大石内科循環器科医院

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心不全の余命はどのくらい?心不全のステージや初期症状も医師が解説

2024.12.18 循環器

「心不全」と診断されたとき「余命はどれくらい?」と不安に感じる方も多いです。心不全の余命は一人ひとり異なり、簡単に断言できるものではありません。重症度や年齢、合併症などさまざまな要因が絡み合い、予後を左右するからです。

心不全はがんよりも予後が悪いとされ、日本では年間約7〜8万人が亡くなっています。自覚症状が現れにくい病気でもあるため、気づかないうちに病状が進行していることも少なくありません。

この記事では、心不全の余命やステージの症状、心不全の初期症状などを解説します。ご自身の健康状態をチェックするためにも、ぜひ最後までお読みください。

心不全の余命はどのくらい?

心不全とは、心臓が疲れ、全身に十分な血液を送れなくなる病気です。心不全の余命は、風邪のように「○日で治る」と明言できるものではなく、一人ひとり異なります。心不全の余命は、心不全のステージに大きく依存します。

心不全はステージA〜Dまでの4段階にわかれており、ステージAは心不全のリスクがある状態、ステージDは最も重篤な状態です。アメリカの報告では、ステージA、B、C、Dの5年生存率はそれぞれ97%、96%、75%、20%と報告されています。あくまで平均的な数値であり、個々のケースでは大きく異なる可能性があります。

心不全は慢性疾患であり、完治は難しいですが、適切な治療と管理によって症状をコントロールし、生活の質を維持しながら長く生きることが可能です。心不全の余命を延ばすには、早期治療が重要です。

「少し息苦しい」「疲れやすい」といった症状を自覚したら、すぐに医療機関を受診しましょう。医師と相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。

心不全の4つのステージの症状を解説

心不全は、心臓が体全体に十分な血液を送り出せなくなった状態です。心臓は体中に血液を送り出すポンプの役割を果たしています。心不全になると、ポンプの力が弱くなってしまうのです。心不全の4つのステージの症状は以下のとおりです。

病状症状
ステージA心不全の前段階。心臓に異常があるものの、自覚症状はない。自覚症状はないが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、心臓病がある方はリスクが高く注意が必要
ステージB軽度の心不全。心臓に負担がかかると症状が出る。動悸、息切れ、疲れやすいなど
ステージC中等症~重症の心不全。安静時にも症状が出る。息切れ、呼吸困難、動悸、むくみ、食欲不振、咳など
ステージD最も重症な心不全。心臓移植などの高度な医療が必要。安静時でも強い息切れやむくみ、日常生活が困難になるなど

心不全は徐々に進行していく病気です。初期の段階では自覚症状がほとんどないため、放置してしまう方も少なくありません。心不全は早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、早めに医師に相談してください。

心不全の初期症状【初期のうちに医師に相談すべきサイン】

心不全は初期の段階では自覚症状が現れにくい病気ですが、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。初期症状を見逃さないことが重要です。心不全の初期症状には以下のようなものがあります。

  • 息切れ
  • 疲労感
  • 足のむくみ
  • 息苦しい
  • 動悸

普段は息切れを感じない程度の運動で息切れする場合は注意が必要です。心不全の方は、階段の上り下りなどの些細な動作でも息切れを感じる場合があります。日常生活で「最近疲れやすい」「体がだるい」と感じる場合も、心不全のサインの可能性があります。

足のむくみがある場合も注意が必要です。心臓のポンプ機能が低下している場合、足のむくみを強く感じることがあります。夜間や横になると咳が出たり息が苦しくなったりするケースも心不全の可能性があります。心不全になると、全身に血液を送り出すために心臓がいつも以上に頑張るため、動悸を感じやすいです。

風邪などの他の病気でもみられることがありますが、繰り返し起こる場合は、心不全のサインである可能性があります。「たかが息切れ」「年のせい」と安易に考えずに、少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

心不全を改善するポイント4選

心不全を改善するポイントは以下のとおりです。

  • 生活習慣の改善:食事療法、運動療法、禁煙など
  • 薬物療法の効果と副作用:適切な服薬管理
  • 定期的な検査と医師との連携:病状の把握と早期対応
  • 心理的なサポート:不安やストレスへの対処

