自宅で行える応急処置、予防のための生活習慣のポイントを解説しています。
>>動悸の対処法を症状別に解説!自宅でできる応急処置と普段から気をつけたいポイント
胸の痛みにはさまざまな原因がありますが、一刻を争う命に関わる病気が隠れていることがあります。以下で紹介する症状は、迅速な対応が必要な危険なサインです。
もし当てはまると感じたら、我慢せずすぐに救急車を呼んでください。
胸を強く締め付ける激痛や冷や汗が突然起きたら、急性心筋梗塞を疑います。心臓を栄養する冠動脈が詰まり、心筋へ血流が途絶える危険な状態です。代表的な症状は次のとおりです。
痛みが15分以上続く、安静でも改善しないときは救急要請をしましょう。医療機関では心電図や高感度トロポニン検査などを組み合わせ、迅速に評価します。
突然、胸から背中へ突き抜けるような激痛が走ったら、急性大動脈解離を疑います。心臓から全身に血液を送る大動脈の壁が裂ける病気で、発症直後から命の危険が極めて高い状態です。
代表的な症状は以下のとおりです。
一刻を争う緊急疾患であり、ためらわず救急要請が必要です。強烈な痛みにより「死んでしまうのでは」と強い不安を抱く方も多く、治療だけでなく心理的サポートも重要となります。
胸の痛みと同時に突然息が苦しくなったら、肺血栓塞栓症の可能性があります。「エコノミークラス症候群」として知られる病気で、足の静脈にできた血の塊(血栓)が肺の動脈を塞ぐことで起こります。
典型的な症状には、急な息切れや呼吸困難、深呼吸や咳で強まる胸の痛み、動悸、失神、血の混じった痰などがあります。飛行機や車での長時間移動、デスクワーク、手術後などで体を動かさない状況が続くとリスクが高まります。
胸痛と同時に息苦しさを感じたら、ためらわず救急要請を検討しましょう。
以下の記事では、動悸で病院を受診するタイミングや診察の流れを詳しく解説しています。
>>動悸で病院に行くタイミングはいつ?受診の目安や検査、治療の流れ
胸の痛みには多くの原因がありますが、中には一刻を争う命の危険が潜んでいる場合があります。次のような症状が一つでも当てはまる場合は、我慢せずすぐに119番へ連絡してください。
判断に迷うときは「救急安心センター(#7119)」で相談することも可能です。迅速な行動が命を守る第一歩になります。
いざというときに慌てないために、病院へ行くときの流れと準備しておきたいことを解説します。
痛みの特徴や一緒に現れる症状によって、適切な診療科は異なります。以下を目安にしてください。
どこに行けばよいか迷うときは、まずかかりつけ医に相談するのも選択肢の一つです。ただし、突然の激痛・冷や汗・呼吸困難がある場合は命に関わる可能性があるため、我慢せず救急車を呼びましょう。
診察の時間は限られているため、短時間で自分の症状を正確に伝えることが診断の第一歩になります。事前にメモを準備しておくと、伝え忘れを防ぎ、落ち着いて話すことができます。
診察前にまとめておきたいポイントは以下のとおりです。
不安に思っていることや質問したい内容もメモしておけば、診察中に聞き忘れる心配がなく、より充実した相談ができます。
「胸の痛み」と言っても、その原因は心臓の病気からストレスまでさまざまです。なかには、心筋梗塞や大動脈解離のように、一刻を争う危険な病気が隠れていることもあります。
「締め付けられるような激痛」「冷や汗」「突然の息苦しさ」などの症状は、命を守るための重要なサインです。これらの症状を感じたときは、絶対に我慢せず、ためらわずに救急車を呼んでください。
それ以外の症状でも「いつもと違うな」「不安だな」と感じたら、自己判断は禁物です。まずはかかりつけ医や専門の医療機関に相談しましょう。当院では循環器専門医が丁寧にお話を伺い、必要に応じた検査や治療で早期発見をサポートします。
Chijioke Noris Ezinwa. Impact of fibrin in high sensitivity cardiac troponin (Hs-cTn) detection: Implications for quality control. Clin Chim Acta, 2026, 578, p.120551.
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