内容を参考にご自身の生活を見直し、医師と相談しながら治療を進めましょう。

生活習慣の改善:食事療法、運動療法、禁煙など

心不全の改善には、毎日の生活習慣の見直しが不可欠です。食事や運動、禁煙は心不全の症状に大きく影響します。心不全の食事療法で最も重要なのは塩分制限です。目標は1日7g以下です。

インスタント食品や外食を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。自炊の際は、出汁やスパイスなどを活用して塩分を含む調味料を控えめにしてください。水分制限も心不全の改善に重要ですが、過度な水分制限は脱水症状の原因になります。医師と相談して自分にあった水分量を摂取しましょう

適度な運動は心臓の機能維持・改善に効果的です。ウォーキングや軽いジョギング、水中ウォーキングなどの続けやすい運動がおすすめです。過度な運動は心臓に負担をかける可能性があるため、運動の種類や強度などは事前に医師と相談してください。喫煙は心臓に大きな負担をかけ、心不全の症状を悪化させる大きな要因になります。禁煙は心不全の改善に不可欠です。禁煙は難しいと感じるかもしれませんが、禁煙外来の利用やニコチンパッチ、ニコチンガムの使用など、さまざまなサポートがあります。当院も禁煙外来を設けています。一人での禁煙に悩んでいる方はお気軽にご相談ください。

薬物療法の効果と副作用:適切な服薬管理

心不全の治療には、以下のようにさまざまな薬剤が使用されます。それぞれの薬の効果と副作用を理解し、正しく服用しましょう

  • 利尿薬:体内の余分な水分を尿として排出し、むくみを軽減する薬
  • ACE阻害薬/ARB:血管を広げ、心臓の負担を軽減する薬
  • β遮断薬:心臓の拍動を抑え、心臓の負担を軽くする薬
  • SGLT2阻害薬:心不全による入院リスクを減らす効果が期待される薬
  • ARNI:心臓の負担を軽減するだけでなく、心臓を保護する効果も期待されている薬

薬の効果や副作用には個人差があります。心不全の薬は正しく使わないと効果が発揮されません。自己判断で服薬を中断せず、必ず医師・薬剤師に相談してください。

定期的な検査と医師との連携:病状の把握と早期対応

心不全の病状は、定期的な検査によって確認します。検査結果を基に、医師と相談しながら治療方針を決定していきます

体重管理は心不全の病状の把握に欠かせません。毎日、同じ時間に体重を測って記録しましょう。1週間で2kg以上の急激な体重増加は、心不全が悪化している可能性があります。体重増加に気づいたら、すぐに医師に連絡してください。

血圧測定も重要です。高血圧は心不全を発症する要因の一つです。家庭用血圧計を用いて、毎日血圧を記録し、受診時に医師に提示することで、より適切な治療方針を決定できます。他にも、息切れやむくみがひどくなるなど、病状に変化があった場合は医師に相談しましょう。

高血圧について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>大石内科循環器科医院|高血圧の基礎知識・症状・治療について

心理的なサポート:不安やストレスへの対処

心不全になると、将来への不安やストレスを感じやすくなります。過度なストレスは、心不全の症状を悪化させる要因にもなりかねません一人で抱え込まず、積極的に周りの人に相談したり、専門家のサポートを受けたりすることが大切です。

家族や友人に相談する、カウンセリングを受けるなど、自分の気持ちを話す機会を設けるのが効果的です。ヨガやアロマテラピーなど、リラックスできる方法を見つけるのもおすすめです。精神的なケアも心不全の治療に欠かせません。自分に合ったメンタルケア方法を見つけましょう。

まとめ

心不全の余命は、ステージや年齢、合併症などさまざまな要因によって異なり、一概に言うことはできません。ステージが進行すると予後が悪化する傾向があり、適切な治療と管理が重要です。心不全は初期症状がわかりにくく、進行すると日常生活に支障が出る病気です。 自覚症状がない段階でも、高血圧や糖尿病などの持病がある方は注意が必要です。

息切れや動悸、足のむくみなど、少しでも気になる症状があれば、早めに循環器内科の当院へご相談ください。

参考文献

Titz A, Schneider S, Mueller J, Mayer L, Lichtblau M, Ulrich S. Symposium review: high altitude travel with pulmonary vascular disease. The Journal of physiology 602, no. 21 (2024): 5505-5513.

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